The Planetary Society of Japan

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ハッブル宇宙望遠鏡が見た宇宙

Modified: December 03, 2016

Hubble Telescope 2008

 

2008年12月の画像

球状星団 M 13

これは、M 13 の中をきらめく雪片の渦のように動きまわる 10 万個以上の星を瞬間的にとらえた画像である。M 13 は、北天の最も明るく最も有名な球状星団の一つで、地球から 2 万5,000 光年はなれたヘルクレス座に位置していて、澄んだ冬の夜空では肉眼でもみることができる。

10 万個以上の星は、直径約 150 光年のこの星団の中で一生をおくる。この星団の中心部近くの星の密度は太陽の約 100倍もあるので、星どうしがぶつかり合って「青い迷い星(Blue Straggler)」と呼ばれる新しい星が生まれることがある。最も明るい赤味を帯びた星は、古い赤色巨星である。青白く輝いていのは、この星団で最も高温の星である。球状星団は天の川銀河周囲のハロー内に広く分布していて、その数は約 150 個になる。球状星団には、宇宙で最も古い星がいくつか存在する。これ等の星は、天の川銀河のディスク以前に誕生したと考えられている。

この画像は、1999年11月、2000年04月、2005年08月及び2006年04月に撮影された画像を合成して作成された。
 

 

2008年11月の画像

星の誕生で途方もなく明るい銀河の中心領域

これは、地球から 1100万光年離れたキリン座に位置する銀河 NGC1569 の中心領域の光景である。幅が 5,000光年ある中心領域は、誕生した数 100万個の若い星々が放つ光で途方もなく明るく輝いている。NGC1569 は、天の川銀河の 100倍の速さで新しい星を生み出している。

NGC1569 の中心領域(巨大な空洞)には、それぞれ 100万個以上の星が宿る3つの巨大な星の集団が存在する。中心領域に充満するガスは、既に超新星爆発を起こした多くの巨星により吹き飛ばされる。超新星爆発で生じた強烈なガスと粒子の流れは、周囲の巨大なガスの構造物を浸食する。画面左上では、二つの巨大なガスの泡がその内部の若い星々の放つ光で輝いている。大きい泡の幅は約 378光年、小さい泡の幅は約 119光年ある。この画像は、1999年09月、2006年11月及び2007年01月に撮影された画像を合成して作成された。
 

 

2008年10月の画像

星生成領域、NGC 3324

この画像は、星生成領域 NGC 3324 の縁を示している。この領域は、南天の巨大なカリーナ星雲(NGC 3372)の北西の隅に位置している。カリーナ星雲は、地球から約 7,200 光年離れたカリーナ座に位置している。

NGC 3324 は、カリーナ星雲内の高温の極めて質量の大きい若い巨星が放射する強力な紫外線と恒星風により生じた領域である。この画像に見られる柱のように突き出た構造は、こうした紫外線や恒星風に抗して存続している冷たいガスと暗いダストの集合体である。高さは数億光年に達する。しかし、強力な恒星が放出する紫外線と恒星風は、次第にガスとダストの集合体を浸食するためいずれは消え去り、輝く星の赤ちゃんがお目見えすることになる。この画像は、2006年03月と2008年07月に撮影された画像を合成したものである。

星生成領域 NGC 3324 は、1998年10月に始まった The Hubble Heritage Project 10 周年を記念して特に選ばれた。このプロジェクトでは、これまでに約 130 枚の宇宙の神秘と驚異的な美しさを示す画像が紹介されている。
 

 

2008年09月の画像

珍しい二つの渦巻銀河の眺め

夜空に浮かぶ電飾お面のような珍しい光景である。実は、二つの渦巻銀河が奇妙な配列になった状態をとらえた光景である。明るい大きな銀河の光を受けて、小さい銀河の周りに拡大するダストの幕が見える。しかし、残念ながら、地上の観測ではこうした立体的な眺めは望めない。

天文学者の計算によると、大きい銀河は地球から 7億8,000万光年離れた彫刻家座に位置している。二つの銀河の距離は分からないが、接触するほど近くはないとのことである。大銀河の大きさは天の川銀河とほぼ同じで、小銀河の約 10倍ある。画面全体に散りばめられている星々は、至近の渦巻銀河 NGC 253(画面左の外に位置している)に属している。この画像は、2006年09月16日に撮影された。
 

 

2008年08月の画像

楕円銀河 M 87

楕円銀河 M 87 は、春を代表する星座として有名なおとめ座に位置している。直径 12万光年もあるこの巨大銀河には、数兆個の星、超巨大なブラックホールそして 1万3,000個の球状星団が存在する。銀河の中心部では、黄色に輝く古い星の集団が黄色く輝いている。青く細長い構造は、ブラックホールの力でこの銀河の中心から放出されている原子より小さい粒子の流れである。

M 87 は、2,000個あまりの銀河からなるおとめ座銀河団の中央に位置しているため、その強力な重力作用でこの銀河団に属するいくつかの至近矮小銀河を引き付けて、徐々に大きくなったかもしれないと考えられている。M 87 は、太陽から 5億4,000万光年の距離にある。この画像は、2003年と2006年に撮影された画像を合成したものである。

※ 楕円銀河は、ほとんど 100億年より古い星で占められている。
 

 

2008年07月の画像

壮大なかみのけ座銀河団

かみのけ座に見られる銀河の大集団のことで、直径 2,000万光年以上の球状領域には数 1,000個の明るい銀河が輝いている。かみのけ銀河団は、大宇宙で最も銀河の密度が高い銀河団の一つである。これは、かみのけ銀河団の直径数 100万光年の領域をとらえた眺めである。

