LPSC 2017 - March 23 (/21) - 25

 

米国ブラウン大学地球・環境・惑星科学 上席研究員 廣井孝弘
 

Vol, 15. 2017/03/25 AM 10:48 日本時間

会場では、金丸君は千葉工大のグループと昼食に行けたようで、私は速報を書いてから、12時半の最終シャトルでホテルに帰ることにし、同様に Super 8 に泊まられている環境研の荒井さんと一緒になりました。はやぶさ2の TIR を世話しておられた方です。

今日は雷が鳴るというし、お昼買いに行くの大丈夫かなあと思いながらも、結局、HEB というスーパーに行って、帰りに Subway でサンドイッチを買って、ゆっくり2時くらいに帰ってきても大丈夫でした。

Super 8 の駐車場に着くと、ちょうど車で帰ってこられた宇宙研の岩田さんと春山さんがいたので、四人で今回の LPSC を振り返った話題に花が咲きました。

上の階に行く私と春山さんは、階段の踊り場の近くでさらに立ち話をし、かぐや・はやぶさといった初期ミッションが始まった当時のことを振り返りながら、研究者の人材は改善したのだろうかというような話をしました。なかなか、少数精鋭でやってきたころから増えてきたとはいえ、本当に欧米並みのレベルの研究者は何人日本にいるのでしょうか?

あと、今回の LPSC では、審査員の資質が問われます。大した内容でないのに口頭発表を得られ、座長までしている人が目立ちましたし、良い研究なのにポスターに回されているものもありました。1999年の私と佐々木晶さんの LPSC アブストラクト拒絶事件は強烈ですが、そこまでいかなくても、「天下の NASA よ何をしてるの?」と問わざるを得ません。もちろん、審査員は大学の研究者も多いですから、NASA 研究費をもらっている人たちを含むアメリカの惑星科学研究集団の資質です。

来年からは、公正で高レベルで誇れる LPSC に戻ってほしいものです。

明日は5時前の早朝に Super Shuttle が来て空港に向かいます。
今回、 LPSC 速報掲載のウェブサイトを閲覧くださり本当にありがとうございました。来年も同じように情報発信出来たらと思います。
 

Vol, 14. 2017/03/25 AM 02:19 日本時間

速報を書いていたら、次の宇宙風化の発表に遅れてしまい、更にロビーで Wu さんに私の炭素質コンドライトのスペクトルに関して質問を受けたので、Jeff Gillis-Davis の CV にレーザーを当てた発表の最後しか聞けませんでした。
でも、厚かましくコメントさせてもらい、Allende は水を含まない特別な CV なので、他の CV とは区別して考えるべきではと言っておきました。

最後は Thompson 氏の発表で、我々と同じくマーチソンにレーザーを当ててできたものと、そこからの蒸気がガラススライドに堆積したものの解析です。ナノ微小鉱物が見つかり、トロイライト・マグネタイトといった硫化鉄、そしてペントランダイトといった鉄・硫黄・ニッケル鉱物が見つかったという事です。図を見たら、ガラススライドに最初に S と Fe が堆積し、その後は Fe で、イトカワ粒子や普通コンドライトのレーザー実験と整合的だと分かりました。その質問をしていた人がいましたが、発表者がちゃんと答えていなかったので、私が質問者に説明しました。

これで LPSC の全日程は終了です。さて、今からどうするか問題ですが。
 

Vol, 13. 2017/03/25 AM 01:19 日本時間

今日はとうとう最終日の金曜日で、セッションは午前中で終わりです。

ところで、昨日私が出したポスターは以下のリンクで見られます。
” http://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2017/eposter/1086.pdf ”

最近はこういう E-Poster が流行っていて、便利になりました。これは、はやぶさ2のランデブーの時に大いに役立つと自負しています:)
 

今朝はいつもの様に 7:30 のシャトルで金丸君と一緒に来ましたが、水曜日の映画があった日はシャトルに乗り遅れて大変だったそうです。映画を半分見れたそうですが。そういえば一緒に今回写真撮ってないよね、ということで、宇宙研の岡田達明さんを捕まえて取ってもらいました。
 

