NASA Psyche 探査計画「NASA 探査機 Psyche(プシケ、サイキ)が、未来志向の電動スラスターを始動」

原文 : May 22, 2024 : NASA´s Psyche Fires Up Its Sci-Fi-Worthy Thrusters


探査機はすでに火星以遠の距離に達しており、イオン推進を使用して金属質小惑星 16 Psyche(プシケ)に向かって加速している。
 

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このアーティスト・コンセプトは、火星と木星の間の小惑星メイン・ベルトにある、金属が豊富な小惑星 16 プシケに向かう探査機 Psyche を描いている。探査機は2023年10月に打ち上げられ、2029年に目的地に到着する。
Credit : NASA/JPL-Caltech/ASU
 

NASA 探査機 Psyche は、6ヶ月間の健康診断で問題なしと判定された。ナビゲーターは、青い光を放つ未来的な外観の電動スラスターをほぼノンストップで発射し、探査機は深宇宙へと向かっている。

探査機は2023年10月13日、フロリダの NASA KSC(ケネディ宇宙センター)からスペース X 社のファルコンヘビーで打ち上げられた。大気圏を離脱した探査機 Psyche は、ロケットによるブーストを最大限に活用し、火星の軌道を越えて惰性で飛行を続けている。

これから一年間、探査機はミッションプランナーが "フルクルーズ "モードと呼ぶ、軌道を小惑星帯に直接向けた電気スラスターで推進するモードに入る。このスラスターは、キセノンの荷電原子(イオン)を放出することで機能し、探査機の後方に鮮やかな青い光を放つ。

これは探査機 Psyche の非常に効率的な太陽電気推進システムの一部であり、太陽光を動力源としている。イオン化されたキセノンによって生み出される推力は穏やかで僅かだが、仕事はきちんとこなす。
 

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この画像は、NASA Psyche 探査機の推進システムと同じもので、実証中の電気スラスターを捉えたもの。青く光っているのは、キセノンの荷電原子(イオン)から。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

探査機は現在、地球から 1 億 9,000 万マイル(3 億キロメートル)以上離れており、地球に対して毎秒 23 マイル(毎秒 37 キロメートル)の速度で移動している。これは時速約 84,000 マイル(時速 135,000 キロ)に相当する。時間の経過とともに、速度を落とす大気抵抗がなくなり、探査機は最大、時速 12 万 4000 マイル(時速 20 万キロ)まで加速する。

探査機は2029年に金属質小惑星プシケに到着し、軌道上から約二年間観測を行う。探査機が収集するデータは、地球を含む金属核を持つ岩石質惑星の形成について、科学者がより深く理解するのに役立つと期待される。科学者たちは、最も幅の広いところで 173 マイル(280 キロ)ほどのこの小惑星が、初期の惑星の構成要素であるプラネテシマル(planetesimal:微惑星)の部分的なコアである可能性があるという証拠を掴んでいる。
 

良好な状態を保持している探査機

フライトチームは、探査機 Psyche が打ち上ってから 100 日間について、すべての探査機システムの完全な「健康診断」を行った。すべてのエンジニアリング・システムは期待通りに作動し、稼働中の三つの科学観測機器も問題なく作動している。磁力計は、ガンマ線・中性子スペクトロメーターと同様に、太陽からの荷電粒子の噴出を検出することができた。そしてこの12月、撮像装置のツインカメラが最初の画像を撮影した。
 

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この図は、小惑星 16 プシケを目指す探査機 Psyche が辿る道を描いたもの。2026年05月の火星重力アシストを含む、重要なミッションの主要マイルストーンがラベル付けされている。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

「この時点に至るまで、電源を入れ、ミッションを完了するために必要な様々な機器をチェックしてきたが、それらが見事に機能していることを報告できる」と、ミッションを管理する NASA JPL(ジェット推進研究所)の Psyche プロジェクトマネージャー、ヘンリー・ストーンは語った。
「我々は今、火星への接近フライバイを心待ちにしている」

というのも、探査機の軌道は2026年の春に赤い惑星に向かって戻るよう設定されている。探査機は火星に向かって慣性飛行しながらスラスターのパワーを落とし、火星の重力を利用してパチンコ(slingshot)をする。そこからスラスターは完全な巡航モードに戻る。その航行の先には小惑星プシケが待ち構える。

その一方で、宇宙船に搭載された深宇宙光通信技術のデモンストレーションは、引き続きその実力を試し続けることになる。04月には、1 億 4000 万マイル(約 2 億 2600 万キロメートル)以上離れた場所から、ブロードバンドインターネットのダウンロード速度に匹敵する毎秒 267 メガビットのビットレートで、地球上のダウンリンク・ステーションにテストデータを送信した。この実験はすでに予想を上回っている。
 

ミッションの詳細

ASU(アリゾナ州立大学)は、Psyche ミッションを主導する。NASA JPL ジェット推進研究所が、ミッションの全体的な管理、システムエンジニアリング、統合およびテスト、ミッション運用を担当する。カリフォルニア州パロアルトにある Maxar Technologies 社は、高出力太陽電気推進宇宙機のシャーシを提供している。Deep Space Optical Communications(DSOC)は、NASA の宇宙技術ミッション本部内の技術実証ミッションプログラムと、宇宙作戦ミッション本部内の宇宙通信・ナビゲーション(SCaN)プログラム試験として、JPL によって管理されている。加えて JPL は、将来の NASA ミッションで使用される可能性のある高データレートのレーザー通信をテストするために、プシケに搭載される深宇宙光通信と呼ばれる技術実証装置を提供している。
打ち上げは、ケネディ宇宙センター(KSC)にある NASA の打ち上げサービスプログラムが管理している。Psyche Mission は NASA ディスカバリープログラムの一部で、アラバマ州ハンツビルにあるマーシャル宇宙飛行センターの管理のもとで実施される。

Psyche Mission についての詳細は以下をご覧頂きたい。

Psyche Asteroid Mission | NASA

Psyche Mission | A Mission to a Metal World(ASU)
 

News Media Contact

Gretchen McCartney
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

Karen Fox / Alana Johnson
NASA Headquarters, Washington

2023-108
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office