The Planetary Society of Japan

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ハッブル宇宙望遠鏡が見た宇宙

Modified: December 03, 2016

Hubble Telescope 2000

 

2000年12月の画像

ちょっと不気味な反射星雲 IC 349

冬の北天を代表するプレアディス星団(すばる)は、地球から 380光年離れた牡牛座の肩先に群れる散開星団である。ギリシャ神話に登場するプレアディス姉妹の化身とされるひときわ明るい星達で有名であるが、望遠鏡で覗いて見ると何百というかすかな星が群がる星団であることが分かる。プレアディス星団の星は、約 5,000万年前に生まれた青白く輝く若い星で、我々の太陽より 1,000倍も明るい。

ちょっと不気味に見えるのは、明るい七つ星の一つメローペに照らし出されたちり交じりの冷たいガスで出来た反射星雲 IC 349 である。この反射星雲は、メローペから噴き出す恒星風によって少しづつ崩れている。仮に千年後まで生き残っていれば、またメローペの前面を通過するとのことである。メローペは画面右上に位置している。画面の上方から射し込む鮮やかな光線は、ハッブル宇宙望遠鏡の中で生じた光学現象で実在するものではない。

通常星団を囲む星雲は、新しい星の誕生によって生じた物質のなごりであることが多いが、この反射星雲はこれとは関係のない、プレアディス星団の前方を秒速約 11キロで漂流しているいわば「独立系」の雲である。この画像は、1999年09月19日に撮影された。

1890年、アメリカ・カリフォルニア州のリック天文台でプレアディス星団を観測していた天文学者 E.E.バーナードは、メローペの 0.06光年(1光年=約 9.5兆キロ)先にひときわ明るい星雲状物質を見つけ、「バーナードのメローペ星雲」として登録した。

プレアディス姉妹とは、ギリシャ神話に登場する巨人アトラスを父親に持つの七人の娘達のことである。明るい七個の星は、父親のアトラスと娘達(アルキオーネ、メローペ、エレクトラ、ケレーノ、タイゲタ、マイア)を示す。娘の星が六個なのは、七人の姉妹の一人が彗星となって飛び去ったためだと言われている。
 

 

2000年11月の画像

惑星状星雲 NGC 6745 で起こった銀河どうしの衝突

まるで目の前の餌をついばもうとする鳥のように見えませんか。これは、惑星状星雲 NGC 6745 の中で起こった、巨大な渦巻銀河が接近する矮小銀河(画面右下)と衝突した瞬間を捉えた画像である。

銀河の中の星と星との距離は非常に離れているため、星どうしが衝突することは先ず起こり得ない。例えば、我々の太陽から最も近い恒星であるプロクシマ・ケンタウリ星までは 4.3光年もある。しかし、画面の銀河の場合は様相がまったく異なる。銀河を構成する星間物質の大部分が、原子と分子のガスやガスと固く結合した細かい物質と塵で出来た雲であることと銀河の速度が比較的速いため、衝突面に猛烈な圧力(ラム・プレッシャー)が生ずる。その結果、星間物質の密度が異常に高まるため、重力崩壊により星が生まれる。銀河の青白い領域は、こうして生まれた新しい星の群である。 1996年03月に撮影された。
 

 

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