画像 : 筆者と金丸君。
 

さて、今朝は最初に一番端の部屋で小天体のセッションがあったので、前半はずっとそこにいました。座長はいつも常連と思えるような Andy Rivkin と Faith Vilas でした。

8:30 からは OSIRIS-REx(O-REx)のプロジェクト主研究者である Dante Lauretta がミッションの概要を話しました。小惑星 101955 ベンヌには2018年8月から2021年3月までランデブーしている予定のようです。

次は Hergenrother 氏が、O-REx が太陽と地球のラグランジュ点 L4 でトロヤ群小惑星(木星のでなくて地球の)を探した結果を発表しました。計算では、300 m 以上のものは数百個あってもいいそうですが、結論としては見つからず、あまり大々的に探せなかった理由もあり、仕方がないかと思いました。

9:00 からは Patrick Taylor 氏が、5143 Heracles のライトカーブとレーダー観測からそれが二重小惑星であることを見つけた発表でした。ただ、スペクトルは Q 型で普通コンドライトで出来ているはずなのに、比重が1暗いというのはおかしいという指摘を、Allan Hildebrandt がしていました。もっともなことです。

次は David Polishook というイスラエルの研究者で、私が MIT にセミナーに行ったときに訪問中であった人ですが、小惑星の早い自転による分離の研究発表をしていました。傾斜角の影響で、比較的遅い自転でも分離が起こるという話だったと思いますが、ちょっと英語のなまりと構成のために十分に理解できませんでした。

9:30 からは Faith Vilas が紫外観測で C 型小惑星群の、特に 0.7 ミクロン吸収帯を持つ Ch と紫外スペクトルとの関係を調べたもので、特に相関はないという結果でした。宇宙風化で出来るナノ微小鉄のことを話していたので、私は質問・コメントとして、炭素質コンドライトの宇宙風化の最初の過程は脱水だと思うので、含水鉱物の赤いスペクトルが壊れて青くなる効果が最初で、紫外もおそらく影響されていると話しました。Paul Lucey も Hapke の宇宙風化モデルのことでコメント指定ましたが、ちょっと的を得ていないようでした。

次は Any Rivkin で、大きな主ベルト帯小惑星のうちの 3 ミクロン吸収帯の Tair による三つの分類(ケレス、パラス、テミス型)と他の特性との比較を発表し、パラス型は 0.7 ミクロン吸収と相関があり、CM コンドライトに整合的である、ケレス型は、吸収中心が 3.05 と 3.12 ミクロンの二か所にクラスターしてグループが分かれているかも、そして、パラスのハッブル望遠鏡か何かによる高分解の画像を見せて、明るいところは風化した場所、暗いところは新鮮な場所といって宇宙風化のことを話しました。それで、私はコメントして、私や松岡さんの CM やタギシュレークとかの実験と整合的で、レーザーを使った宇宙風化実験では 3 ミクロン帯は形を変えずに浅くなり、可視―近赤外スペクトルは青くなると言いました。

10:00 になり、Giebner という女の子がベスタの Marcia クレータの地殻構造を Dawn の Framing Camera(FC)で調べたものでした。

次は Allison McGraw という学部生の女の子の発表で、Gaffey の元学生の Vishnu Reddy の学生のようです。Gaffey ら(1993)のバンド中心と吸収面積比(BAR)のプロットを使って、L コンドライトは Gefion 族から来ているかという疑問に対する回答をしていて、H コンドライト的な小惑星が含まれているので、L コンドライトが来ている証拠はないとし、Pierre Vernazza が書いた論文の H と L の混合というのには整合的としていました。

私は最初にコメントして、Gaffey のあのプロットが基づく Cloutis et al (1986) は一番細かい粒子を度外視した結果の検量線だし、Ueda et al (2001) が LPSC アブストラクトで、粒径と宇宙風化をいれたら、S(IV) という普通コンドライトに対応する領域は違う方向にずれて、たまたま相殺してそこにあるだけかもしれず、だから細かいレゴリスがあったり、宇宙風化した S 型小惑星では、S(IV) の領域はおそらく広がるのだと言っておきました。何度指摘しても皆は理解しないようですが。

ロビーに出たら、新原君と日本からの学生さんたちが歓談していました。私と金丸君は車がないので、今日の午後はどうしようかと、困っていますが...
 

