ブラウン惑星人の日々 May 2014
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次は7月だ!
皆様、2週間の帰国日程を終えて、ボストンへの帰途にこれを書いています。いやあ今回は10回のいろんな場所での講演が詰まった帰国で、さすがにちょっときつかったかもです。同じような内容ながら、場所と相手によって調整する必要があり、特に最後の2~3日は講演内容が違うものを準備する必要があって、直前まで忙しかったです。おかげで私の予定帳はびっしり予定などが書き込まれたページになりました。
上画像:岐阜高専での特別授業に関する中日新聞の記事と写真
前回の最後でご紹介した地元の岐阜高専での特別授業講演は、最初の写真にあるように中日新聞も取材に来て、大学のセミナーのような雰囲気の元、非常によい経験でした。最初は数人の女学生がど真ん中に座ってぺちゃくちゃ話していたので大丈夫なのかなあと思いましたが、始めはちょっと雑音もあった講義室はどんどん静かになり、皆が良く聴いてくれているのが分かりました。最前列左方で1人だけ堂々と居眠りしている男子学生がいたので、私が「一人眠っているようですが、私の話がつまらなくて済みません」というと、誰かが起こしたようで、最後に見たらちゃんと起きて聴いてくれていました。この会は、前回の11月の帰国で、羽島市に住む岐阜北高同窓生のつてで講演会をしたときに来てくださった山田さんという社長さんのおかげで実現しました。
上画像:和歌山信愛女子中高等校で1000人の女生徒への講演会の模様
翌日は早朝に実家を出て和歌山に移動し、キリスト教系の信愛女子中高等学校で1000人の中3から高3の女子生徒を相手に講演をしました。次の写真にあるように、1000人の静かな眼差しを感じながらの講演で、久しぶりにとっても緊張しました。数え切れないくらい話している内容なのに、初めて話すときのような気持ちでした。一応神様を信じる人たちが作った学校ですし、講演の最後に惑星科学におけるインテリジェントデザインに言及し、終わった後の校長先生らとの話では、最新の科学的発見が如何に第一原因であられる神様を示唆しているかという話をしました。
上画像:和歌山大学宇宙教育所の20mパラボラアンテナと中水を使ったトイレのポスター
今回の和歌山行きが実現したのも、このMEFでもお馴染みの和歌山大宇宙教育所の秋山所長のおかげですが、写真にあるようにそのパラボラアンテナを使って活発な活動をされているスタッフの皆さんと、また光学望遠鏡も見せてもらいました。埋め込み写真は、食堂近くのトイレに貼ってあったポスターで、環境のために洗濯で使用したような中水をトイレ洗浄に使っているのを見て感心しました。
夕方は、私のメル友であるお医者さんの山口さんと待ち合わせて一緒に宇宙カフェに行きました。20人程度の小さな会合で、それでもプロジェクターとスピーカーでちゃんとした講演スタイルを取れて、とても身近で、質疑応答も気軽にできる雰囲気の会でした。その後は5~6人で夕食に出かけ、昔は熱血宇宙ファンに過ぎなかったような雰囲気の秋山君が、秋田大を経て今は立派に宇宙の利用と教育などのために孤高に奮闘している姿を見て希望を感じました。
その後は、講演するのは3回目くらいになる芦屋での兵庫セミナーに行き、翌日は大阪能率協会の会合で、会社の社長さんなどキャリアの高い方々が集まる会で講演をしてきました。懇親会でも、いろんなざっくばらんな会話ができ、私がJAXAなどとの関係を通して、日本が宇宙の探査や科学においてしていることが、「永遠のゼロ」に描かれていたような、大東亜戦争時の失敗の轍を踏んでいるのではという話をしました。零戦闘機はすばらしかったし初期のパイロットは熟練した者たちだったけれども、軍がそういう人々を大切にして後継を育てるどころか酷使して使い捨てのようにしたので、後期において米軍のB29などの空の要塞や熟練したパイロットたちに負けていったということです。「はやぶさ2」までは何とかこぎつけても、後はどうなることやら。
最後の講演は、宮坂さんや阿部新助さんらの尽力で、日大の駿台キャンパスにある理工学部1号館で開かれたライトカーブ研究会において招待講演をさせてもらいました。今回初めて、2010年から続けている極地研隕石の可視・近赤外分光サーベイのデータの概要と初期成果を発表しました。まだまだ煮詰めていないところだらけですが、はやぶさ2にも役立ちそうな、CMコンドライトに関する興味深い結果が出ています。早く、滞っている月隕石結果の論文を書かないといけません。
上画像:神保町駅近くの全面禁煙マクドナルドと路上禁煙の表示
その日は、お昼に永田町近くの星陵会館で友人たちと昼食会があり、使った神保町駅の近くで、写真のようにマクドナルドが全面禁煙になっているのを発見しました。路上禁煙が先行しすぎてもっと重要な屋内完全禁煙化が遅れているのを危惧してきましたが、スターバックスと共にマクドナルドも禁煙化については正しい方向に行っていますね。タバコを吸いたい人は外のどこか人気のない片隅か屋上か自宅でやってもらえればよいので、そこまで我慢できない人たちは依存症なので病院に行ってもらい、罪のない人々を遅延テロ行為で肺がんにしてゆっくり殺すのは止めてほしいです。いつか私も日本で政治家になるかシンクタンクを作って社会改革をしたいところですが、それに先立つものはやはり金でしょうから、難しいかなー。あと、農水大臣もよいかも。
ボストンの自宅に着くのは9時半くらいになりますが、非常に待ち遠しいです。明日はメモリアルデーで休日なのでホッとします:)次回の帰国は7月後半なので、梅雨も終わった夏の日々になるかと思います。
国内巡回中
上画像:極地研の隣にあるカラフト犬のブロンズ像群と記念碑
日本に帰ってきて一週間経ち、やっと時差ぼけも直ってきました。最初の写真は火曜日の早朝に極地研を出て東北大に向かおうとした時に、気づいた南極探検で活躍した犬たちのブロンズ像です。今まであまり注目していませんでしたが、南極といえば犬が連想され、秋田犬と思っていましたが、初期の探検で活躍したのは樺太犬だったのですね。これを見ながら静かな町を、モノレール高松駅に向かって重い荷物を引いていきました。LPSC の前に買ったばかりの鞄なのですが、既に四つのローラーの一つがパンクしてしまいました。やっぱり送料込み $20 の安物では駄目だったのか、私の使い方が荒すぎるのか。
上画像:東北大の中村智樹研究室に入ったBrukerの最新のFTIR機
仙台に着いて、急な坂を登るバスでやっと東北大の理学部に着くと、智樹君は授業を控えて自室で待ってくれていました。一緒に実験室へ行くと、学生の松岡萌さんが待っていました。写真は最近の Bruker の FT - IR 反射分光装置で、可視から遠赤外まで同じ入射・出射角で、試料を真空中で測れます。「はやぶさ2」の NIRS3 の隕石測定試験のために、この機械が現在大いに役立っています。
上画像:東北大の屋外にある巨大な液体窒素タンクで補給する松岡さん
東北大の理学部は面白いところで、巨大な液体窒素のタンクが屋外にあって、各利用者がそこまで補給に行くのですね。写真は松岡さんが蒸気に包まれながら液体窒素を 3 リットルくらいの小さな容器に入れているところです。RELAB では、化学の倉庫で 100 リットルくらいのタンクから 4 リットルずつ $2.50 くらいで購入します。外に出なくてよいので便利です。
今回は水沢にある佐々木晶さんの分光器と宇宙風化装置を六月に阪大に移動させる前の最後の測定なので、Labsphere から購入した波長校正試料を測定しました。FT - IR なので、波数分解能を一定にすると、波長が長くなるほど波長分解能は劇的に下がるのが伝統的な分光器とはちょっと違うところです。400 nm 辺りに合わせて波数分解能を 64 cm -1 にしたら、2.5 mm 辺りでは非常に低い波長分解能になってしまいました。でもそれも比較には面白いでしょう。
それから三人で水沢に行き、国立天文台の重力棟で、佐々木晶さんと、後から来た阪大の学生の岡崎さんと金丸君が合流し、私は先ほど言及した波長校正試料と極地研から借りた 8 個の隕石の可視・近赤外反射スペクトル測定、松岡さんはマーチソン隕石のペレットの宇宙風化実験と反射率測定、そして岡崎さんたちはカンラン石と硫化鉄の混合物の宇宙風化実験と反射率測定を始めました。
上画像:ジャマイ館で岡崎さんと松岡さんが歓談する写真に埋め込まれた私のカレー
次の写真は、天文台から歩いていけるような距離にあるカレー屋さん「ジャマイ館」で岡崎さんと松岡さんが話しているところに、私が食べたベジタブルジャパンとベンガルタイガーの組み合わせの写真です。ここは、ジャスミン米をはさんで2種類のカレーを選べて、それにサラダバーとドリンクバーがついて昼食は850円です。
上画像:私が乗車した「はやぶさ8号」東京行
最後の写真は、私が北上から東京まで乗車した、「はやぶさ8号」の写真です。3号車の禁煙かつ指定席で、私がはやぶさ3から8まで禁煙環境で指定席をもらって貢献できれば良いなあという願いが込められているような写真です。その後、神奈川で講演会をして、昨晩、各務原市の実家に帰省しました。明日は、岐阜高専で講演会です。
日本に上陸しました
皆様、やっと昨晩日本に帰国しました。やっぱり東京は暖かいですね。朝はそれでも冷えるようですが、明日は仙台や水沢に行くのでジャンパー持って来てよかったと思っています。それにしても、いきなり時差ぼけで、朝3時台に目が覚めてしまいました。
上画像:春の花や木々が色づくブラウン大のキャンパス
出張の前はいつも大忙しでしたが、最後にブラウン大の色づいたキャンパスを写したのが最初の写真です。やっぱり春と秋の景色が一番色とりどりで美しいです。しかし日本の秋の紅葉に匹敵する美しさはないと思います。日本の美しさを知ったら、アメリカのニューイングランド地方の紅葉は見劣りしてくることをアメリカ人は知るでしょう。
さて、ボストンには地下鉄で20分位離れたLogan空港がありますが、数年前に日本航空が成田への直行便を導入して以来、ちょっと値段は高めになりますが非常に便利になりました。ボストンコモンの禁煙化と同じく願いが叶うこともあるものです。ただ、安いチケットはすぐなくなるので、今回は$1500以上で、それでも帰りは直行便ではなく、7月は両方とも直行便をとったら$1800以上しました。高いです!
以下の写真はそのターミナルEにあるJAL7便のゲート付近および外を眺めた写真です。割と人は少なく、日本人の若者が多いです。やっぱりハーバードやMITのあるボストンらしくポスドクとかの研究者っぽい人が多いです。
上画像:ボストンのローガン空港の眺めと、ターミナルEにある日本航空7便のゲート
上画像:JALの機内食
アメリカン航空を通して買ったので、マイルが100%以上付くのがよいのですが、普通、肉を食べない私はVegetarianの食事しかないです。ところが、JALはいまだにSeafoodを残しているので、JALに直接連絡して、Seafoodにしてもらいました。写真にあるように、食べてしまった右上のサラダと、右下の調理した野菜や穀類と、左は刺身と果物です。これだけ新鮮で健康的なものがアメリカンでは出せずに、私はいつもサバイバル訓練のための食事だ、と皮肉っています。帰りはアメリカンのLA行きなので、心の準備をしておかないと。。。
飛行機は幸い早く着いて、立川の極地研にも夕飯時に着きました。途中の立川南駅前の東急ストアで食品を買ったので、荷物が重たくなった中、やっとのことでモノレールで高松近くの極地研に着き、守衛さんからゲストハウスの鍵をもらって落ち着きました。この赤池ゲストハウスは、私が2010年に夏だけ特任教授だった時に出来た物で、下の写真のように各部屋に豪華な冷蔵庫・電子レンジ・電磁調理器・炊飯ジャーなどが備え付けられています。冬の床が寒い以外はなかなか居心地いいです。自転車も2台あります。一泊2600円で、連泊割引が段階的にあります。
上画像:国立極地研究所の赤池ゲストハウスの一室
私にとって一番重要なのは、ネットがつながることと、玄米が炊けることで、水沢や宇宙研のように台所に炊飯器が1台あるだけでなく、自分の部屋に、それも象印の炊飯ジャーの一番高いクラスのものがあり、持参した玄米がたった1合でも完璧に炊けます。アメリカでも、象印が一番よいと評判です。
ということで、今日は朝は、はやぶさ2のNIRS3の電話会議で、午後はキュレーターの1人である今栄さんと隕石選びです。さてまた時差ぼけとの戦いです。それだけでも十分なので人との戦いは避けたいところです:)
まもなく帰国
上画像:暖かい春の日にキャンパスに繰り出すブラウン大の学生たち
先週は春がやっと来たという感じで、写真のように、ブラウンのキャンパスでも半ズボン姿の学生が見えるほどでしたが、その後は雨がちで肌寒い日も多く、なかなか5月になるとは思えない日々が続きました。しかしもう5月で、雨や風があっても地面全体がすでに温まっているという熱輻射を感じる時期です。
とうとう日本への出張まで1週間をきり、来週の今頃はきっと立川の極地研で隕石選びをしているところでしょう。初めて見る隕石を選び、申請し、その分光データがどんなものになるのかを調べるのは、とっても浮き浮きする楽しいことです。一見真っ黒に見える炭素質コンドライトでも、紫外領域の吸収強度や、蛇紋石に特有な0.7ミクロンの吸収も、水酸基の2.8ミクロン吸収も隕石の種類や水質変成や熱変成の度合いによって大きく変わります。過去を振り返るとやはり、1992年ごろに加熱脱水によってスペクトルがC型小惑星に似てくることや、2000年ころにTagish Lake隕石がD型に似た初めての隕石であることを見つけた時が一番心が湧き上がりました。
極地研で隕石を借りた後は東北大に1日行き、水沢の天文台に3日行って測定や研究打ち合わせをしますが、その後は、今回の帰国では、以前から頼まれていた講演会の約束と、新たなものを含めて1週間で8回ほどの話をする予定です。
最初の一般公開されている講演会は、5月17日(土)に水沢から実家の蘇原に帰る途中で、石川町駅近くの神奈川労働プラザで午後1時半から開かれます。「宇宙科学とはやぶさの夢」という題です。3時に終わってその後は少人数で4時まで懇親会だそうです。
翌日曜日は故郷で過ごし、19日(月)は岐阜国立高専で午後2時40分~4時10分に講演会をします。3~4年生と関係者一般が対象のようです。
20日(火)は、こちらでも有名な和歌山大の宇宙教育センター長の秋山さんのはからいで、信愛中学・高校で11時から「はやぶさ・はやぶさ2と惑星探査の未来」という題で話をします。また和歌山大サイエンスカフェで、夜6時半から8時まで「はやぶさ計画で日本の国益を守った私の戦い」という題でも話します。後者は大学から一般向けの少人数の会です。
21日(水)は芦屋にある六麓荘倶楽部で1時半から3時半まで「はやぶさ2と惑星科学の未来」という題で講演をしますが、会員制かもしれないので、興味のある方は私までご連絡ください。ちなみに、Facebookの私のURLは、
https://www.facebook.com/takihiroi
で、そこでMessage機能なり、E-mailでも使ってご連絡ください。
22日(木)は、大阪市立中央区民センターで大阪能率協会で2時から4時半まで、「はやぶさの成功と惑星探査の未来」という題で話します。
その後は、極地研に戻って研究の仕上げをし、24日(土)の午後1時からは、宮坂正大さんや阿部新助さんにお世話になって、日大の御茶ノ水キャンパスでライトカーブ研究会に参加し、「隕石の可視・近赤外分光サーベイとその固体惑星探査への応用」と題した招待講演をします。ネット中継もされるそうです。
その日の夜は千葉に移動してホテルで一泊してから、翌25日(日)の午後の便でボストンに帰ります。こうしてまとめて書くと、やはり「はやぶさ」が題目に入った講演が多いのですが、どうしてもその人気が強くてリクエストが多いのです。でも、講演内容には「はやぶさ2」の話もだんだん増やしていますし、「かぐや」も忘れられないように少々言及しますし、最近では南極隕石の話を1つのきっかけにしてID理論の紹介もしています。極地研からは今回、私用が多すぎるといわれましたが、決して私用ではなく、国民の血税を使って打ち上げた「はやぶさ」そして今年12月に打ち上げる「はやぶさ2」の知られざる内幕を国民は知る権利があると思いますし、それを助けるのが科学者である私の義務でもあると考えます。
これを読んでおられる皆様、どこかでお目にかかることがありましたら、ぜひお声をかけてください。