Space Topics 2024
NASA Science 日本語訳解説
木星と衛星エウロパの内部における潮汐効果研究
Karen Fox / Molly Wasser, 202-358-1600
NASA 氷衛星探査機 Europa Clipper「木星と衛星エウロパの内部における潮汐効果研究」
原文 : November 07, 2024 : NASA-Funded Study Examines Tidal Effects on Planet and Moon Interiors
NASA から支援を受ける科学者たちは、潮汐が惑星や衛星の内部にどのような影響を与えるかを見積もる新しい方法を開発した。重要なのは、この新しい研究が、これまでの同様モデルのほとんどで仮定であった、完全な球状の内部構造を持たない天体に対する潮汐の影響に注目していることである。
Imahe caption :
この木星の氷衛星 Europa(エウロパ)の謎めいて魅惑的な表面は、1990年代後半に NASA のガリレオ探査機によるもの。再処理によって、カラービューとして強調されている。
Credit : NASA/JPL-Caltech/SETI Institute
天体の潮汐とは、天体が他の天体と重力的に相互作用するときに経験する変形を指す。木星の強力な重力が衛星エウロパをどのように引っ張るかを考えてみよう。エウロパの軌道は円形ではないため、木星の重力が衛星を圧迫する力は、軌道に沿って移動するにつれて変化する。エウロパが木星に最も近づくとき、木星の重力は最も大きくなる。この変形で生じるエネルギーがエウロパの内部を温め、衛星の氷殻表面の下に液体の水の海が存在することを可能にしている。
「同じことが土星の衛星エンケラドゥスにも当てはまる」と、パサデナにあるカリフォルニア工科大学の共著者で、南カリフォルニアにある NASA JPL(ジェット推進研究所)のアレクサンダー・ベルンは言う。
「エンケラドスの氷殻は、エウロパの氷殻よりも非球対称であると予想されている。
天体が経験する体潮汐は、時間が経つにつれて世界がどのように進化するか、そしてエウロパやエンケラドスのようなケースでは、我々が知っているような生命が生息できる可能性に影響を与える可能性がある。この新しい研究は、潮汐力が惑星内部にどのような影響を与えるかをより正確に推定する手段を提供する。
Imahe caption :
地球と同じように、エウロパは鉄の核と岩石のマントルを持ち、表面には塩分を含んだ水の海があると考えられている。しかし地球とは異なり、この海は衛星全体を覆うほど深く、太陽から遠いため海表面は全体的に凍結している。エウロパの軌道は偏心しているため、木星の周りを回るときに、木星による大きな潮汐が上下する。木星とエウロパの位置関係も、同じ周期で揺らいでいる。この潮汐による「こねくり回し」は、エウロパの岩石のマントルの内部や氷の殻の下部の暖かい部分で赤く光っているように、ペーパークリップを前後に曲げると熱くなるのと同じように、エウロパの内部で摩擦による加熱を引き起こす。この潮汐加熱は、エウロパの海を液状に保つものであり、もし海の中に単純な生物が存在するならば、潮汐はその生存に不可欠であることを証明するかもしれない。巨大惑星木星は、実際の速度よりも遅いものの、西から東へと自転していることが明らかになっている。
動画は”こちら”(mov ファイル:QuickTime)
Credit : NASA/JPL-Caltech
本論文はまた、この研究結果が、水星から月、太陽系内外惑星に至るまで、さまざまな異なる世界へのミッションで行われた観測を科学者が解釈する上で、どのように役立つかも論じている。
本研究は、「A Spectral Method to Compute the Tides of Laterally Heterogeneous Bodies」と題して、「The Planetary Science Journal」に掲載された。
More About the Mission(ミッションの詳細)
エウロパクリッパーなどのミッションは、宇宙生物学の分野、つまり私たちにとって既知である生命が存在する可能性のある遠い氷世界の変数と条件に関する学際的な研究への貢献を促す。エウロパクリッパーは生命探査ミッションではないが、木星衛星エウロパの詳細な観測を行い、氷下に海洋がある氷衛星に、生命を維持する能力があるかどうかを調べる。エウロパの生命居住性を理解することは、科学者が地球上で生命がどのように発達したか、そして我々の惑星地球外において生命発見の可能性についての理解を向上させる。
カリフォルニア工科大学がカリフォルニア州パサデナで管理している JPL は、ワシントンにある NASA の科学ミッション局の APL と協力して、エウロパクリッパーミッションの開発を主導している。アラバマ州ハンツビルにある NASA のマーシャル宇宙飛行センターにある惑星ミッションプログラムオフィスは、エウロパクリッパーミッションのプログラム管理を実行する。
エウロパクリッパーの詳細については、以下を参照いただきたい。
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan