NASA Juno Mission「NASA Juno(ジュノー、ユノー)ミッション、エウロパの酸素生成を測定、生命探査が一歩前進」

原文 : March 04, 2024 : NASA´s Juno Mission Measures Oxygen Production at Europa


氷に覆われた木星衛星 Europa(エウロパ)では、24 時間ごとに 1,000 トンの酸素が生成されている。
 

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この画像は、ジュノーが2022年09月29日、エウロパに接近フライバイした際に、ジュノーカムイメージャーによって撮影された。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
 

NASA の木星探査 Juno(ジュノー、ユノー)ミッションの科学者たちは、木星の衛星 Europa(エウロパ)で生成される酸素の割合を、これまでの研究により推定れていた量よりも大幅に少なく見積もった。03月04日に Nature Astronomy 誌に発表されたこの結果は、探査機の Jovian Auroral Distributions Experiment (JADE)装置によって収集されたデータを用いて、氷衛星の表面からの水素のアウトガス(放出ガス)を測定することによって導き出された。

論文の著者らは、生成された酸素の量を毎秒約 26 ポンド(毎秒 12 キログラム)と推定している。これまでの推定では、毎秒 2,000 ポンド(毎秒 1,000 キログラム)以上であった。科学者たちは、このようにして生成された酸素の一部は、代謝エネルギー源として衛星の氷殻下の海洋に流れ込む可能性があると考えている。

赤道の直径が 1,940 マイル(3,100 km)で、エウロパは木星の 95 に上る衛星の中で四番目に大きいが、当然だが四つのガリレオ衛星の中では最も小さい。科学者たちは、エウロパの氷の地殻の下には塩分を含んだ水の広大な内海が潜んでいると考えており、表面下に生命維持に必要な条件が存在する可能性について興味を持っている。

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この図は、木星からの荷電粒子がエウロパの表面に衝突し、凍った水分子を酸素分子と水素分子に分解している様子を示している。科学者たちは、これらの新しく生成された酸素ガスの一部は、挿入画像に描かれているように、衛星の氷殻下の海洋に向かって移動する可能性があると考えている。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI/PU
 

宇宙生物学者が注目しているのは水だけではない。衛星の位置も、生物学的な可能性において重要な役割を果たしている。
エウロパの軌道は、木星の巨大ガスの放射線帯のちょうど真ん中に位置している。木星からの荷電粒子(電離粒子)が氷の表面に衝突し、水分子を二つに分解して酸素を発生させ、それが衛星の氷殻下海に入り込んでいる可能性がある。

「エウロパは、氷の玉が流れにのってゆっくりと水を失っていくような状態だ。ただし、こうした流れは、木星の異常な磁場によって流されるイオン化粒子の流体によるものだ」と、ニュージャージー州にあるプリンストン大学の JADE 科学者 Jamey Szalay(ジェイミー・ザレイ)は語った。
「これらのイオン化粒子がエウロパに衝突すると、表面の水氷を分子ごとに分解し、水素と酸素を生成する。いわば、氷殻全体が荷電粒子の波によって絶えず浸食されているのだ」
 

捉えられた爆撃

2022年09月29日午後02時36分(PDT)にジュノーがエウロパ表面から 220 マイル(354 km)以下を飛行したとき、JADE は、荷電粒子によって生成された水素イオンと酸素イオンを特定し、測定した。

「NASA のガリレオ・ミッションがエウロパのそばを飛行したとき、エウロパとその環境との複雑でダイナミックな相互作用に目を見開かされた。ジュノーは、エウロパの大気から放出される荷電粒子の組成を直接測定する新たな能力をもたらしたが、我々としては、このエキサイティングな水の世界のカーテンの裏側をさらに覗き見るのを待ちきれなかったのだ」とザレイは語った。
「しかし、ジュノーの観測が、エウロパの氷の表面で生成される酸素の量について、これほど厳しい制約を与えてくれるとは思いもよらなかった」

ジュノーは、木星の磁気圏を研究するための九つの荷電粒子センサーと電磁波センサーを含む、木星系を研究するために設計された 11 基の最先端の科学機器を搭載している。

「延長ミッション中にガリレオ衛星の近くを飛行できたことで、エウロパでの生命生存性の調査に貢献するユニークな機会を含め、幅広い科学に取り組むことができた」と、サンアントニオのサウスウエスト研究所の Scott Bolton(スコット・ボルトン)主任研究員は語った。
「我々はまだ終わらない。今後、さらに多くの衛星がフライバイされ、木星の近接リングと極域大気の初の探査も用意されている」

酸素の生成は、NASA のエウロパ・クリッパー・ミッションが2030年に木星に到着した際に調査する多くの科学探査のひとつである。このミッションには、エウロパに生命に適した条件があるかどうかを調べる 9 基の科学機器が搭載されている。

ミッションの詳細

Juno ミッションは、NASA JPL(ジェット推進研究所)が管理している。プロジェクトは、サンアントニオにあるサウスウエスト研究所所属のスコット J. ボルトンがチームを率いる。
Juno は NASA のニューフロンティア計画の一部であり、アラバマ州ハンツビルの NASA マーシャル宇宙飛行センターにおいて、NASA 科学ミッション本部が管理している。宇宙船の製造・運用は、デンバーにあるロッキード・マーチン・スペース社が行っている。

Juno の詳細については、以下のURLを参照頂きたい。

Juno - mission to Jupiter

Mission Juno
 

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Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

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