画像 : ロビーにて。
 

Vol, 12. 2017/03/24 PM 13:31 日本時間

さて、会場の隣の Which Wich でツナと野菜のレタス巻きを買って半分食べ、ポスター会場に行きました。会場ではちょっとしたスナックは出ますが、飲み物はアルコール類ばかりで私は飲まないし、水しかないという状況ですね。

今回は、会場に大きな月球儀が置いてありましたが、他はいつもと同じ感じでしたね。とにかくポスターが多すぎて、他の時間に下見しない限り見切れないし、特に今日のように自分のポスターがあったら無理ですね。
 

画像 : 会場内に設置している月球義。
 

自分のポスターは放っておいて他のを観に行ってもよかったのですが、割と近くに見たいポスターもあったので、自分のを覗きながらあちこちしているうちに、割と何人も見に来ました。炭素質コンドライトの種類を、はやぶさ2搭載の多色カメラ OCT-T と近赤外分光計 NIRS3 のデータからどう見分けるかというのを主成分解析しだけですが。
 

画像 : ポスター会場の様子。
 

極地研や宇宙研のシンポに出ていない日本人研究者や、北大の橘君の学生さんや、イタリア IAS の研究者や、中国人の学生や、そして、Ed Cloutis のところの新しい技官らしい人も来ました。

斜め向かいでは、東北大の松岡さんがポスターを構えていたので、またちょっとおせっかい指導をして、その隣の炭素質コンドライトの分光らしいポスターが気になっていたのですが、発表者が来て、やはり Ed Cloutis の学生らしく、私のことをよく知っていました。それで、スペクトルの傾斜とか、吸収帯強度の定義の仕方が普通ではないので、変えてみたらという話をしました。「お会いできて非常にうれしい」と言って握手を求めるので、何か偉大な科学者になったような気分になりましたね:)ブラウン大ではまるで技官のように学生にさえ試料を測ってあげても共著にならないような扱いを受けてますが。。。

NASA JSC でお世話になった、はやぶさ仲間でもある Mike Zolensky や Faith Vilas もこちらに来て、Mike とはポスターの前で写真を撮ってもらいました。この前、NHK のコズミックフロントで Mike と一緒の写真があるか尋ねられて、なんとヒューストン時代に取ったものが一つもなかったのです。近くにいつもいると、その時の貴重さを忘れがちなものです。

だんだん終わりの9時に近づいてきたので、私は自分のポスターを外して、ブラウン大の Jim Head の奥様の Anne Cote がポスターを集めてくれている中央出口あたりに行ってお願いし、9時発のシャトルバスに急ぎました。

前から二番目の左に座っていたら、外で誰かと会話していた宇宙研の矢野さんが乗ってきて、横に座ってもらっていろいろ楽しく会話しました。内容はあまり書けないようなものですが、基本的に、はやぶさ時代の宇宙研を懐かしがるというか。半沢直樹みたいな人が必要だよねえというような雰囲気です。

ホテル Super 8 に戻って来たのですが、フロントから電話があり、熱いお湯がちゃんと出る部屋が開いたから、移れるかというので、じゃあという事で、隣のビルの三階の部屋に移りました。散々苦労して荷物をかたずけて移動したのですが、何とシャワーを浴び始めたら、風呂場のお湯は暑くならないし、バスタブのそこのふたもない。顔を洗ったりする流しの方のお湯は集めなのに、全く騙されました。ベッドが小さくなっただけ損でした。おまけに隣がうるさいし、以前は喫煙室であったらしいようなにおいがする!やっぱり人が言うことを鵜?みにしてはいけないです。。。

更に、翻訳のバイトが入ってしまったので、忙しくなりそうです。50 ページという長大なものだし。貧乏科学者は楽でないです。明日は午前中だけのセッションだし、帰りのシャトルバスは 12:00 と 12:30 しかないので、おとなしく帰ってホテルで翻訳のバイトをするか、誰かに誘ってもらってお昼に行くか、とにかく、ヒューストンで環境にやさしく生きるのは難しいです。
 

