OSIRIS-REx は良きライバル.December 22, 2017


とうとうボストンは極寒の季節に入り、先週などは体感気温が10F(-12C)になるような日々がありました。今週はかなり暖かくなりましたが。先週は、はやぶさ2の近赤外分光計NIRS3の主研究者(PI)である会津大の北里君が、初めてブラウン大学を訪問してくれました。多色カメラONC-TのPIである東大の杉田君はしょっちゅう来ますが、北里君も今回来てくれて、はやぶさ2の2つの分光機器はこれでブラウン大学とプロビデンスの特別な霊界に導かれて成功するかもしれませんね。

霊界などというと大袈裟だと思われるかもしれませんが、1990年に私がはじめてこの地を踏んだ時に、明らかにここの霊的雰囲気は違うと感じ、それからインスピレーションが多く湧いてきて、科学的な実績を積むことができたと感じます。もちろん、それはアメリカ全般にかなり言えて、ヒューストンのNASAジョンソン宇宙センターに行っていた3年間も非常に多くの研究成果が上がった時でした。

今回は、はやぶさ2の共同研究者である私もRELAB責任者のRalph Millikenも先月の合同科学会議に出席できなかったので、北里君とNIRS3について時間をとって議論できたのは大いに有益でした。来年7月に小惑星リュウグウにランデヴーした時に、そこからの熱輻射の影響をどう取り除いて反射スペクトルに直すか、いつ日本に行くか、どういうテーマに取り組むか、などなど話し合いました。

水曜日には、MITでRick Binzelが少しだけ時間があるということになったので、はやぶさ初号機による小惑星イトカワの宇宙風化の刷新機構について、議論しに行きました。ついでにHarvardとMITを見学しましたが。私は1日休みを取って付き合って、いろいろ打ち合わせの続きをしました。ボストンはとっても寒くなった日で、最悪の週に来たようでしたが、ここニューイングランド地方の事情が分かってよかったかもしれません。写真もいろいろとったのですが、本人の希望でここには載せられません。悪しからず。木曜日には昼食セミナーで同じ話題を話してもらいました。

年末年始は、3月のLPSC(Lunar and Planetary Science Conference:月惑星科学会議)のための要旨提出が1月7日締め切りなので、皆超忙しいです。私は幸いきょう提出できましたが。それまでオフィスに閉じこもっていろんな計算をしていました。写真にあるように、今回は、炭素質コンドライトの3ミクロン波長帯に出る、水酸基や水の吸収をガウス関数に分解して、その波長位置や相対強度から、隕石種を見分けようという試みです。何とかこれで、NIRS3のデータからリュウグウがどういう隕石に対応する物質でできているかわかるといいのですが。

下画像:来年3月の第49回LPSCの要旨を書くためにいろんな計算をしているときの私の机の光景。


 

3月下旬のLPSCでヒューストンに行った後は、はやぶさ2合同科学会議がある5月10-11日に合わせて帰国し、その後はとうとう、リュウグウでのNIRS3やONC-Tのマッピングが行われる7月中旬を含めて帰国する予定です。こんな風に2か月ごとに出張するのは珍しいですが、はやぶさ2のランデヴーにおける科学成果を上げることが、私の3つ目にして最後の大きな貢献かもしれないと思って頑張りたいものです。もちろん、近接観測は1年半続きますから、初号機と違い、今回は長丁場です。でも、OSIRIS-RExがBennuに着く前に決定的な科学実績を発表したいので、来年夏は切迫した期間になると思います。
 

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