The Planetary Society of Japan

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ハッブル宇宙望遠鏡が見た宇宙

Modified: December 03, 2016

Hubble Telescope 2005

 

2005年12月の画像

極リング銀河 NGC 4650A

銀河の周りを巨大なリングが取り巻いている極リング銀河 NGC 4650A。まるで天空の十字架のようにきらめいている。知られているこのタイプの銀河は 100 個に過ぎない。NGC 4650A は、地球から約 1 億 3,000 万光年の距離にあるケンタウルス座の方向に位置している。

この天体は、横に広がるオレンジ色の年老いた星が集まっている銀河と、この銀河を取り巻く縦に広がる青白いガスやチリのリングからなっている。リングの中で新しい星が誕生する。こうした珍しい構造が形成された理由は明らかではないが、おそらく 10 億年以上前に二つの銀河が衝突した結果、ガスをはぎ取られた小さいほうの銀河の残骸がリングになったと考えられている。この画像は1999年04月07~09日に撮影された。
 

 

2005年11月の画像

オリオン座に位置する反射星雲 NGC 1999 の中心領域

地球から 1,500 光年離れたオリオン座には、有名な馬頭星雲やオリオン座大星雲 M42 など興味深い天体が数多くある。反射星雲とは、街灯の光で淡く光る霧のような存在で、自前の光源を持ち合わせていない天体のことである。

NGC 1999 は、背後にある V 380 オリオンと呼ばれる非常に若い変光星(画面で白く見える)により照らされて輝いている。この変光星の表面温度は約 1 万 ℃ と太陽の約 2 倍、質量は約 3.5 倍もある。NGC 1999 は、この変光星の形成時の雲状の残量物質が星の光を浴びて反射星雲として見える。

中央のアルファベットのTを横倒しにしたような暗い領域は、ボークの胞子と呼ばれる。

背後の光を完全に遮っている冷たいガスや塵の雲である。この領域では、ガスや塵が自らの重力のために凝縮することにより、新しい星が形成されていると考えられている。この画像は、2000年01月21日に撮影された。
 

 

2005年10月の画像

超新星爆発の衝撃波で形成されたカラフルな構造

マゼラン大星雲は、地球から約 16万光年離れた天の川銀河のお供の銀河(伴銀河)である。約 3,000年前、この銀河にあった質量が太陽の 10~15倍ある巨星が超新星爆発を起こした。この画像は、大爆発で形成された複雑でカラフルな構造である。

N 132D と呼ばれるこの構造は、超新星爆発により生じた秒速 2,000 km 以上で広がる残骸が引き起こす衝撃波が大マゼラン雲内の高密度で低温のガスや塵と衝突して形成された衝撃波面である。この衝撃波の激突で、ガスは約 1,000万 ℃ に熱せられてX線を放出する。

この画像に見られピンク色の雲は水素ガス、紫色の筋は酸素ガスが衝撃波に反応した輝きである。この構造を包む蹄鉄型の雲は X 線の輝きである。N 132D は、現在もマゼラン大星雲内で拡大し続けている。この画像は、2000年07月20日に X 線天文衛星チャンドラが撮影した画像と、2004年01月21~22日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像を合成して作成された。
 

 

2005年09月の画像

ブーメラン星雲(ESO172-7)

美しい羽根を広げて宇宙に舞う蝶のような天体。地球から約 5,000光年離れた、南天のケンタウルス座の方向に位置するブーメラン星雲である。対称的に左右に伸びる羽の部分は、双極流出(bipolar outflow)と呼ばれる。これは、ガスと塵でできた雲が中心星が放つ光に反射して光るためである。ブーメラン星雲の長さは約 2光年。

こうした星雲が形成されるのは、進化を続ける非常に若い星もしくは死におもむく赤色巨星が放出する物質のためである。ブーメラン星雲を形成するのは、後者の年老いた星である。この星雲の中心星は、既に 1,500年以上も物質を放出し続け、その総量は太陽の質量の 1.5倍に相当する。

ブーメラン星雲の形成には二つの考えがある。一つは、中心星の赤道周囲をゆっくり移動する物質の円盤が妨げとなって物質が両極付近からのみ噴出するためとする考えである。二つ目は、中心星の磁場が放出される物質を抑えて、このような相似形の領域が生まれるとする考えである。この画像は、2005年05月に撮影された。
 

 

2005年08月の画像

いて座の宝石箱(SGR-1)

天の川銀河のほとんどは、ダストで覆われてぼんやりとしている。この画像は、地球から 2万3,000光年離れたいて座の幅 13.3光年のダストのない領域を撮影した画像である。無数の星が撒き散らされた宝石のように輝いている。この領域は、天の川銀河の進化を研究するには最高の場所であると言われている。

青白く輝いているのは若い高温の星で、明るさは太陽の 10倍に達する場合もある。赤く輝くのは、二種類の赤色星である。小さい赤色星の温度は通常太陽の半分程度で、燃料をゆっくり消費するため大きい赤色星(赤色巨星)より寿命が長い。赤色巨星は、燃料を消費した進化の最後の段階にある星である。寿命が終わると赤色巨星は膨張して非常な低温になり、その生涯で最も明るく輝く。太陽が赤色巨星になると、地球軌道あたりまで膨張すると考えられている。この画像は、1994年08月21日に撮影された。
 

 

2005年07月の画像

きらびやかな球状星団 M15

地球から約 4万光年離れた球状星団 M 15(あるいは NGC 7078)は、天の川銀河を取り巻く広大なハローを形成するほぼ 150 の球状星団の一つである。秋の宵、北天で羽ばたく天馬ペガサス座の方向に位置する、何十万個という古い星の群れである。

オレンジ色の星は赤色巨星である。中心部で青白く見えるのは高温の若い星である。画面左上でピンク色に輝いているのは、その一生を終えた赤色巨星が外層部のガスを放出したためにできたケストナー648と呼ばれる惑星状星雲である。

惑星状星雲の名前の由来は、この天体を最初に発見したウイリアム・ハーシェル(1738 - 1822)が、丸い形が惑星のディスクに似ていることからそう命名したことによる。しかし、惑星とは全く関係なく、実態は M 15 の中心にある若い星が放射する紫外線を浴びて輝くガスの集まりである。この星団を構成する古い星の年齢は約 120億年、天の川銀河の第一世代に属する星である。この画像は1998年12月に撮影された。
 

 

2005年06月の画像

最期を迎えた巨星が撒き散らす色鮮やかな残骸

一生を終えた巨星が起こした超新星爆発で放出された残骸(ガスやちり)が、鮮やかな色に染まって宇宙空間に広がって行く様子である。超新星爆発を起こしたのは、天の川銀河から約 16万光年離れた南天の大マゼラン雲にある N63A と呼ばれる星形成領域から 10~5光年離れた巨星で、質量は我々の太陽の 50倍以上もあった。N63A の至近距離には、こうした大質量の巨星が多数存在する。ハッブル宇宙科学研究所の天文学者によると、今から数百万年後にはガスやちりが N63A に到達し、我々の太陽に似た恒星系で惑星を誕生させるきっかけになるかも知れないとのことである。大マゼラン雲と小マゼラン雲(約 21万光年先)は、銀河系の伴銀河である。これは、1997年と2000年に撮影された画像を合成したものである。
 

 

2005年05月の画像

珍しい渦巻銀河のペア

南天のうみひび座にある渦巻銀河 NGC3314 は、二つの渦巻銀河からなっている。手前(画面中央)に見えるのが NGC3314a で、背後の大きい銀河が NGC3314b である。NGC3314a の渦巻き腕の中の黒く見える部分は、今天文学界が注目しているダークマター(暗黒物質)である。背後の NGC3314b が放射する光を吸収して際立って見える。

NGC3314a の中心の明るい部分は、新しく誕生した星たちの集まりである。NGC3314a は地球から約 1億1,700万 km、NGC3314b は地球から約 1億4,000万 km に位置している。この画像は、1999年04月04日及び2000年03月10日に撮影された画像を合成したものである。
 

 

2005年04月の画像

楕円銀河 NGC 1316

観測者が「ちりまみれの兎」のようだと言い表した楕円銀河 NGC 1316。この楕円銀河は、地球から約 7,500万光年離れた南天の炉座のはずれに位置しており、4等より明るい星がないこの星座の中では最も明るい楕円銀河の一つである。楕円銀河とは、渦構造をもたない楕円形の銀河のことで、星の大部分は 100億年以上の年老いた星たちで占められている。その光の供給源は主に、進化の最終段階にある赤色巨星である。

NGC 1316 は、数十億円前のガスの豊富な二つの渦巻銀河どうしの大衝突で誕生した。幅が約 6万光年あるこの楕円銀河は、全天で最も大きく最も強力な電波源の一つである炉座 A として知られている。この画像は、2003年03月に撮影された。
 

 

2005年03月の画像

消滅する運命にある不規則銀河 NGC 1427A

小銀河が大銀河と衝突するとどうなるか。これは、地球から 6,200万光年離れた炉座銀の方向にある小さな不規則銀河 NGC 1427A が、大銀河(画面外の左上)に引き寄せられていく姿である。秒速 600 km の速度で移動している NGC 1427A は大銀河の重力の影響で本来の形が歪み始めている。NGC 1427A のガスは、大銀河のガスのために圧縮され、自らの重力が原因で崩壊し始める。この結果、NGC 1427A の至る領域に見られる新しい星形成領域が出現する。この画像は、2003年01月に撮影された。
 

 

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