Vol, 11. 2017/03/24 AM 07:44 日本時間

さて、はやぶさ2科学会議は、予想していた通り、小さな部屋で座りきれるかどうかわからないような 40 人くらいの人数の日本・韓国・欧米の科学者が参加して、1時間20分くらいかかりました。もちろん詳細は公開できませんが、国内外の科学者たちがどんどん真剣さと関心を増してきているのがわかります。

その後はすぐに第五会場に行こうとロビーのコーヒーを収穫していると、カナダの Allan Hildebrandt が挨拶してきて、私は、「NHK のチームが Tagish Lake 隕石のことで取材に行ったでしょう。あなたは日本で有名になるよ。」という話や、D 型小惑星の多様性の話をちょっとしました。

その後急いで、地球型惑星のセッションを聞きに行きました。1:30 からは Laura Schaefer 氏による、マグマ大洋における酸素三価イオンの量の推移を圧力毎に追って、特に核とマントル境界の圧力 120 GPa での状態を調べたようですが、私も素人で、何が論点なのかわかりませんでした。すみません。

次は Steve Desch 氏が、地球の重水素と普通の水素の比 D/H の問題を指摘し、地球ができた直ぐでまだ溶岩があった時に、D/H 比が低い太陽系星雲(Solar nebula)のガスと相互作用したらうまく説明できるのではという話をしていました。

2:00 からの Hakim 氏は、系外惑星のうちで中心星が C を多く持つもの、特に火星くらいの大きさの Kepler-102b に触れて、炭素が多くても核―マントル境界での鉱物組成はあまり変わらないかもしれないが、酸素分圧が変わり、グラファイトが安定して存在するという結果でした。

この辺でとにかくガンガン効いている冷房で耐えられなくなり、体を温めにロビーに出てきました。

ポスターの下見に行くと、ブラウン大で測光をやっている中国の訪問学生がいたので、測定の話をしていたら、Chang'E3 の発表をした Wu 氏が割り込んできたので、私が質問した、スペクトル傾きの定義の説明をしました。用語の使い方の問題だけなので、わかってくれたと思いますが。

学生の話が長引いたので、月のセッションの二番目の発表に急いでいきました。

3:30 からは有名なハワイ大の Jeff Taylor が月の粒粒の各礫岩 67955, 79215, 67955 といった試料のグループの発表をし、地殻とマントルの混合物質だろうかというような話をしました。

次は座長のひとりの Rachel Klima でしたが、彼女は博士論文で合成の輝石の組成と吸収帯の関係を修正ガウス関数(MGM)分解でやったので輝石が好きで、今回も低 Ca 輝石がカンラン石が多い場所に近く出ている場所の話をしましたが、今一論点がつかめませんでした。

次はやはりハワイ大でモデル手腕で知られた Paul Lucey で、やはりいつもさすがで、かぐや Multiband Imager(MI)の巣バンドスペクトルデータと、既知の鉱物スペクトルにHapkeの風化も入れたモデルスペクトルを、鉄含有量が似ている者同士で対応を取り、9 万個以上のスペクトルの主要鉱物量を決めてマップにしていました。その結果を DEVINER の赤外輻射による長石の検出も加味して、やはりカンラン石が多いところには斜長石もあり、橄欖岩でなく Troctolite 的であるという事でした。裏側の高地の輝石が斜方輝石であるという事を含めて考えると、カンラン石と長石は機械的に混ざったのではと結論していたように思います。

この辺でとても眠くて、自分の専門でありながら、ちょっと注意力に欠けていたと思います。次の Noah Petro の話などは、ブラウン大で最近博士号を取った Dan Moriarty が見つけた SPACA という SPA(South Pole Aitken)盆地の Mg が多い場所にある低 Ca 輝石が多い異常な組成の部分の説明以外は、何がポイントかわかりませんでした。というか、Rachel と Noah は座長をしているのに、その発表の質は平均以下だと思いました。

4:30 からは平林君という人が SPA にブーゲー異常性があるというのを、空隙が多い 8 km くらいの層があるというモデルで説明していましたが、やはりなかなかついていけませんでした。

