ヒューストンからセッション速報 - Session Report
月・惑星科学会議 - LPSC : February 20, 2019. Latest
2014 45th Session Report
LPSC 2014 - March 18 - 22
Vol, 01 ~ Vol, 19
Vol, 01. 2014/03/18 AM 01:32 日本時間
今日は LPSC 初日の月曜日で、朝早めに来てネットをしていたら東大柏の杉田君が来て、今回の学生の発表のことなどを隣で話しながら、同じ、Vesta - Ceres のセッションに行きました。
最初の Neumann 氏と Hoff 氏は Vesta のメルトの話で、熱源の Al26 が移動するかという過程や部分溶融かグローバルな完全メルトかの違いでどう地殻やマントルの組成や厚さが変わるとかという話でした。いずれにせよ、なかなか HED 隕石を素直に作れない気がしました。
次の Williams 氏の発表は基本的にクレーターなどから古さの順に四つの時代に Vesta 表面を分けたという話で、質問で面白かったのは、月とかで仮定されている大衝突時代は見られないのではというものです。確か、月でも必ずしも必要とは限らないような気がしますが。
その後の Clenet 氏の発表は、修正ガウス関数モデル(MGM)の更に修正版を使って、Vesta の可視・赤外カメラである VIR データからマントルにあるはずのカンラン石が見つからないという話をしたので、私は、インパクトメルトで輝石が多く再結晶して見えなくなっているのではという質問をしたのですが、答えがはっきりせず、時間もなかったので、議論はしませんでした。
そうしたら、次の発表で、ブラウンで博士号をとってメリーランド大学の Jessica Sunshine と研究を始めた Leah Cheek が、Framing Cameras (FCs) からカンラン石などの端成分を見つけて、そこから VIR スペクトルを構成した発表があり、きれいにMgが多いカンラン石らしいスペクトルが出ているではないですか!これには非常に感心しました。おまけに、0.64 ミクロン吸収を示す Cr が多い輝石も出てきて、面白い結果です。きっとプログラムは Jessica が指揮して作ったのだと思いますが。
次の Lunning 氏も HED の 1 種類である Howardite の中の少量のカンラン石が Eucrite を作った過程と整合性があり、Vesta のマントル起源らしいという発表でした。
その後の、ブラウン大の学生の Terik Daly は衝突でインパクターという飛んできた物体も小惑星表面に生き残って、含水鉱物も残るという研究で、Vesta の表面近くに CM コンドライトがあるのが説明できるという内容でした。
次の Shafer 氏は、FC のデータの 0.75 ミクロンバンドの吸収帯を見つけて、その場所の VIR データで 0.72 ミクロンの吸収帯を見つけ、その結果、CM コンドライトの汚染がそこにはあるに違いないという確固たる証拠を示しました。私は、同じ場所の VIR の 3 ミクロン吸収帯も見てみたらと示唆しておきました。CM コンドライトは、今年12月打ち上げ予定のはやぶさ2が2018年にランデブーする 1999 JU3 にも似ていると考えられていて、炭素質コンドライト中にも一番多いもので、非常に重要です。
後は、Dave Blewett が Vesta の宇宙風化傾向を発表したり、Kerimi 氏が Vesta の南極クレーターの形の説明をする発表をしていました。その辺で疲れたので、ロビーに出てトイレに行って帰ってきたら、杉田君と学生の古賀さんがまた打ち合わせをしていました。
今朝のこのVesta-Ceresセッションでは、少なくとも、Vesta表面にはマントル物質のカンラン石が出ていて、CM コンドライトの混合もあるという、はっきりした証拠が出たということだと思います。
Vol, 02. 2014/03/18 AM 06:20 日本時間
お昼は、宇宙研などの人々と話しをしていて遅くなったので、近くの八百屋さんに行こうと思ったらしまってしまっていて、ハンバーガー屋なども長蛇の列だったので、一緒になった吉川先生とともに、アジア系のレストランに行きました。20 分待たされましたが、お昼休みの終わる1時半までに帰り着きました。
午後は、アメリカからの参加者しか応募できない悪名高い(あはは-井本)Dwornik 賞などの授賞式と、Masursky Lecture から始まり、今回は、アポロ 15 号司令官だった Dave Scott が講演者でした。
やはり実際に月に降りて科学的に貴重な岩石などを採取してきただけあって、事前の教育や、リアルタイムでヒューストンにいる Jim Head などの科学者との議論の様子とか、Mission control の指示に何気なく逆らって面白い石を拾った話や、Genesis Rock と呼ばれている斜長岩がダストに覆われていながらも如何に見つけたという話は非常に楽しく、感動的でした。最後に皆が立ち上がり、きっと 40 秒くらい拍手をしていたのではないかと思います。
その後は、宇宙研でキュレーションをしている矢田君や、はやぶさ2の統合サイエンスで一緒している小松さんと立ち話をしてから、ゆっくりゆっくり午後のセッションを聞きに行ったのですが、昨晩よく寝られなかったせいと、LPSC でコーヒーをケチり始めてあまり飲めなかったせいで、起きていられなくて、結局こうしてメールしています。後 30 分くらいセッションは続きますが。LPSC は登録料を $290 に極端に値上げしておきながら、コーヒーまでケチるとはけしからんことです。
Vol, 03. 2014/03/18 AM 08:50 日本時間
今、NASA Night から出てきました。まだ質疑応答が続いていますが、ホテルへのシャトルが来るまで時間があります。
毎年、NASA の予算の現状と見通しと、どのミッションや科研費のカテゴリーが増えるとか減るとか、熾烈な質疑応答がある会合です。
幸い、2014年度はちょっと増えたようですし、Discovery Mission も継続し、Europa mission も考察が開始され、Hayabusa 2 Participating Sientist Program (H2PSP) も発表されましたが、全体としてどのくらいの Research & Analysis (R & A) の予算がとられるのか不明です。
とにかく、私は早く自分の科研費を取らないと給料がなくなるので、深刻な話です。H2PSP に受かると堂々と日本のミッションを助けながら科学に貢献できますが。
Vol, 04. 2014/03/19 AM 01:07 日本時間
昨晩は、NASA Night の後おとなしくシャトルを待っていようと思ったら、Education & Public Outreach (E/PO) の場所で、ハンバーガー、フレンチフライ、アイスクリーム、飲み物などが出始めたので、7時半のシャトルに乗るまで、特にアイスクリームを3度も食べてしまいました。それで、ホテルに帰ってから、近くのスーパーまで歩いていって、果物やトマトを買ってちょっと健康的な栄養補給をしました。
今朝は、またとっても寒くて、ボストンで着ていたジャンパーを着ようとも思いましたが、やはり昼間は暖かいだろうと思って、カーディガンだけにしました。会場についてからちょっと極地研の三澤さんと最近の研究費や雇用のの状況の話しをして、あと、コーヒーをカットしたのではという話を受付の人にしたら、いつも 3 回入れていて、カットしていないということでした。だったら、昨日はコーヒーを飲む人がたまたま多かったということでしょうか?とにかく、倫理破壊している会社であるスタバが提供しているので、私はボイコットしているのですが、NASA 科研費で払われてしまっているので、飲まなくては損です。。。
とにかく、まず、火星隕石の同位体年代のセッションで 2 つだけ講演を聞きました。Symes 氏は、Sm / Nd 年代をより正確に求めるいろんなモデル計算を示し、Shergottites の平均分化年代が 45.1 億年程度だというのを示しましたが、昔は輝石に富む ALH84001 以外はとっても若い隕石しかなかったのですが、Tissint や Northwest Africa (NWA) の火星隕石群のおかげで、いろんなストーリがわかってくるようになったようですね。この講演では、45.6 億年位前の急速な火星形成のあと、45.04 億年くらいに巨大衝突期があったと考えているようです。
2つ目は、日本人女性研究者でもあり NASA JSC で隕石のキュレーションをしている Kevin Righter の奥さんである Minako Righter さんの講演で、NWA7635 というカンラン石と斜長石に富む Shergottite の話です。ここでは、この隕石の形成年代は 24 億年程度といっていますし、Webでも、例えば、http://www.imca.cc/mars/martian-meteorites.htm では、Olivine-phyric shergottitesは 5 億年より若いといってますし、最初の講演との関係が良くわかりませんね。もっと勉強しないといけないです。
とにかく、NWA7635 は、Tissintと同様に、とても古く、2 つのマントル源のうちの一方にとても近い組成であるという講演でした。
その後は、Impact I のセッションに行って、月ができた時の巨大衝突シミュレーションの話をいくつか聞きました。
Harvard 大の Sarah Stewart は C / N と H / N という元素存在比が地球の場合にコンドライトの値よりも N が多かったり C が多かったりするのは居大衝突での大気の損失である程度説明できるのではという話でしたが、隕石中の H は氷や含水鉱物が大気圏突入の際に優先的に失われていることで説明できるのではと思いました。質問する余裕なかったですが、後ろに座っていた中村良介さんとちょっと話しました。
その後は、1 回の巨大衝突でなくて、小さめの衝突があとでいくつか起こったほうがいろいろ説明しやすいという話がありました。でも、月を作る時の巨大衝突は 1 回は少なくとも必要ではないかと感じました。確か、Stewart の講演では海の水を減らすのは簡単だという内容でしたが、2 度衝突させれば半分まで減らせられるという研究もあったはずで、大気と海の量や組成を現在の地球にするためにちょうど都合の良い衝突過程があったはずですね。
ということで、また火星セッションに戻ります。
Vol, 05. 2014/03/19 AM 01:56 日本時間
先ほど報告を忘れましたが、Bill Bottke の講演で、月ができた巨大衝突のときに、地球質量の 5% もの大量の物質が高速で小惑星帯に飛来して、それが Vesta から来た HED 隕石の Ar-Ar による衝撃年代に関連していることをモデルで示せるという、画期的なアイディアが出されました。Bottke はいつも次から次へと新しい考えで我々を魅了してくれますね、と良介さんともうわさしてました。
火星セッションの最後の 2 つは、Agee と Herd によるNWA8159という新しい火星隕石の話で、Augite basalt という、Ca の多い輝石を 48% とか含む玄武岩ですが、旧来の分類に当てはまらないのですが、Nakhlite と関連がありそうということです。希土類元素(REE)の含有量は NWA7635 にそっくりなようです。
これからお昼は Hayabua 2 国際合同科学会議です。
Vol, 06. 2014/03/19 AM 04:22 日本時間
お昼には、はやぶさ2合同科学会議があったので、昼食も食べれずに、午後の講演を 3 つほど聞きました。
Jacobson 氏の Grand Tack Model による月形成時巨大衝突の年代を探る計算は面白かったです。とにかく、仮定に依存しますが、CAI 形成後 9500 ± 3200 万年くらいで、4000 万年よりも古いということはないとか。あと、地球と金星の進化の違いは形成のタイミングによるのではないかと。
その後、Frank 氏や Kalyaan 氏の発表で系外惑星の放射性熱源の話や、Snowline の話がありましたが、正直言って何が言いたいのか分からなかったです。
はや2の会議はなぜか部外者らしい人たちも来ていて、おかしかったです。とにかく、その内容はかけないのでご勘弁を。面白かったですが:)
これからお昼ご飯でも食べに行こうかな。
Vol, 07. 2014/03/19 AM 06:45 日本時間
会場の隣の Which Wich というサンドイッチ屋で無事にシーフードサンドを食べて、分化した天体内の液体というセッションに出ました。
Titus 氏は、Vesta の温度と熱慣性をマッピングして、赤道域には水の安定領域がないので、Dark Matter は含水鉱物とかだろうということと、南極域には安定領域があるが、H の検出がされていないことと、2 度の大衝突があったので、水は存在しにくいだろうということでした。
Combe 氏は、Dawn の VIR データの 3 ミクロン吸収帯から Vesta 上の水の存在を見つけようとして、吸収に季節変化があるように見えるけれども確かな検出はできていないということでした。
私のポスターにあるように、CM コンドライトでも 3.0 とか 3.1 ミクロンに吸収が見えるので、VIR データにそれがあっても H2O とは限らないと思いますね。
今からポスターを見に行こうと思います。
Vol, 08. 2014/03/19 PM 13:06 日本時間
ポスターセッションはいつもながら広大な会場に人々がひしめき合って、科学が好きでないと居られないような雰囲気ですね。
まず私は、Vesta にカンラン石を見つけたポスター群に行って、なかなか良くやっているなあと感心していると、Gaffey のグループの Vishnu Reddy が白人の奥さんと来て、こんな FC データでしっかりとした事言えないよ、という感じで懐疑的に話してくるので、私はでも FC と VIR という 2 つの独立の機器で確かめられたのならば、やはりマントルのカンラン石が見えている可能性高いのではと言いました。
そのあと、私の職があと 2 年くらいで資金切れになるから新しい科研費を取らないといけないという話や、ブラウン大が宣伝している新しい職に応募したらどうかという話や、学術的に対立することがあっても、私の存在を重要視してくれている人たちが居るのだとか、まあいつものような会話になりました。
あと、その横に、私も共著になっている、Andrew Beck のポスターがあり、VIR で見えているカンラン石が多いようなスペクトルをカンラン石に富むインパクトメルトで説明しようとする内容を見ようとしていくと、Andrew じゃなくて、若い女性が居て、そういえば、Andrew はこれないから共著者が発表するといっていたなあと思いました。それで、カンラン石がマントル起源でよいという発表もあったよね、という話をしたら、ああそれは私の発表だといわれるので、名札を良く見ると、Lunning さんでした。いろんな人の試料を測っていて、共著者もいっぱい居るので、何か誰が誰だか分からなくなってますね。
いずれにせよ、ベスタのマントルに関して、非常に高度な会話ができました。
あとは、火星関係で含水鉱物のスペクトルが出てるのを軽く眺めながら、ブラウンの連中が多くたむろしている、月の鉱物のところに行きました。
そうしたら、いろんな組成のスピネルを合成してスペクトル測定した Colin Jackson のところはブラウン大の連中などが取り巻いていて、なかなか近づけず、その裏でさびしそうにしている、Dan Moriarty の、M3 データの 1 ミクロンおよび 2 ミクロン吸収帯の背景吸収の除き方とその輝石組成の解釈への影響に関するポスターを見せてもらいました。前に Carle Pieters の Spec Chat グループでも話は聞いていましたが、よりまとまっていました。そうしたら、ワインを飲みつつ Carle が来て、とっても楽しそうに会話して行ったのでした。今後の科研費のことを心配している私とは大違いだなあ、と思ってしまいましたが、まあアルコールのせいでしょうね。25 歳で酒をやめた私には別世界です。
その周りでは、カナダの Ed Cloutis のところの Paul Mann による RELAB といくつかの ASD 社の野外分光器の性能比較や、日系人の Mike Izawa 君による大気組成制御下における月のレゴリスの分光研究のポスターがありました。Paul とは長く議論して、今後の方針も示唆して置きましたが、Izawa 君は Carle に占拠されていたので、スキップさせてもらいました。
そのあたりで、かぐや SP データ解析をしている山本聡君に会って、Colin Jackson がスピネル合成してくれて、SP が見つけた可視吸収が Fe 量が適当に大目のスピネルであることがはっきりしてよかったねえ、といったら、本人も Carle と個人的に会話したらしく、ブラウン大でも、懐疑的な Carle がどんどん信じる方向に変化して言ったエピソードを話しました。私はスパイではないですが、両方の人たちの状況が分かるので、追い出されない程度に一挙両得を趣味として楽しんでいます。
そして、ブラウンで博士号をとってハワイ大にポスドクとしていった Peter Isaacson 君のカンラン石が宇宙風化した場合に MGM でその組成をどう出せるかという計算実験のポスターで、Fe が多くなるとあまり合わないといって相談してきたので、まあ Hapke の風化モデルや MGM の限界や、風化によって 3 つの吸収帯強度比も変わってしまうのでは、と言って置きました。私もやってみたのでわかりますが、難しいテーマです。
