NASA SLS アルテミス I
セカンダリーペイロードの詳細 - April 04, 2021 Latest
セカンダリーペイロードの詳細
米国外に向けた三つのスロットが埋まる!
NASA と国際的なパートナー関係にある研究機関に向けて用意されていたセカンダリーペイロードスロット三席に搭載される宇宙機が決定しました。イタリア ASI から一機、日本からは二機の小型宇宙機か搭載されます。以下に現在公表されているデータに基づいてご紹介します。
EQUULEUS(エクレウス)
Image Credit : 東京大学/JAXA
東京大学が中心となり、 JAXA の協働で提案した 6U* サイズの深宇宙探査用 CubeSat ” EQUULEUS(エクレウス)(EQUilibriUm Lunar-Earth point 6U Spacecraft) ” が、NASA が2018年に打ち上げを計画している新型ロケット SLS(Space LaunchSystem)の初号機のセカンダリーペイロードとして選定されました.超小型宇宙機による地球・月圏での低エネルギー軌道制御技術の実証や、地球を覆うプラズマ観測などの科学観測を計画しています。超小型探査機による深宇宙探査ミッションの可能性を切り開くべく、東京大学において世界で初めて 50 kg 級の深宇宙探査機バスの実証に成功した PROCYON に引き続き、今回のミッションの検討を進めていきます。
* 1Uは10cm*10cm*10cm
ISASニュース:世界最大のロケットで打ち上げる世界最小の探査機
February 2021 # 3 : ラグランジュ点からの地球プラズマ圏 - ISAS ニュース Feb. 2021
December 2020 # 2 : 超小型探査機EQUULEUSの軌道操作技術実証および科学観測ミッション - ISAS ニュース Dec. 2020
November 2020 # 1 : SLS搭載超小型探査機プロジェクトの概要 - ISAS ニュース Nov. 2020
EM-1 当時の情報
May 27, 2016 : 中須賀・船瀬研究室ニュース
NASA Release May 27, 2016 : International Partners Provide Science Satellites for America’s Space Launch System Maiden Flight
OMOTENASHI(おもてなし)
Image Credit : JAXA
OMOTENASHI の第一の目的は、超小型の月着陸技術を開発して実証することです。電源、通信装置、制御装置、推進装置、計算機など、全てを超小型に作る必要があります。着陸時に速度や位置を計測するセンサを載せることは無理なので、秒速 30 m(時速 100 km)程度で月面に衝突することは覚悟する必要があります。そのため、エアバッグとクラッシュブル材を使って、着地の衝撃を吸収します。ここで開発された超小型技術は、月着陸に限らず、様々な探査に応用できるでしょう。OMOTENASHI のもう一つの目的は、地球から月までの軌道上での放射線環境を測ることです。将来、人が月へ行くためには、放射線被曝量を管理する必要があるので、その環境を測定しておくことが必要です。
ISASニュース:世界最大のロケットで打ち上げる世界最小の探査機
March 2021 : # 4 世界最小の月着陸機 OMOTENASHI - ISAS ニュース Mar. 2021
付録:
2017 相模原特別公開リーフレット : 目指せ月面!探査機 OMOTENASHI
ArgoMoon
Image Credit : ASI
NASA が国際協力パートナー向けに用意した三つのスロットのあと一つは、イタリア、Italian Space Agency(ASI)から選出されました。この宇宙機は、オリオン宇宙船を月の軌道上に乗せる中間極低温推進段(ICPS)の稼動を近接して撮影、そのプロセスを記録し、他の Cubesats の展開に関する貴重なミッションデータを取得します。また、この CubeSat は、CubeSat と地球の間の光通信機能をテストするニーズもあります。
NASA Release. May 27, 2016 : International Partners Provide Science Satellites for America’s Space Launch System Maiden Flight
NEA Scout
Image Credit : Near-Earth Asteroid Scout
小惑星 1991 VG を対象天体として撮像を行い、その位置情報を取得します。2017年07月から2018年03月までの打ち上げまでの間、地上観測を行うことによって軌道の精度を高めるミッションも行います。開発はマーシャル宇宙飛行センター(Marshall Space Flight Center)とジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory : JPL)の共同開発で、主任研究者は JPL が担います。
直近の講演資料(PDF). Jul. 30, 2019 : Lessons Learned from the Flight Unit Testing of the Near Earth Asteroid Scout Flight System
NASA Release. Feb. 03, 2016 : NASA Tests Solar Sail Deployment for Asteroid-Surveying CubeSat NEA Scout
NASA NEA Scout web : Advanced Exploration Systems NEA Scout
キューブサットの選択枠について
13 機のキューブサット(or ピギーバック宇宙機)について、その選択は NASA の幾つかの部門によって行われます。すでに選ばれて開発が進められているもの、コンペによって選出されるもの、協力関係にある国際的なパートナー向けにも三機の枠が用意されており、うち二機は日本に割り当てられ、プロキオンに続くさらに進化した超小型宇宙機エクレウスで臨みます。
以下は選出部門から採択されたキューブサットのミッション内容です。
NextStep 選出枠
Next Space Technologies for Exploration Partnerships Projects (NextSTEP) を通じて選出されたものは次の二案です。
May 6, 2015 NASA 特集
LunIR or Skyfire
Image Credit : LunIR
ロッキード・マーティン・スペース・システムズ社によって開発された、月表面上の知見向上を目的として、キューブサットのフライバイ時に赤外線データを取得する。NASA が現在獲得している深宇宙探査の戦略的知識の欠落を補うことと、ロッキード・マーティンの商業戦略の向上をも狙っている。また、SkyFire の展開後は、キャラクタリゼーション、リモートセンシング、および観測地選択に関して SKGs (Strategic Knowledge Gaps)に対処すべく月表面環境の観測をフライバイ時に行う。将来有人探査ミッションへの足掛かりとして、今回の CubeSats や他ミッションによる技術実証が探査環境の知識を高め、乗組員やシステムへのリスクを低減するための機能を向上することが重要としている。Skyfire の最先端技術の向上によって、深宇宙の目的地での運用信頼性を向上させるデータのキー部分を提供出来るとしている。
NASA Release. Feb. 02, 2016 : NASA Selects Lockheed Martin’s LunIR CubeSat for Artemis I Secondary Payload
Lunar IceCube
Image Credit : Morehead State University
ケンタッキー州立モアヘッド大学は、月面からわずか 100 km の低軌道で氷や他の資源を探査する CubeSat を開発する。JPL が、通信のサポートと DSN(ディープスペースネットワーク)を提供する。また、主任研究員は JPL に籍を持つ。
NASA Release. Aug. 04, 2015 : Lunar IceCube to Take on Big Mission From Small Package
HEOMD 選出枠
NASA 有人探査・運用ミッション本部 (NASA Human Exploration and Operations Mission Directorate or HEO) からの選択は以下の三つのキューブサットです。
NASA 有人探査・運用ミッション本部
Near-Earth Asteroid Scout : NEA Scout
上記にピックアップしました。
BioSentinel
Image Credit : NASA
酵母を使い、深宇宙での長期間に亘る放射線の生体への影響を検出・測定し比較する。 JPL は、通信のサポートと DSN を提供する。
NASA Release. Apr. 16, 2019 : NASA Project BioSentinel
Lunar Flashlight
Image Credit : Jet Propulsion Laboratory/Marshall Space Flight Center
氷の堆積物を探し、月面から採取できる場所を探索する。JPL でミッションを管理し、プロジェクトマネージャは JPL に籍を持つ。
NASA Release. Feb. 02, 2016 : Lunar Flashlight Selected to Fly as Secondary Payload on Exploration Mission-1
SMD 選出枠
以下の二つのキューブサットは、NASA 科学ミッション本部 (Science Mission Directorate or SMD) によって選ばれたものです。
NASA 科学ミッション本部 (Science Mission Directorate or SMD)
CuSP
Image Credit : NASA's Goddard Space Flight Center
宇宙空間中のソーラー粒子と磁場を測定する「宇宙気象ステーション」、宇宙天気を監視する局のネットワークの実用性をテストする。これらの無線通信への干渉や、地球における効果の多種多様を観測し、入射する放射を測定するなど。通信のサポートと DSN は、JPL が提供する。
