The Planetary Society of Japan

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ハッブル宇宙望遠鏡が見た宇宙

Modified: December 03, 2016

Hubble Telescope 2006

 

2006年12月の画像

大マゼラン星雲の星形成領域 LH 95

LH 95 は、地球から約 16万光年離れた大マゼラン星雲に数百もある星形成領域の一つである。以前の地上の観測では青色の、明るい質量の大きい巨星しか観測できない領域であったが、ハッブル宇宙望遠鏡の登場により、低質量の星の質量や年令の観測が可能になった。

この画像は、低質量の新しい星たちが誕生した領域を示している。大マゼラン星雲は、天の川銀河に比べると水素より重い元素の量が少ないため、銀河系とは異なる銀河における星の誕生に関する格好の研究対象となっている。

大マゼラン星雲にある最大の星は、質量が我々の太陽の少なくとも3倍あり、強力な恒星風と高レベルの紫外線を放出して周囲の星間ガスを熱している。強力な恒星風に抗して残った星形成領域は、濃いダストのフィラメント(線状構造)で、背後の巨星が放つ青い光を吸収してやや赤味を帯びて見える。大マゼラン星雲は、小マゼラン星雲とともに、天の川銀河のお伴の銀河である。この画像は、2006年03月に撮影された。
 

 

2006年11月の画像

ハッブルの変光星雲(NGC 2261)

ハッブルの変光星雲(NGC 2261)は、地球から 2,500光年離れたいっかくじゅう(一角獣)座に位置する明るい扇形の星雲である。エドウイン・ハッブル(1889-1953)が、1900~1916年の観測でこの星雲の形と明るさが変化することを発見したことから、この名前がつけられた。

この変光星雲は、ガスとダストが集まって出来た雲で、その先端は明るい不規則変光星(いっかくじゅう座R星)に照らされて白く輝いて見える。変光星とは、規則的あるいは不規則的を問わず、星が放出する光の出力が変化する星のことである。この変光星雲の明るさの変化は、濃いダストの動きと R 星の光の強弱により起こる。

R星は強力な赤外線放射天体で、太陽の 10倍の質量を持ち、年令は 30万才であると推定されている。この画像は1995年02月05日に撮影された。
 

 

2006年10月の画像

触覚銀河(NGC 4038/4039)

これは、二つの渦巻銀河が合体して一つの銀河になる過程にある衝突銀河の最も鮮明な触覚銀河の画像である。この銀河は、地球から約 6,200万光年離れた地球に最も近く最も若い衝突銀河の一つである。下に長く伸びた銀河の一部が昆虫の触覚のように見えることからそう呼ばれる。

数億年前から始まった合体が完結するまでには、数 10億個の星がこの銀河で誕生するようである。触覚銀河は、銀河どうしの合体で何が起こるかを知る手がかりになると考えられている。

銀河のかすかな領域の半分には、数万個の星が存在する。左右に見える二つのオレンジ色の小球体は、主に古い星から成るもとの銀河の中心核で、触覚は二つの中心核から伸びている。中心核の周囲を茶色のダストが覆っている。この画像は、2004年07月21日と2005年02月16日に撮影された画像を合成して作成された。
 

 

2006年09月の画像

カシオペア座A:超新星爆発の後に現れた美しい世界

カシオペア座 A は、天の川銀河で最も若い超新星爆発の残骸の泡である。この明るい電波源は、地球から約 1万光年先のカシオペア座に位置している。爆発当時の記録はないが、この超新星爆発は1667年前後に起こったに違いないと推定されている。

爆発の瞬間、短時間ながら天の川銀河は非常に明るく照らされたと考えられている。超新星爆発は、自分自身の重力の重みに耐えられず大爆発を起こして崩壊する巨星の終焉を意味する。こうした大爆発により、巨星の外層は吹き飛ばされて宇宙空間へ広がっていく。

カシオペア座 A の残骸は、超新星爆発の衝撃波により生じた熱で美しく輝く。明るい緑は酸素、青は水素と窒素、赤と紫は硫黄が豊富な残骸の輝きである。この画像は、2004年03月と12月に撮影された 18枚のフレームを合成して作成された。
 

 

2006年08月の画像

最も明るく最も高温の星の集団のすみか:大マゼラン雲

大マゼラン雲にある、星が盛んに誕生する領域 N 180B の幻想的な眺めである。大マゼラン雲は、地球から 16万光年離れた不規則銀河で、小マゼラン雲(地球からの距離は 21万光年)と共に天の川銀河に最も近い伴銀河の一つである。

N 180B には、OB アソシエーションと呼ばれるゆるやかな若い星の集団が存在する。OB とは、非常に明るく高温のスペクトルが O 型星と B 型星のことである。O 型星は最も高温で、その表面温度は 2万8,000~5万ケルビンで青白く輝いている。B 型星の表面温度は 1万1,000~2万5,000ケルビンで、色は同じく青白い。

N 180B に最も温度が高い O 型星が存在することは、質量が最も重い巨星がこの領域に存在していることを示唆している。O 型星の寿命は比較的短く、わずか数 100万年くらいである。この画像は、1998年04月29日に撮影された。
 

 

2006年07月の画像

壮大な宇宙の花火

超巨星の爆発(超新星爆発)で出来た壮大な宇宙の花火である。この光景は、地球から 21万光年離れた小マゼラン雲にある、N 76 と呼ばれるカラフルで巨大な星形成領域の縁の一部である。 青緑色の構造(画面下)は、超新爆発を起こした巨星の残骸(E 0102 と呼ばれる)で、N 76 から約 50光年の距離に位置している。小マゼラン雲は、大マゼラン雲とともに天の川銀河の伴銀河の一つである。

