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Archive 1996
地球近傍物体、小惑星の探査
惑星協会は、会員から寄せられる寄付金を活用して、有意義な成果の担保となる探査や発見のプロジェクトを支援しています。リチャード・ベンゼル氏の発案になる地球近傍小惑星の探査は、惑星協会の趣旨に沿うプロジェクトと言えます。
地球近傍小惑星は、人類が地球を離脱して他の太陽系の天体に移動する時に、最も必要とされる資源の宝庫となり得る天体です。地球近傍小惑星は、人類の未来に於ける惑星間移動のテスト・ケースとなるのですが、ご存知のように地球に衝突すると、それは地球文明に終焉をもたらすものともなります。この衝突の脅威を解明し、これにどのように対応できるのか、そのためにも、我々は地球近傍小惑星についてもっと知らなければなりません。
以下は、ビンゼル氏のレポートをご紹介します。 筆者は、MITの惑星科学の助教授であり、また惑星協会の回報「Neo News」の編集主幹です。(シャリーン M.アンダーソン(編集主幹))[ 1996年03月/04月 ]
Richard P. Binzel
小惑星エロス画像
サイズが小さいため、地球近傍小惑星は地球に接近する時でも、ほんのわずかの間しか観測できない。地球近傍小惑星の研究で肝心なことは、大型の望遠鏡で頻繁に観測することである。惑星協会の資金援助で、我々マサチューセッツ工科大学(MIT)の調査班は、分光器を使った測定で小惑星の組成を確定する観測を行なうことができた。
勝手気ままに軌道を飛び交うこれら小天体のデータを得るため、我々はアリゾナ州ツーソン近くのキット山頂の南西の尾根にある、ヒルトナー天文台(ミシガン大学・ダートマス大学・マサチューセッツ工科大学の共同運営)の口径 2.4m の望遠鏡を最大限に利用して観測を行なった。
望遠鏡で集められた光線は分光器に移され、スペクトルに分散される。分散された成分は、CCD(電荷結合素子検出器)に落とし込まれる。CCDは、それぞれの成分のスペクトル特性をデジタルで記録する。地球近傍小惑星の反射光は極端に微かなので、使用に耐えるデータを得るためには、CCDによる多量の長時間露出が必要となる。最も反射光の弱い小惑星でも、露出には数時間かかることがある。
我々はここ2年間で、約 40 の地球近傍小惑星のスペクトルを測定し、使用可能のスペクトル測定データを倍増させた。データの分析は完了していないが、地球近傍小惑星の組成は多種多様である。ほとんどの小惑星は、岩石質か岩石と鉄が混じったS - タイプと呼ばれる種類に属している。NEAR(地球近傍小惑星遭遇計画)ミッションのターゲットである、小惑星433エロスはこのタイプに属している。NEARミッションは、このクラスの小惑星の組成の解明に役立つものと思われる。
その他地球近傍小惑星の中でには、太陽系初期の残骸であるコンドライト隕石に似たスペクトル特性を示すものもあった。この他、C - タイプの特性を示す小惑星がある。この小惑星は、太陽系初期の比較的原始的な小惑星で水分を含んでいるかもしれない。金属を豊富に含有しているMタイプの小惑星と思われるものがある。
惑星協会の支援により、宇宙空間に存在する我々に最も近い「隣人」の探査が可能になるのである。
Creating a better future by exploring other worlds and understanding our own.