Space Topics 2025
NASA Blogs (Ja) 日本語訳解説
NASA、アルテミス月面移動車両(LTV)への搭載機器を選定
NASA Artemis II SLS「NASA、アルテミス月面移動車両(LTV)への搭載機器を選定」
原文 : July 10, 2025 : NASA Selects Instruments for Artemis Lunar Terrain Vehicle
JPL 主導の UCIS-Moon 撮像分光計は、軌道上から月の地質・水・氷をマッピングし、人間の活動がこれらの揮発性物質に与える影響を測定する。
Imahe caption :
NASA の月面移動車(LTV)のアーティスト・コンセプト。
Credit : NASA/Kim Shiflett
NASA は月へ運ぶ三つの機器を選定しており、うち二つは Lunar Terrain Vehicle(月面移動車:LTV)への搭載を計画、一つは将来の軌道飛行機会向けである。
LTV はアルテミス計画の一環として月面探査を進める NASA の取り組みの一部であり、50 年余ぶりに月面で運用される有人車両となる。最大二名の宇宙飛行士が搭乗可能で、無人遠隔操作も可能なこの月面移動車により、NASA は広範な月面地形において科学探査目標の達成を加速させる。
「アルテミス月面探査車(LTV)は、人類を科学探査と発見の壮大な旅において、これまで以上に月面フロンティアの奥深くへ運ぶことだろう」と、ワシントンにある NASA 本部の科学ミッション局副局長、Nicky Fox(ニッキー・フォックス)は述べた。
「有人探査と無人探査の優れた点を組み合わせることで、LTV に搭載される科学機器は、地球に最も近い隣人である月に関する知見をもたらす発見を行うと同時に、月面における宇宙飛行士と宇宙船の健康と安全にも貢献するだろう」
アルテミス赤外線反射・放射分光計(AIRES)は、水、アンモニア、二酸化炭素のように容易に蒸発する物質である月面鉱物と揮発性物質を特定、定量化し、分布図を作成する。この機器は、関心のある特定地形と広域パノラマの両方の可視光画像に重ねて分光データを取得し、月南極地域における鉱物と揮発性物質の分布を解明する。AIRES 機器チームは、テンピにあるアリゾナ州立大学の Phil Christensen(フィル・クリステンセン)が率いている。
月面マイクロ波能動受動分光計(L-MAPS)は、月面下の構造を解明し、氷の存在が推測される地点の探索に貢献する。分光計と地中探査レーダーを併せ持つこの機器群は、地表下 40 メートル(131 フィート)以上にわたる温度、密度、地下構造を測定する。L-MAPS 機器チームはハワイ大学マノア校の Matthew Siegler(マシュー・シーグラー)が率いる。
両機器のデータを統合することで、月面および地下の構成要素を可視化し、有人探査を支援するとともに、太陽系内の岩石惑星の歴史に関する手がかりを解明する。さらに、月の構成物質、氷の潜在的な存在場所、月が時間とともにどのように変化しているかなど、月の資源特性の解明にも貢献する。
LTV への搭載が選定された機器に加え、NASA は将来の軌道飛行機会に向けて月用超小型撮像分光計(UCIS-Moon)も選定した。この機器は LTV による発見に地域的文脈を提供する。上空から、UCIS-Moon は月の地質と揮発性物質をマッピングし、人的活動がそれらの揮発性物質に与える影響を測定する。この分光計は、宇宙飛行士が月面サンプルを採取するのに科学的に価値のある領域を特定することに役立つと同時に、広視野画像によりサンプル採取地点の全体的な背景を提供する。UCIS-Moon 機器は、月面の水、鉱物組成、熱物理特性に関する最高空間分解能のデータを提供する。UCIS-Moon 機器チームは、NASA JPL(ジェット推進研究所)の Abigail Fraeman(アビゲイル・フレマン)が率いる。
「これら三つの科学機器が連携することで、月面および月面下にどのような鉱物や揮発性物質が存在するかという重要な疑問に対する答えを、大きく前進させることができるだろう」と、NASA 本部探査・科学ミッション局副局長、Joel Kearns(ジョエル・カーンズ)は述べている。
「これらの機器を LTV に搭載して軌道上に送り込むことで、宇宙飛行士が探査する地域だけでなく、月の南極地域全体の地表の特性を把握することが可能になり、今後数年にわたる科学的な発見と探査の刺激的な機会が生まれるだろう」
これらの機器選定に先立ち、NASA は三社の月面探査車ベンダー(Intuitive Machines、Lunar Outpost、Venturi Astrolab)と協力して、予備設計審査を完了した。本審査により、各商業月面ローバーの初期設計が NASA のシステム要件を全て満たし、適切な設計オプションが選定され、インターフェースが特定され、検証方法が記述されていることが確認された。NASA は各 LTV ベンダーから提出されたタスクオーダー提案書を評価し、2025年末までに実証ミッションの選定を決定する予定である。
アルテミス計画を通じて、NASA は優先度の高い科学課題に取り組む。月面および月周辺における有人探査が最も効果的に達成できる課題に焦点を当て、ロボットによる月面探査システムと軌道探査システムを活用する。Artemis(アルテミス)ミッションは宇宙飛行士を月へ送り、科学的発見と経済的利益を追求するとともに、初の有人火星ミッションの基盤を構築する。
アルテミス計画の全貌については、以下で特集しております。
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

