ブラウン惑星人の日々 April 2014
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思えば...
皆様、春を満喫されているでしょうか。4月は日本では新学年が始まったときですから、新しい学校や職場に行かれた方も多いと思います。私は過去20年近くずっとブラウン大学に勤務していますが、給料は NASA から全て来ていて、それが更新・継続されない限り首になるという形なのに、よくそんなに長く続いたものだと思います。
さて今週は水・木・金と三日間、ブラウン大の A Day on College Hill というプログラムがあり、9月にブラウン大入学予定の高校生たちが全国・全世界から集まりました。長女の麗馨も私と一緒にバスで来て、ホストの学生が住む学生寮の二人部屋に二泊して参加しました。往復の交通費以外は、食費なども含めて全て無料でした。
上画像:私の以前のボスであるカーリー・ピータース教授と長女の麗馨
最初の写真は、到着した日に Carle Pieters のオフィスに挨拶に行った時に記念に撮影させてもらったものです。後ろに見えている本棚には、最近の Asteroids III を始めとする、アリゾナ大出版の惑星科学者必携とも言えた分厚い本がたくさん見えますね。
初回に確かお見せしたと思いますが、カーリーのところに私が1990年に最初に来たときも同様な写真をこの場所の近くの NASA データセンターで撮りましたが、24年もたった今もここにいて、娘がこの大学に入学するとは夢にも思いませんでした。人生の重要な出会いというのは自分が気づかなかったり、その時は感謝しなかったりしますが、確実に原因が結果を生み、自分の選択を超えた天の導きがあると思います。
この三日間はいろんなセミナーや会合がありましたが、私は仕事日であることもあり、学費をいつどのように払うのかという説明会だけ参加できました。以前ご紹介したように、年間約 $62000 の経費が $7000 程度まで割り引かれたのですが、それでもたいした金額なので、一学期ごとに8月1日と1月1日締め切りで払うようです。そのために、早速、この子のために貯めてきた Coverdell 教育資金をまず $4000 下ろす手配をしておきました。約 $35000 あるので、四年間は大丈夫でしょう。
大学での学費を誰がどれだけ払うかは、アメリカの場合いろんな場合があり、うちのように私の職場ブラウン大から授業料の補助があり、残りの大半が奨学金として出る場合もありますが、ローンを組まねばならない場合や、それゆえにキャンパスで働く必要がある場合もあります。そしてもちろん、Need-based financial aid(必要に応じた資金援助)なので金持ちの人は全額払わねばなりません。
上画像:帰る途中にキャンパスセンターと桜もどきの花を背景に撮った長女の写真
長女はこの二泊三日の経験にとても満足したようで、最終日の日程がお昼前に終わった後は、ホストの学生がお昼をおごってくれたようで、また同じ高校からも数人来ていて一緒に写真を撮ったりしたようです。最後は二人でキャンパスショップに行って T シャツを買い、バス停へ歩く途中に Main Green(中央の芝生)で桜もどきの見える背景とともにまた写真を撮りました。風が強い日で、まだ肌寒い春ですが、これも良い思い出となることでしょう。
あれから一年
上画像:暖かい日中に芝生でたたずむブラウン大の学生たち
皆様、日本では南から北に徐々に暖かくなって春が来て桜前線が移動するのが春ですが、アメリカではそのような情緒のある季節の移り変わりはなく、今週は暖かい日々が続くと思いきや寒い日々もあり、冬が最後の発悪をしているような週でした。暖かい日の昼間にはブラウン大学のキャンパスの芝生に繰り出して勉強したり歓談したりする学生の姿が目に付きました。最初の写真は、私のオフィスのあるリンカーンフィールドビルの前の芝生の光景です。
さて、今年も明後日はまたボストンマラソンがあります。このブログでも取り上げたのでご記憶にあるかもしれませんが、昨年はロシア移民の兄弟が爆弾テロを仕掛けて三人を殺害し、多くの人を負傷させたボストンマラソン爆破事件がありました。先週、そのゴール地点で副大統領や市長などが引導して一周年の祈念式典がありました。両足を切断したりした被害者もいて、未だにその傷跡は生々しく感じられます。
上画像:ボストンコモンに広げられた応援メッセージ
それに関連して、「Boston Strong」というモットーが生まれ、それを印刷した T シャツもあり、うちの娘たちも着ています。ボストンよ強くあれ、という感じで、音韻を踏んだ言葉です。次の写真は、ボストンコモンに広げられた全国からのボストンに対する応援メッセージを敷き詰めた物です。写真に写っているのは半分に過ぎません。右はるかかなたに高いビルが見えますが、その近くが爆弾事件の場所です。
上画像:オクラホマからのメッセージの一部
これらシートの一つを見ると、次の写真のようで、オクラホマ州のおそらく小学校の生徒たちがボストンマラソンにちなんで激励の言葉と絵を満載しています。子供たちは純粋でよいですねえ。マスコミも非常に注目して、パラボラアンテナ付の車が何十台もこのコモンに駐車してあります。
私の方は、5月10日からの日本出張の前に NASA Emerging Worlds の科研費申請を出しておかねばならず、今非常にそれで忙しいです。その一方、アルバイトとか、娘の A Day on College Hill が来週三日間あったりで、この二~三週間は非常に忙しいでしょう。健康で忙しく働けることが幸いなのですが。先日ご紹介した、歯茎の臨床試験のアルバイトは日本から帰った後ですが、もう一つ睡眠中に起こる異常現象に関するものもあり、それはこの一番忙しい期間にあります。三回行って $300 くれるので、非常に良いバイトです。
地質学科では、月の揮発成分である C, H, S などの分配を研究している Diane Wetzel が先日博士号を取得しました。月の火山ガラス中に水を見つけた Alberto Saal が最後の指導教官でした。八月からは LPSC の会場の近くの石油会社に就職するそうです。きっと私の二~三倍の給料をもらえるでしょう。
次回か次々回には、春の花が咲いたキャンパスの光景を写真でお届けできると良いですね。
春から夏にかけての帰国日程報告
上画像:チャールズ川の向こうに見えるボストン科学博物館の2つの白いドーム
皆さん、ボストンもやっと春が来たようです。先日、MIT の近くにある Forsyth Institute という歯科医院に、歯茎の治療の薬のための臨床試験の被検体としてのボランティアに行ってきましたが、歩く途中で渡ったチャールズ川はすっかり氷が溶けて水が流れているのが見えました。最初の写真を見ると、川表をずっとたどった向こうに白いドームが二つ見えますが、そこはボストンの科学博物館で、おそらく一つが天体望遠鏡でもう一つがプラネタリウムだと思います。
上画像:チャールズ川を渡る橋から見た州会議事堂とビーコンヒル
幸い私の歯も歯茎もまあ健康的で、それでもちょっと赤みや腫れがありがちなので、臨床試験の対象者として合格しました。ある一定期間、合計 7 回行って、$350 くれるそうです。仕事の時間を削って一回 $50 は安いですが、まあ研究に貢献できますし、有給休暇はあるので悪くはないですね。5月と7月に日本に二週間以上ずつ行くので、かなりそのスケジュールを立てるのに手こずりましたが、何とかなりました。雨が降る日で、帰りに橋の上から我が家のあるビーコンヒルを眺めると、実際に丘になっているのですね。写真にあるように、金色の州会議事堂の周りに立ち並ぶ古い建物群が丘を覆っています。
上画像:メイングリーンで準備中の春祭り的催し物の巨大遊戯建造物と綿飴を食べる男女
さて一方、次の写真にあるように、陽気がよいので恒例のようにブラウン大学のメイングリーン(中央の芝生)では何やら巨大に膨らませた遊戯建造物みたいなものが立てられて、綿飴などが出されていました。フェンスで囲われ始めていたので、きっと入場料をとる催しの準備でしょう。ブラウン大ではいろんな層の人々にキャンパスでの催し物が多いです。学生寮に住む若者たちにとって、キャンパスは自分の庭のようなものですから。
上画像:ボストンシンフォニーホールで聖歌隊と共にチェロを演奏する長女の麗馨さん
さて、土曜日になってゆっくり朝寝している私がいる一方で、妻は長女のチェロ演奏を聞きに朝早くシンフォニーホールに出かけていきました。ボストンラテン高校の聖歌隊と、フィルハーモニーオーケストラの内の 4 名の楽器奏者たちが歌を披露しました。チェロが一人しかいないので、きっと緊張しただろうと思いますが、既にブラウン大学には受かっているし、あとはちゃんと高校を卒業できれば大丈夫ですね。お金の心配は親がしてくれるし。。。
といった日常茶飯事のことだけでなく、セミナーのこともちょっと触れたいと思います。
私はバスの時間の都合上最後まで聞けないのですが、木曜日の夕方4時から5時まで地質学科は Colloquium というセミナーを毎週していて、先週は炭素の循環の話でした。地球で人間が化石エネルギーを使用して二酸化炭素を生産しても、それが行く先は、地中・海中・空気中と三分されていて、長期にわたって見た時に大気中の CO2 とかが増えるかどうかは微妙な話であるとのことです。それに、昔から存在していた動物たちの糞とかから CH3 とか出てきていたでしょうし、微生物もいるし、人間の活動による影響は私は小さいと考えています。でも、他のガスも含めて汚染物質は減らしたほうがよいのはもちろんです。とにかく科学者は政治家を扇動したり逆に抑圧されないように気をつけないと。
あと、Facebook でも投稿しましたが、5月に日本に帰国するまで一ヶ月になりましたので、今の予定をお知らせします。
5月11日 成田着
12日 立川の極地研で隕石選び
13日 仙台の東北大で赤外反射測定
14-16日 水沢の天文台でも可視・近赤外反射測定
17日 午後に神奈川で講演会などの可能性
18日 各務原に帰省
19日 岐阜高専で講演
20日 和歌山大学でセミナーなど
21日 芦屋での兵庫フォーラムで講演
22日 大阪能率協会での講演
23日 再び立川の極地研へ
24日 御茶ノ水の日大でライトカーブ研究会で招待講演
25日 成田発
まだ最終決定されていない部分もありますが、概ねこのとおりだと思います。場所と時間が合う方は、ぜひお声をおかけください。一般には公開されていない会もありますので、詳細は個別にお知らせします。神奈川と和歌山の詳細についても決まり次第お知らせします。
行雲流水の如くあれ
皆様、日本は桜が各地で見られてよいですね。こちらも今週は暖かめになりますが、日本のような豪快な桜はあまりないです。桜もどき、はありますが。いずれ写真にしてご紹介します。
さて、長女がブラウン大学に合格して一週間になりますが、その間にブラウン大から「A Day on College Hill」の案内が来ました。以下のサイトに全てのプログラムが PDF ファイルで載っています。
http://www.brown.edu/admission/.../uploads/Parent%20Program.pdf
上画像:郵便で送られてきた、ブラウン大学の A Day on College Hill への招待状
これは、二泊二日で娘が寮に泊まっていろいろな大学生活の体験をでき、親もいろんなイベントに参加できるというもので、交通費以外は全て無料です。次に示したのは、親への招待状のスキャンです。私も仕事を少々抜けさせてもらって、幾つかに参加しようと思っています。これだけの投資をすることからも、ブラウン大学が如何に人的・金銭的資産を持っているかがうかがい知れます。
こういう良い知らせばかりなら良いのですが、いつもながら、大学教員の公募では悪い知らせばかりです。北大の教授公募では、約束どおり、すばやく倉本さんから「遺憾ながら…」の返事が来ましたし、東大の惑星探査をする教授公募では、もう4月に入っているのに杉浦先生からは何の知らせもありません。きっとすんなり落ちたか、またいつかの時みたいに誰も選考で通らなかったので公募が流れたのでしょう。
東大や神戸大などで公募が流れるというのはどういうことなのか考えてみました。公募を出したのだから、誰かを選ぶべきで、応募した側も大学側もそれを望んでいるはずです。それがなぜ起こらないかの理由の可能性を書き上げると、
1.応募者の誰も資格がなかった。
2.選考委員会で意見がまとまらず、人選されなかった。
3.選考委員会で多数支持された人選を誰かがつぶした。
1 の場合はまずありえないと思います。なぜかというと、それならばそういう通知を出しても良いですし、私が出した履歴の内容を考えると、皆が私かそれ以上の履歴であれば、資格の点でだめということはありえません。
2 の場合はおそらく、その人事に一番影響力を持っている人と他の選考委員との意見が真っ向から対立した場合でしょう。あとは、1 に似ていて、ある教授が自分の下に助教授を取りたいのだけれど、自分がとりたい人が外部から受けた人と比べて資格が劣っているとかです。
3 も良くあると思います。少なくとも、私は以前に書いたように一度以上経験があります。だから私は大学の人事は基本的に信用しません。ピリオドです。ではなぜ公募に出し続けるのかですが、私の業績を宣伝したいことと、私を落とすならば、それに見合う以上の人を採らないといけませんよという警鐘であり、もし不正な人事選考をするならば、ご自分の良心の声を犠牲にしてやってくださいというメッセージです。きっといやな奴だとか、無駄なことをしていると思われているかもしれませんが、一度きりの人生、納得した生き方をしないと。
あと、昨年度に応募した、新学術領域への公募は落ちてしまいました。そして、私が外来研究員になっている極地研では、今年度以降、外来研究員は科研費に応募できないことになったので、現在のあと3年残っているのが切れたら終わりですね。日本にもあまり来れなくなるでしょう。なぜこんなに日本の惑星探査に貢献していると思うのに、私を締め出そうとするのでしょうか。そういう意図がないのかも知れませんが、私からそのように解釈されるのが分からないはずがありません。
とにかく、もし私に日本に対する恨みがあるのならば、娘を通してそれを晴らしていくことにします。復讐するとか言うのではありません。成し得なかった夢を果たすということです。私を迫害した人たちに、「あなた方は私を追い出して米国に行くしかなくしましたが、心ある研究者たちに助けられて生き延び、とうとう娘が一流大学に入るまでになりました。皆様がしたことを、一般の日本国民が知って、何故あのように優秀な人材を NASA やアメリカ国民に供する立場に追いやったのか、日本の大学は何をしてきたのかと思うようになるでしょう」と言いたいのです。
今回の理研での捏造事件も非常に心が痛みます。東大でも同じだと思います。まともな研究も教育もしない教授を1人首にすれば、若く優秀な人が二人は取れ、かつ汚職も減ります。一所に長く安住しすぎているのが不正人事の原因のひとつになっているはずです。東大から改革していかなければ他の大学は習うべき見本がなくなります。ただでさえ東大に優秀な人材を採られているのに、地方大学だけ任期制にするわけにはいきませんから。