NASA Artemis II SLS「KSC(ケネディ宇宙センター)で Artemis(アルテミス) III ロケットの組み立てを開始」

原文 : August 18, 2025 : NASA Begins Processing Artemis III Moon Rocket at Kennedy
 

施設内の High Bay(ハイベイ)2 で処理中のエンジン・セクションは、月面へのアルテミス計画を推進するロケット段の中で最も複雑で精巧な部品の一つである。
 

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2025年08月13日(水)、フロリダ州 KSC(ケネディ宇宙センター)内の組立棟で、NASA の統合型アルテミス III SLS(スペース・ローンチ・システム)コア・ステージ・エンジン・セクション(boat-tail(ボートテール)付き)の搬出準備を行う KSC のチーム。施設内の High Bay(ハイベイ)2 で処理中のエンジン・セクションは、月面へのアルテミス計画を推進するロケット段の中で最も複雑で精巧な部品の一つである。
Credit : NASA/Cory Huston
 

NASA が人類を月へ再帰させ、最終的には火星着陸を目指す計画における第二弾となるアルテミスIIミッションの打ち上げ準備を進める中、フロリダ州 KSC(ケネディ宇宙センター)ではアルテミス III 月着陸ミッション向けの SLS(スペース・ローンチ・システム)ロケットの組み立てが開始された。

アルテミス III の SLS エンジン・セクションと、打ち上げ時にエンジンを保護するボートテールは、07月下旬に NASA KSC の宇宙システム処理施設から巨大な組立棟(VAB)へ移動した。この場所は、アルテミス II の SLS がほぼ組み立てられ、統合試験と点検を受けている場所からわずか数フィート(約 1 メートル)の距離にある。

2026年初頭、NASA は SLS ロケットと Orion(オリオン)宇宙船による初の有人飛行となるアルテミス II を打ち上げ、約 10 日間の月周回飛行を実施する。これに続き、2027年には初の月南極地域への着陸を目指すアルテミス III 月面着陸ミッションが実施される。このミッションでは、四名の乗組員を乗せたオリオン宇宙船を搭載した SLS が打ち上げられ、スターシップ有人着陸システムとのランデブーを行う予定だ。これらのミッションは、NASA が自国クルーを初めて火星表面に着陸させるための基盤を築くものである。

チームはエンジン・セクションをスタンド上に持ち上げ、ボートテールを底部に取り付けた。エンジン・セクション上部にキャノピーを設置し、セグメントの空調を可能にすることで、湿気の蓄積や汚染を防止した。

その後、完成した組立機体を VAB(組立棟)内のハイベイ 2 へ移送。2026年春を目標に、アルテミス III の SLS コア・ステージ残部部品到着後のステージ統合完了まで、同施設で統合作業とチェックアウト試験を実施する。

コア・ステージの残り 4/5 に相当する要素(液体水素タンク、液体酸素タンク、インター・タンク、フォワード・スカート)は、ニューオーリンズの NASA Michoud Assembly Facility(ミショー組立施設)で加工・統合作業中だ。コア・ステージ用 RS-25 エンジン 4 基は、2026年初頭にミシシッピ州ベイ・セントルイスの NASA Stennis Space Center(ステニス宇宙センター)から出荷され、エンジン・セクションへの統合が予定されている。

エンジン・セクションはロケットで最も複雑な部分の一つであり、4 基の RS-25 エンジンと関連ダクト、バルブ、電子機器、コアステージ推進剤タンクやロケット本体と接続する全長約 29 km のケーブル類を収容している。

この変更は SLS 製造プロセスの一部である。アルテミス I および II の SLS コア・ステージは NASA Michoud Assembly Facility(ミショー組立施設)で完全に製造され、NASA KSC へ移送後、SLS 固体ブースター、上段、オリオン宇宙船との統合が行われた。アルテミス III のハードウェアから、NASA は製造プロセスの効率化と 2 基のコアステージ同時生産を可能にするため、エンジンセクション内部装備およびコアステージ上部との統合工程を NASA KSC へ移管した。
 

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アルテミス計画の全貌については、以下で特集しております。

NASA SLS アルテミス II ミッション
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office