MEF 発足に際して


この度は、小天体探査フォーラム(MEF)の一般公開ページにお越し頂き、ありがとうございます。小天体とは、長い尾を引く「ほうき星」や、星の王子様と赤いバラが住んでいる「小惑星」など、私達が住む太陽系の中でも惑星や衛星よりはるかに小さな星たちのことです。MEF は、そこに自分達が考案した宇宙船を 10 年後に飛ばそう!という夢を持った人達が集まっている広場です。


21 世紀に突入した今日、きっと歴史家は 20 世紀を「人類が宇宙に進出した時代」と評するでしょう。この想像は、それが単に人類史上の画期的な出来事であるだけでなく、私達は、太古の海から這い出した魚や、アフリカの森を離れた猿や、大陸を踏破し、大洋に乗り出した冒険者達の末裔であることを思い出させくれます。
私がよちよち歩きの赤ん坊だった 30 年ほど前、人類はすでに月面を歩いていました。そして今や国際電話、衛星放送、カーナビから農林水産業や福祉・教育に至るまで、もはや私達の日常生活は、宇宙技術が使われていない場面を見つける方が難しいまでになりました。また、今後人類が宇宙に常時滞在する時代の象徴となる、国際宇宙ステーションの建設も着々と進んでいます。
ところがこうした人類の宇宙進出も、地球生命の進化史に投影してみれば、まだ原始魚の中でも向こう見ずの「冒険野郎」が、水面からちょっとだけ這い出し、きょろきょろ辺りを見回して、またすぐ水中に戻るという段階に過ぎないことに気づきます。彼らの種族が大地に広がり、子孫を繁栄させるまでには、もっと長い時間と、別世界へ出ていく勇気を持った、多くの仲間が必要でした。ですから人類が将来、太陽系の地平線を乗り越えていくために、21 世紀に生きる私達が果たす役割は、もっと多くの仲間が、もっと長い時間、いつでも宇宙に行かれる時代を創り出すような科学研究・技術開発を、一層推進することでしょう。

いつまでも宇宙飛行士が英雄視されたり、太陽系探査がごく一部の研究者によって進められている間は、まだ人類は本当に宇宙を自分達の活躍の場にしきれていないのです。前者については、今後 10 年以内に地球周りの「宇宙観光旅行」が始まれば、私達の意識に劇的な変化が起こるでしょう。ちょうど、100 年前に初めて飛行機を飛ばしたライト兄弟は英雄視されても、現代の海外旅行客は彼らほど尊敬を集めないように。また後者についても、90年代から米国の太陽系探査は、「より早く、より安く、より良い」という、牛丼チェーンに似たスローガンを掲げて実施され始め、その成果もインターネットを通じて世界中に公開されるようになりました。

私達 MEF は、こうした「宇宙の日常化」の流れをさらに一歩進めたいと考えました。アイディアを募り、科学目標を定め、軌道計画を練り、観測装置や探査機やロケットを組みたてていくという、惑星探査の一連の準備段階に、興味ある方なら誰でも直接参加してもらおう。そして、10 年後に日本が打ち上げる、具体的な小天体探査案を「ボトムアップ式」で創る実験を世界に先駆けてやってみよう!という目標を掲げ、2000年05月に会員制 E グループとして船出しました(現在もメンバー募集中です)。幸い設立当初の予想をはるかに超え、現在の登録メンバーは、研究者、大学生、宇宙企業エンジニア、中学・高校教師、天文台・博物館学芸員、アマチュア天文家、SF 作家、ジャーナリストから主婦や小学生まで、全国で 170 名余りを数えるまでに成長しました。

設立以来、幾つかのフェーズを経て、7つの探査案を検討してきました。2000年11月には日本惑星科学会にて、各案とそれらの総合評価の結果を発表しました。その結果、当初の目標達成以降も、日本中の惑星探査のサポーター達が自由に集える広場としての発展が期待されるようになりました。そこで、本来の目標は会員制 E グループで続ける傍ら、E グループ活動で培われたネットワークや議論を生かして、誰でも訪れることが出来る、「小天体」と「太陽系探査」に関するあらゆる情報を網羅した「日本語のワンストップ・ポータルサイト」の誕生を目指して、20 世紀最後のクリスマスに、本ページの公開を始めました。

しかし、オリジナルコンテンツや関連サイトへのリンクが目指しているレベルへ到達するまでには、まだまだ遠い道のりです。運営も、今は熱意あるメンバーのボランティアに頼っています。そこで、ぜひ各方面の方々に趣旨をご理解頂き、一緒にこのサイトを育てていって頂きたいと思います。そして MEF は、本サイトからの情報発信やビジター同士の交流は勿論のこと、宇宙業界だけでなく、昨今理科離れが進んでいる教育現場や各種メディアでも積極的に活用して頂き、ひいては誰もが自分たちの住む太陽系を身近に感じられるような社会を創る一助になりたいと考えています。なぜなら、それこそが、太陽系探査の裾野を広げ、誰もが宇宙で活躍できる新時代を創造する近道なのですから。

さあ、海から這い出した遠い祖先の心意気(?)で、あなたも MEF と一緒に、星の王子様のふるさとへ自分で作った宇宙船を飛ばしてみませんか?

2000年12月25日 ISAS 矢野創

 

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Modified : March 23, 2017

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