NASA ディスカバリー計画 : 一次選考に五つの探査案


NASA は、次のディスカバリー・ミッションに向け、第一ラウンドの選考結果を発表した。小惑星を対象に三つ、金星を対象に二つ、計五つの惑星ミッションは、コンペの次の段階、つまり、一年掛かりでハードウェア設計、コスト分析、実験計画を行うことになる。遅くとも2021年にミッションを始動させる様、NASA はこれらミッションからいずれかを正式に採択する。
 

ディスカバリーとは、NASA の惑星科学部門によって管理される低コストの惑星ミッションのことだ。数年ごとに、打ち上げやオペレーションコストを含めずに約 500 億円を予算の上限として、学者たちが予算の範囲で太陽系内の任意の場所にミッションを提案していく。これら提案では、特定分野で選りすぐりの研究チームを組み、主任研究者が主導する。過去のディスカバリー・ミッションは、ベスタとケレスでドーン計画、太陽系外惑星を追うケプラー計画、水星でのメッセンジャー計画などだ。火星の地質調査ステーションはインサイト計画と呼ばれる現行のディスカバリー・ミッションであり、2016年03月に開始される。

今年は、太陽系周辺を目的地とした 28 の提案があった。今回採択された 5 つのミッションのうち、1つだけが実際に遂行される。それはあんまりだと思うのは私だけでは無いはずだ。ディスカバリーは、隔年でミッションを提供するはずだったが、NASA の惑星科学部門への継続的な予算削減により、ミッションは 5 年ごとになっている。この調子では手間と予算を費やした計画の多くは実際に日の目を見ることはないだろう。

ともあれ、今回採択された 5 つのミッションを紹介する。

5 つのミッションのうち 3 つは小惑星を目指すが、その内容は異なる。
 

メタルワールドミッション提案
Image credit: NASA/JPL-Caltech
 

プシケは、アリゾナ州立大学の Lindy Elkins-Tanton 率いる、主小惑星帯の外側部分に位置する直径 213 km の小惑星とランデブーする計画だ。プシケは、その高いレーダー反射率と高い密度から、金属小惑星だと考えられている。そもそも金属で出来た表面だったのか、衝突などで地殻を失いマントルがむき出しになったのか?前者の場合、太陽系の形成とは全く異なるプロセスを想定しなくてはならない。後者の場合、小惑星体のコアを精査する必要がある。いずれにせよ、それは新しい世界だ。

ジェット推進研究所の Amy Mainzer 率いる NEOCam 計画では、地球に近い宇宙で未発見の小惑星を捜す。Mainzer の NeoWISE 小惑星探査ミッションの成功を基に、太陽-地球の L1 点を赤外線波長で空を調査することになる。地球ベースの調査によって、比較的大きく、潜在的に危険な小惑星の大半を発見することが出来、地球に近い小惑星との衝突の危険は減少しているが、太陽に近い空に潜む小惑星を調査することは困難で、依然として数多くが未調査だ。NEOCam 計画が続けば、残りの潜在的に危険な小惑星帯のほぼ全てを見つけることができる。この調査により約 100 万の小惑星を捕捉し、恐らくは有人となる現地調査の目標となる小惑星を選定することになる。NEOCam では地上で受信したデータを二週間で公開することを約束しており、アマチュアのコミュニティで人気となるだろう。

Lucy は、サウスウエスト研究所の Hal Levison が率いる、ニューホライズンズのために開発された機器を使用し、トロヤ群から 3 つ、少なくとも 1 つは連星、の小惑星に偵察を行う計画だ。小惑星は、(3548)Eurybates、(21900)1999 VQ10、(11351)1997 TS25、および連星(617)Ptroclus|Menoetius が対象となるだろう。また、途中でメインベルト小惑星 (1981 EQ5)を訪問する。トロヤ群は非常に大規模な小惑星集団であり(メインベルト小惑星の数と同数の小惑星があるかも知れない)、木星の先頭と末尾のラグランジュポイント周辺に分布している。太陽系形成のモデルでは、多くのトロヤ群はカイパーベルトに起源があると示唆されている。カイパーベルトの非常に暗い表面は有機材料が豊富なことをほのめかしている。トロヤ群へのミッションで太陽系のはるかに離れた領域について得るものがあるだろう。

他の二つのミッションは、1994年にマゼランが接近したのを最後に誰も訪れていない金星への旅となる。金星は研究の難しい惑星で、その不透明な雲と、腐食性で高温、高圧の大気がフォース・フィールドのように、魅力的な表面への接近を拒んでいる。マゼランは、75 m の水平解像度と 4 km の垂直解像度でレーダー画像マップをもたらしたが、結局、それ以上の疑問を残したままとなっている。

ジェット推進研究所の Sue Smrekar 率いる VERITAS は、金星の公転三周期に渡り、はるかに高い解像度で金星をマッピングするために、より近代的な、より短い波長のレーダー機器を飛ばす計画だ。VERITAS は、水平 250 m の分解能と垂直 5 m の分解能で、金星のデジタル標高モデルを生成する。

DAVINCI は、ゴダード宇宙飛行センターの Lori Glaze が率いる、金星降下計画だ。NASA リリースによると、「DAVINCI は 63 分の降下中に金星の大気の化学組成を調べることになる。長年高い優先順位とされていた科学的な質問、活火山はあるのか、とか、金星の地表は大気とどのように相互作用しているのか、に答えることが出来るだろう。」

あまりにも多くのミッションが不採択となるので、NASA はもっと多く採択できないのかという疑問が自然に生じる。NASA についての多くの質問同様、結局、答えは予算だ。同時に 2 つのディスカバリー・ミッションを遂行出来ないという物理的な制限はないが、それは2010年代後半の予算を倍にするという意味だ。なぜなら、同時期に 2020 ローバープロジェクトは資金需要のピークになり、エウロパの Clipper 計画がさらに予算を逼迫する。NASA は、その間に別のフロンティアミッション(ディスカバリー・ミッションのドッシリ版)を開始すると仮定すると、余分にディスカバリーミッションを追加するのは現実的ではないだろう。

我々が支持する議会と新しい大統領次第で何が起こるか分からないとは述べた。太陽系探索への愛を訴え続けることに越したことは無い。
 


Casey Dreier

Director of Space Policy for The Planetary Society

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Emily Lakdawalla

Senior Editor and Planetary Evangelist for The Planetary Society

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Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO. TPSJ Editorial Office