MEF 五周年に寄せて
~宇宙世紀の折り返し地点で、自己改革を断行~


この度は、小天体探査フォーラム(MEF)の一般公開ページにお越し頂き、ありがとうございます。

JAXA宇宙科学研究本部(ISAS)が2003年5月に打ち上げた「はやぶさ」探査機は、いよいよこの夏、小惑星イトカワに到着し、2007年にはそのかけらを地球に持ち帰る予定です。MEFは、これに続く我が国の小天体探査案を、市民の力で創り出す会員制eグループとして2000年5月に発足し、本日で創立5周年を迎えました。また、今年はその小惑星の名前が由来する故糸川英夫教授がペンシルロケットの発射実験を始めて、日本の宇宙開発が産声を挙げてから半世紀の節目の年でもあります。日本の宇宙世紀の折り返し地点であるこの年に、記念すべき5周年を無事迎えられたことに心から感謝致します。これも一重にMEFメンバーの皆様のご参加・ご指導・ご支援、そして、本ページを訪問して下さった方々の応援のおかげです。

MEFは現在も200名余りの登録メンバーを維持し、通算1,700通もの通信を交わしています。また「研究者の顔が見える日本語の惑星探査ポータルサイト」を目指した「MEF一般公開ページ」も約15万ヒットを数え、いまや惑星探査サポーターが信頼する日本有数のホームページに成長し、MEFの貴重な財産になっています。特に「はやぶさ勝手に応援ページ」は、この秋のはやぶさ小惑星到着に向けて、一層のアップグレードが予定されています。

MEFは創設以来、7つの小天体探査案を検討してきました。2001年から4回の宇宙科学シンポジウムをはじめとする国内外の学術会議で、次期小天体探査が目指す科学とそれを実現する統合案の検討結果を発表してきました。02年末には「MEFレポート」暫定版、04年1月には最終版を発行し、公開HP上などで配布しました。同年3月には、MEFレポートをたたき台にした発足申請書を、JAXA/ISAS宇宙理学委員会へ提出。審議の結果、「小天体探査ワーキンググループ」設立は認可されました。これによって、市民の力で作ったミッション案を日本の探査計画に直接反映させるという、MEF設立当初の課題は達成されたのです。そのため過去一年間は、本Eグループ内での活動はかなり大人しくなっていました。

しかし、MEFが種をまいた「次期小天体探査ミッション」を真に実現させるには、今後数年間、同ワーキンググループの中で理工学双方の検討・提案準備へ向けて真剣に注力する必要があります。そう、次期小天体探査を創るプロセスは、新しいフェーズを迎えたのです。そうした時代の変化の中で、今後もMEFが求心力を保ち、今以上に発展するためには、メンバーが共有できる新しい活動目標を設定し、それを推進するのにふさわしい方に新しい旗振り役になって頂くことが肝要であると私は考えました。そこで、今年1月頃から会員ページ上で「新規目標」を議論して頂いています。その中では、「次期小天体探査機に、アウトリーチや教育部分を担う「一般利用ペイロード」を提案・搭載する」というアイディアが検討されています。

そうした流れの中で5周年を迎えた今、私自身は今後ISASの正式機関であるワーキンググループ活動の牽引役に専念するため、MEFオーナーのポジションを新しいリーダーに譲ることに致しました。過去5年で、誰もが参加できる環境で惑星探査ミッション案を創り出すという前代未聞の「実験」は成功しました。本番はこれからではありますが、MEF創設時の目的達成という結果に、私自身は満足しています。

MEFの新規目標がアウトリーチ・教育用のペイロードに定まると、それをまとめ上げる新しいリーダー・運営陣には、ミッション全体を動かすISASスタッフよりも、教育やものつくりの現場で活躍している現役の先生方や全国の博物館・科学館スタッフの方々のほうが、よりふさわしいでしょう。それには現オーナーである私自身が率先して、自己改革の口火を切るべきと考えました。そこで新オーナーには、過去5年間のMEF活動の全てに参加してくださり、現在は秋田大学でものつくり教育に邁進なされている秋山演亮氏を6月25日からお迎えし、新しいリーダーシップ、目標、運営体制の下で「新生MEF」を導いて頂きたいと思います。

MEF創設時に私が抱いた願いの一つは、一般市民が惑星探査計画の原案作りから現地で成果を挙げるまでのプロセスに参加することを通じて、「誰もが自分も宇宙の一部であると自覚し、宇宙を身近に実感できる社会の創造」に貢献したい、というものでした。その意味で、MEFの活動自体は今後も、ミッションのフェーズ毎に姿を変えながらも、次期小天体探査機が打ち上がり、観測データを取得し、地球に帰還するまで続いていくことを願っています。

今は、これまでの皆様のご厚情に感謝すると共に、新しいリーダーシップと目標の下で始まるMEFの新しい挑戦に大きな期待を寄せています。私自身は、今後もMEFファウンダー(創設者)として、一般公開ページには引き続きできる限りの貢献をして参る所存です。6月から始まる新生MEFに一層のご支援・ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2005年05月25日 ISAS/JAXA 矢野創

 

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Modified : March 23, 2017

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