NASA Artemis(アルテミス、アーテミス) I SLS「SLS ファーストフライトデータから、次期 Artemis ミッションに向けて準備する」

原文 : January 28, 2023 : Data from the First SLS Flight to Prepare NASA for Future Artemis Missions

Alyssa Lee Posted on January 28, 2023
 

NASAは、昨年11月16日に行われた「Artemis(アルテミスまたはアーテミス)I」の打ち上げで、スペースローンチシステム(SLS)ロケットのシリーズ初号機としての性能についてデータを評価し、さらに詳細な解析を続けている。SLS ロケットが期待される性能をすべて満たしている、あるいは超えているとの初期データ評価とレビューに続き、SLS エンジニアは現在、次に実施されるアルテミスシリーズ最初の有人ミッションに備え、月探査ロケットの性能をより詳しく煮詰めている。

打ち上げ直後に実施された評価を基に、飛行後の予備データでは、SLS すべてのシステムが例外的な性能を発揮し、「Artemis II」の有人飛行をサポートするための設計が整っていることが示されている。ポストフライト分析チームは、引き続きデータを確認し、最終報告を行う予定となっている。

「NASA SLS ロケットは、月探査におけるアルテミスシリーズと、先にある深宇宙での惑星間航行の未来のための基礎を築いたのだ」とSLS プログラム・マネージャーの John Honeycutt(ジョン・ハニーカット)は述べている。
「アルテミス I で見せた実際のフライトパフォーマンスと予測されたそれとの相関性は素晴らしいものだった。ロケットの製造と打ち上げを成功させるためには、エンジニアリングとアートが必要なのだ。SLS ロケットの初飛行の分析により、NASA とそのパートナーは、アルテミス II とそれ以降のミッションに力を発揮できる有力なステージに立っている」

打ち上げに先立ち、チームは一連のフライト・シミュレーションとテスト・キャンペーンを通じて、ロケットの性能に関するベンチマークを確立した。ロケットが打ち上げられ、宇宙へと上昇していく過程で、極端な力や温度上昇といったダイナミックな局面を経験し、実際の運用の糧となった。アルテミス I のフライトテストは、ブースター分離などの局面にロケットがどのように動作するかについて実際のデータを収集する唯一の方法であった。
 

NASA のスペースローンチシステム(SLS)ロケットのコアステージには、1,000 以上のセンサーと 45 マイルに及ぶケーブルが設置されている。SLS コアステージのベースヒートシールドの厚さは約 1.3 インチで、高さ 212 フィートのステージと二つの液体推進剤タンクを華氏 3,200 度以上に達する発射台温度から守るために特別に設計された。データによると、この構造は砂をガラスに変えるほどの温度でも影響されなかったということだ。
Credit : NASA/Chris Coleman and Kevin Dav
 

 

アラバマ州ハンツビルにある NASA Marshall Space Flight Center(マーシャル宇宙飛行センター)の SLS エンジニアリング・サポートセンターのエンジニアは、打ち上げ前から本番の実施までの段階で、SLS から 4 テラバイト以上のデータとオンボード画像を収集した。また、地上カメラ、ロケット搭載カメラ、SLS に焦点を当てた空中カメラから、画像データだけでも合計約 31 テラバイトが収集された。例えると米国議会図書館の印刷物は、およそ 20 テラバイトだ。

「アルテミス I ミッションで得たデータは、人類を月に送り返すためのこのロケットに対する信頼を築く上で非常に重要なものだ」と SLS チーフエンジニアの John Blevins(ジョン・ブレビンズ)は述べている。
「SLS チームは、このフライトテストで学んだことを、今後の打ち上げの改善のために活用する。将来のミッションの効率化については既に活かされている」

また、宇宙でのロケットの挙動をカメラやセンサーによってデータを取得した。SLS ロケットの「視界」から打ち上げを見るために、カメラやセンサーなどの計測ツールを、ロケット、モバイルランチャー、発射台等の至る所に戦略的に配置する必要があった。
 

4 基の RS-25 エンジンと 2 基の 5 セグメント固体ロケットブースターが、SLS のリフトオフと飛行中に 880 万ポンド以上の推力を提供する。1 秒間に 50 回、エンジンの状態をチェックする新しい RS-25 エンジンコントローラの開発により、エンジニアはアルテミス I の動力源となった 4 基の RS-25 エンジンの圧力、温度、流量、速度、振動について 100 以上の計測を行った。
Credit : NASA/Joel Kowsky
 

 

「固体ロケットブースターの分離や中間低温推進ステージ(ICPS)の分離など、アルテミス I ロケットを何度も繰り返して見ることにより、打ち上げから上昇、分離までの SLS のパフォーマンスを評価するための画像データが得られた」と SLS 画像統合リードの Beth St.Peter(ベス・セント・ピーター)は述べている。

エンジニアはまた、打ち上げ直後のロケットが経験した極端な温度と音もモニターした。SLS の打ち上げ後のデータでは、RS-25 エンジンの推力とコントロールバルブからの混合比が予測値の 0.5 % 以内であったことが示されている。混合比とは、燃料と酸化剤の比率のことで、8 分間の飛行中、エンジンが発する温度と推力を決定する。その他の主要なエンジン内部の圧力と温度は、飛行前の予測値から 2 % 以内であった。

打ち上げ飛行中、SLS コアステージ(初段)はすべての機能を正常に実行し、ICPS と Orion(オリオンまたはオライオン)宇宙船を 972.1 マイル x 16 マイルの地球初期軌道に挿入した。この挿入は、975 マイル x 16 マイルという完璧なブルズアイ目標まであと 2.9 マイルであり、許容の範囲内であった。ほぼ完璧な月周回軌道投入燃焼の後、ICPS とオリオン宇宙船は分離に成功し、オリオンは 25.5 日間のミッションを完了することができた。
 

スペースローンチシステム(SLS)ロケットは、オリオン宇宙船が月へ向かうために必要な宇宙空間での「後押し」をする中間低温推進段(ICPS)が段階的に推進力を提供する。アルテミス I では ICPS が二回の燃焼に成功し、月周回軌道でのオリオンを進めた。これは、50 年以上にわたる設計の歴史と数百回のミッションで最も長い RL10 エンジン燃焼も含む。
Credit : NASA
 

 

NASA は「アルテミス計画」シリーズ全般を通じて、初めてとなる女性、白人以外の飛行士を含めた月面着陸を実現し、長期的な月面滞在への道を開くとともに、火星へ向かう宇宙飛行士の足がかりとなることを目指している。

SLS の詳細については、以下のリファレンスガイドをご覧頂きたい。

Space Launch System Reference Guide
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office