NASA Psyche 探査計画「巨大な太陽電池アレイの展開試験を終えて最終的な本機への格納が完了」

原文 : August 03, 2023 : Huge Solar Arrays Permanently Installed on NASA’s Psyche Spacecraft


NASA Psyche(サイキ、プシケ)ミッションは10月05日の打ち上げに向けて着々と準備を進めおり、打ち上げ体勢としての最後のマイルストーンに向けて、それを加速している。
 

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NASA Psyche 探査機に取り付けられた双翼の太陽電池アレイの片側を格納し始める技術者たち。この写真は07月25日、フロリダ州ケネディ宇宙センター近くの Astrotech Space Operations 施設内で撮影された。
Credit : NASA/Kim Shiflett
 

フロリダにある NASA の Kennedy Space Center(ケネディ宇宙センター:KSC)近くの Astrotech Space Operations 内のクリーンルームでロボットにより展開された Psyche 探査機搭載の巨大な太陽電池アレイは、金属を豊富に含む小惑星プシケを探査するための 25 億マイル(40 億キロメートル)の旅に備えてテストされている。打ち上げウィンドウは10月05日(~25日まで)に開く。

展開テストに合格した後、二翼の太陽電池アレイは再び収納され、探査機が地球を離れるまでオービターの側面に収納されたままとなる。Psyche 探査機は、2029年07月に目的地である火星と木星の間の小惑星帯にある同名の謎の小惑星 16 プシケに到着する予定である。その後、探査機は小惑星をさまざまな高度から 26 ヶ月間周回し、画像やその他のデータを収集する。

科学者たちは、プラネテシマル(惑星の構成要素、微惑星と呼ばれる)のコアの一部である可能性のあるこの小惑星について知見を積み重ねることで、太陽系惑星のコアや地球自身の形成についてより多くのことがわかるだろうと期待している。
 

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上と同じく、NASA Psyche 探査機に取り付けられた双翼の太陽電池アレイの格納準備を行う技術者たち。
Credit : NASA/Kim Shiflett
 

この太陽電池アレイの最終設置は、ケネディ近郊の Astrotech Space Operations(アストロテック・スペース・オペレーションズ)で行われた。アレイは昨年、南カリフォルニアにある NASA JPL(ジェット推進研究所)でテスト中にも展開されている。800 平方フィート(75 平方メートル)の 5 枚のパネルからなる十字型の太陽電池アレイは、JPL で展開されたものとしては最大である。飛行中にアレイを広げると、探査機全体はシングルテニスコートほどの大きさになる。

探査機が地球近傍にいるときは 20 キロワット以上の電力を生み出すが、太陽電池アレイは主に深宇宙の弱い光の中で働くように設計されている。小惑星プシケは太陽から非常に遠いので、この巨大なアレイでさえ、そのプシケまでの距離ではわずか 2 キロワット強の発電しかできない。

これはヘアードライヤーが使用する電力より少し多い程度だが、科学機器、通信、軌道船の温度を制御する機器、宇宙船の高効率太陽電気推進エンジンを動かすなど、プシケの電気的ニーズを満たすには十分なエネルギーである。このシステムのスラスターは、電磁場を使って中性ガスであるキセノンの荷電原子(イオン)を加速し、押し出す。放出されたイオンはプシュケを宇宙空間に押し出す推力を生み出し、それは青い光を宇宙空間に放つものだ。
 

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Astrotech Space Operations 施設の技術者が、Psyche 探査機の太陽電池アレイを展開したのち、格納していく作業。このタイムラプス動画は、07月下旬に約八日間かけて撮影された。
Credit : NASA/Glenn Benson and Cory Huston
 

イオンエンジンの推力はとても穏やかで、単三電池一本分の重さを手に持ったときに感じるのと同じ程度の圧力を生み出す。小さいが Psyche 探査機を深宇宙で加速させるには十分だ。大気の抵抗がないため、小惑星帯への惑星間航行の間、探査機は地球に対して時速 12 万 4000 マイル(時速 20 万キロ)まで加速する。

08月中旬から、クルーは 2,392 ポンド(1,085 キログラム)のキセノンを数週間かけて探査機に積み込み始める予定である。

SpaceX Falcon Heavy(スペースXファルコン・ヘビー)は、ケネディ宇宙センターの発射場 39A から東部夏時間 EDT 10月05日の午前10時38分(米国東部標準時 PDT 午前07時38分)を打ち上げ予定としており、10月25日まで追加打上げの機会が予定されている。
 

ミッションの詳細

ASU(アリゾナ州立大学)は、Psyche ミッションを主導する。NASA JPL ジェット推進研究所が、ミッションの全体的な管理、システムエンジニアリング、統合およびテスト、ミッション運用を担当する。カリフォルニア州パロアルトにある Maxar Technologies 社は、高出力太陽電気推進宇宙機のシャーシを提供している。Deep Space Optical Communications(DSOC)は、NASA の宇宙技術ミッション本部内の技術実証ミッションプログラムと、宇宙作戦ミッション本部内の宇宙通信・ナビゲーション(SCaN)プログラム試験として、JPL によって管理されている。加えて JPL は、将来の NASA ミッションで使用される可能性のある高データレートのレーザー通信をテストするために、プシケに搭載される深宇宙光通信と呼ばれる技術実証装置を提供している。
打ち上げは、ケネディ宇宙センター(KSC)にある NASA の打ち上げサービスプログラムが管理している。Psyche Mission は NASA ディスカバリープログラムの一部で、アラバマ州ハンツビルにあるマーシャル宇宙飛行センターの管理のもとで実施される。

Psyche Mission についての詳細は以下をご覧頂きたい。

Psyche Asteroid Mission | NASA

Psyche Mission | A Mission to a Metal World(ASU)
 

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Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

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NASA Headquarters, Washington

2023-108
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office