NASA Juno Mission「NASA Juno(ジュノー)探査機が観測した、これまでで最も強力な Io(イオ)の火山活動」

原文 : January 28, 2025 : NASA Juno Mission Spots Most Powerful Volcanic Activity on Io to Date


太陽圏内で最も火山の多い天体と言われる木星衛星 Io(イオ)のこれまでの活動状況から見ても、最近観測された現象は極めて異常なものだ。
 

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NASA Juno(ジュノー)探査機が2024年12月27日に木星の衛星イオのフライバイ中に、搭載された JIRAM 赤外線イメージャーで撮影した画像からは、イオの南極のすぐ右側に、地球のスペリオル湖よりも大きな大規模なホットスポットが確認できる。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI/ASI/INAF/JIRAM
 

NASA Juno(ジュノー、ユノ―)ミッションの科学者たちは、木星の衛星 Io(イオ)の南半球に火山のホットスポットを発見した。このホットスポットは、地球の Lake Superior(スペリオル湖)よりも大きいだけでなく、世界中で発電所できる総エネルギーの 6 倍相当の噴火をおこしている。この巨大な特徴を発見したのは、Italian Space Agency(イタリア宇宙庁)から提供されたジュノー搭載の JIRAM(Jovian Infrared Auroral Mapper)である。

「ジュノーの長期ミッションを続ける間に、探査機はイオに極めて接するフライバイを二度行った」と、このミッションの主任研究者であるサンアントニオのサウスウエスト研究所の cott Bolton(スコット・ボルトン)は語る。
「それぞれのフライバイで、我々の期待を上回るイオ・データが得られたが、この最新の(より遠距離ではあるが)フライバイ・データは、我々の度肝を抜いた。これは、太陽系で最も火山の多い天体で記録された最も強力な火山現象だ」
 

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ジュノーに搭載された JunoCam imager(ジュノーカム・イメージャ)が2024年に捉えたイオの画像は、イオの南極付近で、目に見える大きな表面の変化(矢印で示す)を示している。これらの変化は、ジュノーが木星を近接フライバイを行った周回軌道の66回目と68回目の間に起こった。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS 画像処理:Jason Perry
 

イオが荒れる原因は木星
地球の月ほどの大きさの衛星イオは、巨大なガス惑星木星に非常に近く、その楕円軌道は42.5時間に一度、木星の周りを回る。距離が変化すると、惑星の引力も変化し、衛星は容赦なく圧迫される。その結果、摩擦熱による莫大なエネルギーがイオの内部の一部を溶かし、その結果、イオの表面をなぞる推定 400 ヶ所の火山から、溶岩の噴出や火山灰の大気への放出が果てしなく続くことになる。
 

接近フライバイ

JIRAM は、木星の奥深くから放たれる赤外線(人間の目には見えない)をとらえるように設計されており、木星の雲頂から 30~45 マイル(50~70 キロメートル)下を覗きながら、巨大ガスの気象層を探査している。しかし、NASA がジュノーのミッションを延長して以来、チームはこの装置を使って衛星イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの調査も行っている。

延長されたミッションの間、ジュノの木星周回軌道は1周おきにイオを通過し、毎回月の同じ部分を飛行する。これまでは、2023年12月と2024年2月にイオに近接フライバイし、その表面から約 930 マイル(1,500 km)以内まで接近した。最新のフライバイは2024年12月27日に行われ、探査機は月から約 46,200 マイル(約 74,400 km)以内に接近し、赤外線観測装置はイオの南半球に照準を合わせた。
 

イオが熱をもたらす

「JIRAM はイオの南半球で、検出器が振り切るほど強い極端な赤外線放射(巨大なホットスポット)を検出した。ローマ国立天体物理学研究所のアレッサンドロ・ムーラ共同研究員は、「我々が検出したのは、地下に広大なマグマだまりがあることを示唆するもので、間隔が狭いいくつかのホットスポットが同時に発光している証拠だ」と語った。
「このデータは、イオで記録された中で最も激しい火山噴火であることを裏付けている」

JIRAM の科学チームは、まだ名前のついていないこの地形が 40,000 平方マイル(100,000 平方キロメートル)に及ぶと推定している。これまでの記録保持地域は、イオのロキ・パテラで、約 7,700 平方マイル(20,000 平方キロメートル)の溶岩湖であった。新しいホットスポットの放射光の総パワー値は 80 兆ワットをはるかに超えている。
 

撮像画

この画の特徴は、ミッションの JunoCam 可視光カメラでも捉えられた。チームは、過去二回のイオのフライバイで撮影された JunoCam の画像と、昨年12月27日に撮影された画像を比較した。これらの最新の画像は、ジュノーがより遠くにいたため解像度が低いが、新たに発見されたホットスポット周辺の表面の色の相対的な変化は明らかであった。イオの表面のこのような変化は、惑星科学の世界ではホットスポットや火山活動に関連していることが知られている。

この規模の噴火は、長期にわたって痕跡を残す可能性が高い。イオの他の大規模噴火では、火砕堆積物(火山によって噴出された岩石片からなる堆積物)、亀裂によって供給されたと思われる小さな溶岩流、硫黄や二酸化硫黄を豊富に含む火山噴出物の堆積物など、さまざまな特徴が形成されている。

ジュノーは、今年03月03日に予定されている遠距離でのイオ・フライバイを利用して、ホットスポットを再び観察し、地形の変化を探索する。また、衛星のこの領域を地球から観測することも可能かもしれない。

「記録を塗り替えるような出来事を目撃するのは常に素晴らしいことだが、この新しいホットスポットはもっと多くのことが起きる可能性がある」とボルトンは言う。
「この興味深い特徴は、イオだけでなく、他の世界の火山活動に関する我々の理解の向上を助けるかもしれない」
 

ミッションの詳細

Juno ミッションは、NASA JPL(ジェット推進研究所)が管理している。プロジェクトは、サンアントニオにあるサウスウエスト研究所所属のスコット J. ボルトンがチームを率いる。
Juno は NASA のニューフロンティア計画の一部であり、アラバマ州ハンツビルの NASA マーシャル宇宙飛行センターにおいて、NASA 科学ミッション本部が管理している。宇宙船の製造・運用は、デンバーにあるロッキード・マーチン・スペース社が行っている。

Juno の詳細については、以下の URL を参照頂きたい。

Juno - mission to Jupiter

Mission Juno
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office