ブラウン惑星人の日々 April 2015
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今年もボストンマラソン
上画像:パトリオット・デーにボストンマラソンに参加する走者たちがバスに乗って出発点に移動しようとするところ
どうやら私がここに何か書くと、その直後に逆の現象が起こることがあるらしく、前回、春が来たと書いたら今週はうって変わって冬が再来したような寒さがちょっと続きました。この1週間は、学校は休みで、月曜日のパトリオット・デーにはまたボストンマラソンがあり、写真のように、私が通勤で通るボストン・コモンの一角では、テントが並び、参加する走者たちがスクールバスで出発点まで移動しようと準備している様子が見えます。この日は午後から雨で、皆どのように走ったのか興味深いところです。
上画像:学校の休みにブラウン大を訪問した次女とその友人
また、次女とその友達は、来年の進学を見据えて、いろんな大学のキャンパスを訪問してきて、金曜日には私のブラウン大学にも一緒に行きました。次の写真は、ブラウン大の正門で写したもので、以前にも説明しましたが、この門は入学式と卒業式の時しか開けられないものです。長女ほどSATの成績がよくない次女がブラウン大に入れるかどうかは、神のみぞ知るというところでしょうか。
ところで、木曜4時のコロキュームでは、以下のように、コーネル大学からのケイティー・ケラーネンという女性による、2008年以降オクラホマで頻発している地震の原因の話でした。アメリカの東部というのは、古く安定した地殻なので、地震は火山でもない限り起こらないはずですが、オクラホマ州では過去7年くらいマグニチュード3以上の地震が指数関数的に激増しているようです。
Colloquium
Thursday, 4:00-5:00pm, MacMillan, room 115
Katie Keranen, Cornell University
Triggered seismicity in Oklahoma: Probing fluid flow, fault zone structure, and fault interactions
これは、以下の記事にもありますが、地下から石油や天然ガスを採掘する際に発生する汚水を地下の吸水性のある層に捨てるのですが、その蓄積によっておこった人工的な地震ではないかという結論になりつつあるようです。
http://news.yahoo.com/seismic-shift... ...
実際、以下の米国の地質調査所の記事によると、過去40年ほどの間のアメリカ中東部の統計によると、マグニチュード3以上の地震は2008年くらいまではほぼ一定の発生率で来たわけですが、その後7年のうちに、それまでの35年くらいの合計数以上を記録しています。そのような5倍ともいえる発生率は異常と言えて、その地震による建物の被害などもあります。オクラホマだけでなく、普通は地震などあまり起こらない場所がそうなると、建造物がどれだけ耐えられるのか未知数で怖いですね。
http://earthquake.usgs.gov/research/induced/
日本の得意技術として知られる大量輸送公共交通機関や省エネ以外にも、耐震構造もアメリカの将来において役立つかもしれないですね。ネパールの地震のニュースも最近入ってきましたが、やはり丈夫かつ費用効率がよい家屋は必要ですね。
さて今週は木曜日にはブラウンでの仕事を休んで他の大学の研究室に出張します。バスでボストンから3時間くらいかかるところです。その話は来週書きますので、お楽しみに。
帰国三週間前の春うらら
上画像:春の陽気を楽しむブラウン大学の学生たち(上)とボストンコモンの人々(下)
春は意外と突然来るもので、先週の日曜日くらいから、いろんな日陰に残っていた汚れた雪は消え、日中の気温が 60度F を超すような暖かい日々が続くようになりました。さすがに風が強い日の朝晩は冷えますが、若者たちは半袖でいる人もいますね。まだまだ花が咲き乱れる季節ではないですが、最初の写真のように、ブラウン大学でも学生たちがキャンパスに繰り出し、ボストンコモンでは週末に家族連れが憩いの時を持っています。
上画像:ボストンマラソン爆破事件の容疑者Dzhokhar Tsarnaevの有罪判決と、事件の2周忌を迎えた人々の様子の記事
そんな時ですが、2年前におこったボストンマラソン爆破事件の裁判と今回のマラソンを控えて人々や市は緊張感を持っているようです。次の写真のように、無料新聞 Metro でも、一面に Dzhokhar Tsarnaev の有罪判決の記事の紹介をし、別の号では事件から2周忌を迎えた人々の様子を伝えています。やはり、死刑を廃止してしまった州の文化なのか、マスコミに出てくる人々の意見は、死刑に反対しているものが多いように思え、一方で、それならば死ぬより怖い刑罰を与えよという人もいましたが、他の読者に非人間的な刑罰はアメリカはしないのだと反論されていましたね。
上画像:ボストン下町の閉店した店舗群
私は今日は土曜日で休みだったので、トレパンや春秋用のジャケットを買おうと思って下町を歩きましたが、また目についたのは、閉店してしまった店舗スペースが三つも固まってあったことです。写真にあるのは、それらの二つの写真で、実際は左の方はビル自体に問題があるのかもしれませんが、一つの交差点の近くに三つも固まっていて、更に、角地にあったりするので、他の例も考えると、ボストン自体の経済がよくないのだと思います。それとも、特定の地域には悪霊が住み着いていて、地鎮祭でも行わないと商売がうまくいかないようになっているとか。。。
