NASA Artemis(アルテミス) I SLS「Artemis I - Flight Day 24:Orion 宇宙船が故郷地球に還る」

原文 : December 09, 2022 : Artemis I - Flight Day 24: Orion Heads Home

Cballart Posted on December 09, 2022 05:22 pm, (CST)
 

ヒューストン管制室では、12月11日(CST:米国中部標準時、日本より 15 時間遅れ)に予定されている Orion(オリオン、オライオン)宇宙船の海洋着水に向けて、宇宙船のシステムチェックを行い、地上システム回収チームは、Guadalupe Island(グアダルーペ島)近くの Baja Coast(バハ海岸)沖の着陸地点に向かって進んでいる。
 

Imahe caption :
Artemis I 回収チームのメンバーは、USS ポートランド(LPD27)内で飛行運用手順の練習を行っている。このチームは、12月11日の宇宙船の太平洋への着水に先立って既に海上に出ている。
Credit : NASA
 

フライトコントローラは、クルーモジュールの反応制御システムのヒーターを起動し、計画にあった通り、各スラスタのホットファイヤーテストを実施した。五つの各スラスタのパルスはそれぞれが 75 ミリ秒であり、テスト中の姿勢変化を最小限に抑えるため、対向するペアで実施された。クルーモジュール推進系の推力は、12 基の単推薬 MR-104G エンジンによって生成される。このエンジンは MR-104 スラスタの改良型で、惑星間航行のボイジャー1号と2号などで使われているものだ。

約 12,100 ポンドの推進剤が使用されたが、これは打ち上げ前の予想より 240 ポンド少なく、使用予定量より 2,230 ポンドの余裕があり、打ち上げ前の予想より 324 ポンド多くなっている。

Orion 宇宙船は、地球を囲むヴァン・アレン帯を通過するが、地球に帰還する際に、強い放射線にさらされることになる。地球磁場以外の深宇宙では、太陽フレアの際に発生する高エネルギー粒子や、銀河系外からやってくる宇宙線による粒子なども存在する。

宇宙船は、当初から、放射線が発生して浴びる可能性があるときに、宇宙船の重要なシステムの信頼性を確保するように設計されており、クルーが遮蔽材を使って太陽エネルギー粒子に対するバリアを形成すれば、即席のストームシェルターとすることができる。

クルーが搭乗しない Artemis(アルテミス)I ミッションでは、オリオンはいくつかの機器と実験を計画し、将来のクルーが経験する環境について理解を深め、追加の防護策を開発するエンジニアに貴重な情報を提供する。電力に接続され、飛行中に測定値を地球に送信できるアクティブセンサーと、電源を必要とせず、飛行後に分析される放射線量情報を収集するパッシブ検出器がある。

Moonikin Campos 船長(マネキン)には二つの放射線センサーが搭載されているほか、ヘッドレストの下とシートの後ろにセンサーがあり、ミッション中の加速度や振動を記録している。座席は、リカンベント(仰向け)と呼ばれる足を高くした姿勢になっており、今後のミッションでクルーが上昇中や突入時に頭部への血流を維持するのに役立つと考えられている。また、打ち上げや着陸の際に頭と足をしっかりと固定することができ、着水時などの加速度や減速度が高い時に胴体全体に力が分散されるため、怪我の可能性を低く抑えている。

クルーは上昇中に地上での重力の 2.5 倍、再突入時に 4 倍の力を受けると予想される。エンジニアは Artemis I ミッションでの飛行データを、同じマネキンや人間を使った過去の地上での振動試験と比較して Artemis II に備える。

マネキンと座席のセンサーに加え、船長は第一世代のクルー・サバイバルシステム圧力スーツを着用している。今回のミッションでは、主に打ち上げと再突入を重視して設計されているが、月への旅、ゲートウェイでの軌道修正、帰還の途中で船室の圧力が失われた場合でも、宇宙飛行士の生存は護られる。宇宙飛行士は、地球に帰還するまでの間、最長で六日間、スーツ着用によって生存することができる。外側のカバー層は、クルーが地上回収要員の助けを借りずに宇宙船から出る必要がある場合に、海洋上で簡単に見つけられるようにオレンジ色になっている。

CST 12月09日午後02時30分、Orion 宇宙船は地球から 171,500 マイル、月から 214,200 マイルを時速 2,100 マイルで巡航中である。
 

この Artemis I ミッションの画像は、NASA のジョンソンスペースセンターの ” Flickr ” アカウントと ” イメージ・ビデオライブラリ ” で閲覧が可能だ。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office