ブラウン惑星人の日々 July 2015
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アレクサンドロス大王
皆様夏を満喫されているでしょうか?ここ米国北東部では、今のところ割と涼しい日が続いています。昨年の夏は、7月はずっと日本にいたので知りませんが、8月はとっても涼しかったのを覚えています。今年もそんな過ごしやすい夏だったらよいなあと思っています。エアコンも寝室にはつけましたが、大家さんが昨年居間の窓を新しくしたので、古いエアコンをつけるためのアダプターが備え付けられるのを待っている状態ですし。昨年のように付けずに済めば電気代も浮きますね。
上画像:ボストンコモンの夏の風景
さて、最初の写真にもあるように、夏はボストンコモンでは週末だけでなく天気の良い日はいろんな活動が行われています。上のヨガをやっているような集団は春ごろから見られますが、右の大きな舞台のコンサートは先週の数日の大きなイベントで、週末はかなり夜遅くまでものすごい騒音でした。下のは恒例の無料のシェークスピアの演劇で、何を上演しているのか知りませんが、しばらく続きます。
上画像:ボストン警察のキャプテンの息子がテロリストだった!
少し前に、ボストンにとって衝撃的なことがありました。ボストン市の警察のキャプテン(おそらく隊長級?)の息子が何とテロリストだったということです。2つ目の写真はボストンMetroの2回にわたる記事ですが、その23歳の息子は、ボストンマラソンの時のような圧力釜とか普通のもので作った爆弾を7月4日の独立記念日とかの人混みを標的にして仕掛けようとしていたようです。私も家族でボストンコモンに行って花火を見ていましたので、もし摘発されていなかったらと思うと、とても恐ろしいことです。
上画像:私の自宅の机に置かれた読みかけの本の山
最後の写真は、私の自宅の机に積読している本の山です。実際には少しずつ読んでいるのですが、一番下のは以前にもご紹介した、私が長年愛読している Reader’s Digest の美人女性編集長が書いた、胃腸内の善玉菌を増やすことで痩せられるというような本です。これに従って牛乳をやめてギリシャヨーグルトを始めただけで下痢が収まり、痩せたことは確かです。まだ最初の方しか読んでないですが。
その上の「Signature in the Cell」というのはその名のごとく生物分野におけるID理論の本です。これもまだ最初の一部しか読んでないです。その上の「真実の中国史」は、夫婦で中国の真の歴史を書いている奥さんの方の本で、目から鱗が落ちる気持ちにさせる本です。歴史を一貫して1つの国とは呼べない軍閥割拠と人権抑圧構造の支那地域を一刻も早く解放せねばならないですね。
後は統計に関する本で、最近、私の直感的な反射スペクトルの解釈にもっと定量性を入れるべきだという認識が高まってきて、主成分解析を含む統計手法の勉強をし直しているところです。月を探査した SELENE(かぐや)衛星のデータ、特に Spectral Profiler(SP)のデータを用いて、特に環境研の山本君がいっぱい論文を出してくれていますが、最近はインパクトメルトで急冷してガラスがよく見えている地点を探してくれています。私が感覚的にああでもないこうでもないと言ったり、どれがよいガラスのスペクトルかを選んだ結果に基づいて、アルゴリズムをつくって大量のデータから私が納得するようなスペクトルを選んでくれています。なかなかよい連携プレーだと思っています。今年の東工大での惑星科学会の秋の会合で発表されると思います。
最後のはいくつも持っている視力回復法のほんの1つで、特に次女の視力を回復させようと、今の夏休みの間に何とか頑張ろう・頑張ってもらおうとしています。日本の学校教師や眼科医は視力回復に関して未だにヘルムホルツ説を信じているような無知と無力に満ちているのではと思っています。その証拠にビジョンセラピーの委員は東京青山に1つあるだけのようですね。メガネやコンタクトレンズを使い始めたら終わりですから、自分の視力を足腰を鍛えるように健全にすべきです。ちょっと歩きにくいからと言ってすぐに車いすに乗り始めたら、どんどん歩けなくなっていくのと同じことです。
長いと思っていた夏ですが、もう半分は終わり、8月13日には宇宙研の Hayabusa 2015 シンポジウムのアブストラクトの締め切りで、9月3日には極地研の隕石シンポの方の締め切りなので、何とか炭素質コンドライトの反射スペクトルを統計処理した結果をこの夏に出しておかないといけないです。更に、来週から杉田君もまたブラウン大に休暇、じゃなくて出張に来るので、こっちもまた、はやぶさ2のための炭素質コンドライトの再測定をすることになります。この夏はずっとベスタ起源らしい HED 隕石をずっと測定していたので、火曜日くらいまでにそれをいったん締めくくって、始原的隕石モードに切り替えです。
そうそう、前回冗談っぽく話していた、はやぶさ2の目標天体である小惑星 1999 JU3 をイスカンダルと名付ける話ですが、Iskandar は Aliskandar 起源で、アレクサンドロス大王のことです。イスラム圏の神話的叙事詩では、大王が生命が宿る木を訪れたそうで、はやぶさ2が生命の材料物質を持つらしいC型小惑星に行って試料回収するのと関連すると思います。似た名前の、Iskander という小惑星はあるようですが、それはイスカンデルとなりますから、違う名前と考えられるでしょう。すでに申し込みましたが、イスカンダルになったら、一層国民のはやぶさ2への注目が増すのではと期待しています。
太陽系外縁惑星の不思議
7月は日本でも過ごしにくい時期でしょうが、ボストンあたりでも、80 度F 付近でほぼ飽和湿度で不快指数 100 % の日があったり、うって変わって乾いて涼しい日があったりで、予測しがたい日常です。ブラウン大学のキャンパスからは学部学生はとうの昔に消えて大学院生と職員の一部だけになったわけですが、高校生たちが夏の学校で来ています。おそらく、金持ちの坊ちゃん嬢ちゃん方だと思いますが。
先週注目されたのは何と言っても NASA の New Horizons の冥王星およびその衛星のフライバイのニュースですね。打ち上げから 9 年半もかかってやっと到着です。やはり NASA の大規模ミッションだけあって、昔の Voyager 1 および 2 のように強力なロケットを使って目的地にほぼ直行する方法ですね。途中で小さな小惑星や木星とその衛星で搭載機器のテストを兼ねた観測をして、やっと冥王星にたどり着いたわけですね。
先日、ブラウン大学の惑星地質の皆が NASA データセンターに集まって NASA TV で New Horizons のプレス会議の中継を見ましたが、チームは、冥王星の衛星カロンの北極の暗黒領域をモードー(Mordor)と名付けましたね。モード―というのは指輪物語(Lord of the Rings)で出てくる悪の根拠地のようなもので、そこでの火山の火だけが指輪を溶かすことができるという話でした。もちろんまだニックネームでしょうが、それだったら、はやぶさ2が行く小惑星 1999 JU3 もイスカンダルと名付けてはどうでしょうか? そして中央丘を持つクレーターがあればスターシャで、衛星があったらガミラスとか。。。
と、脱線しましたが、湿地帯のような平らでゾウリムシのような領域に分かれていたりするのは揮発しやすい水・二酸化炭素・一酸化炭素・アンモニアなどの氷が剛性が足りなくてそうなったのかと思えますが、山地に見える領域は、プレートテクトニクスでできたとすると、たとえマントル対流が水が多い組成であったとしても熱源が必要でしょうから、放射性元素がまだ生きているか、衝突エネルギーが利用されているかでしょうか。やはり低温でしか固体になれない揮発性物質の世界は面白いですが、それを考えずに、地球などのより太陽に近い天体を見ていると仮定しても、氷と岩石の比率の違いだけで、それ以外は不思議に見えないかもしれません。実際、氷を解かすには岩石を解かすよりもずっと少ないエネルギーで済みますから、太陽系外縁惑星でもその程度のエネルギーを保持している可能性はあるのでは。
冥王星を含むカイパーベルトは彗星の故郷と言われていますが、彗星からの試料回収は Stardust による不完全なもの以外はなされていません。はやぶさ2と OSIRIS-Rex が炭素質コンドライトに似た小惑星物質を持ち帰るとしても、彗星物質をそのまま持ち帰るミッションが将来必要でしょう。今回のようなフライバイでなくて、ランデブー・着陸・試料回収といったミッションをするにはカイパーベルトは遠すぎるので、やはり近いところから始めたいのですが、近いところに加熱されていない彗星核のような超始原的な物質があるかどうかですね。
トロヤ群の D 型小惑星がそうかもということですが、木星軌道でも試料回収となるとかなり長い時間がかかるでしょうね。以前も取り上げましたが、最近発表された火星の衛星からの試料回収ですが、小惑星帯よりは近いですが、その物質科学的意味の不逞性と、重力の大きさと、国際競争が心配です。主ベルト帯にある小さな枯渇彗星にいって試料回収するのがいいのでしょうが、たとえば、Wilson-Harrington から試料回収するミッションが提案されていますね。
http://www.lpi.usra.edu/meetings/lpsc2009/pdf/2391.pdf - PDF
これは、JAXA の Hayabusa Mk2 が ESA との共同ミッション Marco Polo として提案された際に候補天体の1つになっていましたが、Marco Polo の不採用によって流れてしまいました。調べてみると、彗星へのミッションは最近の ESA の Rosetta による着陸成功まで、いろんな紆余屈折がありました。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_missions_to_comets
でも、NASA のロードマップでもはっきりと着陸とその場観測の次は試料回収と言っていますから、試料回収できるまで、きっと努力を続けると思います。もちろん、試料回収しなくてもその場観測・実験で何でもできる未来になれば別でしょうが。
さて日本では時を同じくして、惑星協会が復活しようとしていますね。Carl Sagan 博士の Contact は好きですが、その哲学的思想には疑問を抱いていた私は複雑な思いがありましたが、米国の Planetary Society と連携しつつも、日本は個性を持った惑星協会となりうるならと、ここ MEF の井本さんのお誘いでカウンシルにも入れてもらいました。はやぶさ・はやぶさ2の息吹とともに15年も続いてきた MEF とどのような関係になっていくのかとか、いろいろな未来像がありますが、この惑星探査が盛り上がっている今、日本で惑星協会が復活するのは意義あることだと思います。
地上に星は無い
皆様、とうとう7月になりましたね。あっという間に今年も半分終わったかと思うと、焦ってしまいます。昨日はアメリカ固有の祝日の中でも最大の、独立記念日でした。1776年に独立宣言をしたので、昨日で239年たち、今日から240年目に突入したわけです。日本の公称2600年と比べればまだまだ浅い歴史ですが、そんな短期間に世界最強の国になったことは評価されるべきですね。例年のごとく、家族でボストンコモンに出て花火を見ましたが、今年は雲がかかってしまい、30 分間のうちの最初と最後に少し見えただけでちょっと残念でした。
アメリカ建国記念というといつも思い出すのが、1976年に200年祭を迎えた時です。もちろん私はまだ日本にいて高校1年生でしたが、その翌年に公開された映画「スターウォーズ」を学校の帰りに岐阜の柳ケ瀬の映画館に観に行って、その宇宙ロマンとアメリカ映画のスケールの大きさに感銘し、自分がヒーローであるルーク・スカイウォーカーになった気分で闊歩して岐阜駅まで歩いて帰途についたことが今でも生々しく思い出されます。
その当時は、アメリカの映画だけでなく国自体が絶好調を迎えていたように思います。数年後の1980年には俳優出身でカリフォルニア州の知事をしていたロナルド・レーガン氏が大統領になり、その8年間の政権と、それに続いて副大統領であったジョージ・HW・ブッシュ(父ブッシュ)氏が大統領になって、その4年間の政権のうちにソ連邦は解体し、冷戦の大枠は終了しました。
しかし、その後の8年間は民主党のクリントン大統領になり、2000年までの間にテロたちは 9.11 を着々と準備し、イラクで戦士たちが死んでいく間にも大統領は浮気をし、フリーセックスや同性愛や麻薬の問題が悪化していくのに対して何か策を練るどころか、部分出産中絶のような殺人をしないようマザーテレサにも直接懇願されたにもかかわらず、クリントン大統領は民主党特有のリベラルで放縦な方向性に暴走しました。
その後やっと共和党のジョージ・W・ブッシュ(息子ブッシュ)氏が大統領になって、9.11 を迎えました。多くの国民は、9.11 のテロ攻撃が起こった時に大統領がクリントンでなくてブッシュでよかったと感じたと思います。父親ブッシュとはまた違っていろいろ失策もしたと思いますが、民主党政権と比べたら断然まともなものです。
その共和党ブッシュ政権は2008年まで続きますが、2009年には民主党のオバマ氏に取られます。私はオバマ大統領はカーターやクリントンよりさらに最悪の大統領だと思います。麻薬や同性結婚の件で完全に倫理的凋落を起こさせただけでなく、アメリカがすでに弱い国であるという印象を世界に与え、黒人に対する差別を悪化させ、妻とともに学校給食や教育内容に壊滅的打撃を与えています。前回紹介した白人至上主義の若者が生まれたのも、教育の問題に違いありません。
そして今、2016年で終わるオバマ政権の後の大統領選に、共和党も民主党も多くの候補者が出てきていて、息子ブッシュの弟でフロリダ州知事だったジェブ・ブッシュが有力候補の一人になっています。民主党の方は、ヒラリー・クリントンを出してきている限り勝つ希望はないと思います。共和党は今回選挙制度が変わって、民主党のように、各州の前哨戦で獲得した票を党大会まで自分の票として確保することができ、党の候補者を選ぶ際に自分の州で獲得した票を盾にして影響力を発揮でき、大統領になれなくとも、何とか大臣とかの職に就けるのではという魂胆もあり、多くの候補者が出たようです。
まあ地上のことばかり見ていると希望を感じないので、宇宙関係を見ると、最近はロシアや Space X のロケットが失敗したりした暗いニュースもありますが、今月は9年以上前に打ち上げられた NASA の New Horizons 探査機が冥王星に最接近してカイパーベルト天体を目指す時ですね。はやぶさ2も順調に航行していますし、日本を含めた各国がその特色を生かした惑星探査をしていけたらよいと思います。