最後はこれまた有名な Jolliff 氏が、MoonRise という SPA 試料回収ミッションに関連して何故試料を SPA から持ってくる必要があるかを説明していました。SPA 盆地の年代を測ることで、巨大衝突の歴史や、月の内部組成や熱史、また 42 から 35.6 億年前にあったかもしれないと言われるダイナモ(磁場を作るコアでの液体荷電金属の流れ)の証拠などを試料から見いだせるかもという話でした。900 g 以上の、ふるいにかけて取った岩片を多く持ってくるそうです。面白そうです。

という事で、既に 5:45 になってしまいましたが、今から急いで食べ物を買ってきて、ポスターセッションに行かねば。
 

画像:廣井さんお気に入りの「Which Wich?」。
 

Vol, 10. 2017/03/24 AM 01:50 日本時間

第四日の今日は木曜日で、またポスターセッションがある長い一日です。昨晩は、11時半頃に寝たのですが、やはり5時半頃目が覚めてしまい、また寝不足です。

さて午前中の最初のセッションは衝突のところに行きました。
8:30 からはブラウン大の Pete Schultz の学生の Terik Daly による発表で、小さいクレーターにおける斜め衝突において、ぶつかって来た Projectile が残るかどうかを実験で調べたものです。以前にも出てきた、NASA Ames センターの AVGR という衝突施設を使って、Projectile と Target と角度と速度という四つを変えながら研究したものです。結果としては、ぶつかって来た元の方向(Downrange)のクレタ―の壁に、溶けていない Projectile が残るというものでした。もちろん、Target との混合もありますが。それが毎秒 6.7 キロメートルという高速衝突でも見られます。角度は水平から 30 度や 45 度とかでやっていたようです。それを活用すれば、彗星の塵をラケットで集めたスターダスト計画でも、塵を斜めの低い角度で当たらせて集めるようにすれば、溶けない塵試料が少量でも獲得できていたのではという事です。

次に 8:45 からは Robert Herrik 氏の発表でしたが、月・火星・水星の非常に斜めな衝突クレーターを比較した研究で、Projectile の進行方向(Downrange)には溶融層があるとか、三つの天体では大体似ているが、涙滴の形のクレータは火星にしかないというような話でした。ただ、あまりまとまりも深い解析もないなあと感じてしまいました。MessierとMessier A のペアのクレーターの斜め衝突の向きがちょっとずれているのが不思議だと言っていましたが、Pete Schultz がそれは以前にちゃんと解析して何の問題もないと鋭い指摘をしていました。

そのあと、次に聞きたい発表まで 45 分くらいあったので、ポスターの下見に行きました。スロット #19 に貼ってある博物館の新原君のポスターは、アポロ16号の衝突溶融物質の元素組成を主成分解析(PCA)し、九つの元素のデータがあれば分類には十分だという結果でした。ちょっと離れたところに新原君がいたので、これがリモセンで出来たらいいよね、という話をしていました。

#53 には Landsman 氏の小惑星 (16)Psyche の赤外放射スペクトルの解析があり、細粒のケイ酸塩があるらしいという事でした。まあ隕鉄にはケイ酸塩包有物がありますから、驚くことではないですね。ただ宇宙風化を受けているとは思いますが。赤外だから影響は小さいか。

#65 には Mike Izawa のポスターがあり、200 nm までの紫外反射スペクトルを HED 隕石について測定していて、とても高品質のスペクトルなので驚きました。そうしたら、本人が声をかけてきて、何と今はカナダの Ed Cloutis のところでなく、三朝に五年間の研究職で日本に行っているとのことでした。結婚して子供もいるし、職があってよかったですね。日系三世だから、そういう運命だったのか。奥さんはギリシャ人のようですが。いつか私も三朝の研究所行ってみたいです。地震で大変だったようですが。

さて、Mike と話しているうちに時間になったので、今度は水星のセッションに行き、9:45 からの NoamIzenberg の発表を聞きました。MESSENGER 探査機に乗った機器のデータをつなげたり公開するという話でした。MUV で 210-300 nm という紫外領域、そして VIRS で 300-1450 nm という近紫外から近赤外を測定してあり、輝線スペクトルのための 121 nm と 130 nm の測定があるので、それらをつなげてまとめるという事です。惑星データシステムの最新版 PDS4 で利用できるようになるそうです。

15 分空いて、同じ部屋で次のセッションがあるので、ちょっとロビーに行くと、東北大の松岡萌さんにあったので、Mike Izawa のポスターの話をしました。紫外は、200 nm くらいまでなら、阪大の佐々木晶さんのところで測定できるので、今後はそれもやるべきかもしれません。

10:15 からは Stein Jacobsen 氏が、月の生成に関して K 同位体は普通のマントルを飛ばしただけの衝突でなく、何かより高エネルギーの現象が必要だという話をしていました。その詳細がよくわかりませんでしたが、Pb の放射性同位体や、Sr, Nd, Pb のことや、揮発性元素の Progressive enrichment とかが、ケイ酸塩鉱物の全体組成が堆積したと考えただけではだめで、地球にぶつかって来た衝突体がある特別な組成を持っていたと考えたらよいとか言っていたように思います。

次の Thorsten Kleine 氏の発表も同じようなテーマで、地球と月の同位体組成の類似性の解釈の話でした。Hf182 が W182 に放射崩壊するのを利用して、月の KREEP(カリウム(K), 希土類元素(REE),リン(P)、ウラン(U), トリウム(Th) 等の特殊な微量元素のこと。不適合元素ともいう。)試料を調べた研究で、W の含有量が巨大衝突で均一化するのは難しくて、後の大きな衝突が必要だと言っていたと思います。

今日はこれから、お昼の時間に、はやぶさ2国際合同科学会議があるので、軽くお昼を済ませて参加です。写真は会場の外景です。
 

画像:はやぶさ2国際合同科学会議が行われる会場付近。
 

Vol, 09. 2017/03/23 AM 09:47 日本時間

午前中頑張りすぎて、そして速報を書き終えたらすでに PM 2時近かったので、ロビーでコーヒーを調達していると、東大鉱物武田研の後輩たち、三河内君・荒井さん・小松さんと、木多紀子さんが集まっていろんな会話をしていたので、そこに仲間入りしてしまいました。
 

画像:コーヒーブレイク中の千葉工大荒井朋子さんたち。
 

先ほどのセッションでは三河内君が何十年もやっているアングライトの話が出たから速報に名前を出しておいたよと言っておきました。何しろ隕石の数が少ないので研究がなかなか進まないのはしょうがないですね。

それと、木多さんがコメントしていた CM コンドライトの加熱実験の話にも言及し、まあいろいろ説明はできるけれども、母天体の組成と数と場所などの定量的な知識から系統的なストーリーができるべきだという事を私は話しました。もちろん、私がやれるというわけではないですが。

コンドリュールとコンドライト母天体がどこでどのようにできたのか、そして今どこにあるのか、そういうことが最近の Nice model や Grand Tac 理論のような大きなスケールの太陽系星雲から現在までの歴史の流れの中で位置づけられないといけないですね。

その後、いろんな会場のプログラムを見ましたが、特にどうしても聞くべき口頭発表が見当たらなかったので、明日のポスターで既に貼ってあるものを観に行こうと思いました。

その前に、プログラムで見当をつけておかないとあまりに広い会場なので、奥の丸テーブルに座ってノートパソコンで PDF ファイルをスキャンして 25 個程度を選びました。そしたら、同じテーブルに吉川先生が居られたので、MMX が知らないところでどんどん話が進んでしまっているようだけどという会話をしました。岩田さんのポスターを見ても、NIRS3 の次に当たるような近赤外分光器は ESA の Omega を載せるようですし、うーん、日本は国産技術で分光器くらいは開発して欲しいのになあ、と落胆するような気持でした。

明日のポスターは小惑星探査に関するものも多くあり、非常に楽しみです。またきつい一日になるとは思いますが。。。

今日は本当は Hidden Figures という NASA の宇宙開発で陰で活躍した女性たちの話の映画に先着 150 名とかが招待される催しがあるのですが、足がないのであきらめておとなしくホテルに帰り、スーパーに食料を買いに行って、夕食を食べ、シャワーを浴びて、これを書いています。今日はゆっくり休まねば。
 

Vol, 08. 2017/03/23 AM 03:48 日本時間

さて、水曜日の今日は LPSC 第3日です。

昨日はポスターセッションがあったので、皆疲れて帰ったと思いますが、私も寝不足ながら、今朝の隕石母天体のセッションが8時半からあるので見逃せません。

今日はずっとそのセッションにいたので、ガンガン聞いた冷房のおかげで寒気がしてきたくらいです。あと、昨日ポスターセッションで試料を渡し損ねた Mike Lucas とも個々のセッションで会うことにしてあるので、いないといけません。

このセッションは分化した隕石の母天体がテーマなので、基本的にコンドライト隕石の話は出ませんが、材料物質としての炭素質コンドライトや、大きなスケールの話として一部ではそれも出てきます。

セッションの座長はスミソニアンの Tim McCoy とカナダのアルベルタ大学の Ed Cloutis です。隕石と分光の専門家たちという感じですね。

まず最初に 8:30 から、Kiefer 氏によって、隕石母天体で如何に分化過程を起こすか、つまり、鉄を沈ませてコアを作り、上部にケイ酸塩のマントルや近くを作るかという話でした。520 ㎞ の小惑星ベスタの例での話ですが、そこから来たと考えられる HED 隕石中の金属鉄の大きさを考えると、50 ミクロン以下とかの小さな鉄粒なので、それにストークスの法則を適用して、移動速度は年間数ミクロンとかでほとんど動かないという話でした。それと、融点が低い鉄が先に溶けて液体になるので、重たいために下に沈んでしまい、1500 度C とかになってやっと溶融したケイ酸塩と硫化金属の層が上に出来て、熱源になる 26Al がケイ酸塩から出てきて液相にはいり、そのマグマ大洋のなかで金属粒が成長しながら雨のように沈降していくというシナリオです。それが、適度に親鉄な元素がユークライトにある事実に整合的と言っていました。

次は Marc Hesse 氏による、Percolation(浸出?)の時間スケールの発表で、金属鉄が溶けてからケイ酸塩とかの隙間をどう沈降していけるかという話でした。NWA 2993 というロドラナイト隕石の例を出し、傾斜角が 15 度くらいで落ち始め、半径が 50 km の母天体の場合、500 万年くらいで金属核ができるという結論でした。まあそれにはいろんな過程が含まれているし、聴衆からも鋭い指摘もありました。

9:00 からは座長の一人である Tim McCoy が、South Byon、ILD 83500、Babb's Mill といった三つのパラサイトと、Milton というパラサイトとの関係を調べ、これは外から内側に向かって結晶成長した新しいタイプの母天体の核形成を示唆しているのではという発表をしました。パラサイトというのは、石鉄で、金属鉄と主にカンラン石と少量の輝石を持つ隕石ですが、100 ミクロンという小さなクロム鉄鉱中の酸素同位体 17 の余剰値が -3.6 から 3.7 ということで異常であることと、IVB というグループの鉄隕石と関連があり、71% の鉄を参加させる必要があることから、内部からの結晶化では難しいという論理だったと思います。私は素人なので、確かな詳細はアブストラクトを読まれることをお勧めします。

9:15 からは Boesenberg 氏で、Zinder というパラサイトは輝石を含み、Ir 量が多く、Ni-Ge のグラフで他のパラサイトと違い、IIIF 鉄隕石と関係があり、結論として、この隕石は初めてのマントル試料であり、McCoy 氏と同様に下向きに結晶化したのではという発表でした。

9:30 からは Nicole Lunning 氏で、CV 炭素質コンドライトである Allende を IW+1 というやや酸化的環境で溶融させ、天体の大きさや深さの違いに応じて圧力を三種類に変えた時にどのような生成物ができるかを調べていました。結果として、高圧にしていくと、カンラン石が Mg に富むようになり、クロム鉄鉱やスピネルが Al に富むようになるそうです。

9:45 からは Santos 氏が NWA 8535 というアングライト隕石の話をしました。アングライトは東大の三河内君も長く研究している隕石種で、45 億年という古い年代と、IW+1 から 2 という酸化的な生成環境で、衝撃を受けておらず、アルカリ元素とかが乏しく、SiO2 も低いという隕石です。この NWA 8535 はアングライトとしては初めて見つかったカンラン岩で、揮発性物質や衝撃などの動的過程があったような兆しがあると言っていました。

