NASA 氷衛星探査機 Europa Clipper「エウロパ・クリッパー探査機、地球上に創られた "宇宙空間 "での生存を確認」

原文 : March 27, 2024 : NASA´uropa Clipper Survives and Thrives in ‘Outer Space’ on Earth


木星氷衛星エウロパとその表面氷殻下の海を探査する木星系への挑戦的な旅に向けて、数々のテストが準備されている。
 

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熱真空試験開始前の2024年02月、JPL の 25 フィート・スペース・シミュレータに設置されたエウロパ・クリッパー。一連の試験により、NASA 宇宙機が宇宙の極端な高温、低温、空気のない環境に耐えられることが保証される。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

あと六ヶ月足らずで NASA は、Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)を 16 億マイル(約 26 億キロメートル)彼方の木星衛星エウロパへの旅に出す。ロケットの荒々しい振動から宇宙の強烈な寒暖差、木星の過酷な放射線まで、それは極限の旅となるだろう。宇宙機は最近、南カリフォルニアにある JPL(ジェット推進研究所)で一連の過酷なテストを受け、この挑戦に耐えられることが確認された。

環境試験と呼ばれるこの一連の試験は、宇宙機が直面する環境をシミュレートするもので、揺れ、冷却、電磁場などに曝される。

「これらは、欠陥を見つけるための最後の大きなテストだった」と、プロジェクト・マネージャーである JPL の Jordan Evans(ジョーダン・エバンス)は言う。
「チームのエンジニアは、よく設計された挑戦的な一連のテストを実行した。我々が発見したものは、宇宙機が打ち上げ中と打ち上げ後に遭遇する環境に対応できるということだ。システムは非常によく機能し、期待通りに動作したよ」
 

ガントレット

エウロパ・クリッパーの最新の環境テストは、最も手の込んだもので、完了までに 16 日間を要した。この宇宙機は、NASA がこれまでに惑星探査ミッションのために建造した中で最大のものであり、JPL が誇る高さ 85 フィート(約 26 メートル×8 メートル)、幅25 フィート(約 25 フィート×8 メートル)の熱真空チャンバー(TVAC)に押し込められた最大級の規模だ。25 フィート・スペース・シミュレータとして知られるこのチャンバーは、内部をほぼ完璧な真空状態にし、空気のない宇宙環境を模倣する。
 

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2024年02月、エウロパ・クリッパー探査機が JPL のフライト・シミュレータに吊り上げられる様子。16 日間にわたる熱真空試験により、宇宙船が宇宙の過酷な条件に耐えられることが確認された。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

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エウロパ・クリッパーは2024年01月現在、JPL の宇宙船組立施設内にあるハイベイ 1 のクリーンルームにある。探査機を囲むテントは、環境試験の一環である電磁気試験をサポートするために設置されている。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

同時にエンジニアたちは、エウロパ・クリッパーが地球に接近している間、太陽に面する側のハードウェアを高温に晒した。スペース・シミュレータの底部にある強力なランプからのビームは、その上部にある巨大な鏡に反射し、宇宙機が耐久する熱を造り出す。
 

2024年02月、エンジニアと技術者がエウロパ・クリッパー探査機を熱真空チャンバーに移動させる様子。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

太陽から離れていく旅をシミュレートするため、ランプを落し、液体窒素をチャンバーの壁のチューブに充填し、宇宙空間同様の温度まで冷やした。その後、チームは宇宙機が母機自身を暖めることができるかどうかを、手作業で取り付けられた約 500 個の温度センサーでモニターしながら測定した。

熱真空チャンバー(TVAC)による過酷な試験は、宇宙機を構成する電子部品や磁気部品が互いに干渉しないことを確認するための一連の試験を含む、環境試験の集大成となった。

また、振動、衝撃、音響試験も行われた。振動試験では、宇宙機は上下左右に繰り返し揺さぶられた。これは、打ち上げ時にスペース X のファルコン・ヘビー・ロケットに搭載されるのと同じ揺れ方である。衝撃試験では、宇宙機がロケットから分離してミッションを飛行する際に受ける爆発的な衝撃を模倣するため、花火が使用された。最後に、音響試験では、エウロパ・クリッパーが打ち上げ時の騒音に耐えられることを確認した。

「まだやるべきことはあるが、予定通りの打ち上げに向けて順調に進んでいる」とエヴァンスは語った。
「この一連の試験が成功したことは大きな前進であり、我々をより安心させるものだ」
 

打ち上げに向けて

この春の終わりに、宇宙機はフロリダの NASA Kennedy Space Center(ケネディ宇宙センター)に輸送される。そこでは、エンジニアと技術者のチームが、時間に合わせて最終準備を進める。エウロパ・クリッパーの打ち上げ期間は10月10日から始まる。

打ち上げ後、宇宙機は火星に向かって疾走し、2025年02月下旬には赤い惑星による重力アシスト実施のために十分な距離まで接近する。太陽電池で動く宇宙機は、これにより地球に向かってスイングバックし、2026年12月に我々の惑星地球の引力圏から再びスリングショットのブーストを得る(つまりスイングバイする)。

その後、太陽系外縁部へと舵を切り、エウロパ・クリッパーは2030年に木星に到着する予定だ。エウロパ・クリッパーは、エウロパの近くを 49 回飛行しながら、巨大ガス惑星の軌道を周回し、衛星エウロパの表面から 25 km まで接近して、精強な科学観測装置でデータを収集する。収集された情報は、科学者たちにエウロパの「水っぽい内部」についてより多くのことを我々に伝えるだろう。

More About the Mission(ミッションの詳細)

エウロパクリッパーなどのミッションは、宇宙生物学の分野、つまり私たちにとって既知である生命が存在する可能性のある遠い氷世界の変数と条件に関する学際的な研究への貢献を促す。エウロパクリッパーは生命探査ミッションではないが、木星衛星エウロパの詳細な観測を行い、氷下に海洋がある氷衛星に、生命を維持する能力があるかどうかを調べる。エウロパの生命居住性を理解することは、科学者が地球上で生命がどのように発達したか、そして我々の惑星地球外において生命発見の可能性についての理解を向上させる。

カリフォルニア工科大学がカリフォルニア州パサデナで管理している JPL は、ワシントンにある NASA の科学ミッション局の APL と協力して、エウロパクリッパーミッションの開発を主導している。アラバマ州ハンツビルにある NASA のマーシャル宇宙飛行センターにある惑星ミッションプログラムオフィスは、エウロパクリッパーミッションのプログラム管理を実行する。

エウロパクリッパーの詳細については、以下を参照いただきたい。

NASA's Europa Clipper
 

News Media Contact

Gretchen McCartney
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

Karen Fox / Alana Johnson
NASA Headquarters, Washington

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Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office