会場では、共同研究していながらも初めて実際会う人々や、ブラウンを卒業した後で何年かぶりに再会した若者たちや、半分は同窓会のような雰囲気でした。でもさすがに開始前の5時くらいから立ちっぱなしで疲れてきたので、8時半のシャトルで帰ることにしました。そうしたら、乗る前から、JAXA の大嶽さんに出会いました。1995年くらいに始まった、かぐや計画の初期に Multiband Imager (MI) の PI をされていて、その時からの付き合いです。シャトルの中で相模原と筑波の給料の違いのことや、東大の空洞化のことや、はやぶさ2のこととか、久しぶりに話しました。
今日は、宇宙研のキュレーションもされている藤村先生ともちょっと話せたし、セッションで聴いた講演の数は少なかったですが、割と濃い一日でした。
Vol, 09. 2014/03/20 AM 00:02 日本時間
寒かったヒューストンもやっと暖かくなり、私は 1 時間の時差のせいやコーヒーのカフェインもあり、早く目が覚めて、今朝は6時に朝食に行きました。私のホテルは、シャワーのお湯がぬるいとか、電源が死んでるとか、いろいろ問題もありますが、安いしシャトルも来るし、あまり文句は言えませんね。中国とか韓国からの人が多いようで、やっぱり NASA からお金をもらっている人たちは高級ホテルに泊まっているような。
7:05 のシャトルで会場に行くと、同位体分析でアメリカでがんばっている Kita さんに会い、私の状況を話すと、廣井さんが居なくなったら日本の探査は困るでしょうと言ってくれるので、まあ私としては日本の人事を買える力はないし、NASA やアメリカの大学のように予算が大きくないので、一人ひとりは実力あっても、教育や技官や機械に投資しているかの差で、アメリカの学生は伸び方が違うという話をしました。
お互いに、日本に必要な人材だと思うのに、アメリカで NASA やアメリカの学生たちに貢献しているのは皮肉なことだよねと話していました。そのとき、SETI の Janice Bishop が通りかかって、RELAB で測定したい試料のことをちょっと話して、それから私は火星のセッションに行きました。
3人の発表を聞きましたが、Amy McAdamはYellowknite Bay でローバーが XRD や加熱による水測定をした結果を基に、Smectite や Saponite があるという話をし、Liz Rampe は、Gale Crater でやはり場所によって Mg や K で飽和した Smectite があり、私の新しいボスの Ralph Milliken は Hisingerite という長く忘れ去られていた鉱物の重要性と、Smectite との見分け方を話していました。Liz も Ralph も RELAB の利用者で、私としては、小惑星を研究するとはいえ、それらのデータがどう使われているかを知る必要があります。
今度は水星のセッションにちょっと顔を出そうと思います。
Vol, 10. 2014/03/20 AM 01:13 日本時間
水星と火星のセッションをつまみ食いして出てきました。
水星では、Miriam Riner が、宇宙風化による Britt-Pieters 粒子(と Paul Lucey が名づけた)大き目の微小粒子のコーティングができていることを仮定して、暗い反射スペクトルを説明しようとしていましたが、最大 4 重量% しかない Fe では説明しきれないかもということで、私や佐々木晶さんとかが推奨しているように、硫化鉄による効果も考えるべきではということでした。私は、コーティングだけでなく、Troilite(FeS)の細粒の混合なども考えるべきと思いますが、質問する時間がなかったのと、Troilite も反射率が大きすぎる可能性はあります。
火星では、Congcong Che という女の子が、Mawrth Vallis での CRISM データの 2.2、2.311 ミクロンの吸収帯と Smectite の加熱実験とを比べて、それらは 500 - 700℃ に加熱された成分が入っているのでは、という発表をしましたが、必ずしもスペクトルはすべて合っているわけでなく、混合の効果を考えないといけないと認めてました。加熱実験の大気組成も知りたかったですが、質問するのを忘れました。
先ほど書き忘れましたが、休憩を取る前に、ロビーで、ブラウン大卒の Sarah Noble と立ち話をしました。Sarah は今は NASA HQ で科研費の関係の仕事をしていて、宇宙風化の共同研究のことから始まり、RELAB の将来や、Ralph Milliken や NASA HQ がどうそれをサポートできるかという内容におよびました。人生にはいろんな道があり、何が天命なのかは分かりませんが、この分野の研究者たちはかなり特殊な使命があるかもと思いました。
さて、今から小松睦美ちゃんを見つけて、はや2の統合科学の話をするか、どうするか、状況しだいですね。
Vol, 11. 2014/03/20 AM 08:47 日本時間
午後のセッションを終え、今日はシャトルが6時で最後だったので既にホテルに戻りました。
午後はずっと Regolith および表面過程とイトカワのセッションでした。
最初の Keane 氏は、小惑星が地球のような惑星にフライバイした時の距離と表面物質の重力安定性を計算していましたが、私の横に座っていた Clark Chapman や宇宙研の矢野さんたちから鋭い質問を受けていました。
Binzel なども、普通コンドライトでできた Q 型小惑星が近地球軌道で S 型になっていないものは、そういう惑星との接近による潮汐力で表面が撹乱更新されているからという論文を出してますし、宇宙風化の速度とともに、重要な観点ですね。
2 人目 の Noriello 氏は、イトカワ上のブロックのサイズ分布を、道上君がやった仕事と比べて、指数的分布の肩の乗数が変わってくるという仕事をしていました。衝突の素人としてはいまいちピンと来なかったですが、見ている場所によって変わるとのこと。これも、Chapman とかから鋭い指摘が。