さて、10:00 になり、Zoe(ウムラウト付きの e) Hodges 氏による、酸素同位体 17 が異常な Ibitira や PCA 82502 などの隕石の起源の話でした。そこでは、Vesta の表面に混ざってくるコンドライトとかが入っていないと考えられる HED 隕石 EET 87503 を用いて Fe/Mn の値の違いが有意であるかどうかを調べ、それが有意だと結論し、ひょっとしたら母天体の非均一性を表しているのかと言っていました。私は、単にベスタ以外の母天体で出来たと考えればいいのではと思いましたが。。。

10:15 からは Adam Sarafian 氏が地球の水の起源の話をしました。よく知られているように、重水素 D と普通の水素の比である D/H は炭素質コンドライトが一番地球の水に近いわけですが、太陽系星雲や水星の水素を混ぜればできるのではという推測もできるという推測に対し、D/H 比と 15N/14N のそのような混合は、微量にとどめないと大きくずれるというような話でした。そして、ベスタにおける水の量とかを見積もっていました。

10:30 からは Shannon Boyle 氏が、NWA 10657 と DaG 999 といった隕石中の Ca に富む斜長石岩相を 115 調べ、それらが未分類のユークライトである NWA 7325 のに似ているとか、酸素同位体のことも含め、新しい母天体を示唆していました。

10:45 からは、Cyrena Goodrich が、私も協力している Almahata Sitta 隕石の新しい 65 の試料の研究発表をしました。特に #202 という石は未分類 C2 コンドライトで、酸素同位体は CR の範囲で CM に近い値で、CI や CK とは明らかに違うこと、そして #91A という石は C1-C2 の角礫岩で、CI に似ているが、ユレイライト的な岩相も見つかったこと、そして #38 という石は異常な鉄に乏しい輝石(エンスタタイト)の隕石であるという発表でした。

11:00 になり、Max Collinet 氏が、ユレイライト母天体の発表をしました。ユレイライトは始原的隕石でないけれども炭素を含み、IW-3 までの還元的環境と 1150-1200 度C 程度の温度で生成されたという過去の研究があり、今夏の発表は、CM コンドライトを溶かしてユレイライトの生成を再現してみようという試みでした。できた輝石中の Ca 量(Wo 値)が足りない傾向があり、Mg や Si を増やしてやったりして合うようになるという発表でした。結論としては、炭素質コンドライトで最も多い CM よりも CaO が多く Al2O3 が少ない原料物質が必要という事でしたが、聴衆からいろいろ突っ込まれていました。

11:15 からは、Brendt Hyde 氏が、NWA 7680 および 6962 という二つの隕石が、アカプロコアイトやロドラナイトよりもカンラン石中のCa量が多く異常な原始的エコンドライトであり、熱変成をした炭素質コンドライトに関係あるかもという発表をしました。炭素質コンドライト母天体の内部とか、酸化鉄が多いブラチナイト母天体から来たかもというこの結論に対し、木多紀子さん他の専門家たちからかなり批判を受けていました。

11:30 になり、総研大の Yasutake 氏が Y 983119 という異常なロドラナイトの発表をしました。この種の隕石としては初めて輝石がカンラン石よりも多い隕石で、ロドラナイト母天体で堆積岩としてできたのではと言っていましたが、Tim McCoy からはそれにしては鉄が多すぎるという指摘がありました。

最後は 11:45 から、Richard Greenwood 氏の発表で、隕石の母天体はいくつあるのかという大きなテーマでした。過去に Tom Burbine が 100 個くらいとか、Hutchison が 120 こくらいという発表をしていましたが、それらをより極めて、130 個くらいという結論でした。ただ、同じ組成の母天体が多くあってもいいので、聴衆からも多くの意見が出ていました。

このセッションは時間どおりきっちり進んで素晴らしかったです。その後、Mike Lucas に無事試料を返し、今後の研究の話をし、東北大の中村智樹君のところの学生胆たちもいたので、ちょっと会話し、この速報を書いてるうちに何と 1:45 になってしまいました。もう今日は疲れてたので、ボーとして居ようかなあ:)
 

画像:Tim McCoy 氏座長による隕石母天体のセッションのプログラム。
 

 

Notes : March 24, 2017

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