ブラウン惑星人の日々 November 2015
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廣井さん帰国!
皆様、アメリカでは夏時間が終わって通常の冬の時間になり、夕方帰るときはもう真っ暗になりました。今日は金曜日ですが、明日土曜日の朝に日本へ発つので、仕事を休んで準備をしています。今の季節は寒さが中途半端で、なかなか服を選ぶのが難しいところです。東京はボストンよりも10度Fくらい暖かいようですね。
上画像:ブラウン大学での20年勤続賞の記念写真を撮ってもらいに行ったときに並んでいたクッキーの山
さて、昨日は特別なことがありました。私がブラウン大学に正式雇用されたのは1995年のことなので、既に20年経ちますが、勤続賞ということで記念写真を撮りに行きました。その通知の電子メールの宛先を見ると、40名くらいいるようですね。最初の写真は、コーヒーとともに出された、記念クッキーで、確か40年勤続賞まであったように思います。
コーヒーと一緒に1つだけいただき、1つは持って帰り、今年2年生になった長女を電話で呼び出しました。実験室に来た娘に、それを渡して、「あなたがブラウン大に入れたのも、パパが20年間僕労働を続けてブラウンに貢献してきたからだと思うよ」と言ってあげました。まあ、喜んでいました。
その日は最後の仕事日だったので、測定が終わった試料のデータを整理してデータベースに追加し、日本に持っていくための隕石試料を準備しました。極地研の隕石サーベイで反射スペクトルがちょっとおかしかったもの2つの再測定と、東大の杉田君に返却するマーチソン試料(これが入れ物が大きくて大変)と、今回、阪大へ行くついでに宇宙風化模擬実験でレーザー照射をするために、2つの炭素質コンドライトの粉をプレスしてペレットにしました。
上画像:宇宙風化模擬実験のための炭素質コンドライトのペレットをプレスを使って作っているところ
2つ目の写真がその様子です。同じ学科のDave Murrayという研究員が管理している地下のプレスで、3000から4000 PSI程度の圧力で1分間押します。左下に小さく見えているのが、無水銅でできた更にいれた炭素質コンドライトの粉です。2つとも、熱変成で脱水したと分かっている隕石の125ミクロン以下の粒径に砕いた粉末です。
今までいろんな隕石の宇宙風化の実験をしてきましたが、母天体で加熱脱水した後に宇宙風化したらどうなるかという実験をしていなかったので、はやぶさ2の2018年の小惑星リュウグウへとのランデブー観測や、将来のフォボス・デイモス試料回収ミッションに備えて研究しておく必要があります。
まだまだ帰国中の講演会のスライドも準備できてないですし、アルバイトの翻訳も入ってきているので、今回の2週間の帰国も非常に忙しくなりそうです。でも、年に2回程度のまれな機会なので、最大限に活用したいです。私の話をわざわざ聞きに来てくれる人たちがいることがうれしいことです。はやぶさ・はやぶさ2の人気のおかげと言えそうですが、もっと深く考えると、その因果関係に逆の要素もあるかと思っています。でも長くなる話なので、また気が向いたらということで、今日は終わりにします。
日本帰国中は、極地研の隕石シンポ、宇宙研でのはやぶさシンポ、名古屋・宝塚での講演会、阪大での実験といろんなところに行きますが、お目にかかれる皆さまぜひよろしくお願いします。本当は宝塚に行く途中で枚方の本田君と落ち合えるかと思っていたのですが、割と早く行く必要があって難しくなりました。阪大に来てくれたら助かるけど。。。
米国ブラウン大学構内の案内
秋も深まった今日この頃、皆さまお元気でしょうか。こちらは寒くなったり熱くなったりして、70から30度Fまで日によって変わるような週がありましたが、まだ平均50度F程度の過ごしやすい日々が多いです。まだ紅葉も完全ではないですが、今回はブラウン大学キャンパスの秋の風景をお届けしようと思います。最近の写真は私のしょぼいスマホカメラで品質が悪かったので、今回はちゃんと以前使っていたデジカメを持参して撮影してきました。
