Space Topics 2023
JPL News (Ja) 日本語訳解説
打ち上げられた NASA Psyche(サイキ、プシケ)宇宙機は、光通信デモを実施する
NASA Psyche 探査計画「打ち上げられた NASA Psyche(サイキ、プシケ)宇宙機は、光通信デモを実施する」
原文 : October 13, 2023 : NASA's Psyche Spacecraft, Optical Comms Demo En Route to Asteroid
このミッションは、我々が住む地球の形成について光を当てるかもしれない。Psyche 宇宙機は、金属を豊富に含む小惑星を探査する。
Imahe caption :
2023年10月13日金曜日、フロリダのNASAケネディ宇宙センターで、プシケ宇宙船を搭載した SpaceX Falcon Heavy ロケットが Launch Complex 39A から打ち上げられる。NASA の Psyche 探査機は、火星と木星の間の太陽の軌道を周回する、金属を多く含む同名の小惑星に行き、その組成を研究する。この宇宙機はまた、月を超えた惑星空間でのレーザー通信をテストするための NASA の深宇宙光通信技術実証も搭載している。
Credit : NASA/Aubrey Gemignani
NASA Psyche(サイキまたはプシケ)探査機は、我々が住む地球のような岩石惑星の形成についてより深く多くのことを教えてくれる可能性を持つ、金属が豊富で表面暴露された世界とも言える小惑星へ向けて深宇宙航行を実施中である。Psyche 探査機は、米国東部夏時間10月12日午前10時19分に、フロリダ州にある NASA の Kennedy Space Center(ケネディ宇宙センター)の Launch Pad(発射台)39A からスペース X 社のファルコンヘビーロケットで打ち上げに成功した。
この Psyche Mission には、NASA の Deep Space Optical Communications technology demonstration(深宇宙光通信技術実証実験)が組み込まれている。これは、深宇宙レーザー通信のテストであり、従来の無線周波数通信よりも多くの帯域幅でデータを送信することで、将来の探査ミッションにおける通信の飛躍的な向上が期待できる。
「金属が豊富とみられる小惑星に向けた人類史上初めての旅となる Psyche の打ち上げ成功をお祝いする」と、NASA Administrator Bill Nelson(ビル・ネルソン長官)は語った。
「小惑星プシケを目指す Psyche Mission は、将来の NASA のミッションで使用できる技術を試みながら、惑星形成に関する新しい情報を人類に提供することができる。未知なるものを探求し、発見を通して世界にインスピレーションを与えるという NASA のコミットメントは今後も続いていくのだ」
打ち上げから五分が過ぎる前に、ロケットの第二段によって十分な高度まで上昇すると、ノーズ・フェアリングはロケットから切り離され、打ち上げから約一時間後、宇宙機はロケットから完全に分離し、地上の管制官は宇宙機からの信号を受信するために待機した。
その直後、Psyche 宇宙機は計画されたセーフモードに移行し、地球上のミッションコントローラからのさらなるコマンドを待つ間、最小限のエンジニアリング活動のみを完了させた。プシュケは EDT 午前11時50分、オーストラリアのキャンベラにある NASA の DSN(ディープ・スペース・ネットワーク)コンプレックスとの双方向通信を確立した。最初のテレメトリ報告によると、探査機の健康状態は良好である。
ワシントンの NASA 本部の科学ミッション本部副管理者である Nicola Fox(ニコラ・フォックス)は、「私は、プシケが NASA による金属世界への初めてのミッションとして、科学の宝庫を解き放つのを見ることに興奮している」と語った。
「小惑星プシケを研究することで、我々の宇宙とその中での我々の現状、特に我々の母星である地球において神秘的でその場への到達が不可能である金属核について、比較的な理解が得られることを望んでいる」
2029年08月までに、探査機は幅 173 マイル(279 キロメートル)の小惑星を周回し始める。サイケは鉄とニッケルの金属が広く表面に露出しているため、科学者たちは、初期の惑星の構成要素であるプラネテシマルの部分的な核ではないかと考えている。目標は 26 ヶ月に渡る科学調査の継続である。
「我々は、何千人もの人々と 10 年という長い間、仕事のほとんどを費やした宇宙機に "さよなら " を告げた」と、テンピにあるアリゾナ州立大学の Psyche 主任研究者、Lindy Elkins-Tanton(リンディ・エルキンス=タントン)は語った。
「しかし、それはゴールではなく、次のマラソンのスタートラインなのだ。我々の探査機は小惑星に出会うため出発し、我々のこれまでの知識のギャップを埋めてくれることだろう」
火星と木星の間の小惑星メインベルトに向かう六年間、22 億マイル(36 億キロメートル)の旅のために、Psyche 探査機は太陽電気推進に頼る。この効率的な推進システムは、中性ガスであるキセノンの荷電原子(イオン)を排出して推力を生み出し、宇宙機を緩やかに推進させることで機能する。途中、宇宙機は火星の重力を利用して旅を加速させる。
南カリフォルニアにある NASA JPL(ジェット推進研究所)の Laurie Leshin(ローリー・レーシン)所長は、「このエキサイティングな日を迎えるまでに多くの困難を乗り越えた Psyche チームをとても誇りに思う」と語る。
「惑星がどのように形成され進化していくのか、その秘密を解き明かすために、小惑星 16 プシケに向かって惑星間航行を始めたのだ」
ミッションの最初の 100 日間は、すべての飛行システムが健全であることを確認するための初期チェックアウト期間と呼ばれる試運転段階である。チェックアウトの鍵となるのは、電気スラスタが軌道の長い区間にわたって連続噴射を開始する準備ができていることを確認することである。
磁力計、ガンマ線・中性子スペクトロメータ、マルチスペクトルイメージャといった科学観測装置のアクティブチェックアウトは、今から約六週間後に始まる。この期間中、イメージャは校正のため、標準星と星団をターゲットに、いくつかの異なるフィルタを用いてさまざまな露出で最初の画像を撮影する。その後、Psyche チームは、ミッション期間中、オンラインで一般に閲覧可能な生画像の自動フィードを起動する。
Psyche 探査機が地球からおよそ 470 万マイル(750 万キロメートル)離れたときに、光通信技術のデモンストレーションの電源を入れる最初の機会が訪れるのがおよそ三週間後となる。これは、高データレートの光(レーザー)通信の月以遠での初めての試験となる。トランシーバは探査機によってホストされているが、技術デモでは Psyche 探査機のミッション・データは中継されない。
NASA 本部の宇宙技術ミッション本部(STMD)副本部長代理である Prasun Desai(プラサン・デサイ)博士は、「Psyche の打ち上げは、深宇宙に広帯域データを送るという NASA の光通信の目標を実証するための理想的なプラットフォームだ」と言う。
「あと数週間で、深宇宙光通信が地球へのデータ送信を開始し、将来の宇宙探査に不可欠なこの能力のテストが行われることにわくわくしている。我々が学ぶ洞察は、これらの革新的な新技術を前進させ、最終的には宇宙でより大胆な目標を追求するのに役立つことだろう」
ミッションの詳細
ASU(アリゾナ州立大学)は、Psyche ミッションを主導する。NASA JPL ジェット推進研究所が、ミッションの全体的な管理、システムエンジニアリング、統合およびテスト、ミッション運用を担当する。カリフォルニア州パロアルトにある Maxar Technologies 社は、高出力太陽電気推進宇宙機のシャーシを提供している。Deep Space Optical Communications(DSOC)は、NASA の宇宙技術ミッション本部内の技術実証ミッションプログラムと、宇宙作戦ミッション本部内の宇宙通信・ナビゲーション(SCaN)プログラム試験として、JPL によって管理されている。加えて JPL は、将来の NASA ミッションで使用される可能性のある高データレートのレーザー通信をテストするために、プシケに搭載される深宇宙光通信と呼ばれる技術実証装置を提供している。
打ち上げは、ケネディ宇宙センター(KSC)にある NASA の打ち上げサービスプログラムが管理している。Psyche Mission は NASA ディスカバリープログラムの一部で、アラバマ州ハンツビルにあるマーシャル宇宙飛行センターの管理のもとで実施される。
Psyche Mission についての詳細は以下をご覧頂きたい。
Psyche Asteroid Mission | NASA
Psyche Mission | A Mission to a Metal World(ASU)
News Media Contact
Gretchen McCartney
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.
Karen Fox / Alana Johnson
NASA Headquarters, Washington
2023-108
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan