NASA Psyche 探査計画「Psyche 探査機による史上初めての深宇宙光通信デモ、データの送受信に成功」

原文 : November 16, 2023 : NASA´s Deep Space Optical Comm Demo Sends, Receives First Data


DSOC は、Psyche 探査機の通信方法を変える可能性のある実験で、「ファースト・ライト」を達成し、初めて月のはるか彼方からレーザーでデータを送受信した。
 

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2022年12月08日、フロリダ州のケネディ宇宙センター近くにある Astrotech Space Operations 施設のクリーンルームにある NASA のPsyche 宇宙機。中央付近に、DSOC のゴールドキャップのフライト・レーザー・トランシーバが取り付けられているのが見える。
Credit : NASA/Ben Smegelsky
 

NASA の Deep Space Optical Communications(ディープ・スペース・オプティカル・コミュニケーション、DSOC)実験は、およそ 1000 万マイル(1600 万キロメートル)、地球から月までの約 40 倍離れた場所に到達した Psyche(サイキ、プシケ)探査機から、テストデータをエンコードした近赤外線レーザーをカリフォルニア州サンディエゴ郡にあるカリフォルニア工科大学パロマー天文台のヘール望遠鏡に向けて照射した。これは史上最も遠い光通信のデモンストレーションである。

10月に打ち上げられた Psyche 探査機に搭載された DSOC は、探査機が火星と木星の間の小惑星メインベルトを旅する二年間の技術実証の間、広帯域幅のテストデータを地球に送信するように設定されている。南カリフォルニアにある NASA JPL(ジェット推進研究所)は、DSOC と Psyche 探査機の両方を管理している。

技術デモは、11月14日の早朝に、近赤外線信号を送受信できる探査機に搭載された最先端の機器である flight laser transceiver(フライト・レーザー・トランシーバ)が、カリフォルニア州ライトウッド近郊の JPL の Table Mountain Facility(テーブル・マウンテン施設)にある Optical Communications Telescope Laboratory(光通信望遠鏡研究所)から送信された強力なアップリンク・レーザー・ビーコンにロックした後、「ファースト・ライト」を達成した。アップリンク・ビーコンは、トランシーバと地上局の自動システムがそのポインティングを微調整している間に、トランシーバがダウンリンク・レーザーをパロマー天文台(テーブル・マウンテンの南 100 マイル、130 kmにある)に向けるのを補助した。

「ファースト・ライトの達成は、DSOC の今後数ヶ月の重要なマイルストーンのひとつであり、人類の次の飛躍的な目標である火星への有人飛行を支援する科学情報、高解像度画像、ストリーミングビデオを送信できる、より高速なデータレート通信への道を開くものだ」と、ワシントンの NASA 本部にある宇宙技術ミッション本部で技術実証を担当する Trudy Kortes(トゥルーディ・コルテス)は語った。

テストデータは、アップリンクとダウンリンクのレーザーで同時に送信された。これは、実験の主な目的である "リンクを閉じる "と呼ばれる手順だ。この技術実証は Psyche のミッション・データを送信するものではないが、Psyche のミッション・サポート・チームと密接に協力し、DSOC の運用が探査機の運用に支障をきたさないようにしている。

「火曜日の朝のテストは、地上アセットとフライト・トランシーバを完全に組み込んだ最初のもので、DSOC と Psyche の運用チームが連携して作業する必要があった」と、JPL の DSOC 運用責任者である Meera Srinivasan(ミーラ・スリニバサン)は言う。
「手ごわい挑戦であり、やるべきことはまだたくさんあるが、短時間であるにも関わらず、いくつかのデータを送信、受信、デコードすることができた」

この達成の前にプロジェクトは、フライト・レーザー・トランシーバの保護カバーの取り外しから機器のパワーアップまで、他のいくつかのマイルストーンに達した項目をチェックする必要があった。一方、Psyche 探査機は、推進システムのパワーアップや、2028年に小惑星プシケに到着した際の観測に使用される機器のテストなど、独自のチェックアウトを行っている。
 

ファースト・ライトとファースト・ビット

ファースト・ライトに成功した DSOC チームは、トランシーバに搭載されたダウンリンク・レーザーのポインティングを制御するシステムの改良に取り組む。これが達成されれば、地球からさまざまな距離にあるトランシーバからパロマー天文台への広帯域データ伝送を維持する実証実験を開始することができる。このデータは、レーザーの光子(光の量子粒子)にエンコードされたビット(コンピューターが処理できるデータの最小単位)の形をとる。特殊な超伝導高効率検出器アレイが光子を検出した後、新しい信号処理技術を用いて、天文台にあるヘール望遠鏡に到着した単一光子からデータを抽出する。

DSOC 実証試験は、現在様々な宇宙機が使用している最先端の無線周波数システムの 10 倍から 100 倍のデータ伝送速度を実証することを目的としている。無線通信も近赤外レーザー通信も電磁波を利用してデータを送信するが、近赤外光はデータをかなり密な波にパックするため、地上局はより多くのデータを受信することができる。これは将来の有人およびロボット探査ミッションに役立ち、より高解像度となる将来の科学機器をサポートする。
 

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NASA の深宇宙光通信(DSOC)技術実証のためのフライト・レーザー・トランシーバ・オペレーション・チームは、プロジェクトが「ファースト・ライト」を達成した11月14日未明、JPL の Psyche ミッションサポートエリアで作業を行った。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

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11月14日に技術実証が「ファースト・ライト」を達成した直後、カリフォルニア州ライトウッド近郊にある JPL のテーブル・マウンテン施設にある光通信望遠鏡研究所で記念撮影をする DSOC 地上レーザー送信機のオペレータたち。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

「光通信は、宇宙ミッションに常に多くを求める科学者や研究者への恩恵であり、人類による深宇宙探査を可能にするものだ」と、NASA の宇宙通信・航法(SCaN)プログラム内の先進通信・航法技術部門の責任者である Jason Mitchell(ジェイソン・ミッチェル)博士は語った。
「より多くのデータは、より多くの発見を意味する」

光通信は地球低軌道や月面で実証されているが、DSOC は深宇宙における初めてのテストである。レーザーポインターを使って 1 マイル先の 10 円玉を追跡するように、何百万マイルもの距離をレーザービームで狙うには、極めて正確な「ポインティング」が必要だ。

実証実験では、宇宙機から地球までの膨大な距離を光が移動する時間も補正する必要がある: プシケが我々の惑星から最も離れた距離にある場合、DSOC の近赤外線光子は戻ってくるのに約 20 分かかる(11月14日のテストでは、探査機から地球まで約 50 秒かかった)。その間に探査機も惑星も移動してしまうので、アップリンクとダウンリンクのレーザーは位置の変化に合わせて調整する必要がある。

「ファースト・ライトを達成したことは、とてつもない偉業だ。地上システムは、探査機に搭載された DSOC のフライト・トランシーバからの深宇宙レーザー光子の検出を見事に成し遂げたのだ」と JPL の DSOC プロジェクト技術者である Abi Biswas(アビ・ビスワス)は語った。
 

ミッションの詳細

ASU(アリゾナ州立大学)は、Psyche ミッションを主導する。NASA JPL ジェット推進研究所が、ミッションの全体的な管理、システムエンジニアリング、統合およびテスト、ミッション運用を担当する。カリフォルニア州パロアルトにある Maxar Technologies 社は、高出力太陽電気推進宇宙機のシャーシを提供している。Deep Space Optical Communications(DSOC)は、NASA の宇宙技術ミッション本部内の技術実証ミッションプログラムと、宇宙作戦ミッション本部内の宇宙通信・ナビゲーション(SCaN)プログラム試験として、JPL によって管理されている。加えて JPL は、将来の NASA ミッションで使用される可能性のある高データレートのレーザー通信をテストするために、プシケに搭載される深宇宙光通信と呼ばれる技術実証装置を提供している。
打ち上げは、ケネディ宇宙センター(KSC)にある NASA の打ち上げサービスプログラムが管理している。Psyche Mission は NASA ディスカバリープログラムの一部で、アラバマ州ハンツビルにあるマーシャル宇宙飛行センターの管理のもとで実施される。

Psyche Mission についての詳細は以下をご覧頂きたい。

Psyche Asteroid Mission | NASA

Psyche Mission | A Mission to a Metal World(ASU)
 

News Media Contact

Gretchen McCartney
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

Karen Fox / Alana Johnson
NASA Headquarters, Washington

2023-108
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office