Space Topics 2024
NASA Release 日本語訳解説
小惑星 Bennu(ベンヌ、ベヌー)からの採取サンプルが NASA から JAXA へ
NASA OSIRIS-REx Mission「小惑星 Bennu(ベンヌ、ベヌー)からの採取サンプルが NASA から JAXA へ」
原文 : August 23, 2024 : NASA Shares Asteroid Bennu Sample in Exchange with JAXA
小惑星サンプル交換の一環として NASA は、OSIRIS(オシリス、オサイリス)-REx ミッションによって採取された小惑星 Bennu(ベンヌ、ベヌー)のサンプルの一部を宇宙航空研究開発機構(JAXA)に譲渡した。このサンプルは、08月22日に JAXA の相模原キャンパスで行われたセレモニーで、NASA 関係者から正式に手渡された。
Imahe caption :
2024年08月22日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙科学研究本部相模原キャンパスにて、ベンヌサンプル移送の署名交換が行われた。
Credit : JAXA
今回の小惑星サンプル移譲は、2021年11月に JAXA が探査機「はやぶさ2」によって小惑星リュウグウから回収したサンプルの一部を NASA に譲渡したのに続くものである。今回の合意により、NASA と JAXA は小惑星サンプル・リターン・ミッションの成果を共有し、科学技術協力を推進することができる。この二つのミッションの科学的目標は、有機物を豊富に含む原始的な小惑星の起源と形成史を理解し、それらが惑星の形成にどのような役割を果たしたかを理解することである。
「我々は、小惑星サンプル・リターン・ミッションにおける JAXA との継続的な協力関係によって、これらのミッションや他のミッションにおける科学的な知識の習得を積み重ね、指の隙間から知識を逃すリスクを減らすために努力している」と、ワシントンの NASA 本部の科学ミッション本部で天体物質キュレーションのチーフ・サイエンティストを務める Kathleen Vander Kaaden(キャスリーン・ヴァンダー・カーデン)は語る。
「JAXA には広範なキュレーション能力があり、OSIRIS-REx のサンプルの共同分析から我々が何を学ぶかを楽しみにしている」
OSIRIS-REx 探査機は、ミッションでの獲得要求質量の 2 倍以上である 4.29 オンス(121.6 グラム)のベンヌからの物質と、ベンヌとの接触によるダストを含む 24 個の Steel Velcro R pads(?)を我々地球に届けた。この契約の一環として、ヒューストンにある NASA JSC(ジョンソン宇宙センター)のアスト・ロマテリアル研究・探査科学部門は、全サンプル質量の 0.55% に相当する 0.023 オンス(0.66 グラム)のベンヌサンプルと、 24 個の接触パッドのうちの一つを JAXA に譲渡した。
はやぶさ2は二つのサンプルケースにリュウグウの 0.19 オンス(5.4 グラム)を採取し、2021年に JAXA は NASA にリュウグウの 23 ミリサイズの粒と集合体サンプル物質を提供した。
ベンヌサンプルの JAXA 譲渡分は、JAXA 相模原キャンパスにある地球外サンプル・キュレーション・センターの新しく拡張されたクリーン・ルームに収容される。JAXA チームは、非反応性の窒素ガスに封入されたサンプルを受け取り、同様に窒素で満たされたクリーン・ルーム内で、気密性の高い手袋を着用して開封する。JAXA は今後、重量測定、可視光・赤外光顕微鏡による画像撮影、赤外分光分析など、サンプルの初期状態を明らかにする作業を行う。その後、サンプルは、小惑星ベンヌとリュウグウの相違点と類似点を研究するために、他の研究機関で詳細な分析を行うために、競争的選抜プロセスを経て配布される予定である。
「ベンヌからの貴重な小惑星サンプルを無事に地球へ、そして日本へ運んでいただき非常に感謝している」と JAXA 宇宙科学研究所の臼井智博・宇宙物質科学研究グループ・マネージャは語った。
「同じキュレーターとして、このような作業に伴う緊張と責任はよく理解している。今度は JAXA の順番だ。我々は、これらの貴重なサンプルから重要な科学的成果を引き出す計画を進めて来ている」
小惑星は、太陽系の黎明期に残された残骸である。太陽と惑星は約 46 億年前に塵とガスの雲から形成され、小惑星は太陽系形成史の最初の数百万年にさかのぼると考えられている。OSIRIS-REx や「はやぶさ2」のようなサンプル・リターン・ミッションは、太陽系の進化がどのように展開したかについての新しいデータを提供するのに役立っている。
ベンヌ・サンプルの初期分析により、炭素と窒素を豊富に含む塵が発見された。OSIRIS-REx のサンプル分析チームのメンバーは、有機分子や、リンと水を含む鉱物の証拠も発見した。
ベンヌのサンプルも、JAXA の「はやぶさ2」ミッションによって届けられた小惑星リュウグウのサンプルも、現在の土星軌道の彼方で形成された古代の親天体からもたらされたもののようである。これらの小惑星の違いは、詳細な化学的分析が進むにつれて明らかになりつつある。
More About the Mission(ミッションの詳細)
メリーランド州グリーンベルトにある NASA ゴダード宇宙飛行センターは、OSIRIS-REx の全体的なミッション管理、システム・エンジニアリング、安全性とミッション保証を提供した。アリゾナ大学ツーソン校のダンテ・ローレッタが研究責任者。同大学は科学チームとミッションの科学観測計画とデータ処理を主導している。コロラド州リトルトンのロッキード・マーティン・スペース社が宇宙船を製作し、飛行運用を担当。ゴダード大学とKinetX Aerospace 社は、OSIRIS-REx 探査機のナビゲーションを担当した。OSIRIS-REx のキュレーションは NASA ジョンソンで行われた。このミッションにおける国際的なパートナーシップには、CSA(カナダ宇宙庁)の OSIRIS-REx レーザー高度計や、JAXA の「はやぶさ2」ミッションとの小惑星サンプル科学協力が含まれる。OSIRIS-REx は NASA のニュー・フロンティア・プログラムの三番目のミッションで、アラバマ州ハンツビルの NASA マーシャル宇宙飛行センターがワシントンの NASA 科学ミッション本部への協働として管理している。
OSIRIS-REx ミッションの詳細については、以下を参照いただきたい。
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan