Space Topics 2024
NASA JPL News 日本語訳解説
ボイジャー2号機、輝かしい成果をもたらした科学機器の電源を切る
NASA ボイジャー探査機「ボイジャー2号機、輝かしい成果をもたらした科学機器の電源を切る」
原文 : October 01, 2024 - NASA Turns Off Science Instrument to Save Voyager 2 Power
ミッション・チームは、プラズマ科学装置の稼働について可能な限りシャット・オフを延期するよう取り組んできた。インター・ステラを航行する宇宙機に搭載された他の 4 基の観測機器は稼働を続けている。
Imahe caption :
1977年03月23日に NASA JPL で撮影されたアーカイブ画像。同年末の打ち上げに向けてボイジャー2号探査機を準備するエンジニアの様子。
Credit : NASA/JPL-Caltech
NASA のミッション・エンジニアは、探査機の電力供給が徐々に減少しているため、ボイジャー2号機に搭載されているプラズマ科学装置の電源を切った。
地球から128億マイル(205億キロメートル)以上離れた探査機は、太陽から到達する粒子と磁場の保護バブルである太陽圏(Heliosphere)の外側の領域を研究するために、4 基の科学機器を使い続けている。探査機は、2030年代まで少なくとも 1 基の運用可能な科学機器でこの領域を探査し続けるのに十分な電力を有している。
ミッション・エンジニアたちは、双子のボイジャー探査機が収集した科学データは唯一無二のものであるため、可能な限り長い間、科学機器の電源を切らないように対策を講じてきた。人類が作った宇宙機で、太陽圏の外側にある星間空間で活動した構造物は他にない。
プラズマ科学装置は、プラズマ(電気を帯びた原子)の量と、プラズマが流れている方向を測定する。星間空間でプラズマが流れている方向に対して相対的な向きとなっているため、近年は限られたデータしか収集できていない。
どちらの探査機も、崩壊するプルトニウムを動力源としており、毎年約 4 ワットの電力を失っている。双子のボイジャーが1980年代に巨大惑星の探査を終えた後、ミッション・チームは星間空間の研究に使わないいくつかの科学機器の電源を切った。そのため、数年前まで探査機には十分な余力があった。それ以来、チームはいくつかのヒーターを含め、探査機を作動させるのに不可欠でないすべての搭載システムをオフにした。また、別の科学機器を停止させるのを先延ばしにするため、ボイジャー2号機の電圧の監視方法も調整した。
モニタリングの結果
09月26日、エンジニアはプラズマ科学装置の電源を切るよう指令を出した。NASA DSN(ディープ・スペース・ネットワーク)から送信されたこのコマンドは、ボイジャー2号機まで届くのに 19 時間かかり、折り返しの信号は地球に届くのにさらに 19 時間かかった。
ミッション・エンジニアは、47 年前に設定された探査機の運用に加えられた変更が望ましくない副次的な影響を引き起こさないよう、常に注意深く監視している。チームは、スイッチ・オフ・コマンドが何事もなく実行され、探査機が正常に動作していることを確認した。
2018年、プラズマ科学装置は、ボイジャー2号機が太陽圏を離れたことを決定する上で極めて重要であることを証明した。太陽圏と星間空間の境界は、ボイジャーに搭載された機器が検出できる原子、粒子、磁場の変化によって区切られる。太陽圏の内部では、太陽からの粒子が最も近い恒星から離れる方向に流れている。太陽圏は星間空間を移動しているため、ボイジャー2号機が Heliosphere の前面に近い位置にいると、プラズマは太陽粒子とほぼ反対方向に流れる。
プラズマ科学装置は四つの 「カップ(検出器)」で構成されている。三つのカップは太陽の方向を向いており、太陽圏内で太陽風を観測した。四つ目のカップは他の三つのカップの方向と直角を向いており、惑星磁気圏、太陽圏、そして現在は星間空間のプラズマを観測している。
ボイジャー2号機が太陽圏を出たとき、太陽に面した三つのカップへのプラズマの流れは劇的に減少した。四つ目のカップから最も有用なデータが得られるのは、探査機が太陽に向かって軸を 360 度回転させる三ヶ月に一度だけである。このことが、他の機器よりも先にこの機器の電源を切るというミッションの決断につながった。
ボイジャー1号機に搭載されたプラズマ科学観測装置は1980年に作動を停止し、2007年には電力節約のためにオフにされた。ボイジャー2号機に搭載されたプラズマ波サブシステムと呼ばれる別の装置は、太陽からの噴出物が恒星間媒質を通して衝撃を与え、プラズマ波を発生させたときのプラズマ密度を推定することができる。
ボイジャー・チームは、探査機の健康状態と利用可能なリソースをモニターし続け、ミッションの科学成果を最大化するための技術的な決定を都度下している。
NASA のボイジャーミッションの詳細については、以下をご覧頂きたい。

Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan