石黒君、素晴らしい研究をしていますね! February 12, 2017


とうとう2月になり、寒さも本格的になってきたボストンです。今回は2月1-7日の1週間、韓国に出張してきた報告です。時差ボケを調節する間もなく忙しい1週間でしたが、非常に充実していました。

まず、2月1日にいつも廉価なエア・カナダでボストンを出たのですが、何と出発便が45分も何らかの理由で遅れてしまい、もともと最初のモントリオールで1時間の乗り換えしかなかったので、15分しかなくなってしまいました。パニックに陥った私が係員に訴えると、無線で何か交渉してくれていたようですが、とにかく携帯も使えず、飛行機が待ってくれているかもわからず、税関と入国と保安所を駆け足で通り抜けました。

カナダは他の国に行く乗り換えの場合でも、一度入国しないといけないのです。それを忘れて、1時間の乗り換えで大丈夫と思った私とエア・カナダ側の大きな間違いでした。あと、仁川行きが出発するトロントまで直接飛べばよかったのですが、途中でモントリオールを挟んで2回乗り換えにすると$120も安くなるので、早朝の6:45の便で行く方を選んだ私にも責任がありました。とにかく、9:15にゲートについたら何と9時発のトロント行きが9:17とかに変更されていて、私を待っていてくれました!

トロントでは、やや遅れて到着したわけですが、乗り換えに2時間ちょっとあったので、無事仁川行きに乗れて韓国に2日に到着できたわけです。4年ぶりの韓国で、あの時は次回は絶対韓国語をマスターしてから来るぞ、と決意していたのですが、やっぱり三日坊主でした:)ブラウン大でロゼッタ・ストーンという語学教材が使えることが分かったので、これからはそれで頑張ろうと思います。でも、次回は6月なので4か月しかないですが。。。

今回はまず、ソウル大の副教授として頑張っている、はやぶさ仲間の石黒君のところでセミナーや研究の議論をさせてもらうことになり、宿泊も手配してもらって、仁川空港からソウル大のホアム教授会館という宿舎に直通バスで行きました。最初の写真にあるように、立派な建物で、部屋は学生たちも泊まる中級レベルですが、オンドル(床暖房)で温かいし、窓も2重で、まるでボストンのようです。実際気温はボストンのように最低-15℃になるところのようです。私がボストンを発った時や、ソウルに着いたとき、そしてボストンに着いたときはいつも0℃ていどの暖かさだったですが、その後寒くなりました。私が日本に出張する際によく泊まる立川の極地研の赤池ゲストハウスは冬に寒いことが多いので、それよりもずっと部屋は広く暖かいのはやはりオンドルのおかげでしょう。

下画像:ソウル大のホアムという教授会館と宿舎。


 

それでこの宿舎の特色として、朝食付きの宿泊なのですが、次の写真にあるように、豪華な食べ放題のメニューなのです。請求書を見ると、別に払ったら15,000ウォンということで、約1500円の超豪華朝食ですね。韓国と日本と西欧の食事を混ぜたような内容です。普通は朝食はヨーグルトと野菜ジュースの私が毎朝これを食べていたので、最寄りのナクソンデ駅まで20分の道のりを毎日歩いていたのですが、ボストンに帰って体重を測ったら何と2キロも増えてしまっていました。これはいけないので、これから体重回復のための食事と運動をせねば。

下画像:早朝未明7時からの豪華な食べ放題の朝食。


 

ホアムで一泊してからは地図を頼りに石黒君の天文学科の建物目指していきました。距離としては1キロちょっとのはずでしたが、何と歩き始めたらすごい上り坂でした。途中で分かれ道があり、左に行ってもよかったのですが、真ん中に谷のような低地が開けていて、階段を下りるようになっていたので、地図で見るとそっちからも行けてキャンパス内の建物をいろいろ散策できそうだったので、降りていきました。これが実は失敗で、途中で曲がり角を間違え続けて、英語とつたない韓国語でいろいろ尋ねた挙句、約束の9時をだいぶん過ぎてやっとたどり着きました。やっぱり初めての場所を甘く見てはいけないですね:)

次の写真は、迷っている途中で見たユニークなつくりの図書館(ここで間違って右に行ってしまった)と、たどり着いた天文学科の入り口直ぐの階段に貼ってあったポスター群と、セミナーの後に取った石黒君と学生たちとの記念写真です。やはり韓国の学生たちは英語がうまく、まるで一時期の神戸大学のように、宇宙塵の物理的性質や小惑星の偏光など物理系に強いと思いました。なので、結晶学・鉱物・隕石の分光という背景をやや持つ私との相補的関係は有意義だなあと思いました。特に、分光と同じく、偏光や熱輻射は空間解像度では見出せないスケールの粒子サイズにも関係していて、今後の探査において非常に有用なものになりそうです。

下画像:ソウル大キャンパスの図書館と、天文学科の会談に張ってあるポスターと、石黒研でセミナーの後に取った記念写真。


 

セミナーの後は、私が幽霊会員的に参加している荒井朋子さんのPhaethon探査グループのテレビ会議に参加させてもらいました。特にダストの散乱断面積や偏光や鉱物組成・類似隕石の話題でした。活性小惑星は最近のホットな話題ですが、日本がこの探査で何か貢献できるとよいと思います。ソウル大には6月16日にも学科レベルのセミナーで戻ってくる予定です。はやぶさミッションと宇宙風化研究で日本の国益を守った私の闘いを話す予定です。

さて、週末はナクソンデ駅から地下鉄で蚕室に行ってロッテワールドホテルでICUSという学会に出たり、同じ岐阜県出身の在韓日本人の知り合いとお茶をしたりしていました。次の写真にあるように、ソウル駅や蚕室のロッテタワーやモールは非常にスタイルがよく出来ていて、日本と違って地震があまりない国の利点かなあとも思いました。こういうのを見ると、飛行機で見たシンゴジラのような巨大生物が出てきて壊しまくったらすごい光景だろうなあと想像してしまいました。ちなみにこの日は既にかなり普通の寒い気候に戻っていました。

下画像:ソウル駅と蚕室駅とロッテワールドの光景。


 

息抜きの週末はあわただしく終えて、月曜日はソウル大の石黒君とも常に協力している大田のKASI(Korea Astronomy and Space Science Institute)に行ってセミナーや研究の議論をしてきました。ここは日本では宇宙研と天文台を合わせたようなものですね。2つの月探査衛星を計画しているようで、とうとう韓国も惑星探査ミッションに乗り出すわけです。今回の大田行きは、4年前にやっと再会した学生時代の恩人に逢いに行こうと思って計画したものですが、前回同様に、KASIでちょっとお昼のセミナーでもと思って声を書けたら、Hong-Kyu Moon氏がとても歓待してくれて、何と6月には3日間集中講義をしてほしいという事になりました。そういうのはしたことないので、今回のセミナーで固体惑星分光の基礎から宇宙風化までいろんなスライドを用意し、その中から何を詳しく教えてほしいか6月までに決めてくださいという事にしました。

次の写真は、大田駅の付近の街並みで、何か日本の片田舎の町や、戦中戦後の闇市を思い起こさせるようです。歩道を所狭しとものを並べて売っているおばあさんたちは、年金や生活保障ではやっていけないのでしょうか。韓国では日本以上に老人が貧しくて自殺することが多いと聞いていましたが、その辺の社会事情を反映しているのか文化的なものなのか、こういう光景が大きな都市である大田の駅前でも展開しているとは非常に意外でした。

下画像:KASIのある大田市のテジョン駅付近の様子。


 

最後の写真は、その恩人の高橋さんと大田駅付近で撮った写真と、一緒に行った喫茶店の様子です。30年ほど前の東大博士課程の時、この人に出会わなかったら惑星科学者になる道は捨てていたかもしれないと思います。新潟出身の人たちはとても地味で韓国人に似た深い心の世界を持っているように思えます。KASIから4時半頃戻って、7時ちょっと前のKTXに乗るまでの間、駅前のCafe Noriという喫茶店に入ったのですが、何と普通の椅子席の他に、お座敷のように、靴を脱いでオンドルの床に座れるゲート付きの空間が窓際にあるのです。これは6月に家族で来た時に絶対また来たい場所です。高橋さんと同じノリという名前のカフェなのが不思議でした。

下画像:30年来の恩人と大田駅とカフェで。


 

そんな感じで石黒君のおかげもあり、私的な旅行で急きょ行こうと思った韓国が、ソウル大とKASIでほぼフルに出張モードになり、6月の家族での日本帰省と長女の梨花女子大留学終了に引っ掛けて韓国に再訪する際もセミナーや集中講義という事でよい協力が出来そうです。やはり自分の仕事の価値を認めてくれる人たちと一緒に協力するのは楽しいです。一方、Tagish Lake隕石で取材に来られているNHKのチームとの予定日だった今日は、こちらニューイングランド地方は大雪なので、明日に延期されました。大きなメディアとの初めての体験なので、どうなるか、非常に緊張します。その結果はまた今度ご報告します。
 

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