3 人目はブラウン大に遊びに来ている Sash Basilevsky で、月ではボルダーが壊されていく率と年代との相関が分かるので、それをイトカワに適用したら、表面年代が7千5百万年以下だと分かって、クレーター年代の7千5百万年から10億年の範囲と重なるとか言ってました。それって重なったとは言えないのでは、と杉田君が鋭くそこは指摘していましたね。アイディアは良いけれど結果はあまり驚くべきものでないような。
次の Derek Sears 氏は、新しい SSERVI という NASA の科研費が通ったので、その宣伝のような Vesta の上に水があるように、ErosのPond も流体起源ではないとか言ってました。
このあたりから、私の専門の小惑星と隕石の分光の講演が始まりますが、いったんここで切りますね。
Vol, 12. 2014/03/20 AM 09:13 日本時間
さて、午後の後半は小天体の反射分光と宇宙風化です。
まず、Jeff Gillis-Davis が、硫黄 S があることで普通コンドライトや水星の宇宙風化は格段と進むのだ、ということを発表したので、私は Vesta には S も少ないが、金属鉄がほとんどないことがまず大きな点で、普通コンドライトは 10% くらい金属鉄が入っていて、実験でも、カンラン石に 10% 金属鉄を混ぜるだけで S がなくても格段と宇宙風化は進むのだよ、とコメントしました。
私の元アドバイザーの Faith Vilas が次に、宇宙風化によって紫外での反射率が相対的に上がる変化を捕らえようと観測を続けたが、発見されていないという話をしました。私がコメントとして、400 nm あたりの傾きの変化を見るのが良くて、2006年の LPSC アブストラクトで自分は指標を作ったと言っておきました。それでも時間が余ったので、500 nm あたりのスピン禁制バンドが消えていく現象を捉えて宇宙風化傾向を見たら、とまたコメントしました。
次は、杉田君の学生の古賀さんの発表で、はやぶさ AMICA の多色バンドデータに主成分解析(PCA)を施したら、小惑星が Q 型から S 型に変化する過程がイトカワという 1 つの小惑星上で見えていて、レーザー照射や Ar イオン照射の実験とも整合し、宇宙風化の飽和現象も見えているという、すばらしい発表をなかなか良い英語でしました。ところが、Mike Gaffey が、S 型のすべてが普通コンドライトではないとか、宇宙風化は複雑で 4 つも過程があるとか、いろいろ古賀さんの仕事の価値を低めるようなことをごちゃごちゃ言うので、私が立ち上がって、Vesta に比べて S 型小惑星が高度に風化していることを考えると、S 型少惑星の大半は金属鉄を持つ普通コンドライトと考えてもおかしくないし、微小隕石衝突と太陽風の効果の影響の中間くらいの変化傾向が見えていることもすばらしいとコメントしました。それに対し、Gaffey は誤解したコメントをまたしていましたが、時間切れで終わりました。Chapman も私には賛同していましたが、今後の探査の結果を待つ必要があるでしょう。
次は、イトカワ粒子の元素分析の結果で、Meier 氏の He や Ne 含有量を調べて、8 つのうち 3 つが 150 万年の宇宙線被爆年代に固まっていることを指摘し、Fujiya さんは、Li と B を調べて、10B が過剰にあることを発見していました。
次の 2 人は宇宙風化の痕跡を調べていて、Michelle Thompson は輝石と斜長石に蒸着層を見つけ、他にもいろいろナノ結晶層とか、普通の 2 - 3 nm のナノ微小鉄とか見つけて、斜長石よりも輝石の方が複雑になっているということを言うと、私が思ったとおり、結晶の強さとかの寿命の違いによる風化度の違いではという質問・指摘がありました。私の NRC 時代の職場の同僚の Lindsay Keller は、JAXA から 2 粒と NASA から 1 粒もらったものの解析結果を示し、やっぱりすごいことを発見していました。FeS とかがメルト粒子としてカンラン石の外側にくっついていたり、構造秩序が劣化していたり、対応フレアの軌跡があり、そこから最大でも4000年しか経っていない粒子だと分かるそうです。
次は、私がブラウン大に初めて来た時にお世話になった Dan Britt で、発表は、揮発性物質がある小惑星では宇宙風化によって有機物ができるというものでしたが、何か突拍子もなく、観測とも実験とも合わないので、コメントしたかったのですが他の人に取られて時間切れでした。
最後は宇宙研の学生の中内君で、カンラン石と蛇紋石の水素イオン照射実験で、3 ミクロン吸収帯がやや深く変形するという話でした。ちょっと図の示し方と英語に難点はあったものの、良い発表でした。ただ、水素の量が多すぎるのではないかという指摘はされて、確かに私もそうかなあと思いました。
終わった後、杉田君や古賀さんとフォローアップして、その後やっと小松さんに会えて、別室で、はやぶさ2統合科学のための議論をして、6時のシャトルに乗る直前に杉田君と AKARI データの議論をして、こうしてホテルに戻りました。
これから夕食などを買いに行かなくちゃ。
Vol, 13. 2014/03/21 AM 01:19 日本時間
さて、今日は木曜日で、2 つ目のポスターセッションがある長ーい日になりそうです。
今朝は、月形成の巨大衝突の話のセッションに途中まで参加しました。
最初の Burkhardt 氏は、月と地球で O, Ti, Cr, W, Si の同位体組成が同じことから、月の組成は原始地球のマントルから来たのではという単純なモデルを提唱し、コアは混ざらず、マントルだけ衝突で混じったということでした。182Hf と 182W を使ってましたが、質問の時間に、何でコアの大きさの違う天体で Hf と W の同位体組成が同じになるんだという鋭い指摘が出ていたようです。
