MEF 三周年に寄せて
~レポート完成と多彩なアウトリーチ成功から、さらなる飛翔へ~


この度は、小天体探査フォーラム(MEF)の一般公開ページにお越し頂き、ありがとうございます。

今月9日に宇宙へ飛び立ったMUSES-C探査機「はやぶさ」に続く、次期小天体探査案をボトムアップで創る会員制eグループとして発足したMEFが、本日創立3周年を無事迎えたことを皆様にご報告でき、大変嬉しく存じます。過去1年間は、「はやぶさ」探査機の総合試験に明け暮れ、2週間前に宇宙へ送り出し、現在電気推進エンジンを惑星間軌道上で点火するところまで参りました。

「石の上」、いえ「小惑星の上にも3年」と言いましょうか、MEF登録メンバーは現在200名を超え、通算1,300通以上の通信が交わされています。「ポストはやぶさ」時代の小天体探査計画案については、宇宙科学シンポジウムに3年連続で発表の機会を得て、これまでの検討の集大成である「MEFレポート」の暫定版も2002年末に発刊されました。これこそMEFが発足以来目指していた、大きな一里塚です。レポート全文は、現在も本一般公開ページからダウンロードができます。

また、昨年ヒューストンで開かれた、十年に一度の世界最大の宇宙関連学術会議”World Space Congress”を含め、国内外の学会で通算30篇近く、MEF案に関連する研究発表が出されています。さらにこの夏にはレポートの改訂版を完成させ、今年度中に発足を目指す「次期小天体探査ワーキンググループ」の議論のたたき台に供する予定です。これにより、市民が創った惑星探査案が、宇宙研の正式な探査計画に直接反映される実績が築かれます。

「惑星探査の日本語ポータルサイト」を目指して創設したMEF一般公開ページも、今や国内有数の信頼できる宇宙関連サイトとして、宇宙機関の公式ホームページと肩を並べて様々なメディアからおすすめを頂くまでに成長致しました。特に過去1年間にはしし座流星雨やMUSES-C打上げに向けて高まる小天体への関心を受け、より広い分野や年齢層の方々の訪問にも対応すべく、打上げ時に数千ヒットを数えた「はやぶさ勝手に応援ページ」、「MEF きっずるーむ」、「惑星探査のエンジニアリング」など、新しいコンテンツを次々に登場させました。その結果、開設後2年半で53,000ヒットを超えました。

その間も、MEFメンバーがリードした「はやぶさ」に関するアウトリーチ活動は多岐にわたる分野で成功し、今後の日本における惑星探査サポーター活動の可能性を大きく広げました。幾つか例を挙げると、宇宙研と日本惑星協会共催で149カ国88万人の名前を集めた「ミリオンキャンペーン」のプロモーションやデータ入力の支援、世界でも類のない惑星探査ミッションのコンセプトアルバムCD 「Lullaby of Muses」の製作、宇宙研の公式文書やあらゆるメディアに採用され、日本の宇宙イラストの新標準となった池下氏の探査機コンピュータグラフィックス、「勝手に応援ページ」に掲載された探査機や目標天体の軌道プログラムの公開、日本初の惑星探査機スケールプラモデルの発売、国際宇宙ステーションを使った宇宙ベンチャービジネス「スターメイル」との連携、全国各地の科学館の展示・番組や天文雑誌・各種メディアの特集への協力などです。これらの活動成果を着実に生み出せたのは、MEFメンバー諸氏の積極的なご参加・ご支援に加えて、本ページを訪問して下さった方々の真摯なフィードバックや応援の賜物です。MEFオーナーとして、全ての関係者各位に改めて深く感謝致します。

これらの成功例に共通しているのは、MEFメンバー各人がMUSES-C「はやぶさ」に「自分たちの探査機」という愛着を感じて、それぞれの仕事、技能、趣味を生かしたユニークな切り口で探査計画に「参画」している点です。これこそ「宇宙を日々身近に感じる社会の創造」という、MEF活動の遠大な目標の実現です。しかし「はやぶさ」探査機の旅はまだ4年間続きますし、惑星探査のアウトリーチ活動にはアイディア次第で、まだまだ様々な可能性が秘められています。MEFとしてもアウトリーチ活動を今後どんな方向に発展させていくべきか、メンバー同士の開かれた議論が大切だと思っています。

なお本年10月には、宇宙研、NASDA、航技研が合併し、「宇宙航空研究開発機構」が誕生します。これは日本の宇宙研究・開発の歴史における一大転換点です。この変革を恐れず、むしろ追い風として、これからの太陽系探査のロードマップを大胆かつ夢のあるものとして描き、それらを実現していくことが、次代を担う日本の宇宙研究者に求められています。MEFもこの変化の波をポジティブに受け止め、「誰もが参加できる惑星探査の実現」へ向けて、さらに前進を続けていきたいと思っております。そのためにも、一年後に地球スイングバイに臨むはやぶさの応援と、ワーキンググループ発足を目指す次世代探査計画への参加ともども、4年目のMEFを引き続き盛り立てて頂きますよう、心よりお願い申し上げます。

2003年05月25日 ISAS/JAXA 矢野創
USERS カプセル着水を待つ小笠原諸島父島にて

 

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Modified : March 23, 2017

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