Space Topics 2022
Space Topics JPL 日本語訳ニュース
NASA ボイジャー1号のテレメトリーデータを調査するエンジニアたち
原文 : May 18, 2022 - Engineers Investigating NASA’s Voyager 1 Telemetry Data
NASA ボイジャー1号のテレメトリーデータを調査するエンジニアたち
探査機は科学データを返し続け、その他の動作もいつもと変わらないが、ミッションチームはシステムデータから生じた異変の原因を探っている。
1977年に打ち上げられた NASA 探査機ボイジャー1号は、先に打ち上げられたボイジャー2号とともに太陽系を探査中だ。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
AACS は、45年前に設計された探査機の姿勢を制御するシステムだ。ボイジャー1号の高利得アンテナを正確に地球に向け、データを地球に送信することもミッションの一つである。すべてのサインは、AACS がまだ機能していることを示唆しているが、それが返すテレメトリ・データは無効である。例えば、データがランダムに生成されたように見えたり、AACS がどのような状態にあるのかを反映していないことがある。
この問題がありながらも、宇宙機を「セーフモード」にするために設計された船内の故障防止システム(fault protection systems)は作動されていない。セーフモードとは、必要な操作のみを行い、エンジニアに問題を診断する時間を与える状態である。ボイジャー1号の信号も弱まっていないことから、高利得アンテナは地球に対して所定の向きにあることは間違いない。
チームは、無効なデータが直接 AACS から来ているのか、それともテレメトリデータの生成と送信に関与する他のシステムから来ているのかを判断するため、引き続き信号を注意深く監視している。この問題の性質がよりよく理解されるまでは、探査機が科学データを収集し送信できる期間に影響を与えるのか、チームは予測することができない。
ボイジャー1号は現在、地球から 145 億マイル(約 233 億キロメートル)離れており、その距離を移動するには光で 20 時間 33 分かかると言われている。つまり、ボイジャー1号にメッセージを送って返事をもらうのに、およそ2日かかるということだ。今ではミッションチームは、こうした遅れには慣れっこになっている。
NASA JPL ジェット推進研究所のボイジャー1号と2号のプロジェクトマネージャである Suzanne Dodd(スザンヌ・ドット)は、「このような謎は、ボイジャー・ミッションがここまで来れば当然起こり得る」と述べた。
「ボイジャー1号と2号はともに打ち上げから 45 年ほど経っており、ミッションの計画者が予想したよりもはるかに先に行っている。また、星間空間という、これまでどの宇宙機も経験したことのない高放射線環境でのフライトだ。だから、エンジニアリングチームにとっては大きなチャレンジとなる。しかし、もし AACS でこの問題を解決できるとすれば、我々チームがそれを見つけることは可能だ」
チームが異常の原因を見つけられなかったとしても、それなりに適応していく可能性もあるとドッドは言う。もし原因が見つかったなら、ソフトウェアを変更したり、宇宙機の冗長なハードウェアシステムの一つを使用することで問題を解決できるかもしれない。
2017年、ボイジャー1号の主要スラスタに劣化の兆候が見られたため、エンジニアたちは、もともと同宇宙機の惑星フライバイ時に使用されていた別のスラスタに切り替えた。このスラスターは、37年間使われていなかったにもかかわらず、鮮やかにその号砲を鳴らした。
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ボイジャー1号の双子のボイジャー2号(現在、地球から 121 億マイル(約 195 億キロメートル)離れている)は、現在も正常に作動している。
1977年に打ち上げられたボイジャーは、ミッション・プランナーの予想をはるかに超える長期間にわたって運用され、星間空間でデータを収集する唯一の宇宙機となっている。この領域から得られる情報は、太陽系内の惑星の周囲に太陽が形成する拡散したバリアである太陽圏(太陽の磁気が及ぶ範囲)の理解を深めるために貴重なものだ。
二機の宇宙機の電力は、一年間に約 4 ワットの減少を続けており、宇宙機が稼働できるシステムの数は限られている。ミッションエンジニアリングチームは、科学機器や重要なシステムの電力を確保するために、さまざまなサブシステムやヒーターのスイッチを切っている。ボイジャーのチームは、2025年以降も二機の宇宙機を稼働させ、独自の科学を提供し続けるために取り組んでいる。
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エンジニアがボイジャー1号が今回提示した謎を解く努力を続ける一方で、ミッションの科学者たちは、探査機がユニークな視点で捉えて地球に降ろしてくるデータを最大限に活用し続けるだろう。
ボイジャーの詳細は以下からご覧頂きたい。
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan