The Planetary Society of Japan

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ハッブル宇宙望遠鏡が見た宇宙

Modified: December 03, 2016

Hubble Telescope 2010

 

2010年12月の画像

クリスマスの飾りのような超新星爆発でできたリング

宇宙を漂う繊細なガスの泡のリング。まるで天空のクリスマスの飾りのように見える。この聖なる泡は、超新星爆発の衝撃を受けて広がるガスによる造形物である。SNR 0509 と呼ばれるこの泡は、地球から約 16 万光年(1光年=約 9 兆 4600 km)離れた大マゼラン星雲(LMC)内の巨星が生涯の最期で起こした強力な超新星爆発の痕跡である。

泡の表面に見える波状は、周囲の星間ガスの濃度のわずかな変化によるものが、噴出物の破片により内部から起こされたものであろう。リングの直径は 23 光年で、秒速 5,000 km 以上の速さで拡大している。

SNR0 5091 は、タイプIaとして知られている特にエネルギッシュで明るい超新星爆発に分類される。タイプ Ia とは、連星系の片方の星である白色矮星で大爆発が起こり、相手の星のからの質量移動が原因で起こる超新星爆発と考えられている。

この超新星爆発は約 400年前に南天で起こったと考えられているが、これが観測されたという記録は残っていない。この画像は、2006年10月28日と、2010年11月04日に殺意去れた画像を合成したものである。
 

 

2010年10月の画像

回転花火のような渦巻銀河 NGC 3982

宇宙には渦巻銀河があふれているが、その形が同じものは存在しない。NGC 3982 は、素晴らしい渦巻腕をもつ豊かな星生成の領域である。その渦巻腕には、ピンク色(水素の発色)に輝く星生成領域(渦巻腕の中に点々と散らばっている)、銀河の外縁にから中心部にかけてこれまでになく密に広がる青く輝く新しい星団、そして未来世代の星の生成材料を供給する黒い塵の帯が存在する。NGC 3982 は、地球から約 6800 光年離れたおおぐま座に位置している。この銀河の幅は約 3 万光年で、我々の天の川銀河の三分の一の大きさである。

NGC 3982 は、2000年3月と2009年8月に、搭載された三基のカメラ- WFPC2、ACS 及び WFC3-を使って撮影された画像を合成して作成された。
 

 

2010年09月の画像

エータカリーナ星雲に位置する巨大なガスとダストの柱

地球から7500 光年離れたりゅうこつ座にあるエータカリーナ星雲に見られる巨大な宇宙の柱である。冷たい水素ガスとダストで出来たこのこれ等の柱の高さ 1光年ある。

周囲の巨星から放出される荒々しい恒星風や強力な光の放射により、エータカリーナ星雲のガスやダストが吹き飛ばされ、そのため星雲の中に空洞や様々な構造体が形成される。画面に見える暗黒色の無数の柱の構造体は、特ガスとダストの密度が高い領域で、この内部では次々に新しい星の玉子が生成されている。

この画像は、2005年と2010年に撮影された画像を合成したものである。これ等の暗黒の柱はいずれ周囲の星からの恒星風や光の放射で消失し、そのあとに明るく輝く若い星々が現れる。地球から 7000 光年離れた「象の胴体」と呼ばれるわし星雲の柱の構造体は特に有名である。
 

 

2010年08月の画像

かみのけ座銀河団の奥深くに位置する荘厳な渦巻銀河

地球から 320 光年離れたかみのけ座銀河団の奥深くに位置する荘厳な渦巻銀河(NGC 4911)を真上から見た眺めである。この銀河の中心部近くには、豊富なガスとダストから成る領域が存在する。この領域は、新たに誕生した明るい星の群やその内部で星の生成が進行していることを示唆するピンク色に輝く水素の雲の群の光りを受けてシルエットとして浮かび上がっている。銀河中心から伸びる外縁部の渦巻腕が詳細にとらえられている。

NGC 4911 を含むこの銀河団の渦巻銀河の中心に近い渦巻腕は、相互の引力により変形されつつある。NGC 4911 の薄い外縁の渦巻腕は、画面右上に位置する渦巻銀河(NGC 4911A)の引力に引っ張られて歪められつつある。このため NGC 4911 外縁部の物質は剥ぎ取られ、最終的には星団の中心部を通して撒き散らされ、この銀河団の星や星団に燃料を供給することになる。

かみのけ座銀河団にはほぼ 1000 個の銀河が存在する。至近の宇宙では最も銀河の密度が高い銀河団の一つである。この銀河団における銀河の密度は非常に高いので、銀河どうしの引力による引っ張り合いや衝突が頻繁に起こる。質量が同じ銀河が合流すると、楕円銀河が形成される。楕円銀河の形成は、銀河の存在密度が高い銀河団の中心部で起こるようである。この画像の作成には、2006年、2007年及び2009年にハッブル宇宙望遠鏡に搭載されたカメラが合計 28 時間に及ぶ露出時間をかけた撮像が必要とされた。
 

 

2010年07月の画像

天空に無数の宝石を散りばめたようなスターバースト星団

天空に無数の宝石を散りばめたようなきらびやかな光景。これは、地球から 2 万光年離れたりゅうこつ座に位置するスターバースト星団(NGC 3603)の眺めである。スターバースト星団とは、非常に高い割合で星の形成が進んでいると考えられる星団のことである。

この星団がこれほどはっきり見えるのは、高温の星々が放射する紫外線と恒星風がこの星団を覆うガスとダストの雲にとてつもなく大きな空洞を穿っているからである。この星団のほとんどの星々は、ほぼ同じ時期に誕生したが、それ等の大きさ、質量、色は様々である。星の一生は、持って生まれた質量により決まる。従って、この星団は生涯の様々な段階にある星云を宿しているので、科学者は様々な星の生涯のサイクルを詳細に観察することが出来る。特に、遠い宇宙で誕生する巨星の初期段階の研究には格好の材料であるとされている。寿命が数千万年の巨星は、最終的には超新星爆発を起こして生涯を終える。

この画像は、2009年08月と12月にハッブル宇宙望遠鏡が可視光と赤外線で撮影した画像を合成したものである。
 

 

2010年06月の画像

原始惑星状星雲:レッド・レクタングル

地球から 2300 光年離れた一角獣座に位置する恒星 HD 44179 は、レッド・タングル(赤い長方形)として知られている変わった構造に囲まれている1975年に地上の観測で初めて発見された時の形や色から、この名前が付けられた。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡の精密な観測により、レッド・レクタングルは長方形というよりむしろ、梯子の横木のように狭い間隔で並ぶ輝く複雑なガスの線で形づくられた X 型の原始惑星状星雲であることが分かった。

太陽と同じ質量の恒星は、生涯の最終段階に達するとそのガスや物質を放出して美しい惑星状星雲を形成する。では何故このような変わった形なのだろうか。ハッブル宇宙望遠鏡の観測によると、この原始惑星状星雲の中心に濃いダストの環で囲まれた非常に接近した二つの星(連星)が存在している。天文学者によれば、このことがこの星雲が変わった形をしている原因ではなかろうかとのことであるが、本当の理由は未だ分かっていない。

レッド・タングルは今、手持ちの質量を放出しながら惑星状星雲に変りつつある。質量の放出が終わると、非常に高温の白色矮星が星雲の中心部に出現し、明るい紫外線を放射して周囲のガスを輝かせる。画面の赤色は、水素が紫外線に励起されて輝く色である。この画像は、2007年06月07日に撮影された。
 

 

2010年05月の画像

真正面から見た土星

この画像は、2009年01月と03月にハッブル宇宙望遠鏡が土星を真正面からとらえた画像である。細い帯となった赤道上のリングを中心に、両半球がほぼ相称的にとらえられている。土星の両極がこのように同時にとらえられるのは珍しく、土星が太陽の周りを一周する 30 年間に二度しか起こらない。
 

 

2010年04月の画像

しし座の大立者 M 66 グループ

11月の流星群で有名なしし座は、地球から約 3500 万光年離れたところに位置している。このしし座に存在する数ある銀河の中でユニークなのが、三つの渦巻銀河(M65、M66 及び NGC 3628)から成る Leo Triplet と呼ばれる M 66 グループである。なかでも M66 の渦巻腕は非総称的で、その中心部は明らかにあるべき位置からずれている。また、M66 の奇妙な構造は、他の二つの渦巻銀河の重力の影響によるものと考えられている。これら三つの中で最大の銀河は、直径約 10 光年のM66である。この画像は、2004年と2009年に撮影された画像を合成した作成された。
 

 

2010年03月の画像

ヒクソン・コンパクト・グループ 31(HGC 31)

この画像に見える四つの矮小銀河が共に誕生するまでには数 10 億年もかかった。四つの銀河は、ものすごい花火を発してたちどころに巨大で高温の若い星々を生成した。若い星々は、大量の紫外線を放出して周囲のガスの雲を熱し美しく輝かせた。

矮小銀河は、通常地球から数 10 億光年の距離に位置している。しかし、これ等の四つの銀河の距離は、わずか 1 億 6600 万光年と地球に比較的近い。画面左の明るく歪んだ銀河(不規則銀河)は、二つの銀河が合体して生成した。二つの銀河が正面衝突したことにより、それぞれの銀河から放出された長いデブリ(残骸)の筋の中で無数の星が誕生した。

シガーの形をした歪んだ銀河は、別の不規則銀河である。筋状の星団がこれ等三つの銀河を結び付けて銀河のトリオを形成している。大きい銀河から伸びる長い筋状の星団が、右下の四つ目の銀河に向かって伸びている。いずれ銀河のカルテットが形成されると考えられている。

最も大きく明るい星団には年齢が 1000 万年以下の若い星が少なくとも 10 万個存在している。天文学者によれば、もう 10 億年経つと四つの銀河は相互作用により、巨大な楕円銀河に成長するとのことである。この画像は、2006年08月08日に撮影された。画面中央で明るく輝いているのはヒクソン・グループより前の領域の星である。
 

 

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