2019 50th Session Report

LPSC 2019 - Day 1
Vol, 01 ~ 04
 

Vol. 04. 2019/03/19 AM 10:29 日本時間

17:30 からは、恒例の NASA HQ 報告会がありました。いつものように、NASA と LPI/USRA から Eileen Stansbury さんとブラウン大出身の Louise Proctor さんが司会者で、今回は記録最高の 2000 人以上の参加者があったとか、最初から今回の第 50 回まですべて参加した人たちの紹介がありました。

そして、昨年亡くなられた人たちの映像付きの追悼時間があり、今回の査読に 35 人が 3-4 日かけたことの紹介・感謝もありました。

NASA HQ からは三人の若い新人たちが来ていて、Steve Clark、Jay または Jake (?)、Lori Glaze の三人でした。

Steve は Lunar Discovery & Exploration Program(LDEP)の紹介をして、トランプ大統領が推奨しているように、月に行くために低地球軌道から月までをカバーする GATEWAY という連絡船軌道のようなところに定在する宇宙船と、Commercial Landing Payload Services(CLIPS)といって、商業的なものを載せていって月にもっていってあげるサービスとかの紹介をしていました。あとは、Rover や国際協力の話がありました。

J 氏は GATEWAY の詳細を話し、将来は火星への有人飛行も考えた方向性だということです。

Lori は予算のことを主に話し、2019年度は 27 億ドル以上の予算が付いたこと2020年度は、火星試料回収を2026年に始める予算が提案されているということでした。その他、惑星防衛や現在 24 個もミッションが走っているとか、いろいろ希望的な報告でした。

そのあとは、アイスクリームや軽食が出たレセプションがあり、荒井朋子さんや小松睦美さん(お二人ともに、TPSJ のアドバイザリーカウンシル)と話して帰りました。
 

Vol. 03. 2019/03/19 AM 06:58 日本時間

お昼を食べた後は、全大会として 13:30 からの Masursky Lecture があり、今回はアポロ 17 号ミッションで地質学者として月面を探査した Harrison (Jack) Schmitt がアポロ計画で月のいろんなところに行った経緯と、自分が 17 号で体験した内容、特にオレンジガラスを見つけた話とかを面白く語ってくれました。

ただ、月の深いところで窒素 15 の同位体の量が異常に見えるという事実を太陽風の組成が変わったからではと理由付けしていましたが、聴衆からの質問・コメントではそれは別の理由だという声が多かったです。

とにかく、皆からの拍手喝采で終始した楽しい時間でした。Jim Head のおかげもあって、ブラウン大にはよく来られる人ですが。

その後の通常セッションは、Habitable World というセッションの最初の二つだけ聞きに行きました。

14:30 からは、Mendez 氏が居住可能性モデルの指標を出してきて、太陽からのエネルギーだけを考慮して、各天体の初期と現在を比較し、昔の地球や金星は現在よりも指標が高いと言っていたのがかなり疑問でした。とくにそれは海があったらならばという条件付きですし、よくわかりません。

案の定、衝突エネルギーの影響はどうなのかと鋭く質問した人がいて、その人が次の講演者で、Abramov 氏は、地球に対する幸輝の衝突が居住可能体積をどう変えるかというシミュレーションでした。それにも最初の講演者が仕返しのように質問してきてましたが。

この時点で、諸田君と約束していた 15:00 になったので出てきましたが、まだまだこの分野の研究は先が長いなあと思いました。

諸田君は明日の午後の、はやぶさ2特別セッションで口頭発表するので、その内容の打ち合わせでした。いろいろ興味深いことがわかってきて、ワクワクしますね。もちろん、発表したり論文を書いたりしないといけない科学者としては、来月 SCI で人工クレーターを作ったり、来年末には試料が帰ってくるという、答え合わせがすぐにされてしまうかもしれないのはサスペンスがありすぎかもしれませんが。

この後は、17:30 から NASA HQ のブリーフィングがあり、それに参加してからホテルに帰ります。

画像:NASA HQ の説明会が始まる前の様子。
 

Vol. 02. 2019/03/19 AM 01:25 日本時間

今朝は7時の最初のシャトルに乗って 7:40 頃に会場に着きました。すると、佐々木晶さんがリュウグウの明るい場所についてまた新しい面白い情報を教えてくれました。やっぱり明るいところが本当のリュウグウの組成を表していて、暗いほぼ全面を覆っているのは宇宙風化したものではないだろうか?

