JPL News (Ja) - Space Topics 2024
JPL News (Ja) 日本語訳解説
NASA Juno(ジュノー、ユノー)ミッション、木星衛星イオの溶岩湖をクローズアップ観測
NASA Juno Mission「NASA Juno(ジュノー、ユノー)ミッション、木星衛星イオの溶岩湖をクローズアップ観測」
原文 : June 26, 2024 : NASA´s Juno Gets a Close-Up Look at Lava Lakes on Jupiter’s Moon Io
ソーラー電力セイル探査機 Juno(ジュノー)が捉えた赤外線画像が、木星衛星で最も熱い月である Io(イオ)の内部構造に関する議論を熱くさせる。
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ジュノー探査機に搭載された JunoCam が、木星の衛星イオの地平線上に立ち昇る二か所の火山噴煙を捉えた。この画像は今年02月03日、約 2,400 マイル(3,800 km)の距離から撮影された。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
NASA 探査機 Juno(ジュノー)による新たな観測は、木星衛星 Io(イオ)に溶岩湖がどの程度広がっているかについての全体像を示し、そこで働いている火山プロセスについての初めての洞察が含まれている。これらの結果は、ジュノーの木星赤外線オーロラ・マッパー(JIRAM)観測装置による成果で、赤外線を使って「見る」ものである。研究者らは06月20日、ジュノーの最新の火山観測に関する論文を、学術誌「Nature Communications Earth and Environment(環境科学と惑星科学に関する査読済みのオープンアクセスの科学雑誌)」に発表した。
地球の月よりわずかに大きい木星衛星であるイオは、ガリレオ・ガリレイによる1610年発見以来、天文学者の興味をそそる存在である。それから約 369 年後、NASA 探査機 Voyager(ボイジャー)1号がイオの火山噴火を捉えた。その後の幾多の木星探査ミッションにより、溶岩湖とともに噴煙を吹くイオの姿を観測した。近隣を周回する衛星と巨大な木星そのものによって、まるでアコーディオンのように引き伸ばされて圧迫されるイオは、太陽系で最も火山活動が活発な世界だと科学者たちは考えている。しかし、月面の火山噴火の種類については観測機会および諸説があるが、裏付けとなるデータはほとんど存在しない。
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2023年10月15日、ジュノー探査機に搭載された JIRAM 装置によってイオの溶岩湖であるChors Patera の赤外線データを収集した。研究チームは、この湖の大部分は厚い溶けた地殻に覆われており、イオの内部からの溶岩が溶岩湖の縁に高温のリング状で直接宇宙空間に露出している。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI/ASI/INAF/JIRAM/MSSS
2023年05月と10月、ジュノーはイオを近接フライバイし、それぞれ約 21,700 マイル(35,000 km)と 8,100 マイル(13,000 km)まで近づいた。ジュノーの観測機器の中で、この魅惑的な衛星を克明に見ていたのは JIRAM だった。
JIRAM は、木星の奥深くから現れる赤外線(人間の目には見えない)をとらえるように設計されており、ガス惑星木星の雲頂から 30~45 マイル(50~70 km)下の気象層を探査する。しかし、ジュノーによる長期の木星系ミッションの間、ミッションチームはこの観測装置を使って衛星イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの観測も行った。JIRAM のイオの画像は、多数の溶岩湖であるホットスポットの低床を囲む明るいリングの存在を示した。
「JIRAM の赤外線画像の高い空間分解能と、フライバイ観測中のジュノーの好位置が相まって、イオの表面全体がカルデラのような地形で形成される溶岩湖で覆われていることが明らかになった」と、ローマの国立天体物理学研究所のジュノー共同研究者、Alessandro Mura(アレッサンドロ・ムーラ)は言う。
「我々が収集した詳細データによるイオの表面領域では、その約 3% がこのような溶けた溶岩湖に覆われていると推定している。(カルデラとは、火山が噴火して崩壊するときにできる大きな窪地のことである)」
このアニメーションは、木星の衛星イオにある溶岩湖、ロキ・パテラのアーティスト・コンセプトである。内部に複数の島を持つロキは、マグマで満たされ、溶けた溶岩で縁取られた窪地である。
Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
火を噴く湖
イオをフライバイすることによって取得した JIRAM データは、衛星の豊富な溶岩の埋蔵量を明らかにするだけでなく、地表の下で何が起こっているかも垣間見ることができる。いくつかのイオの溶岩湖の赤外線画像では、溶岩湖の大部分を覆う中央の地殻と湖の外壁との境界に、溶岩の薄い円が見られる。溶融物のリサイクルは、溶岩湖の縁やその先に溶岩流がないことから、溶岩湖に噴出した溶融物と地下システムに循環して戻ってくる溶融物との間にバランスがあることを推測でき、データはそれを示している。
「マグマが上下する巨大な溶岩湖である」とムーラは言う。
「溶岩の地殻は湖の壁に押し付けられ、ハワイの溶岩湖で見られる典型的な溶岩リングを形成する。壁はおそらく数百メートルの高さがあり、これによってマグマがパテ(火山活動によってできたお椀のような形)から流出して移動するのを阻止されているとの説明が可能となる」
JIRAM のデータからは、これらイオのホットスポットの表面の大部分は、マグマの中央湧昇によって周期的に上下する、ひとつの連続した岩石質の表面地殻で構成されていると見ることができる。仮説として、地殻が湖の壁に接しているため、摩擦によって地殻が滑らず、変形して最終的に割れ、そこから溶岩が露出することが成り立つ。
逆の仮説としては、マグマが湖の中央で湧き上がり、広がって地殻を形成し、湖の縁に沿って沈んで溶岩を露出させていることも説明可能だ。
「我々は、2023年12月と2024年02月のイオの接近フライバイから得られた JIRAM データの分析に着手し始めたばかりである」と、サンアントニオのサウスウエスト研究所でジュノーの主任研究員を務める Scott Bolton(スコット・ボルトン)は言う。
「この観測によって我々は、イオの火山プロセスに関する魅力的な新情報を得た。これらの新しい結果と、イオのこれまで見たことのない北極と南極の火山を監視しマッピングするジュノーの長期的なキャンペーンを組み合わせることで JIRAM は、この拷問を受けているような世界がどのように機能してきたのかを学ぶための最も貴重なツールのひとつであることは我々には判っている」
ジュノーは06月13日、高度約 18,175 マイル(約 29,250 km)でのイオのフライバイを含む、62 回目の木星フライバイを行った。63 回目の木星フライバイは07月16日に予定されている。
ミッションの詳細
Juno ミッションは、NASA JPL(ジェット推進研究所)が管理している。プロジェクトは、サンアントニオにあるサウスウエスト研究所所属のスコット J. ボルトンがチームを率いる。
Juno は NASA のニューフロンティア計画の一部であり、アラバマ州ハンツビルの NASA マーシャル宇宙飛行センターにおいて、NASA 科学ミッション本部が管理している。宇宙船の製造・運用は、デンバーにあるロッキード・マーチン・スペース社が行っている。
Juno の詳細については、以下の URL を参照頂きたい。
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan