The Planetary Society of Japan

Space Topics 2015

リングに向かう巻きひげ状構造はプリューム噴出から伸びる触手

Updated : April 15, 2015
April 15, 2015 NASA 原文 : ” Icy Tendrils Reaching into Saturn Ring Traced to Their Source ”

 

 

NASA の探査機カッシーニからの画像を研究する科学者によれば、土星の氷の月エンケラドスの近くで見られる長い、しなやかな、巻きひげ状の構造は、エンケラドス表面から噴出する間欠泉に由来する。

研究結果は、Astronomical Journal に、巻ひげ構造の性質に関する洞察とともに、今日オンラインで公開される。

「ユニークな巻きひげ構造は、月の表面の間欠泉の特定の組み合わせで再現できることを示すことができた」と、筆頭著者であるコロラド州ボルダーの宇宙科学研究所のカッシーニ画像チームの Colin Mitchell は語った。Mitchell らは個々の間欠泉から排出された氷の粒の軌跡をたどるためにコンピュータシミュレーションを使用した。2005年にカッシーニによって発見された間欠泉は、小さな氷粒子、水蒸気、単純な有機化合物を噴出している。

特定の照明条件で、エンケラドスから氷を噴出する様子を捉えたカッシーニの広視野画像からは、画像チームが「巻きひげ」と呼ぶ、かすかな、指のような外観が明らかになった。「巻きひげ」は、土星の E 環 (エンケラドスの軌道が在るリング)に達し、延長は数万キロメートルにも及ぶ。巻きひげが発見されて以来、間欠泉活動がその起源であり、E 環に材料を供給していると考えられてきた。しかし、巻ひげの幽玄な外観は、間欠泉活動には直接関連付けされてなかった。

異なる形状の巻きひげ構造が、間欠泉粒子のサイズに起因することが分かり、研究チームは粒子の大きさに着目した。巻ひげは、直径 1 ミクロン以上の粒子から構成されることが示され、カッシーニによるE環粒子の測定値と一致した。

土星との位置関係、時系列での映像を精査するうちに、巻きひげの外観が変化していることが明らかになった。 「特徴的な外観が、次の画像から消えていることがあるんだ」と、著者の一人であり、ワシントン州レイシーのセント・マーチン大学の画像チームの John Weiss は語った。

巻ひげの外観の変化は潮汐力の周期に拠るものかも知れないと考えた。土星を周回するエンケラドスが引力の影響を受け、間欠泉の噴出口の大きさを変えているのではないか、と。大きな力を受けると、噴火口は拡がり、より多くの粒子を噴出するはずだ。これらの裏付けはこれからの研究テーマだ。

画像からは更に多くのことが判る。「土星のE環の供給路として、エンケラドスからどれだけの質量が失われ、土星のリングに到達しているのかが、巻ひげの研究から明らかになる」と、共著者であり、画像処理のチームリーダーである Carolyn Porco は語った。「次の重要な課題は、どのくらいの質量が関与しているかを見極め、エンケラドスの地下の海がどのくらい永く存続しうるのかを見積もることだ」と。海の寿命の推定は、長い時間スケールでのこれからのエンケラドスを理解する上で重要だ。

地球外生命体が棲息可能な区域の調査に重きを置くため、エンケラドスはカッシーニ計画の最後の年の主な研究対象だ。プルームと巻きひげの観察、および南極部の間欠泉がある盆地の表面の赤外線観測などが、今後数年の間に予定されている。
 

画像:探査機カッシーニの画像とコンピュータシミュレーションのコラージュ(Credits: NASA/JPL-Caltech/SSI)

キャプション:
土星の月エンケラドスによる長い、しなやかな、巻きひげのような構造と、それに対応するシミュレーション画像で、その構造が、エンケラドスの南極部の間欠泉から噴出された小さな氷の粒子の追跡シミュレーションによって良く再現されていることが分かる。

「a」および「c」と表示された図は、それぞれ、高い太陽位相角度(174 および 170 度)で撮影したエンケラドス近傍の巻きひげ構造のコントラスト強調画像。「b」および「d」は、南極部で見つかった活発な 36 の間欠泉(エンケラドスの間欠泉総数の上位 50 % に相当する)から噴出された氷粒子の軌跡を追跡することによって生成されたCG画像。撮影画像とCG画像は良く一致しており、エンケラドスの間欠泉によって「巻ひげ」が生まれたことを支持する。

微粒子が帯電すると、土星の磁気圏では電磁気学的効果によって粒子の軌跡はカーブする。この効果の大きさは粒子の大きさに強く依存し、小さな粒子はより大きな影響を受ける。巻ひげのカーブ部の大きさから、粒子の大きさを見積もることが出来る。その直径は 0.5 ミクロン以上であり、先のカッシーニによる観察による E 環の構成粒子のサイズと一致する。

図「a」は2006年の観測から、「c」はカッシーニにより2013年7月19日に撮影されたもの(PIA17172)。軌道の回転方向は、すべての画像で反時計回り。
 

画像:エンケラドスの南極の地形に位置している間欠泉のソースの場所をプロットしたグラフィック(Credits: NASA/JPL-Caltech/SSI)

キャプション:
この図は、科学者によってエンケラドスの南極域に特定された間欠泉の位置を示したものである。最も活動的な間欠泉またはジェットとも呼べる吹き出しの36個にについては円で示した。また、間欠泉から吹き出してくる粒子の振る舞いによって色分けしてある。他の、あまり活発ではない吹き出しは黒い小さな四角で示した。

赤い色は、エンケラドスの軌道上で前方にのびている構造を作る吹き出しであり、青色は、エンケラドスの後方に分布する粒子の吹き出し口となっている。そして黒色は、その両方である。円の大きさは、活動のレベルに比例するように描かれている。緯度線は、5度刻みで、南極を中心とする同心円として描かれている。

吹き出し口から描いた線は、吹き出しの中心の速度ベクトルを土星のリングの面に投影したものである。つまり、吹き出しの方向を土星の赤道を含む面に投影したものである。この座標系では、土星は下の方にあり、エンケラドスの軌道運動は右向きである。

 

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