NASA Cassini-Huygens(カッシーニ・ホイヘンス)mission「NASA Cassini(カッシーニ)探査機、Enceladus(エンケラド(ゥ)ス)の海から”新鮮な”有機物を発見」

原文 : November 18, 2025 : NASA Cassini Study Finds Organics ‘Fresh’ From Ocean of Enceladus


研究者らは、土星の氷衛星 Enceladus(エンケラドス)の噴出物(プリューム)中を接近・超高速で通過した際に採取された氷の粒子から得られた情報を詳細に分析した。
 

Image caption :
この画像は2009年にカッシーニ探査機が撮影したもので、土星の衛星エンケラドスの南極から噴出する水氷と水蒸気の劇的な噴煙が捉えられている。
Credit : NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute
 

NASA の Cassini(カッシーニ)探査機が得たデータの新たな分析により、土星の衛星エンケラドスの凍結した氷殻の下にある海から噴出する氷粒子の噴出物(プリューム)中に、これまで検出されていなかった有機化合物の証拠が発見された。研究者らは、以前発見した分子だけでなく、化学的または生化学的活動への潜在的な道筋を示す新たな分子も確認した。

参考:カッシーニ・データから、エンケラドスで生命を生み出すエネルギー源と分子を発見 - Dec. 14, 2023 日本語訳解説

研究対象の氷粒子は、衛星表面からわずか 13 マイル(21 キロメートル)の高度で採取された。エンケラドスの氷殻下水から噴出した新鮮な粒子において、これほど多様な有機化合物が観測されたのは今回が初めてである。水曜日付『Nature Astronomy(ネイチャー・アストロノミー)』誌に掲載されたこの発見は、氷殻下で活発な有機化学反応が起きていることを裏付ける重要な一歩を示している。この種の化学活動は、生物学的プロセスにおいて重要であり、地球上の生命に不可欠な化合物を支える可能性がある。

検出された有機物の多様性を増すだけでなく、今回の研究はカッシーニ探査機がプリュームを直接通過した際に採取した粒子を分析することで、これまでの知見に新たな層を加えた。これはエンケラドスの海に直接潜る探査の次に良い方法である。

「従来は、周囲の強力な放射線環境によって変化した可能性のある、採取の数年前から存在する氷粒子中の有機物を検出していたと思っている」と、本研究の筆頭著者であるベルリン・フリー大学の Nozair Khawaja(ノザイル・カワジャ)は述べている。
「今回発見された新たな有機化合物は、エンケラドス表面氷殻下の海から新たに湧き出た氷中に存在し、わずか数分前に生成されたものだ」

科学者たちは、カッシーニ探査機の過去のデータ解析から、土星の E リング(土星を囲む淡く広い外側の環で、エンケラドスの噴出物から広がる氷の物質によって形成されている)の粒子に窒素や酸素を含む有機化合物が存在することを知っていた。しかし今回の新たな研究では、衛星の噴出物そのものから採取した氷粒子、つまり、氷殻下の起源に最も近い場所で発見された粒子を分析したと言える。

「新たに噴出した物質から発見されたこれらの分子は、カッシーニが土星の E リングで検出した複雑な有機分子が、単に宇宙空間への長期曝露による生成物ではなく、エンケラドスの海洋に豊富に存在することを証明することになる」と、共同執筆者で同じくベルリン・フリー大学の Frank Postberg(フランク・ポストベルグ)は述べた。
 

迅速かつ実り多い

データは2008年、氷粒子がカッシーニ探査機の Cosmic Dust Analyzer(宇宙塵分析)装置に衝突した際に収集され地球へ送信されたものだ。プリュームから直接採取されたことに加え、これらの氷粒子は別の利点を持っていた。探査機が衛星面に対して毎秒 11 マイル(約 18 キロメートル)の高速で接近飛行した際、装置に衝突して粉々に砕け散ったのである。

衝突エネルギーにより氷粒子は気化し、その大部分がイオン化された。これらのイオンは装置の質量分析計によって化学組成が解析された。

研究者らは、1000 分の 1 ミリメートル未満(インフルエンザウイルスよりも微小)の極微粒子を分析し、噴出物粒子では未確認だった有機化合物を特定することに成功した。

新たに検出された化合物には、脂肪族(非芳香族性の炭素化合物)および環状エステル(ラクトン)の化合物群やエーテル類が含まれており、分子構造に二重結合を持つものもあった。これらは、確認済みの芳香族化合物や窒素・酸素含有化合物と相まって、より複雑な有機化学反応へとつながる化学反応やプロセスの基盤となる構成要素となり得る。こうした有機化学は宇宙生物学の重要な関心事であり、太陽系内で生命を探す対象を絞り込む手がかりとなる。

プリュームを近接飛行した後、NASA JPL(ジェット推進研究所)が運用するカッシーニ探査機は、さらに 10 年近くかけて複雑な土星系を探査し続けた。
 

More About the Mission(ミッションの詳細)

カッシーニ・ホイヘンス・ミッションは、NASA、ESA(欧州宇宙機関)、イタリア宇宙機関の共同プロジェクトである。カリフォルニア州パサデナにあるカリフォルニア工科大学の一部門である JPL(ジェット推進研究所)は、ワシントンにある NASA 科学ミッション本部(Science Mission Directorate)総括の下、ミッションを管理した。JPL はまた、カッシーニ探査機の設計、開発、組み立ても担っている。

カッシーニ・ホイヘンス・ミッションの詳細については、以下を参照いただきたい。

Cassini-Huygens
 

News Media Contact

Scott Hulme
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

Alise Fisher / Molly Wasser
NASA Headquarters, Washington

2025-127



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office