Q. イオンエンジンには、なぜキセノンが使われているのですか?

July 18, 2018 - 田川泰二 : 54才
 

A. 探査機の軌道を変えるには、ガスをなるべく高速で噴射すればよいことになります。これまでの化学エンジンでは燃料を燃やすことでガスを噴射していましたが、イオンエンジンではキセノンをイオン化(プラズマ)にして、そこに電圧をかけて加速して噴射しています。

物質をイオン化(プラズマ化)して噴射できればよいのですが、キセノンを使っている理由は次のような利点があるからです。

(1)単原子分子であるために2原子以上からなる気体よりも電離電圧が小さい。そのため加えたエネルギーが加速に使われる割合が多くなる。
(2)他の物質と反応しにくい。
(3)質量(原子量)が大きいので、加速の効率がよい。

「はやぶさ」初号機でも、イオンエンジンにはキセノンが使われていました。


Q. もうリュウグウまでの距離が1000kmを切ったとのことですが、対リュウグウ速度はどのくらいなんでしょう。微弱重力ながらリュウグウに向かって落ちていく感じなので、多少加速していくのでしょうね。

July 18, 2018 - 酢味噌煮庵 : 66才
 

A. 回答が遅れてしまって申し訳ありません。小惑星からの距離が1000kmくらいのときは、リュウグウからの引力はほとんど感じません。現在(7月半ば)、「はやぶさ2」探査機は、リュウグウから20kmくらいのところに留まっていますが、この距離ですとリュウグウからの引力を少し感じます。つまりほっておくと探査機はリュウグウの方に引き寄せられてしまうので、ほぼ毎日、リュウグウから離れる方向に少しだけスラスタ(化学エンジン)を噴いています。


Q. 初歩的な質問ですみません。地球を出発して3年半くらいかけてリュウグウに到着する予定ですが、地球に帰還するのは1年位の予定と聞いています。こんなにも違うものですか。

July 18, 2018 - チャチャ : 36才
 

A. これは、地球とリュウグウのそれぞれの軌道と位置のタイミングによります。また、スイングバイをしたりイオンエンジンで加速しているということも関係しています。行きは、打ち上げられてからちょうど1年後に地球に戻ってきてスイングバイをしました。地球の引力を利用して加速したわけです。ですから、このスイングバイの時が地球からの出発と考えてもよくて、そうしますと行きは2年半かけて地球からリュウグウに行ったことになります。実際、より強力なロケットを使って打ち上げれば、地球スイングバイをしたときに打ち上げてもよかったことになります。スイングバイ後、2年半かかった理由は、イオンエンジンで軌道を制御していったためです。イオンエンジンは燃費がよい(少ない燃料で加速できる)エンジンですが、その力は弱いです。ですから、長時間かけてじわじわと加速をする必要があり、時間がかかりました。もし、イオンエンジンではなくて化学エンジンで一気に加速するようなことをすれば、行きの時間は短縮できたと思います。

帰りについてですが、帰りもイオンエンジンで軌道制御をしますが、帰りは最終的には地球大気にカプセルを突入させて、地球大気で一気に減速することができます。このことや、地球とリュウグウの位置関係によって帰りは約1年で戻ってくることができます。


Q. スタートラッカでの撮影を行った際、イオンエンジンを止めたのはなぜですか?(より正確な画像取得のため、制止した状態で撮影した、という理解で正しいですか?)

June 26, 2018 - omochiclub : 42才
 

A. スタートラッカでリュウグウを撮影した理由は、光学航法を行うためです。光学航法というのは、探査機から見たリュウグウの方向も情報として使って、電波による交信の情報と一緒にして探査機やリュウグウの軌道を正確に求めることをします。そのときに、イオンエンジンが起動していると探査機の軌道を正確に求めることが難しくなります。イオンエンジンを切って、外乱をなるべく少なくして探査機の軌道を正確に求めて、そこに探査機から見たリュウグウの方向という情報を入れて、正確に軌道を求めることを行っています。


Q. サンプリングに先立つ”爆撃”物は何だろう?汚染を避けるための工夫を知りたい。絶妙な”破壊程度”が求められる射出速度(エネルギー?)の設定は事前固定値?射出時の反動を回避する仕組みは?(無反動砲?汚染を避けるためにはバネを使いたい所と思うけど、反動が大きすぎるかも)そもそもエネルギーは高く無く、反動キャンセルエネルギーは姿勢制御エンジン利用?
真空環境、無重力環境、汚染回避等々、想像を超えたものなんでしょうね。

June 24, 2018 - 渋谷伸一 : 69才
 

A. サンプリングは3回まで行うことができますが、衝突装置というものを使って人工的なクレーターを作ってからのサンプリングは最後に行います。衝突装置は円筒形の箱のようなもので、これは探査機からゆっくり切り離します。ですから探査機の方には大きな反動はありません。衝突装置を切り離すと探査機の方は急いで小惑星の反対側に隠れます。すると衝突装置が数百メートル上空で爆発し、約2kgの銅の塊を秒速2kmに加速し、それが表面に衝突して人工的なクレーターをつくることになります。ですから銅は表面にぶつかって表面を汚染してしまうことになりますが、リュウグウのような小惑星表面には銅は存在しないと考えられるので、小惑星固有の物質と区別できるので問題ありません。一方、銅を加速するための爆薬が表面を汚染する可能性がありますが、かなり上空で爆発するので、小惑星表面を汚染する量は少ないと考えています。


Q. I am interested on the 11 separable payloads.
Are available to the public details on how the 4 rovers/landers work? They look very interesting, but I can't find anything around; I would like to create a a printable 3d model of each of them, but with information I currently have, they would be just three prisms and one cube.
Also the locomotion systems they are going to use are very interesting, but can't find much informations on them.

What about DCAM3? How is it placed? Does it have locomotion system?
Thank.

June 24, 2018 - Luca : 45才
 

A. As for MASCOT (small lander), please see the web of DLR, such as
http://www.dlr.de/irs/en/desktopdefault.aspx/tabid-11302/#gallery/28470
I think you can find the locomotion system here.
As for MINERVA-II, I think there are no web where detail information is written.

DCAM3 is a heritage from ICAROS mission, which is the solar power sail of Japan. It does not have locomotion system, but when it is released from the spacecraft, DCAM3 spins so that it can maintain its atitude.


Q. いよいよリュウグウに到着間近!どんな姿の星なのか、いまからワクワクしています。
サンプルリターンを計画していると思いますが、地球に持ち帰るコトが出来る量(体積や重さなど)は、どのように想定していますか?また、持ち帰ることができる限られた量の中で、持ち帰る物質の取捨選択などはありますか?
遠い遠い星の一部は、小さくても未知の希望がたくさん詰まっていますね。はやぶさ2が運ぶ夢のかけらを地球で心待ちにしています!

June 23, 2018 - 冬乃 : 33才
 

A. 「はやぶさ2」が目標にしているサンプル採取量は、0.1グラムです。たった0.1グラムと思われるかと思いますが、0.1グラムあると想定している分析を行うことができるのです。

「はやぶさ2」のサンプルの取り方は、筒状の足が小惑星表面に触ったときにその内側に弾丸を発射して表面を砕いて破片が筒の内側を上昇してケースに入るというやり方ですので、そもそも多くのサンプルは採取できません。地上でいろいろな実験をしましたが、0.1グラムという目標は達せられそうです。

なお、「はやぶさ2」は三回タッチダウンをしてサンプルを取ることができますが、サンプルはそれぞれ別の部屋に入ります。ですから、異なる場所からのサンプルが混ざらないようにできるわけです。持ち帰る物質の取捨選択はできませんが、サンプルを採取する場所は選ぶことができます。


Q. リュウグウと同じ軌道に導くためにはどのような技術を使うのでしょうか?少しづつ修正を加えている こととは思いますが、まずは、リュウグウと同じ軌道面にもっていってから、曲率というか半径を方向を合わせていくのでしょうか、質量がリュウグウとは違うので、追いつこうと速度を上げると軌道から 外れてしまうように思えるのですが、どのような手順、方法を駆使して、リュウグウと並走に持ち込むのでしょうか気になっています。

June 03, 2018 - 相澤秀邦 : 64才
 

A. 2015年12月3日に地球スイングバイをしましたが、スイングバイによって探査機の軌道面がリュウグウの軌道面に近づけました。その後、2年半にわたってときどきイオンエンジンを噴きながら少しずつ軌道をリュウグウの軌道に近づけていきました。つまり、探査機の軌道をだんだんと大きくなるように加速していったわけです。ここでリュウグウとの質量の違いは特に関係しません。

探査機には太陽からの引力が一番強く働きますが、その他に惑星からの引力も考慮して軌道を計算していきます。また、太陽からの光の圧力も探査機の軌道に影響するので考慮します。このようないろいろな力を考慮しながらリュウグウと同じ軌道になるようにイオンエンジンで軌道制御をしました。なお、リュウグウに到着するとリュウグウの引力も推定して、探査機の軌道制御をします。「はやぶさ2」の太陽の周りを回る速度は、軌道上の位置によってかなり変わります。太陽に近いと速度が速くなって最も速いと秒速33kmくらいになります。これは時速12万kmです。太陽から遠くなると速度は遅くなり、最も遅いときは秒速約23km(時速約8万3千km)になります。


Q. (はやぶさ2探査機の)平均時速はどのくらいですか?

June 03, 2018 - きなこ : 16才
 

A. 「はやぶさ2」の太陽の周りを回る速度は、軌道上の位置によってかなり変わります。太陽に近いと速度が速くなって最も速いと秒速33kmくらいになります。これは時速12万kmです。太陽から遠くなると速度は遅くなり、最も遅いときは秒速約23km(時速約8万3千km)になります。


Q. 採取したサンプルは有機物になる可能性が高いですが、地球に戻ってくるまで熱で変質しないようない保冷庫みたいな工夫はあるのでしょうか?

June 03, 2018 - グレート : 58才
 

A. 「はやぶさ2」のカプセルには保冷庫はありません。「はやぶさ」のカプセルは、地球大気に飛び込んだときにその表面温度が3000度にもなったと言われています。ですが、カプセルの中は100度以下に保たれました。100度というと温度が高いと思われるかもしれませんが、「はやぶさ」が訪れた小惑星イトカワでは、表面温度が100度近くまで上がることがあります。ですから、カプセルの中の温度が100度くらいまで上昇しても問題はないわけです。

「はやぶさ2」がいくリュウグウについても、その表面温度はイトカワと同じくらいになるものと思われます。ですから、カプセルに保冷庫はなくて大丈夫です。リュウグウの温度は、TIR(中間赤外カメラ)で測定しますので、正確に分かります。


Q. 前回の「はやぶさ」プロジェクトではイトカワに到達するまでジャイロ軸の破損などトラブルが相次いだとのことだったが、今回「はやぶさ2」のプロジェクトにおいて大きなトラブルは発生していないか?またはすでに修正された事象はあるか?その場合プロジェクトに支障は起きないのか?

June 03, 2018 - きてぃ : 19才
 

A. 「はやぶさ」のときは、イトカワに到着する前にリアクションホイールという装置が壊れました。これは探査機の姿勢を変更するための装置です。「はやぶさ」では3台搭載されていましたが、イトカワ到着前に1台、到着直後にもう1台が壊れてしまいました。また、「はやぶさ」では4台搭載されていたイオンエンジンのうちの1台も最初から調子がよくありませんでした。
「はやぶさ2」では、これまでのところ、このような大きなトラブルは起こっていません。リアクションホイールは1台増やして4台搭載していますが、4台とも正常です。イオンエンジンも4台とも正常に動作しています。ミッションは当初のスケジュールどおりに進行しています。


Q. 今までイオンエンジンは合計でどのぐらいの使用時間になっていますか?

June 02, 2018 - やまたい : 14才
 

A. これは、近いうちに正確な情報がでるので、それを待っていただくのがよいです。

プロジェクトから情報が出され次第、ここに追記します(TPSJ)。


Q. はやぶさ2にはいくつかアンテナが搭載されていますが、どのように使い分けているのですか?

June 02, 2018 - 帰宅部長 : 14才
 

A. はやぶさ2には高利得アンテナ(ハイゲイン・アンテナ)、中利得アンテナ(ミドルゲイン・アンテナ)、そして低利得アンテナ(ローゲイン・アンテナ)という3種類のアンテナが付いています。

ハイゲイン・アンテナは「はやぶさ2」では円盤形をした大きなアンテナで探査機の上面に2つついています。2つある理由は、使っている電波の種類が異なっているためで、片方がX帯、もう片方がKa帯の電波を使っています(Ka帯の方が同じ時間帯に4倍ほど多くのデータを送信できます。小惑星到着時にデータを送信するときに使う予定です)。ハイゲイン・アンテナは強い電波で高速の通信ができますが、アンテナの面を地球に向ける必要があります。アンテナは探査機に固定されていますから探査機の姿勢を変えて地球に向ける必要があるので、条件によっては必ずしも地球との通信を行うことができません。

ミドルゲイン・アンテナはホーン型をしているもので、探査機の上面についています。ホーンの向きを変えることができるので、探査機の姿勢を変更しなくてもある程度の範囲で地球との通信ができます。ハイゲイン・アンテナより通信の速度は遅くなります。

ローゲイン・アンテナはより小さなアンテナで、探査機の上面に1つ、下面に2つ付いています。指向性が広いアンテナなので、3つのローゲイン・アンテナを使うと、探査機がどのような姿勢にあっても、ほぼ通信が可能です。ただし、通信の速度は遅くなります。これらのアンテナの使い分けですが、基本的には探査機がどのような姿勢にあるかで使えるアンテナが決まることになります。もちろん、通信速度の速いアンテナを使う方が探査機の運用は楽になります。

注:ここで通信の速度とは、同じ時間により多くのデータを送れる場合を「速い」としています。電波の速度は光の速度と同じで変わりませんので、地上局から探査機に信号が伝わるのに必要な時間は、すべてのアンテナで同じです。


Q. はやぶさ2搭載の小型モニタカメラによる、タッチダウン時の画像撮影を行う予定はありますか?

June 02, 2018 - やまごん : 21才
 

A. 皆さんからのご寄付で搭載しました小型モニタカメラですが、可能ならタッチダウンの時に撮影をしたいと考えています。ただし、タッチダウンはいろいろ複雑な運用が入りますので、まずは、タッチダウンの運用を優先します。小型モニタカメラによる撮影ができないこともありうるのでご了承ください。

 

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