ベンヌに太陽系の歴史を求めて
オシリス・レックスが目指すのは、直径500mほどの地球近傍小惑星「ベンヌ((101955) Bennu)」だ。日本の探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」と同様に、小惑星のサンプルを採取して地球に持ち帰るサンプルリターンを目的としている。
倉敷科学センター, 三島和久
9月22日の「OSIRIS-Rex」の地球スイングバイ。地球最接近は日本時間の23日午前2時ごろ。南極上空約2万キロを通過するが、この距離は「はやぶさ2」の時の3000キロと比べるとかなり遠方といえる。日本で観測が可能となってくる地球最接近当日の日没後は、すでに「OSIRIS-Rex」は南半球の上空に達しており、日本からの観測条件はベストとはいえない。最接近が近づくにつれ、どんどん南下して地平線下に達してしまうため、最接近の2~4時間前が日本で最も観測しやすい条件になると予想される。
画像:「OSIRIS-REx」地球スイングバイの様子
柏井勇魚さん、宮崎剛さんによる「OSIRIS-REx Realtime Simulation」を使って作成
http://www.lizard-tail.com/isana/orb/misc/osiris_rex/
日本での観測条件が最もよくなるのは22日22時~23日0時ごろ。月齢2と月明かりの影響はない。方角は南東から南南東。くじら座のデネブカイトス周辺からちょうこくしつ座の方向を南下中である。移動量は「はやぶさ2」の時よりも小さいが、1分間に0.1°角程度移動するため、間隔を開けて撮影を行えば移動方向を見極めることは容易である。予期せぬ紛らわしい人工衛星の写り込みとの混同を避ける上でも、複数コマから対象の移動方向が「OSIRIS-Rex」で間違いないか必ず確認をしたい。各時間ごとの「OSIRIS-Rex」までのおおよその距離は、22時:9万キロ、23時:7万キロ、0時5万キロとなっている。
画像:日本から見た「OSIRIS-REx」のおおよその位置(星図は東京23時ごろ)
ステラナビゲータVer.10(アストロアーツ社)を使って作成
http://www.astroarts.co.jp/...
探査機のような金属光沢をもつ箱物は、観測者への反射光量に不確定要素が大きく、明るさの予想が非常に難しい。数等級の誤差があって当たり前(場合によってはさらに大きく外れることもある)なので、あくまでも目安として受け止めて欲しい。
予想される明るさは14~15等級。大口径の集光力がある光学系を用いることが望ましいが、「OSIRIS-Rex」のパドルによる太陽光の反射が運良く地球に向くタイミングがあれば、予期せず数等級明るく見える可能性も否定できない。
「はやぶさ2」の地球スイングバイと比べると、「OSIRIS-Rex」は機体サイズが大きく、距離が遠くて暗く、移動量も小さいため、単純に「はやぶさ2」と一概には比較しにくいが、実績としては2003年の火星探査機「のぞみ」による地球スイングバイの事例が挙げられる。愛媛県の久万高原天体観測館が口径60センチ望遠鏡で撮影に成功。この時「のぞみ」までの距離は約 53,000 キロ、明るさは15等~16等であった。
画像:「のぞみ」スイングバイ時の撮影事例
JAXA 記者説明会資料より
株式会社アストロアーツより販売されている「ステラナビゲーターVer.10」は「OSIRIS-REx」の正確な位置表示を可能としている(アップデートが必要)。星図上で自在な表示ができるようになるため、観測計画を立てたり、対応する望遠鏡と連携した自動導入を利用する上でも強力な助けとなる。ソフトをお使いの方はぜひ活用したい。
位置計算だけでよければ、” JPL-HORIZONS Web-Interface ” からも得ることができる。
1)撮影のハイライトとなる時間帯は日本時間22日22時から23時0時ごろまで
2)くじら座デネブカイトス周辺をどんどん南下
3)移動量は0.1°/分程度
4)光度は14-15等前後(大きな誤差があるかもしれない)
5)人工衛星の写り込みの誤認を避けるため、必ず複数コマ撮影して移動方向を確認する
難しい申込み手続きは在りません。事前に「キャンペーンに参加する」という意思をお伝え頂き、その成果をキャンペーン主催側(TPSJ、JAPOS)に御提供頂くだけです。観測後にデータ提供を申し出て頂くだけでも全く構いませんが、速報体制のなか、速やかに一般に公開するために事前に参加登録くださると助かります。
また、今回も「はやぶさ2スイングバイ観測」の際と同様に、観測体制のご紹介や、観測条件の不成立により観測が適わない場合も、その奮闘記などをご紹介する予定です。まずはご登録ください。
以下からお申し出ください。コメント欄に、観測機材や観測地などの情報を頂ければ他の皆さんとの情報共有・交換が可能になるかもしれません。
直接、観測成果をご提供くださる場合は、” tpsj_info@planetary.jp ” に、氏名、観測地、観測機材、コメント等を記載し、撮像データを添付またはダウンロード出来る URL を記載してお送りください。
尚、ご提供頂いた撮像データは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、OSIRIS-REx Science Team、日本惑星協会(TPSJ)、公開天文台協会(JAPOS)の各ウェブで公開させて頂くことをご了承ください。
コメントは後でお知らせくださっても構いません。その際も、以下のフォームからお願いします。フォームが機能しない場合は、以下のメイルアカウントからお願いします。
”tpsj_info@planetary.jp”
オシリス・レックスが目指すのは、直径500mほどの地球近傍小惑星「ベンヌ((101955) Bennu)」だ。日本の探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」と同様に、小惑星のサンプルを採取して地球に持ち帰るサンプルリターンを行う。小惑星からのサンプルリターンはアメリカの宇宙探査史上でも初のことである...
当初はオシリスという名称であった。2004年にアリゾナ大学とロッキード・マーティンによりディスカバリー計画の11番目のミッションの候補として初めて提案されたが、チャンドラヤーン1号へ相乗りする観測機器が選定されたため採用されなかった。2006年にはゴダード宇宙飛行センターが加わり、同計画12番目のミッションの候補として再提案された...
TPSJ として最も関心を持つ一般に向けたイベントとしては、やはり探査対象天体である 1999 RQ36 のネイミングコンテストだ。開催当時、旧 TPSJ は解散に至った直後であった。その「穴埋め」を行ってくれたのが、小天体探査フォーラムであった。この経緯が後に TPSJ が再始動する大きな要因ともなったのだ...
今回の観測キャンペーンを成功に導くためには、「はやぶさ2」の際と同様に観測の専門家による「手引き」が必要だ。すでに倉敷科学センター三島氏が着手を始めた。支援体制は十分なものになると確信しているが、何と言っても天候次第。気象条件が成否どちらに「微笑む」かだ...
全世界の18歳未満を対象に行われていた、 OSIRIS-REx (Origins-Spectral Interpretation-Resource Identification-Security-Regolith Explorer)ミッション探査対象天体である小惑星「101955 1999 RQ36」のネイミングコンテストは、2012年12月31日締め切りとして開催されました。
(以下、当時の原文)このページは保護者の方に見つけて頂くことを前提にしております。こうしたコンテストをお子様が見つけるのは容易ではありませんので、日頃、夜空に興味を持つ、地球の自然に敏感なところがあるなど、保護者の方々がそれぞれのお子様にそうした傾向を見出された場合、今回のようなコンテストには積極的に参加頂くことをお勧めします。
はやぶさ2プロジェクトや、今回の地球スイングバイ実施を期待される OSIRIS-REx 探査機など、時代は小天体探査真っ盛りですね。まもなく終焉を迎える土星探査機カッシーニにしても、タイタンやエンケラドスなどの衛星(小天体)探査が重要なミッション項目でした。
惑星協会では、日本が行う次世代小天体探査を議論する「MEF 小天体探査フォーラム」と連携して、宇宙機関や研究機関・大学への惑星探査・科学に関する提言、また科学教育機会・手段を国内で幅広く均等に提供できるよう活動を活発化させたいと考えております。
すでに開始した TPSJ 会員としての参加登録、あわせて小天体探査フォーラムへの登録などを行って頂き、皆さんと実際に Face to Face で太陽系探査を議論することが出来たら嬉しいです。