次の Abram 氏は、巨大衝突モデルを Zr から調べたものです。結果の論点は CI 隕石組成意外なら何でもよいようでしたが、それよりも、原始地球にぶつかってきたと考えられる天体を Theia と呼んでいたのが気になって、後ろに座っていた宇宙研の春山さんも、それって本当に通り名なんでしょうか、と尋ねてきたので、私は確か昔は Orpheus と読んでいたのでは、と答えました。
次は Caltech の Miki Nakajima という日本の女の子で、Lunar disk から水や H が抜けたはずなのに月のデータでは D / H の増加などの証拠がないのをどうモデルで説明するかという話でしたが、根本的な仮定について鋭い質問をされていたのと、私は後から来た彗星や炭素質コンドライトなどの影響はないのだろうかと素朴に疑問に思いました。
続いた Petaev 氏も月の Na と K は 揮発性なので地球より少ないのは説明できるが、Fe, Mn, Ni とかを説明するには地球と月のどの部分をどれだけ混ぜたらよいかといろいろ試行錯誤していました。
Huang 氏は、地球と月で K, Ca, Si の同位体が同じことから、Si の同位体は非平衡凝縮をし、酸素は同じ質量依存分別をしたのではといっていました。
私が出る前の最後の Klein 氏は、優雅な語り口調で、最初の Burkhardt 氏と同様に、半減期 890 万年の 182Hf から 182W への壊変から月の起源を探ったもので、KREEP に富む月試料を 5 つ精密分析したら、182W が月の方がちょっと多いことを見つけ、そこから何か言っていましたが、アブストラクトと同様に、地球のマントルが主原材料と言っていたのかどうかわかりませんでした。
だんだん疲れてきて、コンドライト母天体のセッションに移りました。
最初部屋を間違えて、4 番会場のドアがしまっているのを開けてもらって最前列に行ったら、おかしいな?あ、生命を探すというセッションだったと気づいて、恥ずかしながらすぐに出て 5 番会場に行きました。
Schwinger 氏が、Kainsaz という CO3 コンドライト(Y-82094など)のタイプ II コンドリュール中のカンラン石の化学ゾーニングとクロマイトとの関係から、遅い冷却速度を出して母天体中での深さなどを議論していました。よくある発表で期待はずれだったかなあとも思ってしまいました。ごめんなさい。
Vol, 14. 2014/03/21 AM 04:36 日本時間
午前中のセッションを早めに出てポスター会場に行って予習をしていると、Canada の Ed Cloutis が寄ってきて、今回、彼のところの Paul Mann がポスターで発表している分光器間の相互データ検証のことを尋ねてきました。RELAB と ASD 社製の他の分光器とのデータの違いについて、やはり波長分解能と波長位置精度だろうと答えました。既製品の精度の調整は難しいのです。
あと、メールの部屋でも、アリゾナ大学で LRO 関係の多色カメラ関係の仕事をしている佐藤君とも会いました。月試料の反射スペクトル測定の角度のことで、位相角 30 度でなくとも 60 度でも取れることを説明しておきました。
お昼はがんばって遠くまで歩いて、ホテルの近くにあるスーパーと同じ HEB の別の店で、また玄米すしを買って、会場で食べました。日本で買った緑茶バッグをお湯で入れて飲もうとすると、Sarah Noble もお湯が出るのを待っていて、最近私が、はやぶさ2の科学のために炭素質コンドライトのいろんな解析とまとめをしているんだと話すと、JSC の Lindsay Keller も OSIRIS-REx のためにおんなじようにしていて、なかなか論文がかけないと言ってました。それは私も同じだといっておきましたが。そうしたら、ブラウンの Jack Mustard が来て、Sarah が Carle Pieters と過去の学生たちのパーティーを昨日やった写真を見せてきたので、歴代の学生たちの話題に花が咲きました。
午後は、Protosolar disk のセッションに行き、3 つの講演を聴きましたが、とっても眠かったせいか、いまいち頭に入りませんでした。基本的に、Boss, Gounell, Ed Young の三氏とも、短寿命の放射性核種の存在度をどう説明するかで、超新星との関係をいろいろ考察していたのだと思います。座長の一人は東大の永原先生で、その関係の学生らしき日本人たちもいたようです。天文と隕石が放射性元素で結びつく分野ですね。
Vol, 15. 2014/03/21 AM 07:10 日本時間
午後の後半はまた Protosolar disk のセッションでした。
東工大の横山君が太陽系の同位体不均一性が元素によってかなり違うことをとてもうまく説明できそうなモデルを提示していました。O, Cr, Ti などは天体によって二分されるくらい同位体が非均一なのに、Os や Te は均一に見えるということなどです。モデルとしては、太陽系星雲中で加熱によって揮発しなかった固体中にあった元素は Os のように均一になり、気化してしまったものは Mo のように同位体非均一性が大きくなったという、選択的な蒸発に原因を求めるものです。細かい詰めはできていないようですが。
次は東大の永原先生で、炭素質コンドライトができる場所とタイミングの候補を挙げていました。CM コンドライトは 2 AU のちょっと外側でかなり場所が特定できるのが面白いと思いました。もちろん、仮定に依存するのだといっておられましたが。
その後は、ロビーに出てきて、杉田君と明日の口頭発表資料の打ち合わせをしていたらもう5時になってしまいました。
6時からポスターです。
Vol, 16. 2014/03/21 PM 12:53 日本時間
今ポスターセッションが終わって、みながポスターを片付けているところです。
今回は自分のポスターもあり、忙しかったです。
隣のポスターの Gaffey の学生らしい人が、私と佐々木晶さんの宇宙風化のデータを RELAB から取っていって勝手に使っているのですが、確かに Public Domain とは言え、詳しい情報も含めて PI に一言声をかけるのが普通で、まあそうしたくない理由があっての事でしょうが。ちなみに、その研究の質はよくないです。