まず最初は New Horizon が KBO 天体である(486958) 2014 MU69、通称 Ultima Thule をフライバイした結果のセッションに入りました。

8:30 からの最初は PI である Alan Stern の総括で、この大きい方の Ultima と小さい方の Thule は同じ場所で生成して太陽系の第一世代の接触二重星ではないかということで、その理由は後の発表でも詳しく語られます。アルベドは 5-12% で、太陽系で最も赤い色をした物体で、その原因はおそらく Tholen のような有機物で、水氷やメタンが検出されているということでした。

続いて 8:45 からは J. M. Moore 氏が物理特性の発表でした。フォボスなどと比べても、Ultima Thule は Maryland と呼ばれる場所以外は 1 ㎞ 以上のクレーターがほぼ欠如していますが、首の周りにしわのようなものが見えることから、内部の力学強度は安定しているという推測でした。

そして、並んだ穴があることから、脱ガスが起こっているのではと。まあ水氷やメタンがあれば当然かもですね。ただ、フォボスは火星の周りのダストが多い環境にいるので、やや比較が無理かもという気もしましたが。

次に 9:00 からは Will Grundy 氏が組成の発表をしました。私の好みのスペクトルが出てきてうれしかったですね。2.3 ミクロンあたりにメタンハイドレートの吸収と、1.5 および 2 ミクロンあたりに水氷の吸収が見えているということでした。主成分解析をすると、水氷の吸収は主成分としてちゃんと出てくるようです。

9:15 からは William McKinnon 氏が密度などの推定の発表をしました。上限としては 0.5g/cc とかになるということで、それをもとにモデル計算をすると、二つの物体は 5m/s 以下の速度で 45 度で衝突すると今のような形になるのではということでした。

軌道ペアとして共生成出ないといけない理由は、慣性軸が一致していて、Ultima が平たいのもモデルで再現できるということですが、時間切れで詳細を説明できていなかったのが残念でした。

その後、会場を出て、この速報を書こうとしたら、名大の諸田君といろんな楽しい話をしてしまったので、聞きたかった 10:30 からのカーリー・ハウエルさんの色の発表を聞きに戻りましたが、ちょっと何も決定的なことがなく期待外れでした。

その次は隣のコンドライト母天体のセッションに移って、Ye Li さんの NWA 11004 が過去に2度衝突を経験したという発表を聞きました。やはり鋭い指摘をされていて、一度目の衝突はかなり怪しいかもと思いました。

その後出てきて、休憩がてらこれを書きました。お昼は HEB まで歩いていって買って、近くの公園でゆっくり食べています。

画像:Beth Clark と昼食に行った時の写真で、Beth は O-REx のリモセンチームのトップですから、いろんな苦労話がありました。会うのはもう 10 年以上ぶりかもしれません。
 


Vol. 01. 2019/03/18 AM 12:17 日本時間

今日のレセプションからまた LPSC が始まりました。

夕方にいつもの Super 8 に着いて、幸運なことに、あと 10 分ほどで出発するシャトルバスに出会えて乗りました。Super 8 は公式的にはシャトルルートではないですが、すべてそこから出発すると知っているので。

途中の Hilton Garden Inn では松本君が乗ってきたので、はやぶさ2が今回注目を浴びるだろうことと、かぐやもきわどい国際競争があったことや、来月の SCI で宇宙風化の謎が解けるかもという話をしました。

会場では中国の研究者とちょっとあいさつした以外は、Vegetarian のポテトやハンバーガーやチリをいただいてきました。遅くなると明日がきついので、7:30 のシャトルで戻ってきました。

今年新しいのは、添付の写真のように、バッジにポケットがついていて、メモ帳が入っていることと、一番下のリボンのようなところに、最初に参加した LPSC は何年だったか書く欄があることです。私は1991年ですから、もう 28 年前ですね。

画像:50th LPSC のグッズ。
 

近くの HEB というスーパーで健康的な食材を買って、明日のスケジュールを立てて、これを書いています。

先日メールを交わしていて分かったのですが、私と一緒に小惑星の宇宙風化を主張し始めて戦ってきた Beth Clark が久しぶりに今年は参加するそうで、楽しみです。
 

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