E 0102 の色合いは、この構造が非常に大量の酸素で占められているためである。これは、古い巨星が爆発する前に水素のほとんどをその恒星風とともに吹き飛ばしてしまったためと考えられている。対照的に、N 76 からは主に水素の輝きが放出されている。

この巨星の質量は太陽の 20倍以上、明るさは数万倍もある。しかし、その生涯は約 2,000万年と非常に短い。この種の星は、生涯を通して強烈な恒星風を保ち続ける。この画像は、2003年10月15~16日に撮影された。
 

 

2006年06月の画像

真横から眺めた銀河

斜めの細く暗い構造は、銀河を二分するガスとちりの集まりである。これは、地球から 4,400万光年離れたりゅう座の方向に位置する銀河 NGC5866 を真横からとらえた光景である。構造の中央のほのかに赤味を帯びている部分は、銀河の中心部を取り囲むバルジ(膨らみ)である。構造に平行に走る青い線は星の集団で、その周囲をハローが覆っている。NGC5866 の直径は約 6万光年である。

NGC5866 は、“S0”タイプに属する銀河である。真上から見ると、このタイプの銀河にはバルジと小さなアーム(渦巻腕)があることから渦巻銀河に分類されるが、その巨大なバルジからレンズ銀河とも呼ばれる。

構造が中心からややずれているのは、この銀河が遠い過去に別の銀河と遭遇したときに、その重力の影響を受けたためらしい。この画像は、2006年02月11日に撮影された。
 

 

2006年05月の画像

最も鮮明なスターバースト銀河

スターバースト銀河は、非常に高い割合で星形成が進行している銀河である。また、赤外線銀河とも呼ばれているように、全体放射量の 90 % 以上が赤外線で占められる。スターバースト銀河 M82 は、おおぐま座の頭部の近くある明るい銀河で、メシエ・カタログに明るい天体の一つとして収められている。

この画像は、これまで撮影された M82 の最も鮮明なである。青味を帯びた明るいディスク、そしてその中心から爆発的な勢いで噴出するピンク色の水素のプルーム(柱)が拡散している。この画像は、2006年03月に撮影され、ハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ16周年を記念して発表された。
 

 

2006年04月の画像

ボーク・グロビュール

明るいオレンジ色の星雲を背景に浮かび上がっている黒い雲状の物体は、ボーク・グロビュールと呼ばれる濃密なダストとガスの領域である。地球から約 9,500光年離れたカシオペア座にある星雲 NGC281 に位置している。グロビュールは、星形成過程の初期の段階を示すと考えられている。1940年代に、この天体の存在を提唱した米国の天文学者バート・ボークにちなんで命名された。

大きさが数百光年の分子雲が摂動を起こすと、局所的にダストとガスが密集した小さなポケットが出来る。こうしたポケットは、それぞれの重力で結合し合い、周囲のダストとガスを取り込んで成長する。こうして形成されたポケットの集合体が十分な質量に達すると、その中心部に星を生み出すグロビュールが形成される。しかし、グロビュールの全てに星形成領域が出来るわけではない。この画像は、2005年10月31日に撮影された。
 

 

2006年03月の画像

渦巻銀河 M 101 のアームの詳細な画像

ハッブル宇宙望遠鏡の高感度・高分解能カメラの威力で、これまでになく詳細な渦巻銀河のアームが観測された。観測されたのは渦巻銀河 M 101(別名回転花火銀河)で、この銀河のアームにある幾つものダストの筋が、航空写真で見る地球上の山間を流れる川のように見え、星形成のさかんな明るい高温の領域が、夜間飛行で撮影された大都市の無数の明るい光のように点在している。

M 101 は、地球から 2,500万光年離れたおおぐま座の方向に位置している。画面左上が明るい赤味を帯びて見えるのは、この銀河の中心から放射される明るい光のためである。この画像は、2002年11月13~16日に撮影された画像を合成して作成された。
 

 

2006年02月の画像

渦巻銀河 NGC 1309

明るい回転花火のような渦巻銀河。地球から 3億光年先のエリダヌス座に位置する明るい渦巻銀河(NGC 1309)の最新画像である。昨年(2005年)08月から09月にかけて、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載した可視光と赤外線カメラで撮影した画像を合成したものである。黄色がかった明るい銀河中心から伸びる青白い帯には無数の若い高温の星が集まっている。ここでは星が次々に誕生する。銀河中心の周囲に見える赤味を帯びた部分は、歳を重ねた古い星が集まっている領域である。

この渦巻銀河の近くには、爆発の光が2002年09月に地球に届いた超新星 SN 2002fk が存在する。超新星爆発は、連星系の一方の白色矮星が相手の星から物質を奪い取ってその質量が限界に達したため起こった。その非常な明るさは数週間続いた。
 

 

2006年01月の画像

抽象画のようなオリオン座大星雲の内部

地球から 1,500光年離れたオリオン座大星雲(M 42)の内部を、ハッブル宇宙望遠鏡が覗いた光景である。この星雲の中心部には、トラペジウムと呼ばれる青白く輝く四重星が位置している。この画像は、この四重星の南西方向に見られる色彩ゆたかなまるで抽象画のような複雑な領域である。

画面左下で明るく輝くのは、反射星雲に囲まれたオリオン座 LP 星である。そのやや左上に上に見える暗い領域は、LP 星の移動に伴い生じた反射星雲の空洞である。LP 星の右上でうっすらと輝くのは、2002年にハッブル宇宙望遠鏡が発見したオリオン座 LL 星である。LL 星は、トラペジウム(画面左上の外側)からゆっくり放出されるガスの流れでできたボーショックに覆われている。
 

 

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