杉田君の学生の岡村さんの AKARI データのポスターには Andy Rivkin(@asrivkin) が来ていて、三人で楽しく会話しました。私のポスターには日本人の学生が主に来て、日本語で解説していたので、きっと横から見ていたアメリカ人たちはちょっと疎外感を感じたかもしれないですね。私のポスターの列では、Mike Zolensky が自家製のチョコクッキーを配っていて、私も一つもらいました。会場では飲み物と少量のチップとナッツなどしかなかったので。
小松睦美ちゃんは共著者である荒井さんのポスターを放っておいてかわいい赤ちゃんを見ながら私や極地研の三澤さんと楽しく立ち話をしていました。ひょっとしたら少しはポスターのところにいたのかもしれませんが、まじめにやっていたならごめんなさい。
私が最も興味を持ったのは、NEO WISE という近地球小惑星の2色バンドサーベイでした。特に、過去の WISE サーベイの方の 3.4 ミクロンのアルベドが木星軌道の小惑星では大きいほど暗くなることです。私は、その発表している子に、炭素質の小惑星の宇宙風化は短波長側を明るく、長波長側を暗くするので、きっと大きい小惑星はすべて宇宙風化で飽和しているのでは、とコメントしておきました。
あとは、RELAB で試料を測ってあげている Maggie McAdam に初めて会うことができて、地球風化をある隕石から除こうとしているポスターを見てコメントしてあげました。そのときに、私の昔の NRC 仲間で LPI にいる Allan Treiman も来て、三人でいろいろ議論に花が咲きました。
他には、Chelyabinsk 隕石の研究のポスターなどありましたが、どれも面白そうなものは他の人が来て議論に花が咲いていましたね。それとも、かわいい女の子がたっているところに人が集まっていたのか、天のみぞ知るです:)
最後に、Jessica Sunshine が声をかけて来たので、Dawn の FC と VIR を使って Leah にやらせた仕事はすごいねえ、といったら、S / N のことや校正の問題もあるけどと言っていました。どうも、VIR データをイタリアから入手するのが容易ではないようです。あと、私のポスターを見せて、極地研の CM コンドライト試料に異常な 3 ミクロン吸収帯が見えることを示すと、非常に興味を持って、今後の研究や、はやぶさ2のことや科研費のことなども話していました。
最後までいたので、9時半の最終シャトルでホテルに帰って、こうして書いています。今夜も果物くらいしか食べるものないなあ、歩いてどこかへ食べに行くのにはちょっと遅いし。
明日は最終日ですが、午前も午後も小天体と月でいろいろあります。
Vol, 17. 2014/03/22 AM 00:00 日本時間
とうとう最終日の金曜日になりました。かなり人も減ったような気がします。
今朝は、真っ先に山本聡君と遭遇して、午後の発表のことをちょっと話し、一緒に月のレゴリスのセッションに行きました。
最初は Elsila 氏が、月試料中のアミノ酸の測定と起源の話しをしていました。太陽風からの H、N、C からできたというのは場所との相関からありそうもないようで、炭素質コンドライト(CC)起源は、13C が多くなっていることがわかれば確認できるという話でした。私としては、CC 起源は他の元素とか含水鉱物からもわかると思いますが、似た質問を誰かがしていました。
次は Carle Pieters で、月のスワールのスペクトルを見ると、風化度が低いという説明よりも、レゴリスのマクロ空隙率が小さいという説明が合うということを、M3 とかぐや MI と実験室での月ソイルの反射率の比較とかも入れて示していました。宇宙研の大竹真紀子さんも空隙率を変えてアポロソイルを測定したことがあり、それで論文を書いています。Carle は最初はその考えに反対していたのに、スワールがそれで説明がつくということで納得したのでしょうね。
続く Hemingway 氏は、高緯度でスペクトルの傾きが小さくなっているという、かぐや SP で横田君が発見した内容をまず示し、それと Lucy が使っていた、750 nm 反射率と、750 nm と 950 nm での反射率の比のプロットをクレーターやスワールで示して、2 つの傾向、宇宙風化とスワールの傾向があることを示し、後者は Carle が言うように太陽風の欠如による物理的特性の違いではと言っていました。
次の Marck Robinson は、UV で宇宙風化が見えるのではという考えで、320, 360, 415 nm の反射率を見て、いろいろ考察していましたので、私が質問で、月は小惑星などよりも鉱物的に多様で、2 つの波長での反射率比程度で見るのは難しいのでは、そして 415 nm での傾き変化という、はやぶさのために2006年に開発した指標を使ってみては、とコメントしました。彼はあまり Happy な感じではなかったですが、この発表の共同研究者の佐藤君と今日はお昼ご飯に行くので、そのときに説明しておこうかと思います。
次は私は急いで他の部屋に移動し、初期太陽系年代学というセッションの、Glenn MacPherson の 26Al の分布の講演を聞きました。初期の 26Al / 27Al の量比には 5 x 10 の ‐5 乗あたりにピークがあり、でもまだ初期結果の段階で、オンラインデータベースで協力しようと呼びかけていました。タイトルと比べて、結果はちょっと期待はずれでした。
ということで、10時半からは6番会場の小天体セッションに行きます。
Vol, 18. 2014/03/22 AM 04:08 日本時間
午前の後半は、小天体のリモセンのセッションでした。
まず、Rachel Stevenson が WISE および NEO WISE で 21 個の彗星を発見した発表をしました。小惑星も多く発見または多波長バンドでアルベド・大きさといった有益な情報を獲得していますね。
次の James Granahan は Galileo ミッションの NIMS データをやっと解析して、951 Gaspra に 2.8 ミクロンから始まる含水鉱物的な吸収帯があることを発見しました。4.47 ミクロンにも吸収帯があり、私は、CM コンドライトにもそのあたりに弱い吸収があるものもあると付け加えておきました。ただ、Gaspra が R コンドライトに似ているというのには合意できず、R にしては輝石が多すぎるのではと指摘しておきました。
次に発表した Gaffey の学生らしい Gerasimenko さんは、SMASS I, II および S3OS2 サーベイ間のデータの不一致の話をしていました。
Lucas さんは、Hungaria 小惑星群と隕石との関連を話していましたが、オーブライトに似ているとは見えませんでした。その周りにある背景小惑星は L / LL とか原始的エコンドライトに似ているというのは納得できました。
Driss Takir は、小惑星帯の外側領域の小惑星の望遠鏡スペクトルの特定の波長領域を使って、Ivuna と 3 つの異なる水質変成度の CM コンドライトに分けられることを示しました。私は、示されたスペクトルの一致において、0.7 ミクロン帯が合っていなかったことと、望遠鏡で測定しにくいとはいえ、一番重要な波長領域が抜けているのと、隕石のデータが限られているので、もっと多くの隕石および端成分鉱物も考慮してはとコメントしました。
最後は、東大柏の岡村さんの仕事を先生である杉田君が発表したものです。AKARI のデータと Takir がグループ分けした炭素質コンドライトの比較も含め、望遠鏡で見えない波長領域も含めて、OH も H2O も含まないものから、様々な水質変成度をもつ小惑星が見つかったというものです。この発表にはみな感銘を受けたと思います。そばに座っていた Clark Chapman にも、隕石で豊富な CM がどんどん小惑星にも見つかって、ストーリーはどんどん単純になってきたでしょう、と一言言ってしまいました。
その後は、ロビーで岡村さんに会ったので、今回の記念に写真を撮って、アリゾナ大の佐藤君と昼食に行って、アメリカで暮らす日本人同士のいろんな話をしました。もっと時間があればよかったですが。
さっきちょっとだけ Ed Scott のメソシデライトの母天体の話を途中から聞きましたが、今からまた月のセッションに行きます。
Vol, 19. 2014/03/22 AM 08:56 日本時間
午後の月のセッションは、Lunar Highland がテーマでした。
まず、Lemelin さんは、かぐや MI データを使って、深さとともに Mafic 鉱物が増えているかどうかを検討しましたが、それは見えなかったようです。大竹真紀子さんが、インパクトメルトとかを入れてしまっているのでは、という私の疑問と同じ質問をしました。
Paul Lucey は、MI データと DIVINER データの Christiansen Feature (CF) の波長位置に宇宙風化の効果も入れたものから、鉱物分布を調べていました。
次に大竹さんは、Th と Mg# のマップを作り、それらに負の相関があるかもという話をしていました。それは、マグマオーシャンのときに、斜長石が裏側に流れていって、そこでまず斜長岩地殻を作り、その後で他の部分は Mg# が減少しながら結晶化したというモデルだったと思います。
その後で、山本聡君は、 Bright High-Ca Pyroxene (BHCP) の分布を調べ、その成因を、Pluton, Cyrptomare, Ejecta, Impact melt の 4 つから考察していました。時間が余り、座長の Kerri から輝石と斜長石の含有量比について質問があり、山本君が、輝石が少なめでも効いてくると答えたので、わたしは、Intimate mixing ではそうだが、Areal mixing なら量比も変わってきますと答えておきました。
ここで私は Solar System Workings という別のセッションに移り、新たな異常な隕石である NWA7235 の話を 3 つ聞きました。
Jabeen さんは原始的エコンドライトとユレイライトの系列で説明できると発表すると、いくつか激しい反対にあっていました。
Weber さんは、よくわからない発表をし、質問にもよくわからない答えをしていました。
最後の Noriko Kita さんは、同位体の詳細な測定から、ユレイライトに関係しているだろうが他の小惑星から来たのでは、という発表でしたが、突然一瞬電源が切れて、プロジェクターが止まってしまいました。みな戸惑って、おそらく 5 分とかもっと長く質問の時間にしたりしましたが、やっと回復して、なんと時間内にしゃべり終えたのはさすがでした。
ここで、また月のセッションに戻り、Arnolds さんは M3 と DIVINER データでカンラン石を含む場所のカンラン石含有量を推定し、60% から 90% 以上のものもあるということでしたが、宇宙風化の効果を入れたら下がるはずなので、それは上限値だろうということでした。
最後は、ブラウン大卒の Lin Li の学生らしい Sun という人で、M3 を使ってカンラン石をマッピングして起源を調べていましたが、いくつかは誤認があり、それを私も山本君もアブストラクトから知っていたので、どっちが指摘しようか、と話した結果、私がやさしく指摘することにしました。詳しくはどこがおかしいか山本君に尋ねてください、と後で言いました。
これで LPSC の全日程が終わり、かぐやチームの連中と立ち話をしてから、阪大の薮田さんと炭素質コンドライト中の有機物に関する質問をいろいろして、いっしょにいた九大の大澤君という四年生で交換留学している学生とも話し、6時のシャトルでホテルに戻りました。
長い一週間も終わり明日は早朝5時台のシャトルで空港に行ってボストンに戻ります。週末にまた振り返って、ブラウン惑星人の日々として書こうと思います。