ニューホライズンズ探査機 : まもなくターゲット天体に到達する


NASA ニューホライズンズ(New Horizons)探査機によって、エッジワース・カイパーベルト天体(Edgeworth-Kuiper Belt Object、EKBO)である Ultima Thule(2014 MU69)の歴史的なフライバイが行われる。天体の地質、組成、大気などに関する科学データを収集する準備は既に整い、その最も近いアプローチは、日本時間で元旦のお昼過ぎ午後14時33分に行われる。このイベントは、これまでに人類が行った最遠での天体探査であるとされている。
 

Image Caption :
到達前に送られてきた Ultima Thule の最新画像。
Image Credit : NASA
 

13年の旅を経てピアノサイズの宇宙機ニューホライズンズは、海王星の外縁に位置する多数の小さな天体が緩やかに周回するドーナッツ状の領域に在る Ultima Thule に到達する。これまでに 40 億マイルの距離をカバーした。この広大な空間には、太陽系の形成進化から取り残された何十億もの小さな天体が存在し、それらによって太陽系惑星形成の謎の手掛かりを得ることが出来るかもしれない。

「まもなく到達するが、未だ Ultima Thule は謎のままだ。しかし解明のための最終的なカウントダウンは既に始まっている」と、Southwest Research Institute の ニューホライズンズ主任研究員であるアラン・スターン(Alan Stern)は述べている。
「このフライバイ実施で太陽系の原始的な構成要素を学ぶことによって、我々はこのほとんど未知の第三の宇宙領域に関する知識を飛躍的に拡大することだろう」
 

ニューホライズンズ探査機は、冥王星探査ミッションを目指して2006年01月に打ち上げられた。2015年07月、冥王星に到達した際、多数の写真と科学測定を行った。探査機は、想像だけの氷世界の風景と、衛星との風変わりな配列を示した見事な画像を我々に返した。その後、NASA は追加ミッションとしてエッジワース・カイパーベルト天体のフライバイ観測を選定した。

ニューホライズンチームは、ハッブル宇宙望遠鏡を駆使して次のミッションのターゲットとして選択されたエッジワース・カイパーベルト領域で探査機の進行方向を集中観測し、2014 MU69 の発見に到った。但し、これへの到達には冥王星フライバイに達したよりも三倍近くの航行を要する。
仮符号である 2014 MU69 の正式名称ではないが、オンライン命名コンテストによって「既知の世界を超えて」という意味を持つ「Ultima Thule」という名称が選ばれた。

ニューホライズンズは、冥王星から10億マイル以上離れた天体である Ultima Thule の表面わずか 2,200 マイル(3,500 キロメートル)の高度をフライバイし、科学者たちが惑星形成初期段階の構成要素を持つ天体群領域のひとつであるエッジワース・カイパーベルトに属する天体を初めて詳細に観測する。

ニューホライズンズの位置から送られる無線通信は、地球到達に六時間以上を要する。探査機が Ultima Thule に接近している間は、地球とのコンタクトは出来ないが、01月01日の早朝に、探査機および観測機器の状態と予想される獲得データをすべて記録したかどうかを示す信号を地球に送信するようにプログラムされている。ミッションチームは、今後20ヶ月間を掛けてデータを地球に送り続け、その後さらに一年間のデータ分析とアーカイブが行われる予定である。

メリーランド州ローレルにあるジョンズホプキンス大学応用物理学研究所のニューホライズンズプロジェクトマネージャ、ヘレン・ウィンターズ(Helene Winters)は次のように述べている。
「このフライバイは、何年も掛けて慎重に計画された努力の集大成。そして、私たちは「Ultima Thule(既知の世界を超えて)」と名付けられた未知の天体を現実の世界に変えることが待ち遠しい」
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office