ブラウン惑星人の日々 January 2016
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新たな2016年に入って2週間半ほど過ぎました。年末年始はボストンでは花火はきれいでしたが、恒例の氷の彫刻もなく、割と静かな時でした。暖冬で雪はほとんど降っていませんでしたが、一昨日からやっと申し訳程度に降りました。極寒のボストンを思わせるような寒い日もありましたが、やはり全体として、本来雪と氷に包まれてしまうはずの1月のボストンも、暖かく雨がちの日が多いです。最初の写真はブラウン大の正門の裏にある芝生ですが、本来緑が枯れて茶色になった後に雪が降るはずですが、緑のままで薄く雪をかぶっています。暖冬のゆえに枯れないまま雪の季節を迎えてしまったようです。
先日の土曜日のお昼は、妻が職場でクリスマスプレゼントとしてもらった$50分のLegal Sea Foodsの商品券があり、Copley Placeという商店街の店をオンラインで予約して行ってきました。事前にWebサイトでメニューを見ると、$50ではお昼でも2人分くらいしか食べられない雰囲気でしたが、とにかくよい機会なので、家族4人で行ってきました。次の写真がそこで食べた料理と、コーヒーをおいしそうに飲む次女の横顔と、請求書です。コーヒーが$3.25していますが、大きいし高級レストランですから普通でしょう。おいしかったですし。これにチップが$10くらいつけたので、合計$80で、$50の商品券を使って、残り$30を払いました。
下画像:土曜日の昼食に行ったCopleyのLegal Sea Foodsでの光景。
しばらく前には、阪大の大学院生の岡崎さんが来られた時は、MITから昼食をごちそうになってCambridgeの支店に行きましたが、そこも高級な感じでしたね。あの時は、Rick Binzelは不在であったにもかかわらず、その昼食も含め、非常にお世話になり、岡崎さんは今年卒業してしまいますが、きっと良い思い出になったことでしょう。
さてさて、まじめな惑星科学の話題をしますと、先週は3月のLPSCでの発表のためのアブストラクト(要旨)の提出期限が1月12日にありました。こういう時はブラウン大の惑星地質グループはほとんどの教官・研究者・学生たちが締め切りに追われて大わらわになります。締め切りの直後の夜に打ち上げパーティーをJim Head教授の家で毎年するくらいです。私は11日間の冬休みの間に早めに仕上げていたので、共同研究者のアブストラクトを見直すのに忙しかったくらいですが。
今回の私の主著のアブストラクトは、1つ目は11月に極地研で発表した内容と宇宙研で発表した内容を組み合わせたもので、
Estimating the Carbon Contents and Distinguishing the Types of Carbonaceous Chondrite by Spectral Instruments Onboard Hayabusa2 Spacecraft
はやぶさ2搭載の分光機器によって炭素質コンドライトの炭素含有量の推定とタイプの識別をすること
と、2つ目はRELABと阪大の佐々木晶さんの分光計器の分光器と、東北大の中村智樹君のBrukerの分光器とでデータの比較をしたもので、
Interlaboratory Comparison Study of Visible and Near-Infrared Reflectance Spectra Using a Set of Common Standard Materials
共通の標準物質を用いた可視・近赤外反射スペクトルの実験室間比較研究
というものです。前者は明らかに2018年のリュウグウへのランデヴーに向けた準備で、後者は長年の懸案であった内容かつ、昨年、Ed Cloutisの実験室が主導で行った結果が思わしくなかったので、それをもっと厳密に行ったもので、結果は良く、ある意味で、一部はRELABの存亡をかけて今回発表したものです。
以上の他に、RELABで試料を測ってあげた共同研究者たちのアブストラクトがあり、月の斜長石の測光性能、原始的エコンドライト母天体、New HorizonsのPlutoデータに対応するTholinなどの物質、東北大の松岡さんとのMurchison隕石の宇宙風化の研究、環境研の山本君のかぐやSPデータからガラスを見つけた研究などです。
はやぶさ2科学チーム関係でも北里君がNIRS3アブストラクトを出していますが、私の名前は出てこないので、ほぼ関係ないように感じてしまいます。昔は、PIチームと言って、宇宙研のPI達と同じグループにMLでは入っていましたが、いつの間にかアブストラクトでもチーム名以外は名前が出なくなりましたね。統合科学や別でやってくださいということかもしれませんが、科学会議も午前中になかなかやってくれませんし、国際合同会議の日程も旅費も全く私にとって非協力的です。
まあ、おそらく、はやぶさ2チームで私の待遇改善に直接影響力のある人はこれを読んでいないと思いますが、前回書いたように、アメリカで私のようなソフトマネーで研究員として生き延びることがいかに難しいかを理解していただければ、ミッションが私をサポートするどころか、経費まで実費で出費しないと貢献できないようにさせている実態が如何におかしいかわかるでしょう。もちろん、はや2成功のあかつきには、皆に語り聞かせる不思議で皮肉な物語のネタがたくさんできるので、全てが悪いわけではないですが、ミッションが成功しないと元も子もありませんよね。ランデヴーが成功して試料が帰ってくるだけでよいのではないでしょう?
ランデヴーの前に、そしてその最中になすべき科学者の使命は大きいので、そういう人材にもっともっと投資しないと、必ず後悔します。もう2度目なので、「後悔先に立たず」とは言えませんよ。