NASA Release. Feb. 02, 2016 : Heliophysics CubeSat to Launch on NASA’s SLS
LunaH-Map
Image Credit : ASU/JPL
アリゾナ州立大学で開発中のキューブサットで、月の水鉱床のこれまでで最も詳細な地図を生成するために、月のクレータ内、特に南極のクレーター内部の「永久影(常に日陰の領域)」の水素を探索する。ミッション提案者のアリゾナ州立大学惑星地質学者クレイグ・ハードグローブ(Craig Hardgrove)が PI を務め、通信のサポートと DSN を JPL が担う。
NASA Release. Feb. 03, 2016 : LunaH-Map: University-Built CubeSat to Map Water-Ice on the Moon
Cube Quest Challenge 選出枠
NASA 宇宙技術ミッション本部が主催するコンペティションから三機のキューブサットが選出されます。技術的な議論やミッション設計等の調整のために、チャレンジエントリチーム、NASA 職員、識者等によるサミットが11月18~19日に開催されます。この会議は、インタラクティブなプラットホームとなることを目指します。
NASA 宇宙技術ミッション本部 : Space Technology Mission Directorate
選出されるためには、四回のグランドトーナメントを勝ち抜かなければなりません。以下がその日程です。
・第一回:2015年08月
・第二回:2016年02月
・第三回:2016年08月
・第四回:2017年02月
詳細:NASA's Centennial Challenges: Cube Quest Challenge
Cube Quest Challenge で選ばれたのは以下の三機
キューブクエストチャレンジの今後の課題は、ディープスペースダービーとルナダービーの二つで構成されています。ディープスペースダービーでは、チームは地球から少なくとも400万キロメートルの範囲(月までの距離の10倍以上)からの通信機能を実証する必要があり、ルナダービーでは月周回軌道を達成する必要があります。賞品は、月を周回し、最も速く、最も遠距離の通信を行い、最も長く生き残ったチームに、NASA 主催コンテスト史上最大の賞金である合計500万ドルが授与されます。
NASA Release. Jun. 09, 2017 : Three DIY CubeSats Score Rides on NASA’s First Flight of Orion, Space Launch System
Cislunar Explorers
Image Credit : Cornell University/Cislunar Explorers Team
CislunarExplorers チームの CubeSat 推進アイデアは、水電解推進システムに焦点を当てた。H2O を電気でザッピングし、液体をガス状の混合物に分解して容易に燃焼させることを可能にした。
「私たちのコアコンセプトは、ロケット燃料として水を使用することであり、これは私たちが長い間目指したものだった。私たちの技術を宇宙でテストする機会を持てたことはエキサイティングだ」とプロジェクトマネージャーのカイル・パトリック・ドイル(Kyle Patrick Doyle)は語っている。
NASA Release. May 23, 2017 : Cube Quest Challenge Team Spotlight: Cislunar Explorers
CU-E3
CU-E3 プロトタイプを組み立てるチームメンバーの Raj Bansal。Image Credit : Team CU-E3
靴箱サイズの CUEarth Escape Explorer(CU-E3)は、コロラド大学ボルダー校の航空宇宙工学科学大学院プロジェクトクラスによって組み立てられている。
CU-E3 は、通信技術のデモンストレーションミッション用に設計されており、250 万マイル以上に到達させる予定だ。ディープスペースダービーのエントリーとして、この小型の宇宙機は地球・月間の距離の約 10 倍の軌道に到達する。
「私たちが行おうとしている距離を超える CubeSat は、あったとしてもごくわずかだ。さらに、私たちが開発している通信技術はこれまでに存在しなかったものだ」と、チームマネージャのアレック・フォースマン(Alec Forsman)は述べている。
NASA Release. May 23, 2017 : Cube Quest Challenge Team Spotlight: CU-E3
Team Miles
Image Credit : Team Miles
オンボードコンピュータシステムによって自律航行し、進化型プラズマスラスタを推進機構に持つ。チームリーダーの Wesley Faler は、ConstantQTM plasma thruster の発明者。
NASA Release. May 23, 2017 : Cube Quest Challenge Spotlight: Team Miles
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Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan