The Planetary Society of Japan

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ハッブル宇宙望遠鏡が見た宇宙

Modified: December 03, 2016

Hubble Telescope 2011

 

2011年06月の画像

星が激発的に誕生するケンタウルス座 A

嵐模様の日の不気味な雨雲のように、ダストの暗い帯が巨大楕円銀河、ケンタウルス座Aを濃密に覆っている。ハッブル宇宙望遠鏡が、紫外線から近赤外線波長でとらえたパンクロ光景(panchromatic view)である。この画像は、若い青色の星団の輝きが明らかにし、通常はダストでぼやけて見える領域を垣間見せている。

ケンタウルス座 A のガスとダストで捻じ曲がった形は、過去における他の銀河との衝突とその後の合体の証拠を示している。このイベントで生じた衝撃波は、水素ガスの雲の圧縮を引き起こして激発的な新星の誕生を誘発した。この画像では、赤色の領域がそれに当る。

ケンタウルス座 A は、地球からわずか 1100万光年の距離にあり、その活動が活発な銀河の中心部は地球に最も近い。ケンタウルス座 A の中心には高速ガスを噴出する超巨大ブラックホールが存在するが、この画像では全く見られない。この画像は、2010年7月に撮影された。
 

 

2011年04月の画像

ユニークな構造の特異銀河 Apr 273

バラの花のような形をした銀河を持つ Arp 273。この銀河は、渦巻銀河 UGC1810(上)、その伴銀河 UGC1813(下)及び矮小銀河(画面の外)の三つの銀河の重力の相互作用で形成された特異銀河の一つである。ARP273 は、地球から約 3億光年離れたアンドロメダ銀河に位置している。

画面の二つの銀河の距離は、数万光年離れている。UGC1810 の最上部を横切る青い宝石のような斑点の列は、強烈な光を放出している高温の若い星の群である。UGC1810 の渦巻腕は、その下を通過する UGC1813 の重力に引っぱられて歪み、非対称な構造を示す。明るく輝く UGC1813 の中心核では、UGC1810 との相互作用で爆発的な星形成が起こっている。

二つの銀河の間の質量の差が大きい場合は、小さい質量の銀河の通過は比較的速く、そのため大きい質量の銀河はこうした特異な形状を示す。また、UGC1813 の中心核で星形成が活発なのは、星形成の材料となる中心核のガスを UGC1810 ほど消耗していないからと考えられている。UGC1810 の質量は、UGC1813 の約5倍ある。
 

この画像は、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測開始21周年を記念して公開された。2010年12月17日、HST 搭載の新高性能カメラ WFC3 が、紫外線、青、赤のフィルターを使って撮影した画像を合成したものである。
 

 

2011年03月の画像

優美な渦巻銀河 NGC 5584

若い星々の明るく青い輝きが NGC5584 の優美な渦巻アームをなぞっている。薄く暗いダストの筋は古い星々のすみかで、黄色がかった銀河中心から流れ出ているように見える。

いたるところに散在している赤色を帯びた点のほとんどは、この銀河の背後にある銀河である。NGC5584 は、地球から 7200万光年の距離にあるおとめ座に位置している。

NGC5584 にある無数の星の間に、(※)ケフェイド変光星と呼ばれる脈動星と新しい超弩級の爆発を引き起こす Ia 型超新星が存在する。この変光星と超新星は、宇宙の膨張率を算出するための、正確な距離測定マーカーとして利用されている。NGC5584 は、宇宙の膨張率の算出に利用される八つの銀河の一つである。このタイプの銀河では、NGC5584 の 250個を含む 600個以上のケフェイド変光星が観測されている。

ケフェイド変光星は、その固有の明るさに密接に合致した割合で脈動し、比較的近くの銀河との距離測定の規範となっている。Ia 型の超新星は同じ明るさで輝き、比較的遠距離からも観測できる。この画像は2010年01月から04月の間に、可視光で撮影された数枚の画像を合成したものである。

※ ケフェイド変光星:脈動する変光星の一種で、5.4日の周期で 3.6~4.3等級の変光を繰り返す。この種の星は内部構造が不安定であるため、膨らんだり縮んだりする脈動を繰り返す。ケフェイド変光星は黄色の巨星で、太陽の 1万倍ものエネルギーを放出している明るい星である。
 

 

2011年02月の画像

渦巻銀河 NGC 2841 の最新画像

地球から 4600万光年離れたおおぐま座に位置する渦巻銀河 NGC2841 の荘厳な姿である。美しい無数の星とダストの筋があやなす光景が見事にとらえられている。中央の明るい領域が、この銀河の中心である。銀河中心から外へ向かう渦巻はダストの筋で、多数の白色の中年の星に影を投げかけている。

この画像で特徴的なのは、新星の誕生を示すピンク色の輝線星雲が一際少ないことである。これは、若くて青色の星の超高温の放射と超音速風が、残っているガス(ピンク色に輝く)を一掃し、そのためにこれ等の若い星が誕生した領域における星の更なる生成が止まったためと考えられている。現在の NGC2841 における星生成率は、輝線星雲で輝いている他の渦巻銀河と比べると低い。この画像は2010年01月05~07日にかけて、ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ(Wild Field Camera 3)の異なる4つのフィルターを通して撮影された。フィルターの波長は、紫外線から可視光線そして近赤外線までのレンジまでである。
 

 

2011年01月の画像

不思議なハニーの天体の正体

宇宙の変わり者として知られているハニーの天体(Hanny's Voorwerp)の赤外線画像である。Voorwerp はオランダ語で物体を意味する。ハニーの天体は、地球から 6億5000万光年離れた小獅子座に位置していて、この画面の中央近くに位置する大渦巻銀河 IC2497 の下に、ぼんやりしたかすかな輪郭として見えるガス雲で、主に酸素光の輝きで見られる。

ハニーの天体は2007年に発見され、IC2497 を取り巻く長さ 30万光年の帯状のガスの一部であることが分かっている。IC2497 の左側に見えるのは、この大渦巻銀河の伴銀河である。2010年04月04日に近赤外線で撮影されたこの画像は、二つの銀河をほぼ真上から眺めたものである。
 

 

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