The Planetary Society of Japan

The Planetary Report

Archive 1998

 

木星リングの謎

探査機ガリレオは、様々な発見を我々に送り届けてくれています。木星のリングの構成物質の解明も、その数多くの発見の一つです。筆者のドナ・スティーブンソンは本誌の編集スタッフです。[ 1998年11月/12月 ]

Donna Stevenson(本誌編集スタッフ)

 

この木星リングの合成画像は、ガリレオのソリッド・ステート・カメラが三本のリングをそれぞれ異なる感度で撮影したものです。この画像は、1997年10月5日に撮影したもので、この時ガリレオは木星の影の中で太陽を振り返って見ていました。この画像に見える白い垂直のアークは、木星の大気を通過した太陽光です。画像の中央に見えるかすかな物体(白い弾頭のようなもの)は、露出過多のメイン・リングとハローを表わしています。画像の右端は、薄いゴッサマーリングを最高感度で撮影したものです。ゴッサマーは、上部と底部の端が中央の2倍も明るい変わったリングです。メインリングと異なり、このリングは外側の端で狭まることなく、突然途切れています。
 

 

ガリレオが1996年11月6日撮った木星のリング・ハローの画像です。ハローは、木星から約 12万2500km 外側に伸びる細かい粒子の光の輪です。黄色く見えるのは、メインリングの上と下に浮かんでいる塵の雲です。ハローは、リング面から小さな粒子を押し出す力のある電磁力により生ずるものと、科学者は考えています。この画像では、薄いハローを目立たせるためにフォール(擬似)カラーが使用されています。これにより、白と黄色は最高に明るくなり、紫は最もぼやけて見えます。
 

 

氷の塊でできた土星のリングと異なり、繊細な木星のリングは、惑星間塵が木星の小衛星に衝突する際にまい上がる微粒子で作られています。1998年9月15日、探査機ガリレオから送られてきたデータを分析した科学者により、かつて謎とされていたかすかな木星のリングが発見され、またその誕生の理由も解明されたとの発表がなされました。

ニューヨーク州イサカにあるコーネル大学とテキサス州ツーソンにある国立光学天文台(NOAO)から派遣されている観測技官によれば、塵の粒子は、木星の巨大な磁場が周辺の宇宙空間の塵粒子(彗星や小惑星の破片)を呑み込んで作られるとのことでした。高速の物体が衛星(木星に近いために、比較的格好の標的になる)に衝突すると、例えば、二つの黒板拭をパーンと叩くと飛び散るチョークの粉のような粉末の雲ができます。

地球の月のように大きな衛星には、塵をその表面に引き戻すだけの重力があります。しかし、テーベ、アドラステア、メティスおよびアルマテアのような平均最大半径が 86km 足らずの小衛星は、小さすぎて微小な塵さえ保持することができません。塵の粒子は、これ等小衛星(リングの塵の供給源)と同じ軌道に入ります。その結果、塵でできたかすかなリングが、それぞれが帰属する衛星の軌道により隔てられます。

約20年前、ボイジャーが初めて木星リングの構造を撮った画像を送ってくれました。それによると、ぺちゃんこなメインリングもハローと呼ばれる内側の雲に似たリングも、小さな暗い粒子でできていることが分かりました。探査機ボイジャーが撮った一枚の画像に、かすかな外側のリングが写っているように見えました。ガリレオが送ってきた新しい画像には、透明なことからゴッサマーリングと呼ばれる三番目のリングは、実際は二本のリングでできていることが分かりました。つまり、一本のリングが別のリングの中に納まっていたのです。

二本のリングは、衛星のアマルテアとテーベから放出される微粒子でできています。「初めて、ゴッサマーリングにより留め置かれたこれ等二つの衛星から放出される塵を見ることができ、そして現在ではメイン・リングは、衛星のアドラステアとメーティスの塵でできているらしいと考えられるようになりました」と、コーネル大学の科学者ジョセフ・バーンズ氏は語っています。これに付加えて、NOAOのマイケル・ベルトン氏は、「ゴッサマーリングの構造は、全く予測していないものだった」と、言っています。これからお見せするのは、探査機ガリレオが撮った画像の中でも、最も意義のあるものの一つです。
 

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