エイベル 1656 としても知られているこの大銀河団は、天の川銀河の北極の近い、地球から 3億光年の距離に位置している。この銀河団の中心にある銀河のほとんどは、楕円銀河である。楕円銀河は、やや青白くゴールドブラウン色の特徴のない綿毛球(fuzz-ball)のような形をしている。楕円銀河には、年老いた星が含まれている。

この銀河団の中心からはるか外側には、青白く輝くいくつかの渦巻銀河が見られる。渦巻銀河には、新しい星が誕生する低温のガスの雲(星生成領域)が存在する。この画像は、2006年11月~2007年01月に撮影された画像を合成して作成された。
 

 

2008年05月の画像

銀河の衝突で生まれつつある新しい銀河

宝石のように美しい構造とそこから突き出た細長い構造。これは二つの銀河の衝突で生まれつつある新しい銀河である。(※)Arp 148 と呼ばれる新銀河は、地球から約 450光年離れたおおぐま座に位置している。

衝突当初、両銀河の物質は中心部にひきつけられていたが、現在は拡散している。この画像は赤外線で観測されたもので、可視光では識別できない中心部の領域まで明らかになっている。1995年10月09~10日、2005年11月20日、2007年04月27~29日に撮影された画像を合成して作成された。

※ Arp 148 は、特異銀河の一つで、1966年に Halton Arp が編集したカタログに収録されている。
 

 

2008年04月の画像

オメガ星団(NGC 5139)

地球から 1万7,000光年離れたケンタウルス座に位置する特に明るい球状星団の一つである。銀河系には 200 あまりの球状星団が存在する。オメガ星団には 1,000万個の星が存在するが、その際立った明るさはそのうちの 200万個の星の輝きのためである。

この星団の中心部周囲の星の移動速度は、これまで予測されていたより速いことが、ジェミニ天文台(南米チリ)のスペクトル観測により明らかにされた。観測に携わった天文学者は、これは、オメガ星団の中心部に質量が太陽の約 4万倍ある中位のブラックホールが存在するためであろうと考えている。つまりブラックホールの強力な重力場により、中心部に近い領域の星の移動速度は加速されているのである。この画像は、2002年06月に撮影された。
 

 

2008年03月の画像

惑星状星雲 NGC 2371

きらびやかなに輝く惑星状星雲 NGC 2371。地球から約 4,300光年離れたふたご座に位置している。惑星状星雲は、質量が太陽なみの星が赤色巨星としての過程を経たあと、その生涯を終える前に見せる姿である。

外縁の物質を放出した星は、星雲の中心にピンクの斑点(中心星)として見えている。惑星状星雲がこのように華やかに輝くのは、中心星が放出する紫外線のためである。中心星の温度は、24万 ℃ と猛烈な高温である。

星雲の上側に突き出たように見えるピンク色の部分は、比較的冷たく濃度が高いガスの雲の存在を示している。また、星雲のあちこちに見えるピンク色の小さな斑点は、比較的濃度が高いガスの塊である。これ等の塊は、星が放出するガスのジェットの方向によりその位置が変る。

惑星状星雲は、ガスの消散によりわずか数千年で姿を消してしまう。残った中心星は次第に冷却していき、最終的には白色矮星となって生涯を閉じる。この画像は、2007年11月に撮影された。
 

 

2008年02月の画像

楕円銀河 NGC 1132

楕円銀河 NGC 1132 は、地球から約 3億1,800万 km 離れたエリダヌス座に位置している。楕円銀河とは、楕円形の渦巻構造を持たない特徴のない銀河のことで、宇宙の銀河の約 80 % はこのタイプで占められている。楕円銀河には、ほぼ球形から長円形など様々な形の銀河があり、星の数は数百万個から数兆個の星に達する。これ等のほとんどは、100億年以上の古い星(黄色く輝いている)である。銀河内のガスが非常に少ないので、もはや新しい星は誕生しない。

NGC 1132 には、他の銀河に比べてぼう大な量のダークマターが密集していることから、化石グループ(Fossil Group)の名前が付けられている。このタイプの銀河は、ある銀河群内のすべての銀河が完璧に合体したか、あるいは中規模銀河のグループがある一定の領域内もしくはある一定の期間に圧縮されて成長し一つの銀河になったか、のいずれかであると考えられているが、正確な起原の理由はまだ謎である。

この画像は、2005年及び2006年に撮影されたデータをもとに作成された。
 

 

2008年01月の画像

矮小銀河ホルムバーグ IX

星が不規則に散らばっているように見えるこの天体は、ホルムバーグ IX と呼ばれる矮小不規則銀河である。地球からの距離は約 1,200万光年で、おおぐま座の M81 の外縁のすぐ外側に位置している。この銀河は、大きさや構造の不規則性において、天の川銀河の伴銀河である小マゼラン雲に似ているいわゆるマゼラン型銀河である。

ホルムバーグ IX には、2,000個以上の星が存在するが、年齢が 10億年以上の古い星はわずか 10 % に過ぎず、残りは 1,000万年~2億年の若い星であると推定されている。ホルムバーグ IX と M 81 を取り巻く青白い不鮮明な構造は、これ等二つの銀河の重力の相互作用で生じた星生成領域である。ホルムバーグ IX の周囲には、多くの低質量の銀河が存在するが、総て同じ仲間の銀河であるようである。この画像は、2006年03月06日に撮影された。
 

 

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