それはさておき、日本に行くまであと3週間しかないのですが、この一週間はかなり試料の測定を済ませて、セミナーに参加する時間もちょっとありました。現在また公募した職の面接が進行しているようで、不定期なセミナーが審査の一環として行われています。
Special Colloquium Tuesday, 4PM, MacMillan, 115
Brandon Johnson
Dept of Earth, Atmospheric & Planetary Sciences, MIT
" The Formation of Impact Ejecta Layers and Chondrules "
というように、MIT からも若い研究者が来て、地球上のテクタイトのように衝突でできたガラス物質の大きさや中心からの距離による分布が、衝突の速度やエネルギーと相関があるので、隕石の 90% とかを占める普通コンドライト中のコンドリュールも衝突の際の噴射物質が固化した現象(Jetting)として考えると 100 ㎞ スケールの小惑星上の衝突が起源であるように説明できるというような話でした。太陽系星雲での静的凝縮、太陽からの双極流による生成、ガス中での衝撃波生成などありますが、もちろん本人は Jetting が一番良いと言っていました。今後の展開が楽しみな分野ですね。
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上画像:学生が自殺したScience Libraryの場所を片付けるブラウン大の職員と警官たち
先週は、ブラウン大学の私の実験室から見えるScience Library(科学図書館)で悲しいことが起こりました。学生が12階の窓を突き破って飛び降り自殺したのです。写真の高いビルの右下のコンクリートの部分をはめ込みで拡大しましたが、現場から右の方で作業員たちが清掃をしていて、さらに離れたところで警官たちが何か会話をしています。封鎖が解けた後に行ってみたら、花が供えられていました。
この事件は、1週間の春休みが明けた週の火曜日、3月31日に起こりました。その学生は、韓国人の博士課程1年生の男子学生で、米国の大学で優秀な成績を収めてブラウン大学に入学し、物性物理学の研究をしていたようです。普通は窓は開かないので、ガラスを壊して飛び降りたそうで、いったい直接の動機は何だったのか、薬物を使用していたのかとかは知らされていません。
その日は、学長から全員にメールが流れ、お互いに気遣い、いたわりあい、こういう問題が起こる前に会話を持ちましょうという旨の内容でした。最近、麻薬の使用によるデートレイプの事件もあり、その日の夜には、深夜祈祷会が開かれる予定になっていましたが、この事件が加わって、一層深刻な会になりました。
たとえ研究ができて成功した人生を送ったとしても、命を絶ってしまったのでは意味がありません。物理学をはじめとして、研究とか学者としての生き方がすべてではなく、人生の中心は、やはり人類共通の内容である、両親から生まれ、愛を受けて成長し、男女が愛し合って結婚し、子女をもうけ、愛を与える立場に立ち、人格の成長と人類の繁殖繁栄に貢献することが生きがいのはずです。
そのような長く充実した人生を経験せず、10代で自らの命を絶ってしまうような自分と両親にとって不幸なことはしてはなりません。キリスト教では自殺をすると地獄に行くと言いますが、映画などでもそれが表れています。たとえば、やはり最近自殺したRobbin Williamsが主演した「What Dreams May Come(奇跡の輝き)」がそうです。
私も、東大に入ったものの、志望していた物理学科には行けず、基礎科学科および鉱物専攻で惑星科学において博士号を取ったものの、職はなく、アメリカまで来ても、さらに恒久職には未だに就けていません。それでも、生きていて、健康で、家族があることがどれだけ幸福なことでしょうか?
はやぶさ・かぐや・はやぶさ2などの惑星探査ミッションの会議のために日本に行こうとしても旅費が出ず、日英翻訳のアルバイトを休む間もなくやってお金を作りながら旅費に充てていたことが長くありましたし、今後もあるかもしれません。そんな時、自分の立場を恨みながら、こんなに楽しくない仕事で忙しいならば死んだ方が楽だ、と思ってしまうこともありましたが、それも贅沢なことです。健康で、研究者に成れて、英語もできるからそれが可能だったので、日本の大学教授たちと比べるからいけないのでしょう。彼らも幸福な暮らしをしているとは限りませんし。
この事件を知った長女もかなりショックを受けていたようですが、しょっちゅう父親には会えますし、週末や長い休みに帰省もできるので、大丈夫でしょう。私の周りでも、最近は60歳くらいで心臓発作で入院したり、植物人間になってそのまま安楽死されたりした人々がいます。死というのも人生の一部であり、赤ちゃんが生まれる前に母親の胎内で40週間の成長期間を過ごすように、生まれてきた人間は地上で100年前後の人生を通して、永遠の霊界での人生のための霊的成長をしていくべきものと思います。いつ霊界に行くかもしれない自分だし、今生きているその生きざまが重要で、いつも残された家族や同僚たちに何を残していくかを考えることが必要と思いました。
さて、5月の日本出張まであと1か月くらいですが、これからNASA研究費の申請もあり、たまっている試料の測定なども含め、また忙しい期間になりそうです。