上画像:ブラウン大学キャンパス地図に、以下の写真の場所と昼食を買いに行く Subway の店の場所を示したもの。
最初の図はブラウン大学の主キャンパスの地図で、そこに、以下の写真を写した地点を1から3の数字と矢印で示しました。あと、今は妻が弁当を作る時間がないので、お昼のサンドイッチを買いに行くSubwayの店の場所も書いておきました。ブラウン大学は、このプロビデンス市の東側だけでなく、宝石地区という南西の方向にも医学を中心とした拠点があります。
さて、それら3つの写真の説明に移りますが、私は下町のバスターミナル(地図よりも左の方)から坂を上って歩いて出勤するので、それらは全てその途中の光景です。
上画像:ブラウン大学の秋の風景1:正門の向こうにRockfeller図書館が見えます。
1番目の写真は、ちょうどブラウンの芝生に入って右に振り返ると見える、正門Van Wickle Gatesがロックフェラー図書館を背にして見えます。この門の中央の扉は、入学式に内側に向けて、卒業式に外側に向けて、年に2度しか開かないもので、東大などもそういう伝統を継承しているはずですね。ロックフェラー図書館は、文科系を中心とするもので、科学図書館は別にあります。木々の葉がちょうど3段階の色に混ざって見えています。
上画像:ブラウン大学の秋の風景2:私のオフィスがあるLincoln Field Buildingが左に見えます。
2番目の写真は、私のオフィスが3階にあるリンカーンフィールドビルとその前の小道に立つ木々の紅葉の様子です。この小道は、娘たちがまだ小さいころに近くに住んでいたので、しばしば職場に連れてきて一緒に歩いた思い出深い場所です。ビルの前の芝生には騎乗戦士の銅像もあり、学生たちが小春日和には遊んだり、くつろいだり、勉強したりしている場所です。野外授業をしている教官もたまにいました。
上画像:ブラウン大学の秋の風景3:私の実験室があるMacMillan Hallを背にしたThayer通りにサンドイッチ屋の車が見えます。
3番目の写真は、その芝生からThayerどおりに出て、私の実験室が3階にあるマックミランホールを眺めたところです。実はこの時は、Subwayでお昼のサンドイッチを買ってオフィスに持っていて食べようとしている途中に撮影したもので、Food Truckと呼ばれる、車でサンドイッチを売りに来ている別の店も見えますね。ここでも、緑から黄色そして赤色といろんな色の調和が見られます。
自然界で、空が青色なのは、光のレイリー散乱で直進光がより赤くなり、その他の散乱光がより青くなるからですし、木々の葉が緑で紅葉が黄色や赤色なのは、その色素の変化の故ですし、土が茶色っぽいのは、第二酸化鉄を含む粘土鉱物などのせいだと思います。それらの物質の反射スペクトルの特徴がある波長帯と、人間の目に見える光(可視光)の波長帯とが一致すべきという原因は科学では解明されていませんが、偶然とは思えないほど、青・緑・赤(茶)の色が調和よく見えるようになっています。地球が火星や金星のような色にしか見えない可能性もあったのに、よく出来ていると思いませんか? 私は決して偶然ではないと思いますね。
上画像:RELABの双方向反射スペクトル測定装置を入射角70度・出射角0度の設定にした状態。
最後に、私が先週から測定している試料のための双方向反射スペクトル装置の今の設定の写真をお見せします。この試料はいろんな角度で測定してその反射スペクトルの変化を調べる(測光)の研究目的もあるので、標準試料であるスペクトラロンを真ん中にして、4つの明るい試料を載せた回転・移動台に、70度の角度で光を当て、0度の角度で(垂直に)反射光を測定しています。入射の方はこの角度がほぼ限界ですね。
これからの2週間は、これら測定と、日本出張の準備のために大忙しです。