NASA 氷衛星探査機 Europa Clipper「エウロパ・クリッパー探査機について知っておくべき八つのこと」

原文 : September 17, 2024 : 8 Things to Know About NASA’s Mission to an Ocean Moon of Jupiter


エウロパ・クリッパー探査機は、氷に閉ざされた木星の氷衛星 Europa(エウロパ)において生命が棲息可能かどうかを調べることを目的とした、地球外の海洋世界の研究に特化した NASA 初の宇宙機である。
 

Imahe caption :
木星周回軌道にある探査機エウロパ・クリッパー想像図。このミッションは2024年10月10日の打ち上げを目指している。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

NASA Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)探査機は、NASA が惑星探査ミッションのために建造したこれまでの宇宙機の中で最大のもので、フロリダの KSC(ケネディ宇宙センター)から打ち上げられ、18 億マイル(29 億キロメートル)を旅して、木星を周回する興味深い氷衛星エウロパを目指す。探査機の打ち上げ期間は本年10月10日木曜日から始まる。

これまでの NASA のミッションで得られたエウロパの科学データは、衛星の凍った表面の氷殻下に巨大な塩分を含んだ海が存在するという強力な証拠を科学者たちに提供してきた。エウロパ・クリッパー探査機は木星を周回し、49 回の接近飛行を行い、衛星の分厚い凍土の下に生命を維持できる場所があるかどうかを判断するのに必要なデータを収集する。

このミッションについて知っておくべき八つのことを紹介しよう。
 

1. 木星衛星エウロパは、現時点において地球外で生命棲息可能な条件を探すのに最も有望な場所のひとつである


 

2. 探査機は、太陽系で太陽に次ぐ過酷な放射線環境の中を飛行する

木星は地球の 2 万倍も強い巨大な磁場に囲まれている。磁場が回転すると、荷電粒子が捕獲・加速され、宇宙機を損傷させる放射線が発生する。ミッション・エンジニアは、放射線から敏感な電子機器を保護するために宇宙機の「機器保管庫」を設置し、エウロパ・クリッパーが木星周辺の放射線が多い場所に滞在する時間を調整する軌道をデザインした。
 

3. エウロパ・クリッパーは木星を周回しつつ、エウロパ近傍フライバイを数十回実施し観測・研究研究する

探査機は木星を周回する軌道を周回し、エウロパに接近して 49 回の科学観測に特化したフライバイを行う。各軌道で探査機は、エウロパ付近の木星の危険な放射線地帯で1日弱を過ごし、その後ジップで帰還する。2~3週間空けて、探査機はこのプロセスを繰り返し、再びフライバイを行う。
 

4. エウロパ・クリッパーは、NASA で最も洗練された一連の科学機器を備えている

衛星エウロパが生命棲息可能かどうかを判断するために、エウロパ・クリッパーは衛星の内部、組成、層構造、形成物質を評価しなければならない。探査機には 9 基の科学機器と、通信システムを利用した重力測定機器が搭載されている。各フライバイで最良の科学を得るため、すべての科学機器はすべてのパスで同時に作動する。その後、科学者たちはデータを重ね合わせ、衛星の全体像を描き出す。
 

5. アンテナと太陽電池アレイを完全に展開したエウロパ・クリッパーは、NASA 惑星ミッション探査機としては最大の宇宙機である

探査機は端から端まで 100 フィート(30.5 メートル)、横幅は約 58 フィート(17.6 メートル)もある。これはバスケットボールのコートよりも大きく、それほど太陽電池アレイは巨大である。太陽電池アレイは、木星の近くで十分な太陽光を集め、観測機器や電子機器、その他のサブシステムに電力を供給するために巨大である必要がある。
 

6. 木星への旅は長い

木星は地球から平均約 4 億 8000 万マイル(約 7 億 7000 万キロ)離れており、どちらの惑星も動いているため、探査機が運べる燃料は限られている。ミッション・プランナーは、エウロパ・クリッパーを火星フライバイさせて、次に地球をフライバイさせることで、惑星の重力をパチンコのように利用し、探査機の旅にスピードを加えようとしている。5 年半かけて約 18 億マイル(約 29 億キロ)を旅した後、探査機はエンジンを噴射し、2030年に木星の周回軌道に入る予定だ。
 

7. エウロパ・クリッパー計画には、アメリカとヨーロッパの研究機関が貢献している

現在、欧米両国の 220 人以上の科学者を含む約 1000 人がミッションに携わっている。2015年にミッションが正式に承認されて以来、請負業者や下請け業者で働くチームを含め、4,000 人以上がエウロパ・クリッパーに貢献している。
 

8. 私たち 260 万人以上(署名)が探査機に同乗し、水の世界から氷の世界へメッセージを届ける

「メッセージ・イン・ア・ボトル」と呼ばれる 260 万人以上の署名をエウロパに贈るミッション・キャンペーンの一環として、宇宙機は米国の詩人エイダ・リモンの詩を載せている。搭載された彼らの名前は、宇宙機の「電子機器保管庫」を密閉するタンタル金属プレートに取り付けられたマイクロチップにステンシルされている。このプレートには、100 以上の言語で「水」という言葉を発する人々の波形も描かれている。
 

More About the Mission(ミッションの詳細)

エウロパ・クリッパーの三つの主な科学目的は、衛星の氷殻の厚さとその下の海との相互作用を決定すること、衛星の組成を調査すること、そして衛星の層構造、形成物質を評価することである。このミッションによるエウロパの詳細な探査は、私たちの惑星以外の生命存在可能な世界の宇宙生物学的可能性を科学者がよりよく理解するのに役立つだろう。

カリフォルニア州パサデナにあるカリフォルニア工科大学が管理する NASA JPL(ジェット推進研究所)は、メリーランド州ローレルにあるジョンズ・ホプキンス応用物理学研究所と共同で、ワシントンにある NASA の科学ミッション本部主管のエウロパ・クリッパー・ミッションの開発を主導している。宇宙機本体は、JPL とメリーランド州グリーンベルトの NASA ゴダード宇宙飛行センター、アラバマ州ハンツビルの NASA マーシャル宇宙飛行センター、バージニア州ハンプトンの NASA ラングレー研究センターと共同で APL が設計した。マーシャル宇宙飛行センターの惑星ミッション・プログラム・オフィスは、エウロパ・クリッパー・ミッションのプログラム・マネージメントを行っている。

ケネディを拠点とする NASA の打上げサービス・プログラム・チームは、ケネディの打上げ施設 39A からスペース X 社のファルコン・ヘビーロケットで打ち上げられるエウロパ・クリッパー宇宙機を管理している。

エウロパクリッパーの詳細については、以下を参照いただきたい。

NASA´s Europa Clipper
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office