Psyche Spacecraft(プシケまたはサイキ探査機)

January 26, 2026 Latest.
 

太陽電池パネルを展開した Psyche 探査機は、テニスコート一面分ほどの大きさになる。
 

Imahe caption :
NASA Psyche 探査機が、2023年06月26日、フロリダ州ケネディ宇宙センター近郊のアストロテック宇宙運用施設内のクリーン・ルームで撮影された。
Credit : NASA/Frank Michaux
 

Psyche 探査機のメイン・コンピューター、フライト・ソフトウェア、故障保護システム、および通信システムの大部分は、NASA JPL(ジェット推進研究所)が提供した。コロラド州に本拠を置くマキサー・テクノロジーズのカリフォルニア州パロアルト部門が、探査機本体とほとんどのエンジニアリング・ハードウェア・システムを提供した。

Psyche 探査機には技術実証装置も搭載されている。探査機に接続されている「深宇宙光通信(DSOC)」は、月を越えた領域での光通信(レーザー通信)を試験する NASA の実験装置である。
 

Spacecraft Specs(探査機仕様)

サイズ
展開時の太陽電池パネルは縦 81 フィート(25 メートル)、横 24 フィート(7.3 メートル)で、ほぼテニスコート 1 面分の面積を覆う。探査機本体(バス)の高さは、ふたつの観測装置用ブーム(高さ 6.6 フィート / 2 メートル)を含めて 16.1 フィート(4.9 メートル)、幅は 7.1 フィート(2.2 メートル)、奥行きは 7.8 フィート(2.4 メートル)である。

質量
打ち上げ時、Psyche 探査機の質量は約 6,056 ポンド(2,747 キログラム)であった。これには探査機に取り付けられた深宇宙光通信(DSOC)技術実証装置が含まれる。ロケットを含む打ち上げ時の総質量は 316 万ポンド(143 万キログラム)で、その 99 % 以上がロケットによるものである。

電力
5 枚のパネルで構成される十字型の太陽電池アレイ 2 基が、科学観測機器を含む機体全体の電力を供給する。太陽電池アレイは地球離脱時に 21 キロワット、小惑星周回軌道では 2.3~3.4 キロワットの電力を発生する。
 

Imahe caption :
技術者らが Psyche 探査機に搭載された 2 基の太陽電池アレイのうち 1 基の格納作業を開始した。この写真は2023年07月25日、ケネディ宇宙センター近くにあるアストロテック宇宙運用施設内で撮影された。
Credit : NASA/Kim Shiflett
 

推進システム
Psyche 探査機は太陽電気推進を採用している。探査機には 4 基のホール効果スラスタが搭載されており、電磁場を用いて不活性ガスであるキセノンの荷電原子(イオン)を噴射することで推力を発生させる。キセノンの青い輝きを伴う尾を引きながら推進する。一度に使用されるスラスターは 1 基のみで、最大 240 ミリニュートンの推力を発生する。これは単三電池 1 本の重さを支える際に感じる力に相当する。サイケは 22 ガロン(82 リットル)のキセノン推進剤タンクを 7 基搭載し、最大 2,392 ポンド(1,085 キログラム)を運搬する。
 

Imahe caption :
技術者らが Psyche 探査機に搭載された 2 基の太陽電池アレイのうち 1 基の格納作業を開始した。この写真は2023年07月25日、ケネディ宇宙センター近くにあるアストロテック宇宙運用施設内で撮影された。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

通信システム
Psyche 探査機は 4 本のアンテナで地球と通信する:マキサー社提供の 6.5 フィート(2 メートル)固定高利得アンテナ 1 基と、JPL が設計・製造した小型低利得アンテナ 3 基である。NASA の全惑星間ミッションと同様、Psyche は深宇宙通信網(DSN)を介してデータ送信と指令受信を行う。DSN は地球周りに三つの地上局を配置し、宇宙機との通信・追跡を担う。
 

Science Instruments(科学機器)

マルチスペクトル撮像装置
Psyche 探査機のマルチスペクトル撮像装置は、小惑星表面を異なる波長の光で撮影するためのフィルターと望遠レンズを備えた同一仕様のカメラ 2 台で構成される。これらのカメラは、人間の目に見える可視光領域だけでなく、人間の視覚を超えた近赤外領域の光でも撮影が可能である。
 

Imahe caption :
2021年09月13日、カリフォルニア州サンディエゴのマリン・スペース・サイエンス・システムズ社にて組立・試験中の Psyche 探査機のマルチスペクトル撮像装置。
Credit : NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
 

ガンマ線・中性子分光計
探査機のガンマ線・中性子分光計は、小惑星の表面物質を構成する化学元素の特定に役立つ。宇宙線や高エネルギー粒子が小惑星 16 プシケの表面に衝突すると、その元素はエネルギーを吸収する。それに応じて、さまざまなエネルギーレベルの中性子やガンマ線を放出する。分光計はこれらの放出を検出することができ、科学者はそれを既知の元素の特性と照合して、16 プシケの構成物質を特定することができる。
 

Imahe caption :
Psyche 探査機のガンマ線・中性子分光計は、高度に精製されたゲルマニウム結晶を使用して、小惑星 16 プシケから放出されるガンマ線を捕捉する。このガンマ線により、表面を構成する元素を明らかにすることができる。
Credit : Johns Hopkins/APL/Ed Whitman
 

磁力計
探査機の磁力計は、小惑星 16 プシケに古代の磁場が存在した痕跡を探る。地球や他の岩石惑星が液体の金属核で磁場を生成するのとは異なり、小惑星のような小さな天体は凍結しているため磁場を生成しない。16 プシケに残留磁場が確認されれば、この小惑星が惑星天体の核から形成されたという有力な証拠となる。
 

Imahe caption :
2021年06月28日、NASA JPL の技術者たちが、Psyche 探査機へ磁力計を組み込む作業を行っている。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

重力科学
Psyche 科学チームは、主に探査機への指令送信とデータ受信に使用される通信システムを活用し、重力科学実験を実施する。探査機が通信に使用するXバンド電波を分析することで、科学者らは小惑星 16 プシケが探査機の軌道に及ぼす影響を測定できる。この情報から、小惑星の自転周期、質量、重力場を特定し、16 プシケ内部の構成と構造に関するさらなる手がかりを得ることが可能となる。
 

深宇宙光通信(DSOC)
Psyche 探査機の側面には、NASA の深宇宙光通信実験(DSOC)という先駆的な技術実証装置が取り付けられている。近赤外レーザーを用いる DSOC は、月をはるかに超える距離における地球との高帯域光通信を初めて試験する同機関の取り組みである。

現在の最先端無線システムに依存する将来の宇宙ミッションの要求を満たすには、高解像度画像や動画などの高帯域幅データを送受信するために、ハードウェアのサイズ、質量、電力の大幅な増加が必要となる。光通信は、こうしたハードウェア増強を必要とせずに、この必須の帯域幅向上を実現する可能性を秘めている。地球上で増加するデータ需要に対応するために古い通信インフラを光ファイバーにアップグレードするのと同様に、無線通信からレーザー通信への移行により、現在のデータ転送速度は 10 倍から 100 倍に向上する。

DSOC は探査機巡航初期二年間の技術実証が目的であるため、Psyche 探査機のデータ中継には使用されない。しかしこの技術は将来の人類・ロボット探査機が膨大な科学データを送信する際に活用され、より革新的な宇宙ミッション構想の実現を可能にする。最終的に DSOC は、NASA が宇宙飛行士を火星に送るという人類の次の大きな飛躍を支える広帯域通信の基盤となるだろう。
 

Imahe caption :
深宇宙光通信(DSOC)技術実証の飛行用レーザー・トランシーバーが、2021年04月に NASA JPLで公開された。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office