MEF 小天体探査フォーラムについて
十三周年に際して
MEF13周年、おめでとうございます。
この年月の長短をどう捉えるかは個々人の時間感覚の相対性に大きく依拠するものですが、この時間軸の中で創世期からここまで参加された皆さんがMEFという器に注ぎ込み、そこから汲み上げてきたエネルギーは絶対的に膨大なものだと思います。
そして、そのパワーを糧の一部として、日本の宇宙開発レベルも、国民の宇宙に関する関心も大きく成長してきた13年だったと思っています。
かつて一般的な日本人にとっては、宇宙開発は米ソの競争を眺めるというスタンスのものでした。ペンシルロケットから始まる長い開発史も、おおすみの成功も。また、のぞみや、みどりの悲劇も。スプートニクやガガーリン、アポロ計画やスペースシャトル、ISSといった華々しい事例の影となり、正当な評価がなされることは稀でした。
しかしながら今、はやぶさの帰還やそれに続くイカロスの成功が大きなエポックメイキングとなり、日本発の宇宙開発はかつてない脚光を浴びています。そのムーブメントの一翼を担っていたのは、確かにMEFから生み出された有形無形のエネルギーでした。
はやぶさブームに湧いた今日でさえ、宇宙開発の意義や必要性が、折にふれて世間では問いただされます。失われた20年とも呼ばれる不況の谷底にあえぐ日本にあって、1回の打ち上げに数百億円の経費を要するロケットや探査機を造り、数十億キロの旅の果て、砂塵を回収してくることに何の意味があるのか?世の中には今日を生き抜く糧さえなく、困窮にあえぐ人もいるというのに、と。(よく引用される、二番でなぜいけないのか?という論議にも繋がります。)
万人を納得させる答えなどないその問いに対して、様々な方がそれぞれの立場と切り口から解を提示してきました。
直近の事例では、形而下的には、「宇宙開発戦略本部」の事務局長を勤めている川口淳一郎氏が、平成24年09月11日に行われた宇宙政策セミナー特別講演「次世代の宇宙ビジョンを展望する」の中で、「宇宙探査は、ソフトパワーを発揮せしめる、戦略的な国家活動である。」と定義した解が以下にあります。
宇宙政策セミナー特別講演「次世代の宇宙ビジョンを展望する -PDF(915KB)(2012/09/11)」宇宙開発戦略本部事務局長:川口淳一郎
形而上的には、NASAジェット推進研究所に勤務する科学者、小野雅裕氏が語った「文明を得た人類の職責として、その文明をより高みへと導く営みを行いつづける必要があり、宇宙開発はその端的な一つである」という解が以下で見ることが出来ます。
東洋経済ONLINE「NASA研究者が語る「宇宙開発の意義」(2013/05/10)」小野 雅裕:JPL Technologist
一例ではありますが、このようにそうした問いに対する答えとして、宇宙開発の現場から人々に明示されてきました。
それらと同様に、MEFにおいてもオープンな議論が交わされていく中で、密度の濃い情報がそのレベルを保持したままで体系的に整理され、「MEF - 小天体探査フォーラム一般公開ページ」にまとめられてきました。それらは、市井の人たちが第一線の研究者たちのナマの声を(例えネット越しではあっても)聞くことが出来る貴重なものであり、更には積極的に参画していこうとするものに対しては門戸が解放されているという点で、MEFは画期的な存在でした。
13年の間に活動の波は当然あったものの、ここで議論され、熟成され、公開された膨大な情報が、どれほど日本の宇宙開発に関心を持つ人たちにとって貴重な道標となったことかを考えるとき、MEF創世期からこれまでの、全ての参加者、ならびに事務局の皆様の労苦に、心から敬意と賛辞をお送りさせていただきます。
先述したとおり、2010年のはやぶさの帰還をトリガーとして、日本人の宇宙開発に対する関心は確実に高まりを見せています。それは、例えば相模原キャンバス特別公開の動員数であるとか、宇宙研見学を授業の一環で行う学校が増えてきていることにも端的に現れています。
ただ、その一方で、先日、大阪大学で宇宙地球科学を専攻されている芝井広教授に伺った、
「もし異星人が存在する恒星が発見されたら?という問いを高校生に発すると、戦争になったり侵略されるのが嫌なので、接触しないようにすべきという意見が過半を占める。実に夢の無い話で寂しい。私なら、例え殺されても会話をしてみたいのだけれど…」
というエピソードに見られるように、日本の若い世代が宇宙開発のみならず、人生そのものに大きな夢や希望を抱くことができにくい世の中であるという状況もまた、厳然と存在します。
そうした状態から脱却し、人類が本来持っている知的好奇心が健やかに発露できる一助として、宇宙開発が、更にはMEFの活動がこれからも寄与出来れば、素晴らしいことだと思います。
その想いを具現化するために、日々宇宙開発の第一線で奮戦されているMEFの皆様に互して…等ということは恐れ多くて口が避けても言えませんが、MEFの外縁部に属しているものとして、自身のポジションにて宇宙開発への関心と理解をより深め、より高めていくために、出来うる限りの営みを続けていきたいと思います。(本当はここで、自身のポジションを超えて…と書かな ければいけないのですが;)
MEFに参加されている皆様の、そ して宇宙開発に関心を持つ全ての方々の、より一層のご健勝と ご活躍を祈念して、筆を措かせていただきます。
2013年05月25日 MEF 運営委員:谷口也寸志
お気軽に参加登録ください。
” 小天体探査フォーラム参加登録 by FreeML ”
Modified : March 23, 2017