NASA Artemis(アルテミス) I SLS「Artemis I - Flight Day 19:電力調整の問題調査と、月面接近に備える Orion チーム」

原文 : December 04, 2022 : Artemis I - Flight Day 19: Orion Prepares for Close Lunar Flyby, Teams Examining Power Conditioning Issue

Shaneequa Vereen Posted on December 04, 2022 7:39 pm, (CST)
 

Orion(オリオン、オライオン)宇宙船は、12月04日(日)午前10時43分(CST:米国中部標準時、日本より15時間遅れ)に二回目の帰還軌道修正燃焼を行い、補助スラスタを用いて速度を 1.16 mph(1.71 フィート/秒)増加させた。
 

Imahe caption :
月面の約 79 マイル上を通過する際、太陽電池アレイの片側に取り付けられたカメラ撮影された地球。
Credit : NASA
 

CST 午前12時41分にディープスペースネットワーク(DSN)のキャンベラ局との信号を取得した直後、Orion は電力調整分配装置(power conditioning distribution unit ; PCDU)に問題が発生し、下流の電力に関わるラッチング電流制限器のうち四器がオフになった。これらの下流の機器は、推進器とヒーター・サブシステムに接続されている。チームはシステムが正常であることを確認し、下流のコンポーネントに電源を供給することに成功した。重要なシステムへの電力供給は停止しておらず、Orion の航行システムや通信システムにも悪影響は出なかった。

今回の問題の原因として、八機のユニットのうち一機がコマンドなしで開くという過去の事例を調査する際にフライトチームが行った電源設定テストが関係している可能性があるかどうかを調査している。アンビリカルは毎回正常に閉じられ、宇宙船の電子機器に流れる電力が失われるという事態は発生していない。

宇宙船は、月と地球の画像を撮影し、画像内の天体の大きさと位置を見ることによって探査機の方向を決めるための高感度カメラである光学航法システムを使って、追加のデータを取得した。エンジニアたちは、Orion が地球に帰還するまでの間に、さらにいくつかの試験目標を達成する準備も進めている。多くの試験項目は、Orion の宇宙での運用ついてエンジニアに情報を提供し、性能モデルを検証し、今後の宇宙船運用についてできる限り多くの実証を得られることを求める。

Orion 宇宙船の地球帰還に向けて、太平洋において宇宙船を回収する NASA の探査地上システム計画と米海軍のチームは、海上での最終訓練を終え、水中の模擬カプセルを使って、ダイバーや小舟艇によるオープンウォーターの回収手順の演習を行った。

12月05日(月)、Orion は月面に最接近し、月面の上空 79.2 マイルをフライバイする。このときの燃焼は約 3 分 27 秒に及び、機体の速度を約 655 mph(961 フィート/秒)変化させる予定だ。このリターン・パワー・フライバイは、ミッション最後の大型マヌーバとなり、残るは地球を目指すための小さな軌道修正のみとなる。

月面の接近と軌道調整マヌーバのライブ中継は、NASA TV、NASA のウェブサイト、NASA アプリで CST 午前08時から開始される予定。Orion 宇宙船は、CST 午前10時40分から約 31 分間、月の裏側に回り込み、地球との通信が途絶える。

12月05日午後04時(CST)、NASA首脳は、12月11日のオリオンの地球海洋着水に向けて、リターン・パワー・フライバイ燃焼の結果と回収のための海上への展開について議論する予定である。ライブ中継は、NASA の全チャンネルで視聴可能だ。

CST 12月04日午後04時30分過ぎ、Orion 宇宙船は地球から 222,213 マイル、月から 23,873 マイルを移動し、航行速度は 3,076 マイルであった。

この Artemis I ミッションの画像は、NASA のジョンソンスペースセンターの ” Flickr ” アカウントと ” イメージ・ビデオライブラリ ” で閲覧が可能だ。
 

アルテミス計画は、「アポロ月面探査」の経験を基に設計されている。アルテミス計画によって、人類は再び月面に戻り、今度はそこに長期滞在することになる。NASA は革新的な技術を駆使し、月周回軌道上に設置されたゲートウェイ宇宙ステーションと先進の宇宙服やローバーを使って、月の南極やこれまでに行われなかった多くの月面を探査する予定だ。NASA は、国際的なパートナーや商業的なパートナーと協力して、月面に初めて長期滞在するための道を切り開くだろう。そして、月やその周辺で学び、火星有人探査への大きな一歩を踏み出すのだ。
 


 

Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office