2019 50th Session Report

LPSC 2019 - Day 2
Vol, 05 ~ 10
 

Vol. 10. 2019/03/20 PM 12:24 日本時間

はやぶさ2特別セッションは、最後は良かったものの、途中はかなり人も減ったし、やはり午前中の OSIRIS-REx に人気を奪われた感もありました。よりホットだったし、ONC と NIRS3 の Science 論文にぶつけてきて、今日同時に Nature に出してしまうところなど抜け目ないです。決して NASA や米国科学者たちを甘く見てはいけません。

とにかく、セッションが終わって、そんなことやいろんなことを名大の諸田君や阪大の金丸君と話した後、ポスターセッションに会場に行ったのですが、なかなか開かないので、また HEB に夕食を買いに行き、昨年同様、玄米カリフォルニアロールをかって食べました。

ポスターは私のものを含め、OSIRIS-REx と Hayabusa2 関係が一番最初の方に固まってあり、便利でしたが、結局私自身のと、松岡さんや巽さんのポスターのところで説明したり、本田理恵さんと ONC-T の色補正のことを話したり、荒井朋子さんと Phaethon 関連のことを議論してほぼ終始して、よそはあまり見に行けませんでしたね。Catlyne Lantz などの同業者も来てくれましたし、やはりホットなミッションがあると人が来ますね。

ポスターをまたブラウン大の Jim Head の奥さんである Anne Cote に渡して、急いで9時のシャトルを捕まえました。そうしたら、向かいに松岡萌さんが載っていて、Air Canada が遅れたうえに、荷物が届いていないという、ホラーストーリーを聞きました。そういえば最近妻子にもそういうことあったし、Air Canada、困ったものです。

ということで、帰ってこれを書いていますが、Super 8 の WiFi 遅いし切れてばかりで何とかしてほしいものです。
 

Vol. 09. 2019/03/20 AM 06:50 日本時間

Hayabusa2 特別セッションの続きです。

次の 14:30 からは、宇宙研の岡田(達明)さんが、TIR による熱慣性の話をしました。熱慣性は 300±100 くらいで、粗さの影響が大きいようです。そして、その値のばらつきによると、空隙率が多い岩と、密な岩とがあるとのことです。

14:45 からは並木さんが、LIDAR による高度分布測定の結果、とくに赤道域の三大クレーターを解析していました。これらは、お盆型でなく、円錐形をしていて、重力支配でできているそうです。東西の非対称性もモデルで考慮していましたが、難しいそうです。

15:00 からは、坂谷さんが、TIR による表面粒径の解析を発表していました。粒径によるソーティングが起こっているようで、中間値は 13 ㎜ 径のようで、ある 8 m の小クレーターの内部に ㎝ 程度の細粒のレゴリスが見えているのを示していました。

15:15 からは Grot 氏が MASCOT の MARA の測定結果を発表していましたが、ほとんどトイレ休憩と、Sasha Krot につかまって説明していたので、ミスりました。とにかく結論としては、低い熱伝導率と言っていたようです。

15:30 からは、名大の諸田(智克)さんがクレーターと可視スペクトルの関係を発表しました。全球から見ると、青っぽい物質は中緯度に多く、クレーターの底も青いのと赤いのがあるが、青いのが小さい方に分布しているので新しく考えられ、その統計から赤化の時間スケールを見積もっていました。
火の鳥シリーズ - ONC 地形観測から探る小惑星の力学進化

いろんな過程に依存するわけですが、結果としては、20 万年から 1.2 億年まで幅があり、しかしながら、近地球軌道での寿命と同程度か短いので、メインベルトから移動してから赤化したのではないかということです。

15:45 からは高知大の本田さんが可視スペクトルのクラスター解析を発表しました。青さ赤さの原因はいろいろあるわけですが、このスケールでは異なる物質を仮定しなくてもよいように思えました。

16:00 からは宇宙研の横田君が測光解析の結果、特に Opposition(衝)観測の結果を扱っていて、Hapke モデルで解析したら、平均傾きが 30 度、アルベドが 4.0 % という結果でした。Opposition の時に全面がのっぺらに見える中で、ターゲットマーカーだけ光っている画像がかっこよかったですね。

16:15 からは、Parekh さんが MASCOT で表面粗さの測定の話をしていました。二種類の岩があるのではないかという結論だったかもしれませんが、すみません、集中力がなくなって来ていました。

最後は 16:30 から東北大の中村智樹君が、リュウグウのスペクトルの解釈を試みた発表をしました。あらゆる可能性をカバーしていたと思います。ショック化、中程度の熱変成か、そして宇宙風化の効果ということで。宇宙風化についてかなり質問が出ていました。

最後に、渡部さんが、自分の発表の時に見せれなかったタッチダウンの動画を見せて、とても受けて拍手喝さいを受けていました。
 

Vol. 08. 2019/03/20 AM 05:18 日本時間

昼食が出てくるのが遅かったので、会場には午後のセッションが始まるギリギリの 13:30 に着きました。

今朝と同じ会場で、今度は Hayabusa2 の特別セッションです。

13:30 からは、プロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎さんが、概要を説明しました。リュウグウはラッブルパイルで、もろい物質で、着陸は 1 m 以内の精度で成功したというまとめです。

13:45 からは、ONC の PI の杉田精司さんがリュウグウの母天体進化という題で発表しました。おそらく ν6 機構で来たと思われるので、母天体候補が限られ、スペクトルからは CI/CM コンドライトが適度に熱変成したものに最も近く、クレーターの維持年代は 100 万年程度と短く、母天体で適度に加熱脱水したのではと考えられるということでした。

私としてはスペクトル比較に不満がありますが、まあいいでしょう。

14:00 からは Shroder 氏が MASCOT で撮った自然色の調査で、明るくて色が違う石があるのではということですが、それを隕石と比べた結果どう考えているのかはっきりしていませんでした。

14:15 からは Lucie Riu が NIRS3 の結果を発表しました。北里君の代わりの発表ということですが、どうも過去の仕事の引用とかが乏しく、私が測定した Ivuna 隕石を加熱したスペクトルも、引用を示してなかったですね。この発表にはチーム員としても大いに不満です。

(続く
 

Vol. 07. 2019/03/20 AM 00:26 日本時間

次も OSIRIS-REx 特別セッションの続きです。

画像:特別セッションの入口。
 

10:30 からは、司会者の一人でありブラウン大で博士号をとった Erika Jawin がボルダーの地質学の発表でした。
やはり、暗いボルダーと明るい小石とかの関係が宇宙風化なのか母天体過程の違いなのか、分からないということです。

画像:私のボスである Ralph Milliken と、同じくブラウン大学で博士号を取ってNASAで働いている Sarah Noble。
 

10:45 からは Julie Molaro さんの熱疲労の発表でした。佐々木晶さんが一所懸命聞いていましたね。

11:00 からは Josh Emery の熱慣性の発表でした。Spitzer 航空望遠鏡や OVIRS などから、かなり近い熱慣性が出てきて 350+/-20 というような値なので、ボルダーが多い割には小さいので、ボルダーは空隙率が高いのではということでした。

11:15 からは Vicky Hamilton が点光源分光器である OVIRS と OTES から 2.74 ミクロンに吸収があり、青い可視スペクトル傾きで、24 ミクロンは CI/CM に合致するが、10 ミクロンのところは合わないのて、非晶質化なのかと言っていました。

最後の 11:30 からは、Amy Simon が OVIRS が 3 ミクロン帯を解説していて、私はちょっと隕石と違って長波長側に広がっているように見えるが、校正の問題か、揮発性の水が内部になるのかとか質問しました。やはり熱輻射の校正は問題あるかもということです。
 

Vol. 06. 2019/03/20 AM 00:26 日本時間

OSIRIS-REx 特別セッションの続きです。

09:45 からは B. Rizk 氏が初期観測の結果、特に表面の光学特性の結果を発表しました。観測の太陽からの位相角の変化と共に赤化する傾向があるということで。その一因として風化を言っていたので、私は1980年に Linda French という人が Murchison 隕石の粉の位相赤化を博士論文で書いていて、私も最近確認したとコメントしておきました。そして、明るい小石のようなものが暗い岩の上に載っているのがあり、それはどこからどうしてきたのかが問題でした。

10:00 からは K. J. Walsh 氏が全球地質について発表しました。クレーター分布から表面は 1~10 憶年の古さで、小さいクレーターの中に暗くて 1 ㎝ 以下の細かいレゴリスがあるということです。

次の R.-L. Ballouz 氏は、クレーターが消される機構について発表して、衝突による地震で消える機構は最小粒子サイズに依存して、揺れの周波数とレゴリス粒度の関係によってレゴリスが動くかどうか決まるということでした。それと重力と自転速度の効果も言ってました。

(続く)

Vol. 05. 2019/03/19 PM 23:48 日本時間

火曜日の今日は、午前中に OSIRIS-REx、そして午後に Hayabusa2 の特別セッションがあり、夕方はポスターセッションがあるという忙しい日です。

今朝始まる前に、千葉工大の千秋さんといろいろ極秘の話ができてよかったのと、久々に Beth Clark と出会えて、お昼一緒しようと言われました。

08:30 からの最初の講演は OSIRIS-REx の PI である Dante Lauretta で、Overview を発表しました。Bennu の自転速度は以前に望遠鏡で観測された事実を確認するように増加しており、おそらく YORP 効果ではないかということです。

この時、私はピンと来たのですが、Bennu は順行自転をしており、熱輻射効果である YORP 効果で加速しますが、Ryugu は逆行自転なので、逆に遅くなったはずです。なので、Ryugu のコマ型はきっと高速回転の時にできて、それから今のように減速したのではないかということです。150 万年後には自転速度が 2 倍になる見込みのようです。

含水鉱物の吸収帯から、隕石型としては CM1 ではないかということや、Magnetite(磁鉄鉱)がある、特に南半球の大きな暗い領域にあるとか、アルベドが 4.4 % を中心に大きな幅があり、15~20% もある点もあったとかで、組成の広がりがあるらしいとか、表面から射出されている物質があり、秒速数 ㎝ の速度で、衛星のように軌道を作っているとかを発表していました。

これって、ひょっとして内部にまだ揮発性物質、特に水があるのではと思わされましたね。それとも単純に回転が速すぎて加速しているからなのか。

次の 08:45 からはブラウン大卒業生の Olivier Barnouin で、形状モデルの発表でした。球面調和関数で解析した結果でしたが、基本的には地上からのレーダー観測による形状とよく似ていて、密度は 1.19 で、クレーターも Linearment(線状地形)もあり、後者はイトカワより多いということでした。

Ryugu よりも対称性からのずれが大きいということで、やはり、リュウグウよりもまだ若くて、形が完全にコマ型になっていないのではないかと思いました。

09:00 からは C. L. Johnson さんが表面粗さの発表をして、5~20 m スケールで、Bennu は Itokawa よりもずっとスムーズであるという発表でした。私としては、Bennu は力学的に弱い物質だし、回転早いし、当たり前と思いました。

09:15 からは M. M. AlAsad さんというアラブ系のような女の子が、形状モデルを作る二つの手法の比較をしていました。レーザー高度計とステレオ画像に基づくものだと思います。かなり時間が余って、質問を多く受けている間に私はトイレに行きました。

09:30 からは、はやぶさでも宇宙研に来られて頑張っておられた Dan Scheers が重力解析をした結果を発表して、現在は重力的には全て赤道に落ちていくということです。ただ、Bennu は加速しているので、昔は遅かったわけで、Roch lobe という重力安定限界線は違うところにあったし、ポテンシャルの底も高緯度にあったのではないかという主張だったように思います。

この続きは後で。
 

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